著者
明石 岩雄
出版者
奈良大学総合研究所
雑誌
総合研究所所報 (ISSN:09192999)
巻号頁・発行日
no.8, pp.65-76, 2000

本稿は、所報では論文として掲載していただいたが、むしろ現在進行中の作業のいわば中間報告と言うべきものである。筆者は平成9年度の本学研究助成50万円を表題の実現のために申請し、許可された。当初は1915年から1945年いたる、すでに作成済みの戦前『大阪朝日新聞・奈良版』(microfilm)見出目録のデータベース化の作業を出来るだけ完成するつもりであった。しかし、作業は極めて困難で、結果的には1915年から1923年までの分、見出件数(勿論必要な個人プライバシーの保護のために削除した分を除いて)3万9000余件のデータベース化を成功したにとどまった。おそらく、この作業が完成するにはさらに5年から10年の期間が必要であろう。最終的にデータベース化された見出件数は15万件から20万件に及ぶ、と予想している。冒頭で筆者が述べた理由は以上の意味においてである。
著者
馬木 知子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.121-126, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
50

外濠の改築・埋立は、汚水が停滞しているという衛生上の問題を解決することを動機としつつ、明治 30年代後半頃からは埋め立てて地積を得ることが目的となっていた。明治前半には、かつての景勝地である溜池に地景の回復への関心もみられたが、明治20年代以降の埋め立てでは、外濠の地景は議論の対象になっていない。他方、「風致」や「美観」のもとに、植栽や建築物による都市の装飾、埋立後の街の構想など、外濠を無用化したあとに建設する施設によって、近代都市の風景をつくることを徐々に指向するようになっていた。新しい都市風景をつくることに傾倒しつつある都市建設において、近世以来人々が価値を見いだしてきた地景が解釈される契機となったのが弁慶橋問題だった。弁慶橋問題は、地景を積極的に解釈しようとしない建設者側と、地景を都市風景として体験し価値を見いだしてきた人々の、風景の捉えかたのずれが、埋立計画によって明確に認識されたことで発生した。そのずれに対して、地景を保存し、同時に近代都市に具備すべき施設を得る、公園化という方法は双方の風景の捉えかたを肯定する、一つの有効な解決策であったと評価していいだろう。
著者
近藤 裕貴 藤井 叙人 片寄 晴弘
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.122-126, 2015-09-18

アクションゲームの上達には,コントローラによる様々なボタン入力パターンを習得することが不可欠である.この入力パターンは,順序通り入力を行えば良いものだけではなく,タイミングの正確さを必要とするものが多い.しかしながら,このタイミングの習得はゲーム上級者であっても障壁となることがある.様々な分野で,タイミングを効率的に学習させる手法の検討が行われているが,アクションゲームのキャラクター操作に注目したものは少ない.本研究では,音を用いたアクションゲームプレイヤのスキル獲得支援手法について提案する.また,被験者実験を通して有効性を検証した結果,特定の条件下において高い効果を得られることがわかった.
著者
鶴木 恭子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.50-55, 2010-12-20 (Released:2016-08-25)
参考文献数
5
被引用文献数
2

本研究は,重曹を清拭時の清拭剤として使用した場合,温湯清拭に比べて皮脂を除去する効果はあるのかについてと,発赤や.痒感など皮膚への影響を明らかにする目的で行った.被験者は女子学生14名である.重曹をお湯に溶かし,そのお湯に浸したタオルを絞り前腕を清拭し,pH,角質水分量,発赤の観察,アンケート調査を実施した.対照群として,もう片方の前腕には温湯清拭を行い同項目の測定を行った.その結果,重曹清拭が温湯清拭よりも皮脂を除去できるかどうかについては明らかにすることはできなかった.しかし,清拭後の皮膚が弱酸性に戻りやすい清拭剤になる可能性があることがわかった.発赤と.痒感については1例の出現もなかった.今回の結果は,重曹を用いた清拭は皮脂を除去できないと断定できるものではなく,皮膚pHの結果から推測すると重曹の作用を皮膚に与えることができなかったためではないかと考える.このため,今後は重曹の作用を皮膚に与えられる絞り方など方法を検討し,重曹清拭の影響を明らかにしていきたい.
著者
蒲原 弘継 ウィディヤント アヌグラ 熱田 洋一 橘 隆一 後藤 尚弘 大門 裕之 藤江 幸一
出版者
環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.247-256, 2009-07-31
参考文献数
42
被引用文献数
3

本研究は,インドネシア産のパーム油を原料にしたバイオディーゼル燃料(パームBDF)の生産から,日本国内への輸入に伴う環境負荷として,温室効果ガス排出量とエネルギー消費量を評価した。評価は,インドネシア現地での調査結果に基づき行った。温室効果ガス排出量はバイオマスによって固定された炭素の収支を考慮して評価した。その結果,パームBDF生産・輸送に伴う正味の温室効果ガス(GHG)排出量は,軽油の生産・輸送・消費に伴なうGHG排出量に比べ約60%のGHG排出量であった。ただし,今後,パーム油工場で発生するバイオマス残渣やラグーンで発生しているメタンの有効利用が行われればGHG排出量のさらなる低減が可能であることが示唆された。一方,パームBDF生産・輸送に伴うエネルギー消費量の合計は,約10.4MJ/Lであった。仮に,日本で消費される軽油分のエネルギーをすべて代替するためには,約11万haのオイルパームのプランテーションが新たに必要となることが明らかとなった。
著者
仏書刊行会 編
出版者
仏書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第29巻 摩訶止観見聞添註(尊舜談 高観註), 1922
著者
上野 那美 森澤 勇介
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
環境工学総合シンポジウム講演論文集 2020.30 (ISSN:24242969)
巻号頁・発行日
pp.205, 2020 (Released:2020-12-25)

FT-NIR spectroscopy has the potential to be an index for the degree of the formation of BICs using the changes in the hydrogen bonding or CH stretching vibration in terminal groups between the materials (reagents such as cellulose and cellobiose, botanical wastes from coffee beans and tealeaves) and various processing conditions of BICs. FT-NIR spectroscopy is a grate method for the BICs analysis because it is able to measure the vibrational spectra without destruction and pre-preparation for the spectroscopic measurement. The other reason why NIR is that this spectroscopy is hard to include noises from some contained materials in BICs. In the other hand, NIR spectra need the statistics analysis called “chemometrics” because these spectra show very broad and overlapped band. Changes of these overlapped bands are easier to interpret than MIR regions because MIR region has larger amount of information from many kinds of vibrations. Results of the chemometrics need the careful consideration for the changes between analytical results and intentionally perturbations because sometimes chemometrics results do not have the chemical meaning. Raman and THz spectroscopy are used to understand the actual chemical changes with perturbations by comparing with the results of statistical analysis.
著者
Koshi Matsuoka Aki Watanabe Takayuki Kawaguchi Koji Misawa Keiichi Murakami Michinari Fukuda
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
Progress in Rehabilitation Medicine (ISSN:24321354)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.20200031, 2020 (Released:2020-12-22)
参考文献数
38
被引用文献数
1

Objectives: There are few scales that reflect the function of the stroke-affected arm as it relates to the performance of daily activities while also indicating the difficulty of scale items. In this study, we developed the Activities Specific Upper-extremity Hemiparesis Scale (ASUHS) to evaluate daily activities performable by the affected arm after stroke. We also clarified the validity, reliability, and item difficulty of the scale.Methods: The participants were 145 patients with stroke who were consecutively admitted to a convalescent rehabilitation ward. The unidimensionality of ASUHS was assessed by principal component analysis. Analyses of item discrimination and content validity were conducted to assess the overall validity. Reliability was evaluated by assessing internal consistency and inter-rater reliability. Item difficulties were determined by Rasch analysis.Results: Unidimensionality, high discrimination, and good content validity were shown for all items. ASUHS consists of a dominant hand scale and non-dominant hand scale. Both scales showed good internal consistency (Cronbach’s α coefficient = 0.99) and substantial inter-rater reliability (Cohen’s Kappa coefficient = 0.74 and 0.75, respectively). Item difficulty was determined as being in the range –8.71 to +5.18 logit.Conclusions: This study suggested good validity and reliability of ASUHS. Furthermore, because the item difficulties of daily activities performed by the affected arm were clarified, therapists can use ASUHS to identify the process that should be the next focus for training. Consequently, therapists may be able to train patients in daily activities that match the affected arm’s ability step by step rather than determining training activities empirically.
著者
岡崎 尚 前重 静彦 鈴木 寛一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.647-652, 1997-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
16
被引用文献数
6 7

ダイコンの加熱による軟化速度と柑橘ペクチンの加熱による分解速度を90℃~110℃の温度範囲で測定し,両者の関係を速度論的に比較した.(1) 加熱によるダイコンの軟化は,90℃~110℃の温度範囲で一次の速度式に近似した.(2) 加熱による柑橘ペクチンの分解は,90℃~110℃の温度範囲で一次の速度式に近似した.(3) 加熱によるダイコンの軟化速度と柑橘ペクチンの分解速度は,90℃~110℃の温度範囲でアレニウス式に従い,みかけの活性化エネルギーは,それぞれ146kJ・mol-1と144kJ・mol-1でほとんど等しかった.このことから,ダイコンの軟化はペクチンの分解によって支されている可能性が高い.
著者
津田 好子
出版者
東京女子大学論集編集委員会
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.145-164, 2013-09

本稿では、女性を対象とした教育放送番組のなかでの〈母親〉の位置づけの変容をたどり、それがその時々の社会政策を反映した理想の母親の再生産過程であったことを明らかにする。先行研究が明らかにしてきたように、「教育的」という特徴をもつ日本のテレビ番組のなかに、教育対象として女性が組み込まれていった過程には、戦中のラジオによる「母親教育」を源流とする連続的な流れがある。つまり戦中の「国民教化」政策の分析によって、日本でのメディアによる教育効果の大きさを確信したアメリカ占領軍は、その特徴を民主化政策に利用した。CIEは、女性を「民主的な子ども」を養育するための「賢母」になる存在と位置づけ、CIE指導下でNHKは「賢母」教育のための番組を制作し、放送した。本研究の分析の結果、教育テレビ番組「おかあさんの勉強室」(1965~1990年放送)は、先述の「賢母」教育を引き継いだ番組といえる。同番組は、「学校教育と家庭教育の接合」を目的に、母親を家庭内で〈子ども〉の養育を主として担う存在と位置づけた。学校放送番組である同番組は保護者を母親と位置づけ「賢母」が〈子ども〉を家庭の中でしつけるように求めた。また当時の社会教育政策は「放送の教育利用」を推進した。社会教育と結びつきの深かった同番組は、その時々の社会政策を背景とした母親規範の再生産を目的にしていたといえよう。