著者
深谷 公宣
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.122-136, 2006-12

英国の演劇評論家マーティン・エスリンは、サミュエル・ベケットの戯曲を「不条理演劇」の範疇に組み入れた。エスリンの言う不条理演劇とは、従来の物語構造を否定し、人間存在の主体性やその形而上学的根拠が崩壊した状況を描く戯曲である。だが、エスリンの議論は、ベケットの戯曲の特徴を、主体性を肯定する実存主義の視点から照射するため、あいまいさを残している。また、エスリン以来、ベケット批評の領域では不条理演劇という名称がひとり歩きし、この名がはらむあいまいさは解消されていない。エスリンと異なり、ベケットの作品における主体性の崩壊現象を的確に捉えた論者/演劇人が存在してはいるものの、彼らの考えはあまり議論されずにいる。以上を踏まえ、本論では、エスリンを含む主な論者/演劇人の議論を主体性というモチーフの面から再検証し、ベケット批評の領域で展開されてきた不条理をめぐる諸説の整理を行う。その結果、ベケットの作品解釈において、登場人物の主体性を否定しきれないエスリン以来の議論と、主体性を否定する議論との差異を明らかにし、不条理演劇という語の持つ意味に新たな認識の枠組みを提示する。
著者
今村 律子 乾 眞寛 徳島 了 花沢 明俊 坂元 瑞貴 山本 勝昭 磯貝 浩久
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.105-116, 2014-04-25 (Released:2017-09-02)

本研究では,サッカー選手を対象とし,有効視野の範囲110°と生理的視野180°の広範囲で視覚刺激が呈示された場合に,視覚情報の獲得がどのように行われているのかを注視点距離から検討することを目的とした.対象者から3mの半円上にモニターを設置し,正面,有効視野110°位置,生理的視野180°の3つの視覚刺激条件において,指押し課題と全身反応課題の2つの反応形態の測定を実施した.その結果,呈示条件における注視点距離に差は見られなかった.しかし,反応時間と注視点距離の関係を検討した結果,反応形態において,全身反応課題では,注視点が長いと反応時間が速いという関連が見られた.また,指導者によるサッカー選手としてのパフォーマンス評価の順位は,全身反応課題においてすべての条件に注視点距離と有意な相関が見られたため,注視点距離が長い選手は「周りが良く見えている選手」として評価されている可能性があることが示唆された.
著者
寒野 徹 高橋 俊文 渕上 靖史 船田 哲 岡田 崇 東 義人 山田 仁
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.218-222, 2018 (Released:2019-07-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2

【目的】寝たきり患者の尿路結石の対処法は定まっていない. 閉塞性腎盂腎炎治療後の寝たきり患者の外科的結石除去術の安全性と効果を明らかにすることを目的とした. 【対象と方法】2010年以降に閉塞性腎盂腎炎で入院した80例を対象とした. 術後全生存期間と腎盂腎炎再発を起こさない割合をカプランマイヤー法で解析した. 【結果】67例において閉塞性腎盂腎炎治療後に結石外科的治療 (TUL49例, PNL8例, ESWL7例, 腎摘4例) を施行した. 年齢中央値は81歳, 女性の割合は69%であった. 周術期合併症は18例 (27%) に認めた. 3年の全生存率は78%, 腎盂腎炎非再発率は69%であった. 【結語】閉塞性腎盂腎炎治療後の寝たきり患者の手術は合併症率の増加を認めるものの手術可能であった. 腎盂腎炎の再発は3年で約30%認めた.
著者
庄古 知久 寺本 直弥 千田 篤 漆畑 直
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.387-390, 2017

<p> 16歳の男性がバイク走行中にマンホールの蓋で滑り転倒し投げ出され, 救急車で搬送された. 全身に打撲痕はなく, 骨折もなかった. 造影CT検査にて両側の腸骨筋腫脹と造影剤の血管外漏出を認めた. バイタルサインは安定しており, 保存療法を選択した. 3日目に左下腿部のしびれを訴えたが翌日には消失した. 事故の状況から, バイク転倒時に両股関節が急激に過伸展し腸骨筋に血腫を生じたと推測された. 外傷による腸骨筋を含む腸腰筋血腫は, ショック症状がなく, 大腿神経麻痺の進行がなければ, 保存的な治療を行うことが妥当である.</p>
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.729, pp.70-73, 2002-10-14

乳白色の巨大な立方体が二つ並んでいる。10m四方の広さの工房を二段重ねにした2階建ての施設だ。学生たちが彫塑実習に利用する。制作活動に適した均一な光と明るさを得るため,東西の壁全面にポリカーボネート板を使っている。ヌードデッサンの機会もあることから,外部の視線を遮る必要もあった。
著者
三田 紀房
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.434, pp.118-120, 2018-08

801958年、岩手県生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、西武百貨店を経て父の経営する洋品店を兄弟で引き継ぐが軌道に乗らず、30歳でマンガ誌の新人賞に応募・受賞し漫画家に。代表作に『ドラゴン桜』『インベスターZ』『クロカン』など。

1 0 0 0 OA 南極の地名

著者
守田 康太郎
出版者
Japan Cartographers Association
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.7-9, 1965-09-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
1
著者
熊王 康宏 鈴木 翔 神宮 英夫
出版者
日本官能評価学会
雑誌
日本官能評価学会誌 (ISSN:1342906X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.114-118, 2010
被引用文献数
1

The relation among evaluations in eating quality affects one's "desire to purchase", "sense of safety", and "sense of well-being". The purpose of this study was to clarity the relation among evaluations of the eating quality of raw ham, as well as to determine how the relation influences one's "desire to purchase", "sense of safety", and "sense of well-being." In this study, the samples were four raw hams which were very similar in terms of chemical composition, texture, and price. The result of principle component analysis indicated the importance of the "general evaluation by 'umami' and good texture" and "a moist texture as judged by the degree of saltiness" of the ham. The result of discriminant analysis indicated that the "general evaluation by 'umami' and good texture" affected one's "desire to purchase" and "sense of safety", and the "moist texture as judged by the degree of the saltiness" affected the "sense of well-being." In other words, the relation among evaluations of eating quality was affected by the purchasing evaluations.
著者
木本 周平
出版者
東京都立大学哲学会
雑誌
哲学誌 (ISSN:02895056)
巻号頁・発行日
no.63, pp.29-55, 2021
著者
古屋 充子 蓮見 壽史 矢尾 正祐
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-6, 2021-05-10 (Released:2021-05-13)
参考文献数
36

遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌(hereditary leiomyomatosis and renal cell cancer; HLRCC)は皮膚平滑筋腫,子宮筋腫,腎細胞癌を三主徴とする遺伝性疾患である.20世紀前半から家族性発症の皮膚平滑筋腫に関する症例報告はあったが,1973年にReedらが常染色体優性遺伝性に皮膚平滑筋腫や子宮平滑筋腫(または子宮平滑筋肉腫)を発症する2家系を報告したことにちなんで ‘Reed症候群’と呼ばれた.2001年にはReed症候群家系における腎細胞癌発症が報告され,HLRCCの概念が形成されるようになり,2002年には責任遺伝子がクエン酸回路酵素のフマル酸ヒドラターゼ(fumarate hydratase; FH)であることが判明した.HLRCC患者における腎細胞癌は高悪性度で転移しやすく,AYA世代や未成年にも発症するため,集学的治療や家族ケアが必要となる.
著者
川島 信吾 植田 広 佐藤 恒久 鈴木 興太 鈴木 祐二 山口 裕充 内崎 紗貴子 鈴木 明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.816-819, 2010-09-15

麻酔科関連の学会では一つの目玉になる企画として,学術機器展示がある.機器展示場は最新機器の特徴や情報を得る絶好の場であるが,研修医や若手医師のなかにはそれぞれの企業とのやり取りが苦手で有効に活用できていない場合がみられる.ベテランの医師でも効率よく回れないブースの配置もある.そこで,日本臨床麻酔学会第29回大会では,初の機器展示場のラウンドツアーを企画・実行した.担当のモデュレータが,各企業ブースへ案内をするツアーである.参加者には高評価をいただき,今後も継続してよい企画であると考え,反省点も含めて紹介する.
著者
三木 那由他
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.33-48, 2021

<p>In the process of presenting his theory of conversational implicature, Paul Grice (1975) segmented cases of conversational implicature into three groups: Group A, where no maxims are violated; Group B, where the violation of a maxim is to be explained by the supposition of a clash with another maxim; and Group C, which involves the exploitation of a maxim. Yukiko Kawaguchi, however, claimed in her 2001 article that this categorization is ill-grounded. This paper proposes, in opposition to Kawaguchi, an interpretation of Grice's theory of conversational implicature which accords with his treatment of conversational implicature and provides reasonable evidence in support of his categorization of it.</p>
出版者
鹿児島県立図書館
巻号頁・発行日
vol.21 (小松帯刀伝・薩藩小松帯刀履歴・小松公之記事), 1980
著者
加茂 文吉
雑誌
第29回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
pp.195-196, 2021-10-18

3次元触覚/力覚インターフェースデバイスを用いてエレキギターピッキング奏法練習ツール PickFeel の開発を行った.15 名の被験者に PickFeel を活用したギターレッスンを行い,アンケートによる主観評価と慣性運動センサデバイスを装着し運動データでの解析を重ねる事で,これまでギター講師が指導不可能であったピックが弦に衝突した時の体感を,バーチャルリアリティ技術を活用して伝達させることにおいて一定の効果が示せたことを報告する.