著者
星野 直 有本 友季子 仲野 敦子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.12-16, 2014

  2 歳 3 か月の男児。結合型 7 価肺炎球菌ワクチン(PCV7)4 回接種済み。いびき,無呼吸に対し,全身麻酔下にアデノイド切除,口蓋扁桃摘出術を施行した。周術期抗菌薬は ampicillin を静注で使用(当日は術直前および10時間後に静注)。POD1 に40℃の発熱を,POD2 に痙攣を認めた。血液,髄液より肺炎球菌が分離され,同菌による細菌性髄膜炎と診断。急性期に集中治療を要したが,後遺症なく治癒した。髄液由来肺炎球菌は,血清型35B(PCV7, 13非含有血清型)の gPRSP であった。本手術後の髄膜炎は極めて稀だが,菌血症は高頻度に認められる。菌血症から髄膜炎への進展を予防するために,術前に PCV 接種を完了しておくことが望ましい。また,本症例のようなワクチン非含有血清型肺炎球菌や,その他の細菌による術後髄膜炎発症の可能性もあり,菌血症を想定した用法・用量による周術期抗菌薬の投与が必要である。
著者
杉本 海晴 監物 万里香 金子 佳世 塚本 康子
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.56-59, 2018-03

本研究は、看護女子大学生4 年生に焦点を当て、1)「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種」「子宮頸がん検診受診」の状況を明らかにし、2)「HPVワクチン接種決定者(自分/母親)」「HPVワクチン接種の有無」「子宮頸がん検診受診の有無」で、子宮頸がんに関する基礎知識の平均得点を比較し、検討することを目的とした。71名に質問紙を配布し69名から回答を得た。結果、HPVワクチンの接種率は73.9%、子宮頸がん検診受診率は17.4%であった。HPVワクチン接種年齢は15歳1名(2.0%)、16歳11名(21.6%)、17歳15名(29.4%)、18歳12名(23.5%)、19歳2名(3.9%)、20歳7名(13.7%)、不明3名(5.9%)であり、公的助成の対象でない年齢時や大学に入学してから接種をした学生もいることが明らかとなった。HPVワクチン接種済みの学生51名のうち、ワクチン接種を「母親」が決定した者は27名(52.9%)、「自分」で決定した者は23名(45.1%)、「不明」1名(2.0%)であった。ワクチン接種決定者が「自分」である場合、関連基礎知識の平均得点は3.39点と、「母親」がワクチン接種を決めた場合の平均得点2.48点に比べ、有意に高かった(p<0.05)。「自分」でワクチン接種を決定した場合は、「母親」による決定に比べ、基礎知識の保持状況が良好であったことは、本研究により得られた新たな知見である。子宮頸がんを自らの問題として捉え、必要な知識を所持し、自ら正しい予防行動を取れるよう、青年期からの啓発教育の必要性が確認された。
著者
日戸宗太郎著
出版者
日戸宗太郎
巻号頁・発行日
1953
著者
庭野 晃子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.105-114, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
28

保育者不足が問題となっている。その要因として保育者の離職率の高さが指摘されているが,離職を規定する要因について統計的な手法を用いて検証した研究はほとんどない。本研究は,保育従事者の離職意向を規定する要因について検証し離職防止の対策を提案することを目的とした。新任からベテランの保育従事者574名を調査対象としWEBアンケートを行った。重回帰分析の結果,保育従事者の離職意向を規定する要因は,年齢,設置主体,給与,1か月の平均勤務日数,勤務の融通等の変数と有意に関連していた。離職を防止する対策として,「保育士等の処遇改善」を継続することや仕事と家庭の両立をしやすい柔軟な勤務体制を構築していくことを提案した。
著者
佐々木 峰子 倉本 哲嗣 岡村 政則 平岡 裕一郎 藤澤 義武 秋庭 満輝
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.352, 2003

抵抗性クロマツのF1から高い抵抗性を持つ個体群を若齢で選抜し,さし木によって増殖する手法の確立を目的とした研究を進めている。この際,さし木の採穂台木となる人工接種済みの個体群において,さし木発根性が保たれていることを確認する必要がある。そこで,異なる強さの病原力を持つ材線虫を接種し,選抜された個体群のさし木発根性を調査した。 材料は抵抗性クロマツ5家系の2年生苗である。3アイソレイトの材線虫を用いて接種を行い,生き残った各個体をさし木した。分散分析による結果から,強い淘汰圧をかけて選抜した集団であってもさし木発根性はあまり影響を受けないこと,F1の発根率は母樹によって有意な差があることがわかった。
著者
南田 勝也
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.382-384, 2007-12-31 (Released:2010-04-01)
著者
熊沢 由美
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.109-121, 2017-06-05 (Released:2019-08-30)
参考文献数
27

明治初期に西洋医学が普及する過程では,医師数など,さまざまな混乱や問題が考えられる。本稿の関心はこうした時期の医療保障にあり,医療保障の重要なアクターとしてキリスト教の医療伝道に注目した。1875〜83年まで新潟県に滞在した宣教医パームを事例に,その意義を考察した。 新潟県の事例から見えてきたのは,西洋医学への移行期における地域の実情であった。医育機関ができても,西洋医は微増に留まった。ドイツ医学にもとづく医育機関の整備は,東京に約10年遅れた。医療関係者や住民の西洋医学の受容の度合いも一様ではなく,地域によっては嫌悪感すら見られた。 パームの医療伝道は,新潟県の人々に西洋医学の受診と医育の機会を提供し,西洋医学の受容を促した。国の政策を補い,医療保障の重要な役割を果たしたと言える。医療伝道の行われた地域があったことは,日本の医療史において記録されるべきことである。
著者
廣瀬 肇
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.508-514, 1998-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
21

耳鼻咽喉科の境界領域として神経内科領域が注目されている。神経疾患に伴う耳鼻咽喉科的症状には多くのものがあるが, ここでは音声障害をとりあげて概説した。音声障害を来す神経疾患のうち, とくにパーキンソン病, 脳血管障害, 運動ニューロン疾患, 小脳疾患, 多系統萎縮症, 重症筋無力症についてそれぞれの音声医学的問題点に言及した。さらに最近, 中枢神経障害に起因するジストニアとして理解されている痙攣性発声障害について, その治療を中心に述べた。
著者
冨岡 展行 高橋 智幸 今井 健太郎 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
no.52, pp.266-270, 2005

2004年9月5日23時57分にM7.4の地震が紀伊半島南東沖で発生した. 震源は南海トラフ沿いに位置しているが, 東南海地震の想定震源域とは異なっていた. この海域で想定されているのはプレート境界型地震であり, これによる津波被害は既に調査済みであるが, 今回のような南海トラフ沿いで発生するプレート内部型の中規模地震による津波は未想定である. よって, 今後の津波防災において今回のような地震津波をどのように取扱うのか検討するため, 各研究機関から発表された断層パラメータを参考にして, 津波の数値計算を実施した. その結果, 大部分の地域でプレート境界型地震による津波の方がプレート内部型によるものより大きくなることが確認された.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア = Nikkei healthcare : 医療・介護の経営情報 (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.374, pp.52-58, 2020-12

対応力強化 次期改定のテーマの中でも、感染症の発生・拡大の防止は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者急増への警戒感が強まっている現在、喫緊の検討課題だ。11月9日および26日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、「日常的な対応が必要…
著者
谷垣 雅之 加藤 真也
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.457-464, 2017-12-30 (Released:2018-12-30)
参考文献数
14

Japan is facing a declining population era. We have lately seen the growing phenomenon of reverse migration to rural areas, the process of “counter-urbanization,” as it is known. This counter-urbanization is recognized as a hope for many local municipalities because they struggles to maintain their scale of population. This analysis attempted to demonstrate economic effects of “Satellite office project”, a remote office in rural area in Kamiyama town through input-output analysis. It is because the project has contributed to increase migrants with information technology skills, which cannot been existed in the town before. The study also simulated future economic possibility of the Satellite office project with other major industries in the town.
著者
谷川 亘 村山 雅史 井尻 暁 廣瀬 丈洋 浦本 豪一郎 星野 辰彦 田中 幸記 山本 裕二 濱田 洋平 岡﨑 啓史 徳山 英一
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.21-31, 2021 (Released:2021-09-07)
参考文献数
34

高知県須崎市野見湾では,白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが,その証拠は見つかっ ていない.そこで本研究では,野見湾内で海底調査を行い『黒田郡』の痕跡を探索した.その結果,海底遺構の目撃情報 がある戸島北東部の海底浅部(水深6m~7m)に,面積約0.09km2の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した. 台地表層は主に薄い砂で覆われており,沿岸に近づくにつれて円礫が多くなった.また,砂層の下位は硬い基盤岩と考え られ,海底台地は旧海食台(波食棚)と推定される.海水準変動と地震性地殻変動を踏まえると南海地震により海食台は 約7m 沈降したと推定できる.本調査では黒田郡の痕跡は発見できなかったが,水中遺跡研究に対する多角的な調査手 法を検討することができた.特に,インターフェロメトリソナーの後方散乱強度分布による底質観察とStructure from Motion(SfM)技術を用いた海底微地形の構築は,今後浅海における水中遺跡調査に活用できる.