著者
豊田 裕貴 木戸 茂
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.89-100, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

本研究の目的は、QCA(質的比較分析)とMDSO-MSDOによる質的分析手法と、ソフトクラスタリングといった定量分析手法とを活用し、個々の顧客の差異を検討し、ブランドマネジメントに資する情報抽出方法を提案することにある。QCAは、ブール代数をもとにした集合論的方法である。本研究では、個々人のブランド評価構造の多様性と因果条件を明らかにする目的で応用する。もう一つのアプローチであるMDSOおよびMSDOとは、Most Different cases, Similar Outcome/Most Similar cases, Different Outcomeの頭文字からなる手法である。MDSOは「結果が類似しているグループ内で評価基準が最も異なるケース」を特定し、MSDOは「結果が異なるグループ間で評価基準が最も類似しているケースを特定する」ために用いられる。本研究では、対象となる顧客データの中から詳細に検討すべき対象を特定する目的に応用する。ただし、MDSO-MSDOアプローチでは、極端に変わった対象が抽出されてしまう可能性があり、特定された対象が深く検討すべき対象であるかという懸念が残る。この点に対しては、ソフトクラスタリングを用いて抽出された顧客と類似する個客がどれくらいいるかを確認することで対象の非特殊性を担保する手順についても提案する。
著者
塩塚 潤二
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.263-274, 2012-04-01

かつて循環器内科医だった頃,術後の心房細動の相談を受けると,忙しかったこととまったくの不勉強だったこともあり,「なぜこんな命にかかわらないような些細なことでいちいち呼ばれなければいけないのだろう」とイライラしていた。当時から集中治療には興味があったが,術後心房細動に関する認識はこの程度であった。その後,集中治療に専従するようになってこの分野の奥の深さに驚かされた。
著者
佐藤 正衛 竹内 正彦 山端 直人 平田 滋樹
出版者
関東東海北陸農業経営研究会
雑誌
関東東海北陸農業経営研究 = Kantō Tōkai Hokuriku journal of farm management (ISSN:21897646)
巻号頁・発行日
no.107, pp.55-61, 2017-02

わが国では、野生鳥獣による農業被害や自然生態系への影響が深刻化しており、農作物被害額については、ここ十数年、年間200億円前後で推移している。鳥獣被害の深刻化、広域化の背景として、江成は、農山村の体力低下と野生動物との関わりの変質化を指摘している。具体的には、過疎化、高齢化による耕作地、樹園地の放棄、撤退、狩猟者減少等の体力低下が生じた。これに加え、薪から石油、牛馬から自動車へといった生活様式の変化に伴う里地利用の事実上の消滅から、野生動物が集落内の環境を利用するようになり、また、野生鳥獣の経済的価値も低下し、人との距離感、捕獲指向が変化した。その延長での農地侵入、被害の増加、拡大という構図が考えられることから、被害対策としては、野生動物と人との距離感を広げる環境整備と確実な技術と実施方策に基づく被害防除に加え、加害個体の捕獲の3つを連携させた「総合対策」が重要である。こうしたなか2007年に成立した鳥獣被害防止特別措置法にもとづき市町村が主体となって被害防止対策に取り組まれてきたものの鳥獣被害を軽減させることができなかったことから、さらなる対策の強化が必要とされた。そこでの捕獲目標は、シカ、イノシシの生息頭数を平成35年度までの10年間で半減させるというものであり、これを実現するためにICT等を用いた大量捕獲技術の導入や捕獲鳥獣の食肉加工利用の推進を図ることとされている。そして、これら対策の実施主体は市町村に設置される鳥獣被害対策実施隊であることから、今後は実施隊への支援策の拡充が重要な課題であるといえる。その具体策のひとつとして新しい捕獲技術導入の採否や捕獲鳥獣の食肉加工利用の適否を判断するための情報の提供があげられる。桑原・加藤は、イノシシ対策としてのワイヤーメッシュ柵設置コストを試算し政策支援額の目安を提示した。しかし捕獲は分析対象とされておらず、今後提供されるべき支援情報として必ずしも十分ではない。そこでこうした課題に応えるため、本稿では、まず捕獲の技術体系データの構築方法を検討し、次に手順にそってデータ構築を実施する。そして、構築データを用いて従来の狩猟方法との比較分析を実施する。さらに、分析結果をふまえて、主に実施隊への有用情報の提供可能性の観点から技術体系データの利活用方法を考察する。
著者
グェン スアン ティ NGUYEN Xuan Thi
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2016-03-25
著者
比樂 憲一 遠西 昭寿
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.425-432, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

自然界における水の循環の中で水蒸気概念を理解し,水蒸気概念の習得によって自然界における水の循環を理解するという,解釈学的循環を考慮した単元構成によって,水蒸気を思考の道具としてプラグマティックに理解させることを試みた,小学校4年生の実践的研究である。導入時に自然界における水の循環を図示し,説明させることで,合理性を維持するには降った雨が再び雲に戻らねばならないという「問題」を発見させることができた。そこから「空気中には見えない水があるはずだ」という仮説を得ることができた。水蒸気概念は,凝結と蒸発の実験を積極的に関係づけ,さらに日常生活上の諸経験をうまく説明できることから思考の「便利な道具」としてプラグマティックに理解され,はじめの理論枠組みに還元されて自然界における水の循環の理解をより確かにし,主体的で深い学びを実現できたと考えている。
著者
五島 忠久
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.1968, no.7, pp.77-92, 1968-10-10 (Released:2010-04-30)

The development of Swahili lexicography can be observed by comparing three important dictionaries: Krapf's Dictionary of the Swahili Language (1882), Madan's Swahili-English Dictionary (1903) and Johnson's Standard Swahili-English Dictionary (1939). The first notable Swahili dictionary was J. L. Krapf's, containing more entries than any other. Krapf, however, was not a superior lexicographer to Madan or Johnson in spelling, framing definitions, and selecting quotations. Madan's dictionary contains many words not included in Krapf's and definitions are revised where necessary, although Madan does show Krapf's influence. The third progressive step was made by Johnson who firmly established the connection between derivatives and their verbs, causing the expression of a wider meaning in many cases.
著者
吉岡 敏和
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.97-109, 1987-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
32
被引用文献数
3 1

The Kyoto Basin, which is situated in the central part of the Kinki district, is delineated by several active faults along its eastern and western rims. This paper describes the faulted terrace surfaces and the distribution of the Quaternary deposits in order to estimate the activity of the faults and the tectonic development around the Kyoto Basin. The basin formation model that explains the topographic features around the basin is also discussed. The findings are summarized as follows.The active faults along the eastern rim of the Kyoto Basin are characterized by right lateral movements, and those along the western rim by left lateral movements. These faults show younger activity in the northern part of the basin, and older activity in the southern part.The Osaka Group, Pliocene to Pleistocene in age, is distributed in and around the Kyoto Basin. Its accumulating area migrated northward during the Pleistocene. This migration is considered to be the result of a northword shift of the fault activity.The mechanism of basin formation during the Quaternary is explained by a model in which the compression between the Shigaraki Plateau block, situated east of the Kyoto Basin, and the Hokusetsu Mountains block, situated west of the basin, caused northward movement of the Tamba Mountains block and subsidence of the Kyoto Basin.
著者
時下 進一 時下 祥子 政所 由美子 高橋 勇二 山形 秀夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.146, 2005

オオミジンコは溶存酸素量の低下に伴い血リンパ中のヘモグロビン量を増加させる。この発現制御は 哺乳類の低酸素誘導因子(HIF-1)のホモログであるARNT と HIF-1α により転写レベルで行われていることが示された。HIF-1による低酸素適応機構が生物に普遍的に存在すると考えられる。また抗 ARNT 抗体を用いた免疫染色の結果から、epipod が溶存酸素量の変化を感知している可能性が示唆された。ARNTおよびARNTとヘテロ二量体を形成するトラキアレスの胚における発現パターンから、 ARNT は低酸素応答以外にも様々なタンパク質と相互作用して環境応答に広く関与しているものと考えられる。