著者
吉岡 京子 藤井 仁 塩見 美抄 片山 貴文 細谷 紀子 真山 達志
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.876-887, 2021-12-15 (Released:2021-12-24)
参考文献数
39

目的 本研究の目的は,保健師が策定に参画した保健医療福祉計画(以下,計画とする。)の実行段階における住民との協働に関連する要因を解明し,地域全体の健康レベルの向上に貢献できる保健活動への示唆を得ることである。方法 研究の概念枠組みとしてPlan-Do-Check-Act(以下,PDCAとする。)サイクルを用いた。本調査で焦点を当てた計画の実行段階は「Do」に相当するため,調査項目は「Plan」の段階の内容を中心に構成し,計画の実行段階における住民との協働をどの程度取り入れたか,回答者の属性,計画策定への参画状況,組織要因,計画策定の際に用いた方策を含めた。調査対象者は,地方自治体に勤務する常勤保健師のうち,保健師活動指針が発出された2013年以降に計画策定に参画した経験を有する者とした。協力意思を示した220地域(36都道府県,41保健所設置市,153市町村)に2,185人分の調査票を2019年10月~11月に郵送した。二項ロジスティック回帰分析により,住民との協働を取り入れたことと独立変数との関連について検討した。結果 1,281人から回答を得た(回収率58.6%)。2013年以降に計画策定の経験がなかった203人と欠損値の多かった50人を除く1,028人について分析した(有効回答率47.0%)。計画の実行段階で住民との協働を「全く取り入れなかった」と回答した者は125人(12.2%),「あまり取り入れなかった」者は293人(28.5%),「少し取り入れた」者は482人(46.9%),「とても取り入れた」者は128人(12.4%)だった。二項ロジスティック回帰分析の結果,係長級以上の職位に就いていること,健康増進計画の策定への参画,住民へのアンケート調査やグループワークの実施,ワーキンググループや計画策定委員会の委員への住民の参加,すでに発表されている研究成果の活用,ターゲット集団の設定および計画実施の進捗管理の実施が,住民との協働を取り入れたことと有意に関連していた。結論 保健師が,計画の実行段階における住民との協働を進めていくためには,地域の健康・生活課題解決に向けて住民の声やエビデンスに基づく計画を策定し,確実に実行されるように進捗管理を行う必要性が示唆された。
著者
西田 みゆき 白幡 峰子 鈴木 紀子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、小児外科的疾患患者が「性」を含めて自身の疾病を理解しその子なりの自立した生活が送れるように支援することであった。その目的達成のために①「小児外科的疾患患者に対する性教育」について現状把握、問題の明確化、② 当該患者の性教育を中心とした疾患理解のニーズの抽出とプログラム骨子作成、③「小児外科的患者における性教育を中心とした疾患理解のためのプログラム」作成を行った。その結果、性教育を含め系統だった疾患の説明は受けておらず、早期からの病名告知を望んでいた。一方で、本邦における性教育の現状を調査し性教育に必要な要素を抽出した。この結果を踏まえてプログラムを作成した。
著者
多和田 裕司
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.25-41, 2017

本稿は、マレー系ムスリムの行動についての分析をもとに、現代社会においてイスラームがどのように実践されているかを示すことを目的としている。イスラームは、おこなうべきこと、おこなうことが許されていること、禁じられていることが明確に区分されている宗教である。しかし現代社会においては、この区分についてムスリムの間で様々に意見が分かれる事柄が数多く存在する。これは、とくにイスラーム教義と非イスラーム的価値との境界線上にある事柄に顕著である。そのひとつが、ムスリムがクリスマスの祝祭に参加できるか否かをめぐっての論争である。ムスリムのなかには「メーリー・クリスマス」という祝賀を述べることすら禁じる者がいる一方で、参加することを問題視しない者も多い。本稿では、マレーシアにおいて近年交わされたムスリムによるクリスマス行事への参加をめぐる論争を取り上げ、イスラームの権威者および一般のムスリムの意見について検討する。結論として、マレー系ムスリムの行動はイスラーム教義だけではなく、イスラームの外側に派生する多民族性や消費社会における経済的論理といった要因によっても、形作られていることを指摘する。
著者
室田 浩之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

痒みは時に生活の質を大きく損なわせる皮膚症状の一つです。特に多くの方が経験する「温もると痒い」という症状の多くが治療に抵抗性を示します。温熱が痒みを誘発するメカニズムはまだ十分に理解されていないため、本研究では皮膚の温感に影響を与える神経栄養因子アーテミンが温もると痒い現象に関わるかを検討しました。本研究よりアーテミンの皮膚への蓄積は脳を興奮させ、全身の温熱過敏を誘発する結果、全身に温もると痒い現象を生じさせる、いわゆる「痒がる脳」のメカニズムの一旦が解明されました。この成果は「温もると痒い」症状に対する新しい治療の開発につながると期待されます。
著者
Melley Christopher めりー くりすとふぁー メリー クリストファー 沖縄キリスト教学院大学人文学部英語コミュニケーション学科非常勤講師・Ph.D(哲学)
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 = Okinawa Christian University Review (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-57, 2017-02-10

多くの他大学がそうであるように沖縄キリスト教大学もまた内外的に深刻な難問に直面している。この論文はこうした深刻な難問を概説し、人々の多様性を育てる学びの実行可能な中心的存在とその機能を果たすということがどのようなことを意味するのかを根本的に再考し、そして、持続可能な改革と洗練された改善法を採用し、各学部によって見出された本大学が保有する学術的強みを活かすことにより、沖縄の未来の貴重な一部を本大学が担うという可能性を高める具体的な手順を提案する。
著者
寺山 正一 瀬川 明秀 大屋 奈緒子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1097, pp.102-107, 2001-06-25

最近は物騒な世の中である。クリスマスイブの夜、見知らぬ男が玄関先に立ち、ケーキ片手に呼び鈴を押しているのを目撃したら、「すわ一大事」と騒ぎたくなるのが健全な感覚だろう。 ところがこれが、普段通っている馴染みのスーパーマーケットで良く見かける温厚そうな店長さんだったとしたら…。
著者
近藤 菜緒 小宮 加容子 平尾 美唯 畠中 彩
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>本稿では、2018年12月15日(土)に実施した「とどけよう!プレゼント」の活動報告と、その活動結果を通して行った遊びの導入と終わりの効果についての考察を述べる。今回実施した遊びは子どもたちに主体的に遊んでもらうことを目的に、「サンタさんのお手伝いをしてください」という課題を遊びに取り入れた。また、遊びの導入と終わりが遊びにもたらす効果についての考察を行なった。その結果、導入と終わりは子どもを遊びの世界に入り込ませ、気持ちよく終わらせるための重要なプロセスであることがわかった。</p>
著者
奥田 麻衣 石田 三樹 越智 泰樹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.499-500, 2008-03-13
参考文献数
2

広島大学経済学部の石田教授の授業では2002年後期から従来型の対面授業を補完するものとしてWebCT導入し始めた。その効果的な運用を模索する中でAdobeシステムズのACROBATが大いに役立った。本稿ではACROBATの利用によって得られた学習効果の向上と残された課題について報告する。
著者
川喜田 二郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.180-181, 1961
著者
小宮 加容子 福田 大年 高橋 由衣 黒神 信実
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

本研究チームでは2011年8月実施をかわきりに、年間3~4回の遊びイベント開催や環境カルタ制作など、子どもや遊びに関するものづくりの活動を行っている。本報告では、2011年12月と2013年12月の2回、札幌市内で開催された子育て家族を対象にしたイベント「SORAこそだてフェスティバル(札幌コンベンションセンター)にて実施した「まねっこサンタさん」について遊びの紹介をする。さらにその成果として、各遊び場・内容での子どもの様子を、子どもの年齢、集団の構成、遊びの形態の視点から考察する。
著者
池内 裕美
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.186-193, 2017

「ホーディング」(hoarding) とは,「他の人にとってほとんど価値がないと思われるモノを大量にため込み,処分できない行為」と定義され,1990年頃から臨床心理学や精神医学の領域において,特に強迫性障害 (OCD) の観点から多くの研究がなされている。しかしその一方で,ホーディング自体は誰にでも,すなわち非臨床的な人にもみられる,極めて日常的な行為であるという主張もある。<br> そこで本論では,より重篤な強迫的ホーディングと非臨床群を対象とした日常的なホーディングの両方に焦点を当て,ホーディングをめぐるさまざまな課題について既存研究を基に概説する。より具体的には,精神疾患や幼少期の家庭環境といったホーディングと関連する諸要因,ため込む人の特性,ため込む理由やその対象,さらにはホーディングのもたらす諸問題等について取りあげる。そして,最後にホーディングに陥らないための予防や対策について考察する。