著者
山本 冴里
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.149, pp.1-15, 2011

<p> 本稿は,主に計量テキスト分析の手法によって,戦後国会の「日本語教育」言及会議における論点を調査し,また,そこで「日本語教育」に言及した人々(アクター)が誰であったのかを調べた結果を記したものである。調査の結果,アクターが文部省関係者を中心としていたことや,時期によって「日本語教育」言及会議数には大きな増減があったこと,また全時期の議論にほぼ通底する使用語彙と,各時期を特徴づける独特の語彙の存在が明らかになった。さらに「日本語教育」言及会議数急増期については,該当時期に特徴的な語を析出し,その特徴的な語と語の関係についてまとめた。</p>
著者
木下 栄蔵
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.111-115, 2006-02-01
参考文献数
3
被引用文献数
1

2005年度プロ野球セ・リーグのペナントレースは阪神タイガースが厳しい戦いを勝ち抜き優勝しました.本連載の第2回目は, 阪神タイガースの事情にお詳しい木下栄蔵氏に, 打者サイドの3つの指標(OERA値等)と投手サイドの3つの指標(OERA値等)を用いた分析に基づき, 独自の視点からその優勝の要因について解説していただきました.
著者
安里 のり子 ウエルトハイマー アンドリュー 根本 彰
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.19-32, 2011

2006年に出版されベストセラーになった有川浩の『図書館戦争』シリーズを題材にこの小説が日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」に触発されて書かれたことからそこで表現されている暴力的イメージの源泉を分析した。「宣言」は,1953年に埼玉県図書館協会が「図書館憲章案」として提案したものが元になり,1954年の図書館大会および日本図書館協会総会で激論の後に採択された。本稿ではこれらの案文をその社会的背景に照らし分析した結果,有川が「宣言」から読み取ったものは,その文言に込められた当時の図書館員の潜在的なメンタリティーである「権力に抵抗する図書館」という職務理念であると指摘した。また,当時の議論では最初使われた「抵抗」という表現が,検討過程で外的な要因に配慮し,図書館自らの主体性を強調することから他の言葉に置き換えられたことを明らかにした。
著者
魚崎 祐子 野嶋 栄一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.165-170, 2000-08-20
被引用文献数
11

テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が文章理解に及ぼす影響を実験的に検討した.その際プロンプトという観点から, テキストによって予め与えられる下線強調と学習者自身がひく下線との効果の違いについて比較した.実験手順としては制限時間内のテキスト読解を行い, 直後と1週間後に再生テストを行った.その結果, 限られた時間の中で全体を把握するという点では下線をひくことの影響が見られず, テキストにつけられた下線は再生率を高めるがその効果は長く続くものではないということがわかった.また, 読解時間が長くなるにつれて下線部からの再生の割合が高くなっていくということが明らかになった.
著者
小野 晃司 渡辺 一徳 星住 英夫 高田 英樹 池辺 伸一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.133-151, 1995
参考文献数
41
被引用文献数
21

We describe in this paper the character of ash eruption of Nakadake volcano presently going on and maintain that the products of the volcano during the recent geologic past are the main constituents of ashy soils distributed around, especially to the east of, the volcano. Nakadake volcano, the only active central cone of Aso caldera, mainly discharges black, sandy essential ash of basaltic andesite during its active period. The ash is the most voluminous constituent of the products of Nakadake through its activity of recent more than 20,000 years. We call ash eruption for the activity which discharges dominantly ash. The ash is divided into three groups : block-type ash, splash-type ash, and free crystals. The block-type ash, most common, is polyhedral surrounded by a few flat planes. It is formed by brittle fracturing of semi-solid top part of the magma column. While, the splash-type ash, discharged only during the very active phase in active periods, is derived from liquid magma which underlies the semi-solid top of the column. The ash is transported by gas stream from the magma in a quasi-steady state or intermittently, and is distributed around Nakadake volcano in a near-circular pattern by a low eruption column usually less than 1,000 m in height. Long-term thickness contours of the ashy soil from Nakadake volcano in three time intervals, separated by the present earth surface and three ash or pumice layers, of recent more than 20,000 years also show near-circular pattern but a little elongated to the east. 'Loam beds', mainly composed of decomposed and argillized volcanic ash, are said to be formed by accumulation of aeolian dusts during periods of no eruption in volcanic districts. But, loam beds (Akaboku) and black humic soils (Kuroboku) distributed around Aso volcano are composed mainly of primary fall-out deposits of ash or pumice along with aeolian dusts. Ash eruption of Nakadake mostly produces sandy ash rather continuously without long time break but in small rate of discharge. A correlation of detailed columnar sections eastwards of Nakadake crater shows most single strata of ashy soils, light brown- to black-colored, thin according to the increase of distance from the source crater. The ash, especially very fine ash distributed in the distal area, easily decompose and lose primary stratification to form a massive layer which is hardly discernible from aeolian loam beds by their close resemblance. Not only fine ash layers but Plinian pumice fall layers form 'loam' beds which are not distinguishable with adjacent aeolian beds by further decomposition. The thickness contours of the Kanto loam elongate and thin eastward from Fuji volcano over the Kanto plain. The thickness of loam beds changes regionally, thicker in volcanic areas and thinner in non-volcanic areas. These facts suggest contributions of primary pyroclastic falls for thickening of 'loam beds'
著者
安藤 彰男 今井 亨 小林 彰夫 本間 真一 後藤 淳 清山 信正 三島 剛 小早川 健 佐藤 庄衛 尾上 和穂 世木 寛之 今井 篤 松井 淳 中村 章 田中 英輝 都木 徹 宮坂 栄一 磯野 春雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.877-887, 2001-06-01
被引用文献数
57

テレビニュース番組に対する字幕放送を実現するためには, リアルタイムで字幕原稿を作成する必要がある.欧米では特殊なキーボード入力により, ニュースの字幕原稿が作成されているが, 日本語の場合には, 仮名漢字変換などに時間がかかるため, アナウンサーの声に追従して字幕原稿を入力することは難しい.そこで, 音声認識を利用した, 放送ニュース番組用の字幕制作システムを開発した.このシステムは, アナウンサーの音声をリアルタイムで認識し, 認識結果中の認識誤りを即座に人手で修正して, 字幕原稿を作成するシステムである.NHKでは, 本システムを利用して, 平成12年3月27日から, ニュース番組「ニュース7」の字幕放送を開始した.
著者
鈴木 正
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.598-676, 2008-07-20
被引用文献数
1

組み合わせ最適化問題に物理的な過程を応用する方法がある。中でもシミュレーティッドアニーリングはよく知られている。シミュレーティッドアニーリングは熱揺らぎを制御して最適化問題の答えを導く。まず組み合わせ最適化問題を表すハミルトニアンを作り、それに相当する仮想的な物理系の高温の平衡状態を作る。温度が十分に高ければ平衡状態は容易に得られる。そこから系を徐々に冷却し、それに伴う系の緩和を通じて最後にハミルトニアンの基底状態に到達させる。比較的最近、シミュレーティッドアニーリングの類推として量子アニーリングが提案された。この方法は磁場などにより系にトンネル効果(運動エネルギー)を導入し、それを制御することで最適化問題を解く。どのように制御するかというと、まず運動エネルギーがハミルトニアンの中で支配的になるようにし、そこから時間とともに徐々に運動エネルギーの重みが小さくなるようにする。運動エネルギーが支配的な初期ハミルトニアンの基底状態は簡単にわかる。その状態を初期状態として状態を時間発展させ、運動エネルギーの重みが無くなった時点での状態を答えとする。状態が断熱的に発展すれば、終状態は古典ハミルトニアンの基底状態となる。これら二つの方法は基本的にどんな問題にも使える汎用的なものである。最近の研究の進展によって量子アニーリングの性質が徐々に明らかになってきている。注目すべきは古典的なシミュレーティッドアニーリングよりも量子力学的な量子アニーリングの方が終状態を早く基底状態に近づけることである。このことは現時点で一般的に証明されたわけではないが、数値的な状況証拠に加え、解析的な証拠も得られている。本論文ではまずシミュレーティッドアニーリングと量子アニーリングの方法について述べる。次に量子アニーリングの本質である量子状態の断熱発展に関する基礎理論をまとめる。後半では量子力学の断熱定理に基づいて有限系で一般的に成り立つ量子アニーリング後の残留エネルギーの減少則を導く。さらに1次元ランダムイジング模型を例題として、熱力学極限で量子アニーリングとシミュレーティッドアニーリングのダイナミクスを解析的に比較する。それによって量子アニーリングがシミュレーティッドアニーリングより早いことに対する解析的な証拠を与える。
著者
厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-28, 2014

飯塚事件におけるT氏の目撃供述の正確さの心理学的鑑定を行った。飯塚事件とは、小学生2女児が自宅から小学校に登校中に行方不明になり、翌日死体で発見された事件である。T氏の供述とは、この二人の所有物が遺棄されていた場所を事件当日のお昼前に、国道332号の山の中のワインディングロードを軽自動車で走行中(25KM)に、左に急に曲がる下りの坂道で目撃したというものである。目撃から12日後には事件担当の刑事を現場に案内し、その場所を迷いながらも特定し、目撃した人物と車の詳細について供述した。問題となるのは、その人物および停車中の供述内容が極めて詳細であり、そのような詳細な出来事の記憶が果たして本人の経験した目撃に由来するのかという点である。この問題を解決するために、目撃されたとされる場所を利用して、30名の実験参加者によるフィールド実験を行った。実験ではT氏の視認状況を再現することを試みた。その結果、T氏のような詳細を報告できる者は一人もいなかった。この目撃供述は、T氏の面接以前に犯人のものとされる車を調べた警察官によって作成されたことが、本鑑定書の作成後にわかった。このことはその捜査官によって車の詳細に関する誘導が行われた可能性を推察させる。