著者
朝水 宗彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本発表は、観光を用いた地域おこしとして、地方におけるMICEの定着化について、ソフト面から検討する。対象である山口市は、「E」部門では2015年に世界スカウトジャンボリーが開催されるまで、何度かプレイベントを実施し、徐々にボランティアを含んだスタッフの育成に努めてきた。ただし、「C」部門の国際会議は継続性が不十分で、記念行事的な開催が続いているため、国内外の諸事例を経験的に学んでいくことが重要である。
著者
山﨑 けい子 初鹿野 阿れ
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
no.57, pp.25-38, 2012

日本語学習者が日本語で会話を行うには,様々な問題が起こる。例えば,自分が言いたいことが言えない,相手の言ったことが聞き取れない,理解できない,などである。それらは日本語母語話者にも起こり得ることであるが特に日本語学習者にとって,このようなコミュニケーション上のトラブルへの対処のプロセス,つまり「修復」のフロセスを明らかにすることは,適切な問題対処法を学ぶ上で重要である。しかしながら,会話における「修復」のフロセスをどのように日本語学習者に示し得るか,学習者がどのように学び得るかという点においては議論の余地がある。そのような微細なプロセスは実際の会話の中で自然習得されるものだという考え方がある。一方,より現実に近い会話例を教材として示しながらその詳細なやりとりに焦点を当て示していくことが可能だという主張もある。もちろん二項対立の議論ではなかろうが,本稿では手始めとして後者の立場に立ち,どのように「修復」のプロセスを教材の中で示し得るのか,その可能性を探りたい。そのために,まず,既存の日本語教科書の聴解教材などにおいて実際に「修復」をどのように扱っているかを調べ,その傾向を明らかにする。それを踏まえ「修復」のタスク内での役割を考察し,今後の方向性を探る。
著者
坂口 雄介 村山 敏夫 小山 清夏 YELITU HEQI 尾山 裕介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.190_1, 2018

<p> 平成29年度における交通死亡事故の特徴として、高齢者の占める割合は過去2番目の高さであること、さらに歩行中の死者数は高齢者の占める割合が72.2%であるという警察庁の報告から、高齢者の歩行中における交通事故抑止は喫緊の課題といえる。高齢者の交通事故抑止に向けた研究として、事故状況をまとめて高齢者の事故局面における特徴を把握したものが多く報告されている。しかし高齢者の交通死亡事故に歯止めがかかっていないという現状より、新たな視点からの研究が必要であると考える。</p><p> そこで本研究では、高齢者を対象に判断パターンの分類を目的としたテストを実施する。ここでいう判断パターンとは、様々な状況下における個人の判断特徴を定量的に示すことを目的とし、定型化することである。さらに感覚刺激認知に着目した運動機能測定、及び歩行環境シミュレータとアンケート調査を実施し、これらの結果の比較、検討を行った。これにより高齢者の交通事故局面における注意喚起システムの開発と提案を行うことで、今後の新たな交通事故抑止に向けた取り組みの一助になることが期待される。</p>
著者
奥村 誠 ハック シャーミム マハブーブル
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.37, pp.103-108, 2002-10-15
参考文献数
7
被引用文献数
2

本研究は、土地税制などの金銭的な政策や土地利用規制が都市域の土地利用に及ぼす効果を把握できるモデルを構築する。100mメッシュという詳細なゾーンを対象に地理情報システムを用いて土地利用の実績データと土地条件に関するデータを用意し、立地者間の競争関係を表現できるランダム付け値モデルを作成する。その際、路線価の観測値を用いて、金銭単位で付け値関数を推定することにより、課税等の金銭的な政策を簡単に取り込み得る土地利用モデルの構築をめざす。
著者
ファン H. G. コヴァチェヴィッチ R.
出版者
社団法人溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.82-89, 2007-03-05
参考文献数
56
被引用文献数
5 10

はじめに アーク溶接は多くの複雑な物理現象を含んでいる.アーク溶接における熱および物質輸送現象のより良い理解はプロセスの最適化や溶接品質の改善に不可欠である.溶接で生じる現象の予測は実験に代わるもう一つの手段として捉えることができ,コストを抑えるとともに厳しい溶接環境から溶接士を保護し得ることが可能になる.さらに,数値計算モデルは実験によって得られ難い複雑な輸送現象も明らかにすることができる.ここでは,アーク溶接プロセスのモデル化をテーマに取り上げるが,工業に幅広く普及しているGTA溶接とGMA溶接を中心に議論を展開したい. GTA溶接のモデル化 溶融池あるいはアークプラズマにおける熱および物質輸送のモデル化については数多くの研究論文の中でよく議論されてきた.溶融池モデルでは最近のトレンドとして3次元化が挙げられる.著者らは添加ワイヤの送給を考慮に入れたGTA溶接の3次元溶融池モデルを構築している. Fig.1は温度場と流動場の横断面図である.最高温度がアーク中心近傍の溶融池表面とワイヤ表面に見られる.溶融池後方への熱量畳のために,溶融池前方の等温線が後方の等温線に比べて明らかに密になっていることが解る.なお,溶融池形状は流動場に示されている.一方,もう一つの最近のトレンドは,陰極-アークプラズマ-陽極を同時に解く統合モデル化であろう.著者らは完全溶込みを考慮に入れた2次元の統合モデルを構築している. Fig.2に温度場のみを示すが,時間とともに溶込みが増加し,アークスタート後2秒では部分溶込みであったものが4秒では完全溶込みに達していることがよく理解できる.完全溶込みの場合,溶融池裏面が形成されるために表面のくぼみが増加していることが解る. GMA溶接のモデル化 GMA溶接のモデル化は溶滴移行,アークプラズマ,溶融池の3つの部分に分かれて発展してきた.溶滴移行のモデル化では,静的釣り合い理論(SFBT)とピンチ不安定理論(PIT)が適用されてきたが,電流変化にともなうグロビュラーからスプレーへの移行形態の変化を表現できなかった.このため,流体力学を応用した数値計算モデルが現在の主流になっている.一方,溶融池に関してはGTA溶接の場合と同様に3次元化が最近のトレンドであり,特に,アーク圧力ばかりでなく溶滴移行による溶融池表面の変形を考慮に入れたモデルが発表されている.アークプラズマに関しても, GTA溶接の場合と同様,溶滴移行-アークプラズマ-溶融池を同時に解く統合モデル化が最近のトレンドである.Fig.3は著者らによる2次元統合モデルの計算結果例である.ワイヤ端での溶滴の形成・離脱,アークプラズマ中での溶滴の移動,溶滴と溶融池との相互作用が時間とともに進展していく様子を見事に予測している.その他 近年,ソリッド自由造形(SFF)のモデル化が進みつつある.ソリッド自由造形には添加ワイヤを含むGTA溶接プロセスを応用したタイプやGMA溶接を応用したタイプがあるが,これらのモデル化は,上述のGTA溶接モデルやGMA溶接モデルに多層モデルを組み合わせることにより実現可能であると考えている.一方,今後の展開として,溶融池サイズ,残留応力,金属組織を予測し,かつ溶接プロセスパラメータの最適化をはかることが重要であり,これらを実現するには,熱的,流体的,機械的,化学的モジュールモデルを統合した溶接の完全プロセスモデル化が必要であると考えている.最近,このような取り組みがなされつつある.また,溶接モデルのほとんどはビード・オン・プレート溶接を対象にしているが,最近,V形溶接継手で特徴づけられるGMAすみ肉溶接の3次元定常モデルが紹介されている.おわりに アーク溶接プロセスのモデル化において,そのトレンドは間違いなく統合モデルであり,そして,その究極のゴールが3次元完全プロセスモデルである.これらの実現に向けてパラレル処理や非構造メッシュなど新しい計算手法が有効であろう.最後に,コンピュータ技術の発展と数値計算科学のさらなる追求は,モデル化の実溶接プロセスへの輝かしい貢献に繋がっていることは間違いない.
著者
本馬 周淳
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.65-70, 2012
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:胆嚢摘出術において鏡視下手術群(L群)と開腹手術群(O群)の術前後の唾液アミラーゼ値から両手術のストレス度の違いを比較検討した。対象:2007年8月から2008年8月に、全身麻酔下(全麻)または全身麻酔+硬膜外麻酔(全麻+硬膜外)併用で胆嚢摘出術を施行した20例。L群:13例(男性7、女性6;平均年齢65歳)、O群:7例(男4、女3;平均年齢68歳)。方法:手術当日朝、手術翌日朝に唾液アミラーゼ値(KU/L)を測定した。測定機器にはCocolo Meter(ニプロ)を使用した。術後の症状、訴えは口答で聞き取りを行った。結果:手術前後ともにL群の唾液アミラーゼ値が低値であったが両群間に有意差はなかった。両群の唾液アミラーゼの平均値は、L群では術後に低下したが、O群では術後に上昇傾向を示した。L群の13例中仰臥位による腰痛や口渇を強く訴えた3例のみ術後アミラーゼ値が著明に上昇した。O群では全麻の3例が上昇、全麻+硬膜外麻酔の4例中2例は低下した。考察:鏡視下胆嚢摘出術は開腹術と比較してストレス度の低い手術であると思われた。唾液アミラーゼ値は術前不安および術後創痛の程度を反映していると考えられた。
著者
本間 哲志
出版者
School of economics, university of toyama
雑誌
Working Paper, No.343, 2022.03, School of economics, university of toyama
巻号頁・発行日
vol.343, pp.1-371, 2022-03

この論文では,Homma (2009, 2012, 2018)によって構築された一般化使用者収入モデルに基づきながら,我が国地方銀行における平穏仮説の実証的含意を明らかにする.分析の結果,効率性仮説は受容されないが,平穏仮説は受容される.加えて,ハーフィンダール指数の増加によるコスト・フロンティア上の拡張された一般化ラーナー指数(以下,EGLI)の増加と平穏仮説の成立は同値なため,独占禁止政策は正当化される.さらに,平均的な貸出残高は大きくなく,平穏仮説のみが成立するため,異時点間規則的連鎖(サイクル的連鎖)が存在する.しかしながら,コスト・フロンティア上の単一期間EGLIのサイクル的連鎖は収束に向かい,初期時点の非常に大きな値に固定化される.このため,単一期間動学的費用効率性及び単一期間最適金融財のサイクル的連鎖と同様,我が国地方銀行にとって望ましくないと判断される.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1085, pp.180-183, 2001-04-02

4月2日。この日は、日本の民主主義にとっての記念日となるかもしれない。国の行政機関が保有する情報を原則として公開しなければならないとする「情報公開法」がスタートするのだ。この法律は国の在り方を根底から変える可能性を秘めている。市民団体が請求ツアー 法施行を前に、全国各地で市民団体が情報公開請求の準備を進めている。
著者
西坂 太志 上園 敏郎 上山 智之
出版者
溶接学会
雑誌
溶接学会全国大会講演概要
巻号頁・発行日
vol.70, pp.30-31, 2002-04-24
被引用文献数
3
著者
太田 慧 池田 真利子 飯塚 遼
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<b>1</b><b>.</b><b>研究背景と目的</b><br><br> ナイトライフ観光は,ポスト工業都市における都市経済の発展や都市アメニティの充足と密接に関わり,都市変容を生み出す原動力としても機能し得るという側面から2000年代以降注目を浴びてきた(Hollands and Chatterton 2003).この世界的潮流は,創造産業や都市の創造性に係る都市間競争を背景に2010年代以降加速しつつあり,東京では,東京五輪開催(2020)やIR推進法の整備(2016),およびMICE観光振興を視野に,区の観光振興政策と協働する形で,ナイトライフ観光のもつ経済的潜在力に注目が向けられ始めている(池田 2017).このようなナイトライフ観光の経済的潜在能力は,近年ナイトタイムエコノミーと総称され,新たな夜間の観光市場として国内外で注目を集めている(木曽2017).本研究では,日本において最も観光市場が活発である東京を事例として,ナイトタイムエコノミー利用の事例(音楽・クルーズ・クラフトビール)を整理するとともに,東京湾に展開されるナイトクルーズの一つである東京湾納涼船の利用実態をもとにナイトライフ観光の若者の利用特性について検討することを目的とする.<br><br><b>2</b><b>.東京湾納涼船にみる若者のナイトライフ観光の利用特性</b><br><br>東京湾納涼船は,東京と伊豆諸島方面を結ぶ大型貨客船の竹芝埠頭への停泊時間を利用して東京湾を周遊する約2時間のナイトクルーズを展開している,いわばナイトタイムの「遊休利用」である.アンケート調査は2017年8月に実施し,無作為に抽出した回答者から117件の回答を得た.回答者の87.2%に該当する102人が18~35歳未満の若者となっており,東京湾納涼船が若者の支持を集めていることが示された.職業については,大学生が50.4%,大学院生が4.3%,専門学校生が0.9%,会社員が39.3%,無職が1.7%,無回答が2.6%となっており,大学生と大学院生で回答者の半数以上が占められていた.図1は東京湾納涼船の乗船客の居住地を職業別に示したものである。これによれば,会社員と比較して学生(大学生,大学院生,専門学校生も含む)の居住地は多摩地域を含むと東京西部から神奈川県の北部まで広がっている.また,18~34歳までの若者の83.9%(73件)がゆかたを着用して乗船すると乗船料が割引になる「ゆかた割引」を利用しており,これには18~34歳までの女性の回答者のうちの89.7%(52件)が該当した.つまり,若者の乗船客の多くはゆかたを着て「変身」することによる非日常の体験を重視しており,東京湾納涼船における「ゆかた割」はこうした若者の需要をとらえたものといえる.以上のように,東京湾納涼船は大学生を中心とした若者にとってナイトライフ観光の一つとして定着している.