著者
渡邉 雅子
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.176-186, 2014-06-30

本稿は「国際標準のカリキュラム」を謳う国際バカロレア(IB)を例に、グローバル化で理想とされる教育内容とその受容の形態及びIB導入がもたらす公教育への影響を分析する。IBの教育内容は近代型の学校知とは一線を画しており、世界的な知の二極化の象徴になっている。その受容形態は国により様々だが、日本はIBを通して既存の教育内容を再評価しつつ組替えており、ナショナルな教育との融合の可能性を示唆している。
著者
水品 江里子 麻柄 啓一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.573-583, 2007-12-30

日本文の「〜は」は主語として使われるだけではなく,提題(〜について言えば)としても用いられる。従って日本文の「〜は」は英文の主語と常に対応するわけではない。また,日本語の文では主語はしばしば省略される。両言語にはこのような違いがあるので,日本語の「〜は」をそのまま英文の主語として用いる誤りが生じる可能性が考えられる。研究1では,57名の中学生と114名の高校生に,例えば「昨日はバイトだった」の英作文としてYesterday was a part-time job.を,「一月は私の誕生日です」の英作文としてJanuary is my birthday.を,「シャツはすべてクリーニング屋に出します」の英作文としてAll my shirts bring to the laundry.を提示して正誤判断を求めた。その結果40%〜80%の者がこのような英文を「正しい」と判断した。これは英文の主語を把握する際に日本語の知識が干渉を及ぼしていることを示している。研究2では,日本語の「〜は」と英文の主語の違いを説明した解説文を作成し,それを用いて高校生89名に授業を行った。授業後には上記のような誤答はなくなった。
著者
丸山 和昭
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.85-104, 2004-11-15

Organizations of clinical psychologist were organized on two occasions in Japan at the initiative of professional societies. The move toward professionalization in the 1960s used a strategy which gave priority to the acquisition of specialist status and autonomy than to obtaining a state-granted qualification. As a result, it failed to obtain the support of professionals working in the clinical field. However, in the 1970s, the whole clinical mental occupation reached consensus on the need to promote specialist status, from a sense of crisis brought about by the unwillingness of the Ministry of Health and Welfare and doctors to create a qualification. In the second professionalization in the 1980s, calls were made for the advancement of specialist status and the establishment of a training system. Thanks to a strategy of professionalization aimed at developing an educational field, it came to attain "miraculous" growth. This professionalization of clinical psychologists was based on the leadership of professional societies, which developed specialist attributes for the cultivation of a "science-profession" core based on a "dual strategy", to gain professional status. The clinical psychologists used a dual strategy toward the Ministry of Health and Welfare and the Ministry of Education, expanded the market autonomously and produced a great deal of "science-profession." However, it can be said that the professional society-led model has the danger of following the route of very unstable professionalization, which can be easily influenced of many domains although it has the potential for expanding new markets and the development of an autonomous training system.
著者
南 雅代 小田 寛貴 小島 貞男 横田 喜一郎 中村 俊夫
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.13, pp.71-81, 2002-03

第14回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(平成13 (2001)年度)報告
著者
堀田 一弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1624-1633, 2005-08-01
被引用文献数
4

本論文では, 局所カーネルの和に基づくSupport Vector Machine(SVM)を用いた部分的な隠れに頑健な顔検出法を提案する. 近年, SVMを用いた顔検出法の有効性が報告されているが, 従来手法では画像から抽出した大局的な特徴に対して一つのカーネルを適用していた. 大局的な特徴は部分的な隠れの影響を受けやすいので, 従来手法は隠れに頑健でないと考えられる. SVMに基づく顔検出法に部分的な隠れに対する頑健性を付与するためには, 局所特徴をうまく扱う必要がある. ここでは, 局所特徴をうまく扱うために局所カーネルを導入し, その統合法として和を用いた. 実験では, 人工的な隠れを含む顔画像や光源方向の変化により生じた影を含む顔画像を用いて従来の大局カーネルに基づくSVMとの比較を行い, 提案手法の隠れに対する頑健性を示した. また, サングラスやマフラー等の実際的な隠れを含む顔画像から顔を検出できることも確認した.
著者
井上 優
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.94-95, 2001-09-29

(1)のような「シタ」は,対応する否定形式が「シナカッタ」でなく「シテイナイ」となることから,「完成相過去」ではなく,「パーフェクト相現在」を表すと言われる。(1)「もう昼飯を食べたか?」「いや,まだ食べていない(×食べなかった)。」しかし,(1)の現象は「シタ」がパーフェクト性を持つことを示すものではない。むしろ,(1)は次の(2)と同様,直接の対応関係にない肯定形式と否定形式が一定の文脈の中で対をなして用いられる(見かけ上対応するように見える)だけのケースである。(2)(ワイシャツについたシミを落としながら)a よし,落ちた。b なかなか落ちないなあ(×落ちてないなあ/×落ちなかったなあ)。(2)bの「落ちない」は「現在`落ちる'ことが実現される様子がない」ことを表す。これに直接対応するのは「現在`落ちる'ことが実現される様子がある」ことを表す「落ちる」であり,「落ちた」ではない。(1)もこれと同類の現象である。現代日本語の「シタ」は,「過去にこのようなことがあった」ということを表すだけでなく,「出来事全体を(その前後を含む)継起的な時間の流れの中に位置づける」という動的叙述性が顕著である。そして,それに呼応する形で,「シナカッタ」も「当該の出来事が実現されないまま終わった」ことを表し,単に「このようなことは過去にない」ということの叙述はパーフェクト相現在「シテイル」の否定形「シテイナイ」が担う。その結果,(1)のように当該の出来事が実現される可能性が残されている文脈では,「シナカッタ」ではなく,「シテイナイ」が用いられることになる。つまり,(1)の現象は,「シタ」の動的叙述性の強さ(ある意味では完成性の強さ)を示すものであり,「シタ」がパーフェクト性を持つことを示すものではない。

14 0 0 0 IR 13日の金曜日

著者
外狩 善男
出版者
愛知教育大学数学教室
雑誌
イプシロン (ISSN:0289145X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-3, 1994-03
著者
湯川 やよい
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.163-184, 2011-06-10
被引用文献数
1

本研究は,高等教育・研究者養成における教員-学生関係の社会学研究として,アカデミック・ハラスメントの形成過程を明らかにする。そのため,医療系の女性大学院生を事例に,学生が「被害」を認識する契機となるエピソードに着目し,被害の背景にある教員-学生間の信頼関係の変遷を,対話的構築主義アプローチを用いたライフストーリーとして再構成する事例研究を行う。考察の結果,学生が「被害」と認識した出来事は,それ単独として存在するのではなく,多忙化した教員の研究・教育関与の低下,研究室間の不文律システム,教員同士の確執等,日常に埋め込まれた諸文脈の累積により学生の教員への信頼が失われ,その結果初めて学生にとって不快で不当な「ハラスメント被害」が構築されるという過程が明らかになった。また,対話的構築主義アプローチをとったことにより,上記のハラスメント形成過程は,従来のアカデミック・フェミニズムの中でのモデル・ストーリーとなってきた「ジェンダー要因を中核とするハラスメント体験」の語りに対してずれを含む新たな対抗言説として導出された。研究室の教員-学生関係で生じる困難を,単に学生相談の臨床心理からのみ論じるのではなく,背景にあるジェンダー関与的文脈と非関与的文脈の総体について社会学的に検討し,政策・教育機能分析と指導の実践レベルの研究とを接続する必要があると考える。
著者
阪本 一郎
出版者
文教大学女子短期大学部
雑誌
研究紀要 (ISSN:03855309)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.17-27, 1976-12
著者
平田 恵子 山崎 由希子
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.162-190, 2006-01-31

国際規範に関する分析は概して,システムレベルの規範の普及に着目している.本稿では,そのような分析はネオリアリズム,新自由主義制度派,構造主義などに根ざしており,主に二つの問題があると主張する.一つは,それらの分析が普及に成功した規範の実例に多大な関心を払っているのに対し,失敗したものについては見過ごしていることである.もう一つの問題はそれらの分析が,規範の普及する過程において国際規範と国内構造がどのように関連しているかを検証できていないことである.この関連を見過ごすことにより,システムレベルの研究は国際規範が国内の領域に広がる具体的なメカニズムとプロセスを明らかにできないでいる.本稿は国内構造(特に文化・政治的構造)が国内レベルにおける国際規範の普及を可能にする主要要素であると主張する.日本における反捕鯨規範の受け入れ拒否を分析するにあたり本稿は,このような国内構造が反捕鯨規範の出現や受け入れを阻むフィルターとして機能していると論じるものである.
著者
青柳 かおる
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.723-744, 2005-12-30

本稿では、ガザーリーの神秘思想における性の重要性を検証し、特に神秘主義的宇宙論と性の議論との結びつきを明らかにする。ガザーリーの禁欲主義の議論にも触れながら、食欲と性欲を比較し、さらにマッキーとイブン・アラビーの議論とも比較して、スーフィズムの思想史におけるガザーリーの性の議論の独自性を検討する。まずマッキーの神秘主義的宇宙論は断片的であり、また禁欲的に性欲を抑えていく立場である。ガザーリーは、マッキーの宇宙論を体系化し、宇宙論において人間霊魂の上昇を説き、さらに性の持つ肯定的な力を認めた。そして性に対する考え方と神秘主義的宇宙論が一体となった結果、性欲は、神秘修行を中心とする神への崇拝に励む原動力になる、という思想を理論化することができた。存在一性論を説くイブン・アラビーにおいては、神と世界の一体性と重なる男女の性的結合が重視されている。ガザーリーは、性の肯定的な力を取り入れ、自らの神秘主義的宇宙論に適合する形の修行論を展開しているのである。
著者
SAWAMOTO SHOZO MATSUMOTO RUI
出版者
日本プランクトン学会、日本ベントス学会
雑誌
Plankton & benthos research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.203-206, 2012-11-01
被引用文献数
14

More than 50 specimens of the megamouth shark Megachasma pelagios have been reported so far, but biological observations on the species are still limited. We examined a female megamouth specimen that was captured by the bonito purse seine fishery in the Kuroshio Extension in July 2007 and donated to the Okinawa Churaumi Aquarium. The specimen was an immature female, 3,667 mm in total length and 361 kg in weight. The stomach contents measured 2,200 mL excluding the portion that was lost from the specimen before measurement. Detailed examination of a small part (14.6 mL) of the stomach contents revealed undamaged worm-like organisms, 10 partially damaged euphausiids and abundant fragmented pieces of euphausiids. The worm-like organisms were probably parasites such as tapeworms. The partially damaged euphausiids were identified as Euphausia pacifica except for one individual of Nematoscelis difficilis. Based on the number of fragmented right mandibles, which were less damaged than the other fragmented appendages, the total number of euphausiids in the stomach contents is estimated to be at least 18,000 individuals. The high abundance of euphausiids in the stomach contents suggests that the present specimen has fed on a swarm of E. pacifica in an oceanic area.