著者
津崎 実
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2018-SLP-122, no.12, pp.1-6, 2018-06-09

ピッチは音の重要な知覚属性であり,ヒトがどのようにしてピッチを知覚するかに関するモデルについては古くから研究がされている.ピッチ現象を説明するための聴覚理論として有名な場所説と時間説の間の論争は 19 世紀に今日の原形が形成され,その後修正を加えながら,今日でも引き継がれてきている.時間説の流れを汲む近年の機能モデルでは基底膜フィルターバンク処理と半波整流の後段に自己相関演算による周期性検出を想定するものが多い.著者の研究グループでは,加齢に伴う絶対音感判断の上方へのシフトという現象をここ数年研究してきている.この現象は知覚レベルでのピッチが加齢に伴って変容する可能性を強く示唆する.ピッチが音響信号に備わる周期性に基づいた知覚属性であることは否定しがたいが,単にその周期性を時間の関数としての自己相関演算で求める以上,このような加齢効果が入り込む余地はない.加齢効果を説明するためには自励発振する内部参照を想定し,その自励発振周波数が加齢によって変化することを想定する必要がある.発振回路を使用したピッチ検出機構の提唱は先例があるものの,従来はその想定を必要とする現象が観察されずに来た.加齢性のピッチ ・ シフト現象はピッチ知覚に関する研究に新たな局面を切り開く可能性がある.
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2026, pp.72-74, 2020-01-27

サーモンの陸上養殖に対する関心は世界で急速に高まっている。米フロリダ州では北米全体の需要を賄える9万トン規模のプラント建設計画を打ち出したノルウェー起源のアトランティックサファイアが多額の投資を集め、企業価値は1000億円近くになっている。 シ…
著者
本村 敏明 日高 哲志 秋濱 友也 片木 新作 BERFOW Mark a. 森口 卓哉 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.685-692, 1997-03-01
参考文献数
25
被引用文献数
6

カンキツ類縁種には病害虫抵抗性等の有用遺伝子を有するものが多く,育種素材としての活用が期待されている.しかし,カンキツとの類縁関係が遠くなると交雑は困難となる.これを克服する手段として細胞融合が考えられる.ここでは細胞融合法の適用限界を知るために,カンキッとカンツ類縁種の電気融合を行い,融合後の胚様体の発育について調査を行った.<BR>材料には,ミカン亜科カンキッ連のトリファシァ亜連,カンキツ亜連(カンキツを含む),バルサモシトラス亜連およびワンピ連のワンピ亜連とメリリア亜連内の種を用いた.<BR>一般的にカンキッと分類的に近縁な組合わせにおいて雑種個体の作出が容易であった.カンキッ連カンキッ亜連内のカンキッと他の種との電気融合では,多くの組合わせで融合後の胚様体形成,シュートの再分化,発根が容易であった.カンキツとカンキツ連バルサモシトラス亜連の電気融合では,比較的シュートの形成は容易であった.しかしながら,その発根は困難なために,接ぎ木したところ,一部は植物体にまで生長したが,奇形葉を呈するものも多かった.ワンピ連との組合わせの電気融合では,個体再生は極めて困難で,分化しても異常な個体しか得られなかった.カンキッとカンキッ連トリファシア亜連との電気融合では,カンキツとワンピ連よりも類縁関係が近いにもかかわらず個体再生は困難であり,体細胞雑種作出の可能性は低かった.
著者
Fujita Minoru Harada Hiroshi
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
no.52, pp.216-220, 1980-12-25

一般に市販されているいわゆる瞬間接着剤のアロンアルファー201を用いて, 非常に簡便かつ迅速な樹脂包埋法を開発した。また通常のミクロトーム操作にも応用できる切片の"裏打ち"法を考案した。包埋法はFig 1に示すように, "(1) 乾燥した試片を試料台の上に置く。(2) アロンァルファー201を滴下して試片中に樹脂を浸透させる。(3) 余剰のアロンアルファーを濾紙で吸い取り約1時間放置する。"の手順で完了し, この包埋試片から0. 5 - 5μm厚さの切片がガラスナイフを用いて容易に切り出せる。包埋樹脂はアセトンで除去されるので, 切片は必要に応じて脱包埋できる。また切片作製後の試片をアセトンで脱包埋すると, 走査電顕観察に適した断面が得られる。この包埋法は木材はもちろん樹皮, 紙, 合板などの乾燥した多孔性の試料に適用できる。"裏打ち"法は湿潤試料に有効で, Fig 2に示すように, "(1) 試片をスラィディングミクロトームに装着し, 通常のミクロトーム操作で試料表面を平滑にする。(2) アロンアルファー201を滴下し余剰の液を濾紙で吸いとる。約1分後にはアロンアルファーは試料表面に固着する。(3) 5 - 20μm厚さの切片を切り出す。"以後 (2) (3) の操作をくり返す。切片はアロンアルファー膜で裏打ちされているので切削時の損傷が少なく, 軟弱な組織や, バラバラになりやすい組織の薄切に有効である。なお, アロンァルファーの裏打ち膜は必要に応じてアセトンで除去することができる。
著者
吉田 陽平 結城 匡啓
出版者
日本スキー学会
雑誌
スキー研究 (ISSN:1349449X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-12, 2016 (Released:2017-09-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

The purpose of this study was to make clear the characteristics of superior ski technique by investigating the relationship between subjective evaluation of skiers’movements and objective parameters of 3-dimensional analysis. Seventeen Japanese skiers performed long radius turns and were filmed with two cameras(60Hz),panned and fixed. These runs were scored out of a maximum of 100 points by three referees. To obtain the 3D space coordinates, the Panning DLT method was adopted. Relationships between the score and the parameters obtained using 3D motion analysis were examined by using correlation analysis, and elements of an outstanding ski technique were investigated. There were significant correlations between the scores and the following:(1)radius of curvature at the turn maximum(r=-0.840, p<0.001),(2)the lean angle of the center of mass(CM)at the turn maximum(r=0.628, p<0.01),(3)the angle formed by CM velocity and the fall line at the point where the lean angle of CM was vertical to the slope(the onset of turning)(r=0.816, p<0.001)and(4)the lean angular velocity of CM at the onset of turning(r=0.546, p<0.05).This study suggests three characteristics of outstanding ski technique: a sharp and wide turn made by gaining centripetal force, a large lean angle of the body, and a rapid edge changing.
著者
Machiko KOBORI
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
International Symposium on Affective Science and Engineering (ISSN:24335428)
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2020 (Released:2020-04-30)
参考文献数
31

The motivation of Japanese primary pupils to learn English as a foreign language (EFL) was examined in a pilot study of Japanese sixth form students (aged 11-12 years). The main aim is to verify the hypothesis that Japanese primary pupils learn EFL under a clear understanding of second language (L2) instrumentality, and examine whether the latest conceptual framework of L2 instrumentality can be applied to their EFL learning. The pupils completed a questionnaire that included 39 question items about different L2 motivational variables: integrativeness, and prevention- and promotion- driven instrumentality. The results were obtained based on factor analyses to examine how related L2 motivational variables are identified. Findings indicate that a clear distinction is drawn between integrativeness and instrumentality in learning EFL and that an explicit notion of L2 instrumentality is held among Japanese primary EFL pupils, based on the conceptual frameworks of L2 motivation. In particular, their L2 instrumentality substantiates that prevention-driven and promotion-driven instrumentality are distinct constructs within the conceptual framework of the L2 Motivational Self System (L2MSS) : significantly, these two internal constructs were identified as distinctive types by the participating pupils.
著者
原田 利一 水野 瑞夫 加藤 智雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.591-593, 1952-04-25 (Released:2010-02-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

The alcoholic extracts of 53 kinds of shelf-fungi were tested for their antibacterial action against Staphylococcus aureus (Friedlender) and E. coli by the dilution method. Digests of Grifola sp. and Fomes sp. were found to have the most strong action against Staphylococus aureus.
著者
山本 良平 大橋 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.765-769, 2015 (Released:2015-12-06)
参考文献数
12

〔目的〕言語的なフィードバック(FB)の付与のタイミングが,運動学習と練習パフォーマンスに与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕健常若年成人24名を対象とした.〔方法〕対象を同時フィードバック(CF)群と最終フィードバック(TF)群の2群に分けた.学習課題は右脚の振り出し課題とした.右脚の軌跡の目標値からの変位の平均値(RMSE)を学習の指標とした.〔結果〕両群ともにRMSEが減少し,学習が認められた.CF群では練習中のFB対象試行がその前の試行と比較して有意に小さい値を示したが,TF群では有意差を示さなかった.〔結語〕言語的なCFとTFは同様の学習効果をもつが,パフォーマンスを変化させるタイミングが異なると示唆された.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1072, pp.51-54, 2001-01-01

「ソニーの取締役会は長い」。一橋大学教授から社外取締役に転じた中谷巌氏は、驚きを込めてそう語ったことがある。1週間前には事務局から次回の話題に関する資料が届き、短くても半日、長ければ丸1日かけて10人前後の参加者だけで議論を傾ける。のどが渇けば横に置いてあるコーヒーサーバーから自分で飲み物を持ってきて、イエス、ノーでは簡単に答えの出ない本質論に熱中する。
著者
竹内 大介 朴 世訓 岡田 健史 松浦 龍一 小坂田 耕太郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.597-606, 2007
被引用文献数
2

シクロオレフィンポリマーは高い透明性,耐熱性を有することから注目を集めている.本報では,パラジウムをはじめとする後期遷移金属錯体触媒を用いると,ジエンの環化重合が円滑に進行し,主鎖に環構造をもつ高分子生成物の立体構造を精密に制御できることを見いだした.パラジウム錯体触媒によってさまざまな官能基を有するジエンの環化重合が進行した.得られたポリマーの 1,2-二置換シクロペンタン骨格は定量的にトランスに制御されていた.ジエンとエチレンや &alpha;-オレフィンとの共重合も可能であり,この場合にも環化は定量的におきた.7-位にアルキル鎖を有する 1,6-ヘプタジエンの反応に同様のパラジウム錯体触媒を用いると,新しい環化&mdash;チェーンウォーキング型の重合が進行し,トランス-1,2-二置換シクロペンタン環がオリゴエチレン鎖で連結されたポリマーが得られた.鉄錯体やコバルト錯体を用いると,無置換の1,6-ジエンの環化重合が進行し,1,2-二置換シクロペンタン骨格を有するポリマーが得られた.鉄錯体を用いた場合には五員環の立体構造はシス,コバルト錯体を用いた場合にはトランスに制御されている.<br>
著者
星 文彦
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.2-6, 2009 (Released:2009-03-12)
参考文献数
7

1.体幹機能の発達を体幹の抗重力性・支持性・運動性という観点から考察した。2.姿勢や起居移動動作,座位,立位の発達過程に見られる体幹機能の必要性について記述した。3.臥位や座位,立位等各姿勢における運動行動の確立は各姿勢おける体幹機能として抗重力性・支持性・運動性が組織化される必要がある。4.起居移動動作の改善も目的とした理学療法の目標設定や治療技術の選択には体幹機能の発達に関する理解が重要である。