著者
福岡 安則 黒坂 愛衣
出版者
埼玉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
日本アジア研究 = Journal of Japanese & Asian studies : 埼玉大学大学院文化科学研究科博士後期課程紀要 (ISSN:13490028)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-19, 2020

福岡が2003 年に「ハンセン病問題に関する検証会議」の検討会委員を委嘱されて以降,黒坂とともに,ハンセン病回復者,その家族からの聞き取りを精力的に実施してきた。国の誤った政策により苦難の人生を歩んだ人たちの語りを記録に残すことは,社会学者のなすべき仕事の一つと考えたからだ。一定の問題事象をめぐって聞き取りを積み重ねていけば,ある段階で,あらたに得られる新しい情報はなくなり,「知識の飽和」状態に達すると思われがちであるが,「ハンセン病問題」での当事者の聞き取りが500 人を超えて,なお,まったく新しいライフストーリーに出くわす。本稿で紹介する2 人の女性は,2016 年に始まった「ハンセン病家族集団訴訟」の原告となった人たちである。2018 年12 月,大阪市内の弁護士事務所でNA(女性,1934 年10 月生まれ,聞き取り時点で84 歳)から話を聞いた。彼女は,1940 年7 月9 日,熊本の「本妙寺部落」が官憲によって狩込みを受けたとき,そこに5 歳の女の子としていた人である。ハンセン病罹患者であった両親とともに,群馬県草津の栗生楽泉園に送られ,そこの附属保育所に収容された。2019 年4 月,関西のある駅近くのカラオケボックスでKS(女性,聞き取り時点で79 歳)から話を聞いた。彼女は,群馬県草津の「湯之沢部落」で1940 年3 月に生まれている。両親がハンセン病罹患者であった。1941 年5月18 日に「湯之沢部落解散式」が挙行された半年後,両親とともに瀬戸内海の長島愛生園に移り住み,KS は愛生園の附属保育所に入れられた。1 歳半のときであった。この二人は,ハンセン病罹患者ではないが,ハンセン病療養所附属保育所に収容されるという《もう一つの隔離》の体験者である。それだけではない。この二人の語りは,熊本の「本妙寺部落」にしても草津の「湯之沢部落」にしても,ハンセン病罹患者とその家族たちが助け合ってコミュニティを形成し,そこで自分たちの意志で子産み子育てをするという《リプロダクティブ・ライツ》を実践していた空間であったことを如実に示している。国の強制隔離政策は,単に患者を《隔離収容》しただけではなく,かれらから《リプロダクティブ・ライツ》を剥奪する企てとしてあったことが了解されよう。Since I (Fukuoka) was commissioned as a member of the working group of the Verification Committee Concerning the Hansen's Disease Problem in 2003, I and Kurosaka have been energetically conducting interviews with recovered Hansen's disease patients and their families. We thought that it was one of the sociologists' tasks to record the interviews with the people who had gone through hardships due to the wrong policies of the government. They may think that newer information would not come when the interviews are repeatedly practiced on same issue and it will reach the stage of "saturation of knowledge." However, we still encounter a completely new life story after having interviews with more than 500 people on the Hansen's disease problems.The two women introduced in this research note are those who became plaintiffs of the Compensation Lawsuit against the Government by the Family Members of Hansen's Disease Ex-patients that began in 2016.In December 2018, we interviewed NA (female, born in October 1934, 84 years old at the time of the interview) at a law firm in Osaka. She was a 5-year-old girl on July 9, 1940 when the government arrested the people in Honmyoji Hamlet in Kumamoto. Together with her parents who were suffering from Hansen's disease, she was sent to National Sanatorium Kuriu-Rakusenen in Kusatsu, Gunma Prefecture, where she was housed in an attached nursing home.In April 2019, we had an interview with KS (female, 79 years old at the time of the interview) at a karaoke box near a station in the Kansai region. She was born in March 1940 in Yunosawa Hamlet in Kusatsu, Gunma Prefecture. Her parents were Hansen's disease patients. Half a year later after the "Yunosawa Hamlet Dissolution Ceremony" was held on May 18, 1941, she and her parents moved to National Sanatorium Nagashima-Aiseien in the Seto Inland Sea, and KS was placed in the nursing home attached to Aiseien. She was only 1 and a half years old at that time.These two were not Hansen's disease patients, but they have experienced "another segregation policy" by being housed in nursing homes attached to Hansen's disease sanatoriums. That is not all. The story of these two women reveals that Honmyoji Hamlet in Kumamoto and Yunosawa Hamlet in Kusatsu were the communities where Hansen's disease patients helped each other and enjoyed reproductive rights to give a birth to their children and raise them with their free will. We can see that the segregation policy was not just an enforced isolation of Hansen's disease patients, but also an attempt to strip the Reproductive Rights from them.
著者
奥井 佑
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.892-903, 2020-12-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
44

目的 本研究では就業状況による各年齢・時代・コホートでの日本人女性における婚姻率・出生率の違いを明らかにする。方法 1995年から2015年までの人口動態職業・産業別統計と国勢調査のデータを用い,20歳から49歳まで5歳おきの就業有無および配偶有無別で婚姻数・出生数データを取得した。ベイジアンAPCモデルをもとに無配偶婚姻率・有配偶出生率の変化を年齢,時代,コホートの3効果に分離するとともに,各年齢,時代,コホートにおける就業者の非就業者に対する無配偶婚姻率比および有配偶出生率比を算出した。結果 非就業者における無配偶婚姻率の時代効果は期間を通して減少し続けたが,就業者では2005年から上昇に転じていた。有配偶出生率に対する時代効果は就業状況によらず上昇したが,就業者の方が上昇率が大きかった。無配偶婚姻率のコホート効果は非就業者では1960年代,就業者では1970年代から減少しており,非就業者の方が減少率が大きかった。それにより,就業者の非就業者に対する無配偶婚姻率比は1946-1950年生まれで0.46(95%信頼区間:0.21,0.90)であったが,1991-1995年生まれで1.00(95%信頼区間:0.45,1.92)となっていた。一方,就業者の非就業者に対する有配偶出生率比は1946-1950年生まれで0.31(95%信頼区間:0.12,0.69)であったが,1991-1995年生まれで0.38(95%信頼区間:0.14,1.81)となっていた。結論 就業者と非就業者における無配偶婚姻率および有配偶出生率の差は時代が経過するほど,または若いコホートになるほど縮小する傾向にあり,とくに無配偶婚姻率に関する差の減少率が大きかった。一方で,有配偶者出生率については依然としてコホートを問わず就業有無により統計学的に有意な差があることがわかった。
著者
伊藤 海 村山 洋史 田口 敦子 大森 純子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.860-870, 2020-12-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
33

目的 高齢化の進展に伴い,心身機能の低下により日常生活に支援を必要とする高齢者が増加していることから,近年,生活支援の担い手となる地域住民の拡充が求められている。中でも,生活支援の担い手となり得る地域住民として,高齢者が携わることに期待が寄せられている。本研究では,生活支援の担い手への意向を持つ高齢者の特性を,細分類した生活支援内容ごとに明らかにすることを目的とした。方法 対象者は吉島地区に在住し,要介護1~5の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者全数である801人とした。自治会長および隣組長による全戸訪問にて,調査票を配布・回収した。データの収集期間は2018年6~7月であった。調査項目は,基本属性,健康状態,近隣との社会関係,8種類の生活支援内容であった。分析は,実施意向の有無を従属変数,基本属性,健康状態,近隣付き合いの程度の各変数を独立変数とするロジスティック回帰分析を支援内容ごとに行った。結果 分析対象者は586人であった(有効回答率73.2%)。実施意向に関連していた特性は,性別では,女性であるほど「話し相手・困った時の相談相手」,「食事の準備や掃除・洗濯の手伝い」,「気軽に参加できる集まりやイベントに誘う」への意向が強く,「庭仕事や畑作業などの外回り作業」,「雪かき・雪下ろし」への意向が弱かった。暮らし向きでは,よいと回答した人ほど「通院の送迎や付き添い」への意向が弱く,最終学歴が高いほど「話し相手・困った時の相談相手」,「見守り・安否確認」への意向が強かった。手段的自立評価が高いほど「話し相手・困った時の相談相手」,「見守り・安否確認」,「気軽に参加できる集まりやイベントに誘う」,「買い物の同行・代行」への意向が強かった。また,「食事の準備や掃除・洗濯の手伝い」「庭仕事や畑作業などの外回り作業」以外の6種類の支援内容では,近隣との付き合いの程度が密である者ほど実施意向が有意に強かった。結論 支援内容によって意向する高齢者の特性が異なることが明らかになった。これらを考慮した上で,担い手の募集や仲介を行うことにより,生活支援への担い手の拡充が期待できる。
著者
渡邉 浩司
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.47, pp.495-508, 2015

キリスト教の聖人の祝日が記載されている中世の暦は,キリスト教世界の記憶と異教世界の記憶がぶつかり合う場であり,ヨーロッパの文化を理解するための重要な鍵となっている。本稿は,暦上でそれぞれ6月24日と12月27日に祝日を持つ,洗礼者ヨハネと福音史家ヨハネという2 人の聖ヨハネをめぐる神話学的考察である。2人の聖ヨハネの祝日がほぼ「夏至」と「冬至」に対応するのは偶然ではない。西洋の占星術伝承によれば,「夏至」と「冬至」はそれぞれ「蟹座」と「山羊座」に対応するため,2人の聖ヨハネは「至点の扉」の門番の役割を果たしているのである。門番の雛形は,2つの顔を持つ古代ローマの神ヤヌスであり,中世のキリスト教世界はヤヌスを 人の聖ヨハネとして再解釈した。一方で「蟹座」と「山羊座」の守護星がそれぞれ「月」と「土星」であることは,2人の聖ヨハネが「メランコリー」の影響下にあったことも示唆している。
著者
山本 洋司 渡辺 広希 高田 祐輔 梅本 安則
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.615-623, 2020 (Released:2020-12-18)
参考文献数
38

【目的】脳卒中患者に対する早期離床を発症後48 時間以内の起立と定義し,有効性および安全性について検証すること。【方法】対象は脳卒中患者とし,早期離床導入前群(以下,導入前群)と早期離床導入後群(以下,導入後群)に分けた。主要アウトカムは退院時のBarthel Index ならびにmRS とした。副次項目は不動関連の合併症ならびに神経学的有害事象とした。【結果】導入前群110 名,導入後群93 名であった。Barthel Index は導入前群と比較して導入後群で有意に高かった。mRS(0–1) に該当する者は導入前群と比較して導入後群で有意に多かった。不動関連の合併症は導入前群と比較して導入後群で有意に少なかった。神経学的有害事象は両群間で有意差を認めなかった。【結論】発症後48 時間以内の起立と定義した早期離床は,脳卒中患者においてテント上病変ならびに保存的治療例で安全に実施可能で機能的予後を良好にし,不動関連の合併症を減少させる。
著者
李 在鎬
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.147-162, 2019

本研究では,「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(BCCWJ: Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese)に含まれている教科書データ412件について日本語教育のためのリーダビリティと語彙レベルの分布を計量的に分析した.分析の結果,次の4点が明らかになった.1)学年が上がるに従って,日本語教育的観点からみた文章の難易度も上がっていくこと,2)小1~高校までの10学年は,5つのグループに分けられること,3)「社会」や「数学」や「理科」などは比較的難しい文章で構成されているのに対して,「国語」や「芸術 」などは比較的読みやすい文章で構成されていること,4)初級語彙は学年が上がるに従って,減少していくのに対して,中級語彙は増えていく傾向が見られたことである.こうした計量的分析結果は,年少者日本語教育の教科学習における日本語指導の範囲を決めるための基礎資料になると考えられる.
著者
森川 尚子
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌 (ISSN:18813968)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.102-103, 2020

An accurate understanding of the meaning of an example sentence cannot be separated from the example's surrounding context. In instruction fostering comprehension of an example sentence, an accurate understanding of the sentence's meaning must occur in combination with its background context. In this study, advanced learners were asked to rank JLPT N1-level textbook example sentences and reconstruct their contexts. It was shown that examples that are easy to comprehend have high empathy to learners, and there is strong immediacy between understanding of the meaning of the sentence and evocation of its context.
著者
小泉 直子 井上 芳樹 塚本 利之
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.667-676, 1983-08-30 (Released:2009-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Diurnal variations were recorded of 10 substances from the urine of 22 healthy women, ranging from 32 to 65 years of age. Twenty-four-hour urine collections were done at each micturition and blood samples were taken on the same day.From the data, it was examined whether the use of creatinine ratio as a measure of the completeness of a 24-hour urine samples was reliable.The results were as follows:1. Maximum/minimum concentration ratios of various urinary substances were 1.2-4.6, 1.9-9.0, 1.3-11, 1.3-8.0, 1.6-12, 1.5-12, 1.7-11, 1.8-9.8, and 2.0-12, for (specific gravity-1) ×1, 000, creatinine, urea nitrogen, uric acid, calcium, inorganic phosphorus, cadmium, zinc, and copper, respectively. There were very large individual variations-2.6-78-for the ratios of urinary β2-microglobulin.2. Blood urea nitrogen slightly increased with age, but other substances showed no such changes.3. The mean values of each substances matched between those taken at individual micturitions and those taken over 24 hours.4. Concentrations of substances in early morning urine did not always show the high levels compared with those of a 24-hour urine.5. Creatinine concentrations decreased with age. For elderly women, this fact resulted the high values from correction by creatinine for the concentrations of urinary substances.6. Wide diurnal variations for values corrected by specific gravity or creatinine were observed of urinary 10 substances, and such substances were inaffective in correcting urinary concentrations.7. The mean specific gravity of a 24-hour urine of all subjects was 1.018. For elderly women, the value calculated by specific gravity, that is, the one multiplied by 18/(G-1)×1, 000, was more accurate than the creatinine ratio.8. Urinary protein or glucose had almost no influence on specific gravity, except in the case of glucose concentrations over 500mg/dl.
著者
渡邊 太 Watanabe Futoshi ワタナベ フトシ
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.21, pp.225-241, 2000

一九七〇年代から発展したカルト宗教は、外部社会とのあいだに高い緊張を生じた。とりわけ、信者の家族がカルトと激しく対立する。何人かの心理学者や精神科医は、洗脳やマインド・コントロールによって若者を騙して入信させているとしてカルトを批判する。子どもをカルトに奪われた家族は、騙されている子どもを助け出してやらなければならないと考える。カルト信者の救出には、ディプログラミングや救出カウンセリングといった方法がもちいられる。元信者たちは、脱会後に様ざまな心理的苦悩やコミュニケーションの困難に直面する。脱会者の苦悩は、自己の存在の根本的な安定性が失われることによる。本稿は、統一教会信者の救出活動を事例として、このポスト・カルト問題と救出カウンセリングのコミュニケーション・パターンとの関連をあきらかにする。救出カウンセリングでは、R ・D ・レインが指摘するような、人を「安住しえない境地」に置くコミュニケーション・パターンが繰り返される。その結果、脱会者は自己のアイデンティティについての確かな感覚を得ることができなくなるのである。カルト信者を救出する方法は、初期の強制的なやり方から、家族の愛による救出を強調する、より穏やかな方法へと移行してきた。だが、家族の密接な結びつきは、人を「安住しえない境地」に置くコミュニケーションを生み出しやすい。そのことが、ポスト・カルト問題の解決を困難にしている。
著者
横田 孝義
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_649-I_657, 2012
被引用文献数
1

度の関係を明確にする.特に,都市高速道路の利用有無の実態をトリップの終端の方向別に評価したり,道路のサービスレベルの不均一性,方向依存性を明確にすることを志向して新たな分析手法を考案した.実際に収集した貨物車両のプローブ情報を元に,具体例を挙げて議論を行う.この手法を展開することにより,貨物車両に対する道路網のサービス水準が可視化,定量化されることで課題が明確化され,さらには新規供用予定の道路の効果の推察,あるいは新たな路線のニーズ把握などが可能になると考えられる.
著者
木村 駿
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.889, pp.46-49, 2008-12-08

10月1日未明に大阪市・難波で発生した個室ビデオ店火災。ビルの1階で被害が拡大した背景には何があったのか。2001年の新宿・歌舞伎町の雑居ビル火災、07年の宝塚市のカラオケボックス火災などに続く今回の事件は、雑居ビルや個室型店舗での防災対策に、改めて課題を突き付けている。(木村駿) 買い物を楽しむ若者でにぎわいを見せる大阪市内の商業施設「なんばパークス」。
著者
田中 康仁 小谷 通泰 中村 賢一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.22, pp.715-722, 2005

環境悪化や交通混雑などの貨物車に起因する問題を緩和するための一方策として、配車・配送計画の最適化による貨物車交通の削減が挙げられる。そこで本研究は、運転者の作業状況とリンクした貨物車両のプローブデータを用いて、配車・配送計画作成のために必要となる、貨物車の配送活動に関する基礎的な特性を詳細に把握した。具体的には、中長距離による2地点間輸送と短距離による多地点配送を行う事業形態の異なる2事業者にわけて、運行パターンや走行経路、配送箇所数といった基本特性を把握するとともに、配車・配送計画を構築する上で重要となる、(1) 走行速度の変動、(2) 目的施設への到着時刻の分布、(3) 荷捌き所要時間の分布、(4) 目的施設到着の定時陸確保のための行動特性、を明らかにした。
著者
相浦 宣徳 谷口 栄一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.22, pp.633-642, 2005

本研究では、地区物流における路上荷さばきを対象とし、貨物車両および貨物車両以外の車両 (以下、他車両) の駐停車行動を考慮した路上荷さばき施設配置計画モデルを構築した。他車両の駐停車行動を対象区域における交通特性に基づき表現することにより、ルール設定基準、啓発活動ならびに情報技術活用の効果が検討可能となった。京都市四条通に本モデルを適用し、「他車両に対する荷さばき用区画の使用規制」、「予約システムの導入」の各々について効果および影響を検討した結果、使用規制の取締り、予約システムにより貨物車両に要する費用は概ね減少するが、使用規制の取締りの強度レベルまたは、予約システム利用率によっては、システム全体において負の便益が発生することが確認できた。