著者
呉 栽喜 オウ ジエヒ Oh Jaehee
雑誌
大東文化大学紀要. 社会科学 (ISSN:09122338)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.53-67, 2014-03-31

子どもの貧困は、経済的困難を表すだけでなく、子どもの成長過程における様々な体験からの剥奪を意味する。日本では貧困研究は1970年代までは盛んであったが、その後の経済成長とともに貧困の問題は注視されずにいた。特に、子どもの貧困に関する社会福祉研究は乏しく、地域社会や家族における「子ども貧困」という捉え方としての研究はあまり蓄積されてないのが現状である。貧困状況が顕著な母子家庭において母親の就業率が他の世帯より高い状況にも関わらず多くの母子家庭の子ども達において貧困率が高くなっており、その原因として、日本における教育関係の公的支出が少ないことや、貧困のリスクを抱える層の税・社会保障負担が大きすぎることも子育て家庭における高い貧困率の原因であることが明らかになった。子ども期の貧困状況を改善することは、子育てを「家庭の責任」から「社会の責任」へと捉え直していくことが求められる。
著者
乾 彰夫
出版者
首都大学東京
雑誌
教育科学研究 (ISSN:02897121)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.31-41, 2008-03
被引用文献数
1

学校から仕事への移行過程が変容するにしたがって、不安定で流動的な状態にある若者たちが急速に増加している。こうした状況は、過去20年あまりの間に、日本のみならず先進諸国に共通の現象として発生している。若者たちをめぐる状況は、近代化・産業化の過程を通して、一旦は学校から安定した仕事へのスムーズな移行を標準化させてきた先進諸国にとって、新たな問題認識と対応を求める課題を突きつけてきた。流動化する若者たちの状況の性格や原因をどう見るか、社会的な支援は必要なのか、また必要だとすれば誰に対して、何に対して。こうした議論は、日本の「フリーター」「ニート」問題に限らず、多くの国々で繰り広げられてきた。「フリーター」「ニート」論議の初期のように、その原因を若者たちの「意欲」に求める議論はこうした状況を経験している国々では少なくない。そうしたなかで、こうした若者たちの置かれている状況を量的にも正確に把握しようとする試みと、そのための様ざまな新たな統計的カテゴリーが登場した。イギリスのNEET概念や、厚労省・内閣府等による「フリーター」「ニート(若年無業者)」集計などがそうである。だがこうした様ざまな試みにも拘わらず、依然として、こうした状態にある若者たちへの多義的な理解、あるいは認識の食い違いは解消されていない。だが、こうした多義性は、集計上のカテゴリーの不十分さ・未熟さ以上に、今日の若者たちのおかれた状態の本質的な性格にある。ここでは、先進諸国のこうした若者層の流動性の今日的な性格から問題をとらえ直すとともに、若年労働市場規制のあり方と関係させつつ日本の若者のおかれている特徴を明らかにしたい。
著者
伊藤 毅志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.887-894, 2009-09-15
被引用文献数
4

多くの幸運が重なり,電気通信大学情報工学科伊藤研究室の開発した「文殊」は,第19回世界コンピュータ将棋選手権において,初出場で第3位という成績を残すに至った.この解説では,「文殊」の誕生までの歩みと文殊で行った「合議アルゴリズム」の技術的な工夫と,いくつかの実験結果について紹介する.
著者
湯浅 誠
出版者
國家學會事務所
雑誌
國家學會雑誌 (ISSN:00232793)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.755-817, 1999-08
著者
井関 利明
出版者
慶應義塾大学大学院社会学研究科
雑誌
慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要 (ISSN:0912456X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.13-29, 1964

論文1. 問題の提起2. 経済学における消費者行動論とその限界3. 消費者行動への社会学的接近法4. 購買行動分析の理論図式A. 分析のための作業モデルB. 諸要素の説明C. 準拠集団と小集団5. 要約と結論
著者
大森 睦美 占部 和敬 辻田 淳 内 博史 幸田 太 師井 洋一 古江 増隆
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.17-20, 2009

73歳,女性。初診の8ヶ月前,顔面中央に青灰色の色素沈着が出現し,次第に体幹,手掌に拡大した。受診時,顔面,胸部,上背部,両手掌外側に青灰色の色素沈着を認めた。病理組織学的に汗腺や毛包周囲に黒褐色粒子の沈着を多数認めた。詳細な問診により初診の3ヶ月前まで約3年間,口内炎に対して連日硝酸銀を含む口腔含嗽液を使用していたことが判明し,銀皮症と診断した。診断後,外来にて3年間の経過観察を行っているが全身の色素沈着は軽快していない。
著者
井口 智之 神長 裕明 横山 節雄 宮寺 庸造 中村 勝一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.536, pp.119-124, 2008-03-01
被引用文献数
1

本研究では,Web上における話題の遷移過程に着目し,広範囲な情報探索支援に有用な情報の抽出を目指す.具体的には,ハイパーリンクで結ばれたWebページ集合における話題の遷移について,1)その遷移過程で着目すべき箇所,2)それらの話題をドメインとしたWebページクラスタを抽出する手法を提案する.話題遷移上の着目箇所,話題Webページクラスタは,その抽出に際して互いに影響を及ぼし合う関係にある.そこで本研究では,まずこれらを準独立的に抽出する手法について述べ,さらに両者を反復的に連携させることで,抽出精度を高める方法を提案する.また,提案するアルゴリズムを実装したシステムを用いた実験について報告し,提案手法の有効性や特徴について考察する.
著者
鎌田 正裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.38-39, 2001
参考文献数
3
著者
大対 香奈子 松見 淳子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.223-233, 2007

The purpose of this study was to examine the relationship between teacher ratings of preschoolers' social skills and their level of competence in perspective taking, regulation of emotion, and interpersonal problem solving. The participants were 84 preschool children whose ages ranged from 3 to 5 years. The experiment was conducted individually using puppets. The results indicated that the developmental changes in the three areas of competence being studied were consistent with the findings of previous studies. We also found that children's regulation of emotion was related to perspective taking and interpersonal problem solving. Furthermore, the level of competence in interpersonal problem solving predicted teacher ratings of children's social skills. These results suggested that regulation of emotion and interpersonal problem solving are important elements of effective social skills training.
著者
渡久山 和史 Tokuyama Kazufumi 沖縄大学地域研究所特別研究員 那覇市役所
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.11, pp.35-42, 2013-03

本稿の問いは、沖縄県においてなぜ那覇市に生活保護受給者が多い/増加しているのか、である。この問いを軸に、そこから見えてくる現在の沖縄の姿(の一面)を描写する。戦後沖縄は、「復帰前の基地依存から復帰後の行政依存へ。そして、その帰結としての生活世界の空洞化と構造的貧困」という歴史を辿った。我々は今後、生活世界を堅持したオルタナティブな沖縄を構想するべきである。
著者
嘉納 英明 竹沢 昌子 Kano Hideaki Takezawa Masako 名桜大学人間健康学部 Faculty of Human Health Sciences Meio University
出版者
名桜大学総合研究所
雑誌
名桜大学総合研究 (ISSN:18815243)
巻号頁・発行日
no.23, pp.23-31, 2014-03

沖縄県N市の被保護母子世帯の母親は,後期中等教育以降の教育機会を受けることが少なく,20代前半から婚姻関係に入り,子どもを複数名(平均2.9名)出産する傾向にある。また,結婚生活は長続きせず(平均7.4年),経済的困窮に留まりがちであるという実像が浮き彫りになった。一方,N市の生活保護ケースワーカーは,被保護母子世帯の子どもの悩みやストレスの有無,教育支援ニーズについて,十分に把握できていないことが明らかになった。とはいえ,日常的に被保護母子世帯と関わっている生活保護ケースワーカーや子どもの自立に向けた支援を行う社会支援員は,被保護母子世帯の経済力の問題,学習環境の問題,子どもの低学力の問題,学校不適応の問題,貧困の連鎖の問題等について認識しており,また危惧していた。この視点は,生活保護行政の立場からの見解であるが,あながち,被保護母子世帯の子どもの教育支援ニーズと無関係ではないと考えられる。M大学の教職履修生は,このような生活保護行政の見解に賛同し,被保護世帯の子どもへの学習支援をスタートさせた。今後,子どもの教育支援ニーズをより一層明らかにするために,さらに調査を進めていく必要がある。Single mothers on welfare in N city, Okinawa Prefecture, Japan, tend to have had fewer opportunities for higher education, become involved in marital relationships by their early 20's, and bear more than two children (2.9 average). Moreover, their marriages do not last for a long time (7.4 years average), and they are prone to remain in poverty. Welfare workers in N city have not perceived precisely the educational support needed by the children of single-mother households, their worries, or their stresses. However, some caseworkers who assist single-mothers and their children on a daily basis and a social supporter who guides children toward independence do recognize their financial problems, poor educational environment, declines in academic performances, school maladaptation, and chain reactions caused by poverty. Although these perceptions were given by caseworkers who are in welfare administration, they may reflect educational support needed by the children of single-mothers. M University students studying in teacher-training course endorsed the caseworkers' views and started volunteering as teachers for those children on welfare. In order to elucidate the needs of educational support more clearly, further investigation and research are necessary.
著者
豊田 哲也
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.312-312, 2007

<B>1.問題の所在</B><BR> 「都市と地方の格差問題」は今日わが国における最も重要な政策テーマとなったが、その事実認識について論争はつきない。現象としての所得格差には2つの意味がある。一つは「都市-地方」という空間的な関係であり、もう一つは「富裕層-貧困層」という階層的な関係である。ところが多くの場合、前者の分析は1人あたり県民所得など平均値の差のみに注目し、格差の階層的構造についての視点を欠く。一方、後者の分析は所得再分配調査など全国一律のデータをもとにおこなわれ、地域間の比較については関心がない。しかし、地域と地域の間に格差があるのと同様、どの地域もその内部に階層的な格差を抱えていることは自明の事実である。例えば、高級マンションとホームレスが併存する大都市と、過疎化・高齢化が進む中山間地域を含む地方とでは、いずれの地域で格差がより大きいであろうか。また、地域間・地域内の格差はどの程度拡大しているのか。本研究では、世帯所得の地域格差を空間的・階層的かつ時系列的に分析し、こうした格差を生み出す要因として人口や雇用など地域の社会経済条件との関連を検討することを目的とする。<BR><B>2.所得の地域格差</B><BR> 使用するデータは「住宅・土地統計調査(都道府県編)」である。「世帯の年間収入」の階級別世帯分布から、線形補完法でメジアン(中位値)、第1五分位値(下位値)、第4五分位値(上位値)を推定するとともに、ジニ係数を求める。なお、実質所得は世帯人員の規模の影響を受けるため、SQRT等価尺度を用いて調整を加えた。1998年から2003年にかけて、等価年間収入の中位値は全国平均で286万円から267万円に約9%低下している。都道県別に見ると、神奈川、東京、千葉など首都圏と愛知で高く、沖縄、鹿児島、宮崎、高知など九州・四国と青森など東北で低い(図1)。<BR> 次に、年間収入の中位値を横軸に、ジニ係数を縦軸にとって各都道府県の散布図を描く(図2)。おおむね年間収入が高いほどジニ係数は低いという逆相関を示す。東京は両者とも高いのに対し、大阪や京都では所得水準が中程度でありながらジニ係数は高い。地方でジニ係数が目立って低いのは富山、新潟、長野、山形など北陸・信越地方で、高いのは徳島・高知など南四国と和歌山である。5年間の変化を見ると、縦軸方向で示される地域内格差はやや拡大しているが(ジニ係数の平均値:0.294→0.299)、横軸方向のばらつきで示される地域間格差は、予想に反してむしろ縮小していることがわかる(中位値の変動係数:0.126→0.109)。平均対数偏差(MLD)を用いた要因分解によっても、この結果は支持される。<BR><B>3.地域格差の要因</B><BR> 空間的な地域間格差と階層的な地域内格差をもたらす要因を探るため、人口や雇用などの地域の変数と所得およびジニ係数との間で相関係数を算出した(表1)。人口構成に関しては、生産年齢人口が多く老年人口が少ない地域ほど所得水準は高い。一方、女性就業率の高さは地域内格差の縮小に貢献している。また、労働力需要が弱い高失業率地域では、所得の下位値が低下しジニ係数が高まる傾向にある。職業別就業構造との関係を見ると、農林漁業が多いほど所得水準は全般的に低く、事務職が多いほど所得水準は高いが、両者ともジニ係数への影響は中立的である。これに対し、専門技術職は上位値を引き上げ、サービス業は下位値を引き下げるよう作用し、両者が相まって格差を拡大する要因となっている。対照的に、ブルーカラー就業者の多い地域では格差が抑制されている。さらに、このような地域間の所得格差は人口移動と強い正の相関を示すことから、地方から都市への人口集中をより促進するよう作用していると考えられる。<BR><B>4.今後の課題</B><BR> 世帯所得の格差に関する今回の分析から、問題は地域間格差の拡大ではなく、むしろ地域内格差の拡大にあると言える。結果についてさらに解釈を深めるには、推計方法や地域区分を再検討する余地がある。これ以外に都道府県別の世帯所得データが得られる「全国消費実態調査」や「就業構造基本調査」を用いた場合と、結果を比較検証する必要もあろう。今後、地域格差の要因を究明していくには、論理的な因果関係を組み込んだ説明モデルの構築が求めらる。<BR>
著者
根津 永二
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.109-118, 2008

GDP would be considered as one of the most popular measures of affluence in living. Recently, however, relative poverty in affluent society in the advanced countries has been closed up. It is pointed out that relative poverty and income inequality in Japan have been the above the OECD average. The growing use of non-regular workers, the low public spending and the population ageing are responsible for the rise in measured income inequality and relative poverty. Especially, the labor market dualism is most important among these factors. Japan has been under the financial restrictions, so the degree of relative poverty in disposable income levels has been worse (or higher) than the degree of relative poverty in market income levels comparing to OECD average. The second part of this paper, the section 6, deals with the problem of portfolio selection in the imcomplete financial markets. The risk taking behaviors are not necessarily advisable in Japan.