著者
三戸 浩
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第88集 公共性と効率性のマネジメント─これからの経営学─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.65-71, 2018 (Released:2019-06-17)

CSR活動を考慮した経営・企業活動は当然のものとなってきている。また同時に,バブル崩壊後の日本経済が復調せず,「資本主義の行き詰まり」が世界的に見られるようになり,新しい成長分野,新しい事業が要請されている。そのような背景の中でCSVが生まれてきたと理解できよう。CSR(社会的課題)と利潤獲得,すなわち「公共性と効率性」の関係は,相反するものではなくなり,企業は積極的にCSRをわが責務として受け入れ,実行してゆくことが当然となる。「公共性」を「私企業」が担うという動向は,公企業の民営化,そしてsocial enterpriseやsocial businessなどさまざまな領域で見受けられるようになっている。現代社会を健康に維持・繁栄させる役割・機能を持つ「社会的器官」となった現代大企業の目的がCSRであるとするなら,その「社会性(公共性)」をチェック&コントロールするのがコーポレート・ガバナンス,「組織存続=効率性」を担うのがマネジメントであり,両者相まって企業は社会的器官として維持発展が可能になるであろう。
著者
大谷 龍治 當別當 洋平 米田 浩平 泉 智子 安岡 辰雄 宮島 等 小倉 理代 弓場 健一郎 高橋 健文 細川 忍 岸 宏一 日浅 芳一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.657-663, 2016 (Released:2017-06-15)
参考文献数
20

症例は60歳, 男性. 2015年4月, 夜間嘔吐後に心肺停止状態となり, 救急要請された. 救急隊到着時は心室細動 (ventricular fibrillation ; VF) で, 自動体外式除細動器 (automated external defibrillator ; AED) にて除細動後, 自己心拍が再開し当院に搬送された. 来院時, 心電図にJ波はみられず, 下・側壁誘導にST低下を認めたものの心臓超音波検査で壁運動異常はみられなかった. 意識レベルの低下が遷延しており, 呼吸状態も不安定なため, 鎮静・気管内挿管下に低体温療法を開始した. 治療開始30分後からVFを生じ, 体温が35°C以下に低下後は電気的ストームとなった. 抗不整脈薬による抑制効果はなく電気的除細動を繰り返した. 12誘導心電図を再検したところ, 初診時には認めなかったJ波が広範な誘導に出現しており, 低体温によって顕性化したものと判断した. 低体温療法を中止し, イソプロテレノールの持続静注を開始したところ, 速やかにJ波は消失し, VFの抑制が得られた. 体温が正常化後は, イソプロテレノールを中止してもJ波は出現せず, 以後VFを生じることはなかった. 心肺蘇生後症例の低体温療法時には, J波が顕性化してVFを生じる症例があることに注意すべきと思われた.
著者
永田 幸志 岩岡 理樹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.355-360, 2017

<p>丹沢山地の札掛地区(神奈川県愛甲郡清川村)において,継続的に実施されているニホンジカ(<i>Cervus nippon</i>)の生息密度調査の長期データを用いて,生息密度の経年変化と捕獲との関係を検討した.調査は,毎年冬期(12月)と春期(4月)に区画法により実施した.既報の2002年12月から2007年4月までのデータに,あらたに2007年12月から2015年4月までの調査結果を加え,連続する13年間について分析を行った.神奈川県の丹沢山地では2003年度からニホンジカ管理計画に基づく管理捕獲等の事業が実施されているが,本調査地においては2007年度以降に同管理捕獲が実施された.冬期,春期ともに,捕獲実施後の生息密度の平均値(冬期6.5頭/km<sup>2</sup>,春期3.3頭/km<sup>2</sup>)は,捕獲実施前の生息密度の平均値(冬期15.2頭/km<sup>2</sup>,春期11.0頭/km<sup>2</sup>)と比べて有意に低く,管理捕獲により,調査地に生息するニホンジカの個体数が減少したことが示唆された.</p>
著者
小田 祐一郎 日髙 宗明 鈴木 彰人 おだ ゆういちろう Yuichiro Oda
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 = Journal of Kyushu University of Health and Welfare (ISSN:13455451)
巻号頁・発行日
no.18, pp.73-77, 2017-03

Cisplatin (CDDP) is a platinum complex and is used for treatment of solid tumors. CDDP administeredintravenously is ingested into the cells by copper transporter 1 (CTR1). Silver sulfadiazine (AgSD) is atopical antibiotic that prevent wound infection. Ag is reported to inhibit the mechanism of CTR1. Weexamined transporter-mediated drug-drug interaction using CDDP and AgSD in rats. The serumconcentrations of platinum in blood and in kidney and liver tissues were measured. A blood test wasperformed to observe the interactive effects of CDDP and AgSD. AgSD pretreatment significantlydecreased the concentrations of platinum in blood and in kidney tissue compared to the control. AgSD alsodiminished the CDDP-induced abnormalities of serum creatinine level but did not affect CTR1 expression.In contrast, no significant change was observed in platinum concentration in liver tissue after AgSDpretreatment. However, the level of alanine aminotransferase increased after administration of CDDPwith or without AgSD. These results suggest that CDDP administered intravenously interacts with AgSDapplied to region of wound, in association with changing the platinum concentrations in blood and tissuedistribution. The interactive effects of CDDP may relate to modulate the function of platinum transferringvia CTR1 in the presence of Ag.
著者
長瀬 博 沓村 憲樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.846-850, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
23

鎮痛作用に関与するオピオイド受容体にはμ、δ、κの3つのタイプがあり、依存性はμ受容体を介して発現する。長瀬らは、独自のモルヒナン構造を母核としたκ受容体選択的作動薬ナルフラフィンの創出し、難治性そう痒症治療薬として上市に成功した。また、ナルフラフィンを用いて、なぜ引っ掻くと痒みが鎮まるのかという長年の謎の解明に迫った。さらに、鎮痛薬として開発したδ受容体作動薬の光学異性体が、アトピー性の痒みに関与するMRGPRX2に作動活性を示す事も見出した。
著者
飯村 真樹 鈴木 勝也 萩谷 恵二 寺門 正二 清水 秀昭
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.445, 2010

【はじめに】<BR>現在の病院運営は全国的に非常に厳しいものとなっている。思うように医業収益が伸びない状況であれば、それ以外の部分で対策を講ずることも必要である。当院で実際に運用している取り組みを紹介する。<BR>【経過】<BR>当院の所在する行方市でオムツを処分する場合、一般家庭から排出されれば一般ゴミとして処理されるが、病院から排出すると感染性医療廃棄物扱いとなってしまう。平成21年度における感染性医療廃棄物の処理費用 約970万円のうちオムツ処理代は約260万円、27%を占めている。少しでもオムツの処理費用を埋めるような対策が必要と考えた。<BR>【方法】<BR>これまでは入院患者家族にオムツを用意してもらっていたが、家族の了解を得た上で、農協の運営する病院内売店で用意したオムツを使用してもらうこととした。使用したオムツ代は枚数に応じて売店から患者へ直接請求し、入院会計精算時に院内の農協出張所で併せて支払っていただいた。売店には使用前のオムツを保管する倉庫を貸すこととし、払い出したオムツの売り上げ金額の20%を倉庫賃貸料として毎月徴収した。<BR>【結果】<BR>売店からは月平均7~8万円程度の倉庫賃貸料を徴収できている。オムツ処理代が減ったわけではないが賃貸料収入が単純計算で年間100万円程度得られた計算になる。オムツの処理費用を埋める対策として効果は十分であった。<BR>【考察】<BR>これまで患者家族からは「どんなオムツを用意してよいか分からない」「買いに行く暇がない」などの意見があったので導入後は好評のようだ。オムツ交換作業の負担も軽減しスタッフの評価も高く、また経費削減の意味でも効果は十分であったと思われる。ただし、月数千円から数万円にもなる棚卸差損を減らすことが今後の課題である。<BR>【まとめ】<BR>経費削減につながるような対策を今後も検討していきたいと思う。<BR>
著者
王 笑寒 Oky Dicky Ardiansyah PRIMA 伊藤 久祥 今渕 貴志 蛇穴 祐稀
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.705-706, 2015-03-17

近年,パンフレットや商品などに対する顧客の注目部分を計測し,その分析結果をマーケティングへ応用することが盛んに行われている.注目部分の計測において,複数人の視線を同時に推定したり,常に移動する人物の視線を追尾することは困難である.本研究では,単眼カメラを利用して,様々な照明条件下での複数人の顔向きを推定し,3次元仮想空間においてそれぞれの顔向きのベクトルを延長して対象の商品にヒートマップを描画する技術を開発し,実時間における顧客の注目領域を収集するシステムの開発を試みる.実験の結果,通常の65°画角を持つWebカメラにより最大3人の顔向きと注目領域のヒートマップを実時間で生成することに成功した.
著者
山本 弘
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.17, no.79, pp.227-232, 1962

Flocking of <i>Delichon urbica</i> around a big abandoned chimney in Miyako City, Iwate, was observed during 1959-1961. There were no distinct correlations with weather, food, air current or breeding conditions, other than the fact that they gathered on calm fine mornings (with wind velocity less than 3), and increased in number from July to September and October. They seemed only enjoy-a sociable flocking around a distinct object on the way of migration.
著者
高橋 昂輝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

従来,都市の移民街に関する研究は,居住,事業所,コミュニティ施設の分布など,エスニック集団内部の物理的構成要素から捉えられてきた。しかし,近年,欧米の諸都市ではジェントリフィケーションが進行し,移民街をはじめとしたダウンタウン周辺に対するホスト社会住民の居住選好が指摘されている。すなわち,近年における移民街の変容を明らかにするためには,エスニック集団内部の変化のみならず,集団外部(ホスト社会)の動きと連関して考察することが求められている。また,ジェントリフィケーションの進行過程において,エスニック集団とジェントリファイアーは空間的に混在すると考えられ,両者の関係性に注目することにより,都市空間の変容をより詳細に描出できると考えられる。<br> トロントにおいても,ダウンタウン周辺部に移民街が形成されたが,近年,ホスト社会住民の都心回帰現象が進展している。その結果,ダウンタウンに隣接するリトルポルトガルとその周辺では,既存のポルトガル系住民と近年流入した非ポルトガル系住民の混在化が進行している。商業地区であるリトルポルトガル内部においても,ポルトガル系から非ポルトガル系へと経営者の交代が進行し,現在,両者は域内に併存している。本発表ではリトルポルトガルの主要なアクターである事業所経営者に注目する。現地でのインタヴュー,質問票調査などによって得られた資料をもとに,個人属性にくわえ,経営者間のソシオグラムを作成することにより,社会関係を分析し,ジェントリフィケーションに直面するリトルポルトガルの動向を明らかにする。なお,現地調査は2012年10~11月,および2013年7~10月におこなった。<br> リトルポルトガルを含むトロント市中心西部は建築年代の比較的古い半戸建住宅(semidetached house)が集積し,従来,ホスト社会住民の関心を引かなかった。しかし,近年における社会的多様性,古い建築様式への肯定的評価,通勤時間縮減への志向など,都心周辺部への価値観の転換にもとづき,ホスト社会住民は同地区に流入している。これにより,リトルポルトガル周辺の地価は2001~2006年の間に約1.5倍上昇し(Statistics Canada),2006年以降,さらに高騰している。地価の上昇は土地所有者にとって固定資産税の増加をもたらすとともに,賃借者にとっても家賃の上昇を引き起こす。すなわち,1960年代以降同地区に形成されたポルトガル系人の集積形態はホスト社会住民との関係性によって変化しつつある。<br> リトルポルトガルに立地する非ポルトガル系事業所32軒のうち,28軒は2003年以降に出店した。非ポルトガル系経営者はポルトガル系経営者が閉鎖した空き店舗に開業するため,両者は域内にモザイク状に分布する。また,各経営者に「域内で最も親しいと思う経営者」を最大3人答えてもらい,得られた回答からリトルポルトガル内の社会関係を示すソシオグラムを作成した。分析の結果,ポルトガル系・非ポルトガル系の両経営者集団はリトルポルトガルという同一の空間に併存する一方,それぞれが社会的には異なるネットワークを形成していることがわかった。<br> こうした両経営者集団の社会的な分離状態は,地域自治組織であるBIA(Business Improvement Area)の運営において,顕在化する。前身の地域自治組織が設立された1978年以降,ポルトガル系経営者が組織の代表を務めてきたが,2012年において非ポルトガル系経営者の中心的人物であるK氏が代表に就任した。K氏の就任以降,BIAの委員はポルトガル系から非ポルトガル系中心の人員構成へと変化し,まちづくりにおいてもポルトガル系に特化しないフェスティバルの開催などが企画されるようになった。K氏が代表に就任した初年度にあたる2012年には,ポルトガル系経営者の反対により,フェスティバルの開催は実現に至らなかった。K氏は6名の非ポルトガル系経営者から親しい人物として支持され,非ポルトガル系社会の中では最も高い中心性を示す。しかし他方,同氏はポルトガル系社会のネットワークには接続しておらず,地域自治組織の運営において課題を有しているといえる。ジェントリフィケーションに直面するリトルポルトガルを社会関係の観点から分析することによって,今日における多民族都市トロントの展開を端的に説明することができる。
著者
岡西 靖 イブラヒム リズカ オクトラ 稲垣 景子 古屋 貴司 佐土原 聡
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.16, no.34, pp.1205-1209, 2010
被引用文献数
1

There are Voluntary disaster prevention organization and Local disaster management center in &ldquo;Mutual-help efforts&rdquo; system in disaster. This purpose of study is the examination of the state of &ldquo;Mutual-help efforts&rdquo; system in disaster by analysis of the exchanging views with committees of local disaster management center in Hodogaya Ward, Yokohama City. As future&rsquo;s direction of &ldquo;Mutual-help efforts&rdquo; system, it is necessary to clarify each role of voluntary disaster prevention organization and local disaster management center and promotion of a measure with redundancy in local disaster prevention.
著者
岸田,久吉
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.43(508・509・510), 1931-03-15
著者
船越 公威 新井 あいか 永里 歩美 山下 啓 阿久根 太一 川路 貴代 岡田 滋 玉井 勘次
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.157-165, 2012 (Released:2013-02-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1

鹿児島市で2009年に定着が確認されたフイリマングースHerpestes auropunctatusの食性と在来種への影響を把握するため,消化管内容物と糞を用いて食性分析を行った.分析した115頭のそれらから,哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,昆虫類,多足類,甲殻類,植物の果実の破片が検出された.周年にわたる絶対出現頻度は,動物質では昆虫類と土壌動物の割合が高く,次いで爬虫類の割合が高かった.特に,昆虫類の絶対出現頻度は95%と非常に高く,昆虫類に強く依存していることが分かった.また,季節別の相対出現頻度をみると,冬季から春季にかけては,哺乳類や鳥類が摂食される割合が高くなっていた.これは,昆虫類や両生・爬虫類に加えて,哺乳類や鳥類も重要な餌資源になっていることを示している.また,幼獣は哺乳類や鳥類を摂食していなかった.今後は,駆除後の在来種の回復を把握するため,本調査地における被食動物相の推移を調査する必要がある.
著者
大庭 正美
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 = Bulletin of Seinan Jo Gakuin University (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-11, 2021-03-31

今回の学習指導要領改訂のキーワードの一つにカリキュラム・マネジメントがある。その中核的な役割を総合的な学習の時間が担うと明示された。創設以来20年が経つ総合的な学習の時間の実践課題を踏まえ、あらためて生徒が主体的に取り組む学習とするための指導の改善が求められている。本稿では、カリキュラム・マネジメントの考えを踏まえ、具体的な実践事例を基に、特別活動との関連を中心に考えていくこととする。主に学校行事やキャリア教育との関連について考察・評価しながら、さらなる充実に向けての考え方や指導の工夫についても提案する。生徒にとって意味のある総合的な学習の時間を生み出すには、その基盤としての特別活動の充実が欠かせない。教育課程全体の力を高め、将来「予測が困難な時代」を生きる生徒に必要な資質能力を育成する上で、総合的な学習の時間と特別活動との関連は今後も一層重視すべきと考える。