著者
松本 晴年 安藤 さえこ 深町 勝巳 二口 充 酒々井 眞澄
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.44, pp.P-75, 2017

【背景】これまでに我々は沖縄県産植物のがん細胞への細胞毒性を明らかにした(Asian Pac J Cancer Prev 6: 353-358, 2005, Eur J Cancer Prev 14: 101-105, 2005, Cancer Lett 205: 133-141, 2004)。芭蕉の葉身からの抽出物 (アセトン(A)あるいはメタノール(M)抽出)を用いてヒト大腸がん細胞株に対する細胞毒性とその機序を調べた。【方法】各抽出物をヒト大腸がん細胞株HT29およびHCT116にばく露し、コロニーあるいはMTTアッセイにて細胞毒性を検討した。細胞毒性の程度をIC<sub>50</sub>値(50%増殖抑制率)にて判定した。アポトーシスの有無と細胞周期への影響をフローサイトメトリーおよびウェスタンブロット法で検討した。【結果と考察】コロニーアッセイでのIC<sub>50</sub>値は、HT29株では118 μg/mL(A)、>200 μg/mL(M)、HCT116株では75 μg/mL(A)、141 μg/mL(M)であった。MTTアッセイでのIC<sub>50</sub>値は、HT29株では115 μg/mL(A)、280 μg/mL(M)、HCT116株では73 μg/mL(A)、248 μg/mL(M)であった。アセトン抽出物にはより強い作用を持つ有効成分が含まれると考えられた。HT29株では、アセトン抽出物(100 μg/mL)のばく露によりcontrolと比較してG1期が5.4%有意に上昇し、これに伴ってG2/M期が減少した。つまり、G1 arrestが誘導された。アポトーシスに陥った細胞集団が示すsubG1 populationは見られなかった。HT29およびHCT116株では、アセトン抽出物のばく露によりcyclinD1およびcdk4タンパク発現レベルが濃度依存的に低下した。一方、HCT116株では、p21<sup>CIP1</sup>タンパク発現レベルが濃度依存的に増加した。これらの結果より、芭蕉葉の抽出物には細胞毒性をもつ物質が含まれ、アセトン抽出物はcyclinD1およびcdk4タンパク発現を減少させ、p21<sup>CIP1</sup>タンパク発現を増加させることで細胞周期を負に制御すると考えられる。
著者
堀田 真理
出版者
東洋大学経営学部
雑誌
経営論集 (ISSN:02866439)
巻号頁・発行日
no.90, pp.31-45, 2017-11
著者
図司 直也
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.253-261, 2020

<p>本シンポジウムが射程とする2040年には,田園回帰の動きを牽引した団塊ジュニア世代が高齢者となり,農村と都市の双方で豊かなライフスタイルを享受する都市農村対流時代が想定される.その時点での農村像を描き出すとき,4つのシナリオが想定され,社会インフラ技術が小規模化でき,SDGsの理念が国民に共有され,社会変革が進められる条件が揃った「地方分散シナリオ」を選択できれば,持続可能性がより高まるだろう.今日各地で見られるローカルプロジェクトは,その萌芽的な動きといえよう.旧来の計画や制度の更新とは別の形で,農村の暮らしを基点とし価値創造を生み出す地方分散シナリオを実現できるプロセスの検討を今から始めるべきである.</p>
著者
佐藤 順子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.294-300, 2020

本稿はフードバンクによる食料支援にはどのような意義があるかについて考察することを目的としたものである。フードバンクは生活困窮者支援においてインフォーマル・サービスとして位置づけられている。社会保障制度ではフォーマル・サービスとしての所得保障が重要でありつつも,フードバンクによる食料支援は,生活困窮者支援団体との連携によって,所得保障を補完し,同時に所得保障に橋渡しをする役割を担っている。フードバンクが困窮者支援の役割を果たすためには,国および自治体による恒常的な支援が今後さらに必要となってくると考える。
著者
安立 多惠子 平林 伸一 汐田 まどか 鈴木 周平 若宮 英司 北山 真次 河野 政樹 前岡 幸憲 小枝 達也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 = OFFICIAL JOURNAL OF THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.177-181, 2006-05-01
参考文献数
12
被引用文献数
2

注意欠陥/多動性障害 (AD/HD), Asperger障害 (AS), 高機能自閉症 (HFA) の状況認知能力に関する特徴を検討するために, 比喩文と皮肉文から構成されている比喩・皮肉文テスト (MSST) を開発した. 今回はAS群66名, HFA群20名, AD/HD群37名を対象とし, MSSTの得点プロフィールを比較した. その結果, AS群では皮肉文の得点が特異的に低かったが, HFA群とAD/HD群では比喩文と皮肉文の得点に差がなかった. 以上より, AS群の特徴は言語能力が良好であるにもかかわらず, 皮肉という状況の理解困難であろうと考えられた.
著者
柄木田 康之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.485-503, 2016 (Released:2018-02-23)
参考文献数
31

オセアニアの共同体オリエンテーションが顕著な公共圏の特質は、外部の批判者によって市民社会を欠くと批判される。他方、過度に規範化された公共性の概念自体が、オセアニアに限らず、サバルタン的公共圏を抑圧排除していると批判されてきた。この対立は、単一文化主義的国民統合と多文化主義的国民統合の対立を想起させる。多文化主義も文化の異なる中間集団を相互に媒介しえず、中間集団を統合するのは国家でしかないと批判されるのである。このような状況で、公共圏、国民統合の研究における人類学の貢献は、中間カテゴリーとしての公共圏の相互関係を民族誌的に特定することである。本稿では新興国家ミクロネシア連邦の中心島嶼に位置する主流派社会と少数 離島社会の在地の論理によって実践される共生の様態を報告した。 ヤップ州の本離島関係には交易ネットワークの連鎖に基づく領域と、本島と離島をカテゴリーとして対比する領域が存在する。本島離島の二元化は第二次大戦後の米国信託統治の枠組みで生じ、独立後、離島出身公務員のアソシエーションの枠組みともなった。しかし交易ネットワークの関係はヤップ本島と離島という二元的なカテゴリーに変換されてしまったわけではなく、今日離島出身者のヤップ本島での生存戦略の中で流用されている。 ポーンペイ州のカピンガマランギ人は、米国統治初期の農村入植プログラムを通じて、首長国の称号を獲得し、称号を与える祭宴を開くほどポーンペイ島の首長国に統合された。しかし行政主導の貨幣経済化が進行するにつれて、カピンガマランギ人は雇用機会、手工芸品販売を求め、他の民族集団と同様に孤立化した。しかし入植村の権利や首長国の称号は、放棄されることなく、保持された。 ヤップ州とポーンペイ州の双方で、近代政治体制の導入により、エスニックな差異に類する対立関係が形成されながらも、主流島嶼と少数離島の間では互酬性による共生が維持されているのである。

1 0 0 0 OA 世渡風俗圖會

著者
[清水晴風] [編並画]
出版者
[ ]
巻号頁・発行日
vol.[7], 1800
著者
森 正
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.292-296, 1968-03-15 (Released:2011-11-04)

国税庁醸造試験所は創立以来60余年を経たが, それは近代清酒製造技術の発展史でもある。今また新庁舎落成をみてますます将来の発展が期待されるとき, その敷地のいわれを知ることも興味のあることである。思いがけず, そこには幕末の世情を反映した遺跡が秘められている。ここに市井の歴史研究家森氏の研究の一端を紹介したが, これを機会に文化史的遺跡を保存する方法を講じて戴きたいものである。
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.780, pp.8-15, 2004-10-04

けら落としに先立つ8月26日の夕方、まつもと市民芸術館でオペラのゲネプロ(本番同様に、通しで演奏する最終リハーサル)があった。公開されたのは、小澤征爾氏が総監督と指揮を務めるサイトウ・キネン・オーケストラの演奏によるオペラ「ヴォツェック」。この日、まつもと市民芸術館は、初めて一般の観客で埋まった。 ホールの開場前から館内は観客でにぎわい始めた。
著者
石丸 幹二 古賀 咲江 高田 真菜美
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.45-48, 2012-01-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 4

微生物制御発酵茶は,近年特に日本において開発,商品化されている新しいタイプの発酵茶である.単一の微生物を用いて発酵処理を行うのが特徴であるが,特に<I>Aspergillus</I>で発酵処理した茶から,新しいカテキン代謝物であるteadenol類が発見され,その化学構造の新規性と抗メタボリックシンドローム活性が注目されている.今回,現在日本で市販されている<I>Aspergillus</I>で発酵処理した5種の微生物制御発酵茶についてHPLC分析をおこなった.分析したすべての茶においてteadenol類が含まれていたが,発酵条件等の違いによる成分含量の差異も認められた.また,茶葉からのteadenol類の調製に関する実験では,比較的安全&middot;安価な試薬類を用いたカラムクロマトグラフィーによりteadenol類を効率的に単離することができた.今後も,茶由来の新規機能性成分の生産とカテキン代謝機構の解明に利用される新しい微生物制御発酵茶の開発が期待される.
著者
都田 菊郎
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1961

博士論文
著者
畑中 邦道 Hatanaka Kunimichi
出版者
神奈川大学 国際経営研究所
雑誌
国際経営フォーラム (ISSN:09158235)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.73-115, 2012-07-31

国際物流に関わる比較優位は、グローバルエコノミーにおける自由貿易を前提に議論されているが、分配側のことについては、あまり細かく検討されていない。分配の持つ根源的課題を、需要という言葉で、ひとくくりにして扱っている。現在の資本主義経済では、国際物流は、需要と供給の関係でしか成り立っていないように、理解されている。本来は、需要側にある分配問題が、国際物流の大きな課題であることに目をつぶっている。供給側の論理により、実物である商品の移動及び生産立地は、個別企業経営における戦略的選択により、変化する。戦略的選択がなされると、国際物流は、ある日突然、方向と実態の姿を変えてしまう。実物の流れが変わった時、価値の移動とその保管は、その持つ意味や意義を全く別なものにしてしまう。価値の移動や交換に伴って生まれる、資本蓄積と再投資のインセンティブは、人類の歴史を通して現在ある形になり、資本主義経済のグローバル化を促進させている。分配問題を無視する国境を持たないグローバル資本は、国家の自立性の確保や保護などお構いなしに、商品の生産立地国や、分配側の受容国を、支配してしまう。これに対し、日本でしか起きなかった、カイゼン活動から生まれた、ジャスト・イン・タイムの経営手法や、優れた生産技術の優位性は、特異な存在である。この特異な環境を持つ構造が、国際物流をどのように変えてきたかについて、検討しておく。技術集団である中小企業による産業のクラスターを持つ日本特有の構造は、経済学の一般論からみる比較優位の議論から、大きく乖離して存在している。日本国内における、その環境の構造は崩壊直前とも言われているが、それらの現状について検証しておく。本論では、国際物流について、歴史的な大きな流れの変化を俯瞰しながら、現在ある課題の抽出を試みている。このため、日々の実務である、輸出入に関わる実務者レベルの作業手順や法的手続きの詳細比較、及び、国際物流ではコストとなる3PL(サード・パーティ・ロジステックス)のような、輸送専門事業者についての具体的な活動については、論じていない。