著者
小川 順子 森 伸介 鈴木 正昭
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2004年秋の大会
巻号頁・発行日
pp.5, 2004 (Released:2004-11-19)

一般人に原子力発電の理解を求めるために、しばしば原子力発電のリスクが様々な「生活行為のリスク」と比較される。「生活行為のリスク」は、1979年米国ピッツバーグ大学Cohenによって計算された「様々なリスクの比較表」に載っている値が一般によく使われており、原子力の広報にも役立ってきた。しかしながら、これらは25年前のしかも米国のデータで計算されたリスクである。そこで我々は、現代日本の状況に合った日本におけるリスク表に改訂することを目的に、「ガン」、「心臓病」、「自動車事故」、「火事」、「脳卒中」、「肺炎/インフルエンザ」、「エイズ」、「独身(男性)」、「独身(女性)」「喫煙」、「肥満」、「飲酒」、「自殺」、「殺人」、「航空機墜落事故」、「原子力産業」、「自然放射線」、「地層処分」、「大気汚染」、「屋内煙検知器」、「エアバッグ」の21項目のリスクについて損失寿命を算出した。
著者
松浦 友紀子 伊吾田 宏正 宇野 裕之 赤坂 猛 鈴木 正嗣 東谷 宗光 ヒーリー ノーマン
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.61-69, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

野生動物管理のための個体数調整捕獲が各地で行われているが,十分な成果を上げている例は少ない.その要因の一つとして,野生動物管理者や捕獲の担い手の育成不足があげられる.そこで,野生動物管理の担い手像を考えるシンポジウムを2015年2月14日に札幌で開催したので,その内容を報告する.シンポジウムでは,イングランド森林委員会で国有林のシカ類管理を統括しているノーマン・ヒーリー(Norman Healy)氏が,英国の野生動物管理者の教育システム,シカ猟認証制度(Deer Stalking Certificate)の概要及びシカ類を資源利用して得た収入を森林管理に還元する仕組み等について基調講演を行った.北海道の取組みについては,人材育成の必要性は認識されていたものの,狩猟者の育成にとどまり十分には為されてこなかった実情について報告した.また,現状ではニホンジカ(Cervus nippon)の個体群管理の目標達成が困難であること,その要因として実行体制と人的資源の欠如があることを指摘した.さらに,今後のニホンジカ管理においては,趣味の狩猟者である「ハンター」と,個体数調整捕獲に職業として従事する「カラー」を明確に区分し,カラーを捕獲プログラムの中で活用する体制を作る必要性を指摘した.これらを踏まえて,具体的な人材育成の取り組みとして,2015年度から開始が予定される新しいシカ捕獲認証について話題提供をした.この認証制度は,イングランドのDeer Stalking Certificateをモデルとしながら日本向けに改善したものである.以上から,捕獲をコーディネートできる人材やカラーなど,日本の野生動物管理を担う人材育成の仕組みを提案した.
著者
中下 留美子 鈴木 彌生子 林 秀剛 泉山 茂之 中川 恒祐 八代田 千鶴 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-48, 2010-06-30
参考文献数
20

2009年9月19日,乗鞍岳の畳平(岐阜県高山市)で発生したツキノワグマ(<i>Ursus thibetanus</i>)による人身事故について,加害個体の炭素および窒素安定同位体比による食性解析を行った.体毛の炭素・窒素安定同位体比は,他の北アルプスの自然個体と同様の値を示した.さらに,体毛の成長過程に沿って切り分けて分析を行った結果についても,過去2年間の食性履歴において残飯に依存した形跡は見られなかった.当該個体は,観光客や食堂から出る残飯等に餌付いた可能性が疑われていたが,そのような経歴の無い,高山帯を生息圏の一部として利用する個体である可能性が高いことが明らかとなった.<br>
著者
松田 元 吉永 明里 白土 みつえ 山内 格 高橋 康一 中村 幸雄 鈴木 正彦
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.417-424, 1989-12-30 (Released:2017-02-13)

われわれは子宮脱の手術術式として主として膣式子宮全摘出術と前・後腔壁縫縮術を施行している。今回,子宮脱手術症例52例にアンケート調査を行い,回答を得た43例に対して術後長期予後に関する検討を行い,次の知見を得た。1)37例は,脱垂状態が改善したが,膣壁の膨隆といった極く軽度のものを含めると6例が再発を訴えた。2)排尿異常を訴えた36例中29例は改善し,残り7例は術後も症状の持続を訴えたが,うち5例は経過観察のみで症状は消失した。3)術後新たに3例が尿失禁を訴えた。4)性交障害を訴えた6例中2例は改善し,2例は症状が持続し,2例は無回答であった。5)術後後遺症として新たに2例が性交障害を訴えた。以上から大半の症例は術後予後はほぼ良好と思われるが,尿失禁,脱垂の再発,あるいは性交障害等,術後障害を残す症例も認められ,手術術式に関して若干の改善の余地があるものと思われた。
著者
鈴木 正
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.598-676, 2008-07-20
被引用文献数
1

組み合わせ最適化問題に物理的な過程を応用する方法がある。中でもシミュレーティッドアニーリングはよく知られている。シミュレーティッドアニーリングは熱揺らぎを制御して最適化問題の答えを導く。まず組み合わせ最適化問題を表すハミルトニアンを作り、それに相当する仮想的な物理系の高温の平衡状態を作る。温度が十分に高ければ平衡状態は容易に得られる。そこから系を徐々に冷却し、それに伴う系の緩和を通じて最後にハミルトニアンの基底状態に到達させる。比較的最近、シミュレーティッドアニーリングの類推として量子アニーリングが提案された。この方法は磁場などにより系にトンネル効果(運動エネルギー)を導入し、それを制御することで最適化問題を解く。どのように制御するかというと、まず運動エネルギーがハミルトニアンの中で支配的になるようにし、そこから時間とともに徐々に運動エネルギーの重みが小さくなるようにする。運動エネルギーが支配的な初期ハミルトニアンの基底状態は簡単にわかる。その状態を初期状態として状態を時間発展させ、運動エネルギーの重みが無くなった時点での状態を答えとする。状態が断熱的に発展すれば、終状態は古典ハミルトニアンの基底状態となる。これら二つの方法は基本的にどんな問題にも使える汎用的なものである。最近の研究の進展によって量子アニーリングの性質が徐々に明らかになってきている。注目すべきは古典的なシミュレーティッドアニーリングよりも量子力学的な量子アニーリングの方が終状態を早く基底状態に近づけることである。このことは現時点で一般的に証明されたわけではないが、数値的な状況証拠に加え、解析的な証拠も得られている。本論文ではまずシミュレーティッドアニーリングと量子アニーリングの方法について述べる。次に量子アニーリングの本質である量子状態の断熱発展に関する基礎理論をまとめる。後半では量子力学の断熱定理に基づいて有限系で一般的に成り立つ量子アニーリング後の残留エネルギーの減少則を導く。さらに1次元ランダムイジング模型を例題として、熱力学極限で量子アニーリングとシミュレーティッドアニーリングのダイナミクスを解析的に比較する。それによって量子アニーリングがシミュレーティッドアニーリングより早いことに対する解析的な証拠を与える。
著者
中村 聡史 鈴木 正明 小松 孝徳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2599-2609, 2016-12-15

綺麗な文字を書くということに日本人の多くは興味を持っていると考えられる.さて,綺麗な文字とはどのような文字だろうか?本研究では,人の手書き文字をフーリエ級数展開によって数式化し,その式の平均を計算することによって,平均的な文字を生成することを可能とした.また,その平均文字を利用した実験により,実際に書いた文字よりユーザの平均的な文字が高く評価されること,ユーザの平均文字より全体としての平均文字が高く評価されることを明らかにした.さらに,ほとんどの人が自身の文字を高く評価する傾向があることも明らかにした.
著者
鈴木 正士
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.40, pp.118-134, 1996

Al final de la segunda parte de <I>Don Quijote</I>, Don Quijote se muere volviendo a ser Alonso Quijano después de experimentar los tres viajes de aventura.<BR>Sobre este aspecto, tengo dos dudas.<BR>¿Existe una razón inevitable para que tenga que morir en el texto? y por qué vuelve a ser Alonso Quijano justamente antes de morir? Estas dos cuestiones pretendo aclararlas en este trabajo.<BR>Pienso que una clave para resolverlas se encuentra en estos dos acontecimientos; la segunda mentira de Sancho en el capítulo X y la aparición del verdader mundo de caballerías en los capitulosLX a LXIII.<BR>Don Quijote no puede existir a no ser que cambie todo su alrededor, el mundo no caballeresco, en el de los libros de caballerias porque él es un personaje ficticio que nace después de leer demasiados libros.<BR>Sin embargo, en el capitulo X, Sancho le miente a Quijote diciendo que es Dulcinea una de las tres labradoras que van delante de ellos. Es decir, Sancho afirma, sin querer, a través de esta mentira que el mundo no caballeresco para Quijote es el de libros de caballerias. Por esta mentira, Don Quijote no puede convertir el mundo no caballeresco en el de libros de caballerias ni puede creer lo que yen los ojos, o sea, a si mismo.<BR>Además en los cap. LX a LXIII salen un caballero verdadero y unos turcos. Por primera vez en este texto, Don Quijote se topa con el verdader mundo de caballerias, no con el de libros de caballerias. Por este suceso, no solamente no se debilita el sino que su misma existencia se esfuma. Por consiguiente, Don Quijote es derrotado por él Caballero de Blanca Luna con mas facilidad de lo que se puede imginar.<BR>A pesar de eso, Don Quijote continúa viviendo. El protagonista del libro de caballerias puede vivir en tanto que existe su dama. Pero al final, en el cap.<BR>LXXIII, Quijote se convence de que no hay Dulcinea en su mundo. Si el caballero no tiene su dama, no puede existir.<BR>De esta manera, Don Quijote, que está cansado por no poder crear el mundo de libros de caballerias, se muere después de volver a ser Alonso Quijano.
著者
菅野 純 梅田 ゆみ 鈴木 正明 武田 知起 後藤 裕子 山野 荘太郎 平井 繁行 竹内 哲也 高橋 祐次
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第46回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S6-4, 2019 (Released:2019-07-10)

架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物(以下、ポリマー)の包装作業に従事した労働者6名が肺繊維化、間質性肺炎、肺気腫、気胸等を発症した事から、2017年4月に、同種事案の防止のため、厚生労働省労働基準局安全衛生部からプレスリリース(1,2)があった。6名は曝露開始から2年前後の短期間に発症し、年齢は20代~40代であった。このポリマーは、アクリル酸を直鎖重合し、更に網目状に架橋した巨大分子で、一次粒子はナノ粒子の定義に該当すると考えられる。外観は白い微細粉末である。肺に対する毒性文献情報は確認されていない。吸湿吸水性が高く難分解性で、消化管から吸収されず経口毒性は殆ど無いとされる。 ここでは、当該ポリマーの肺毒性の成立過程と発生機序の解明を目的とした研究のうち、ラット及びマウスの肺曝露実験の中間報告を行う。曝露経路は、ポリマーが惹起する生体反応の概略を把握する目的での気管内投与(IT)、ヒトで生じた肺病変の成立過程と発生機序と定量的用量作用関係を明らかにする目的でのTaquann直噴全身曝露吸入(WB)の二通りを採用した。IT検体(1.5g/L)は懸濁し光顕下で細菌大の粒子を認めた。単回IT(ラット100~300μg/匹、マウス15~45μg/匹)の直後より(分布に偏り大)ポリマー貪食マクロファージ(PLMφ)の崩壊像と共に肺胞内に強い炎症細胞浸潤を認め、1週に最大となり4週に向けて減弱した。それに交代して肺胞内PLMφ集簇巣形成、Ⅱ型肺胞上皮の増加(TTF1、Tm4sf1 陽性反応性過形成)の出現を認めた。以上、ポリマーの肺胞内半減期は長く組織反応を伴う炎症の遷延を認めた。IT反復26週観察、及び、全身曝露吸入の結果を合わせて報告する。1.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11305000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Kagakubushitsutaisakuka/0000163637.pdf2.同/0000163635.pdf
著者
名取 伸行 花輪 和己 鈴木 正彦 花輪 剛久 小口 敏夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.289-296, 2008 (Released:2009-09-04)
参考文献数
6
被引用文献数
8 3

A questionnaire survey of inpatients of widely varying ages was conducted to investigate the ease of taking internal medicines and desired dosage forms.A similar questionnaire survey of nurses and pharmacists working in a university hospital was also conducted to compare awareness of dosage forms by profession.The results of this survey clearly demonstrated the difference in awareness of patient preference regarding internal medicines among pediatric nurses,nurses working at other hospital wards,and pharmacists.This discrepancy seemed to reflect the difference in awareness of different health care workers concerning impairment of deglutition capability with aging.Awareness of patients' desired dosage forms also varied between pharmacists and nurses,which could be due to the difference in knowledge of pharmaceutics between these 2 professions.Based on the results of this study,it was felt that pharmacists should provide medication instruction to individual patients and provide pharmaceutical information to nurses,and that information sharing is important to ensuring that proper pharmaceutical care is conducted in the hospital.
著者
伊藤 英之 鈴木 正貴 佐藤 凌太 杉本 伸一 関 博充
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.561-574, 2015-08-25 (Released:2015-09-17)
参考文献数
13
被引用文献数
5

This study is based on an Internet survey of prospective tourists visiting the Sanriku Geopark, which was conducted to understand their travel habits, impressions of the Sanriku coastal area, general awareness of the Geopark, and motivations for travelling. A principal component analysis (PCA) is also performed using a multivariate analysis technique to examine the characteristics of tourists and images of travel destinations they would want to visit in the future. The results demonstrate low awareness of the Sanriku Geopark, especially in metropolitan areas. The majority of respondents do not have a definitive image of the Geopark. The results also indicate that tourists visiting the Sanriku coast are primarily from neighboring prefectures, such as Miyagi and Aomori, as well as from the Tokyo metropolitan area. This suggests that increasing informational awareness of the Sanriku Geopark in these areas would be effective way for attracting more visitors. Regarding their travel habits, the respondents' answers indicate that they mostly go on two-day family trips in a private vehicle. In the majority of cases, their purpose for travelling is “to feel refreshed” or “to eat delicious food.” Based on these data, a PCA employing variance-covariance matrices reveals that tourists are basically seeking “extraordinary” and “healing” experiences from their travels. The principal component scores from the PCA are used and the average scores of each gender are calculated. A t-test reports no significant difference between genders with regard to seeking an “extraordinary” experience, but it identifies a trend among women of seeking “healing” experiences more actively than men (p < 0.10) at a level of 0.1%. On the other hand, regarding the tourists' impressions of the Sanriku coastal area, the results of the multivariate analysis suggest that prospective visitors tend to perceive the coastal area comprehensively in terms of both “nature and scenery” and “local area and culture” to the same degree as those who have previously visited the place. For the area to be resuscitated as a tourist destination, it is important to construct a regional brand and devise strategies that will lead to the region's rebirth as a top travel destination. This can be achieved by offering higher quality experiences and services without destroying the traditional image of the Sanriku coast.
著者
遠藤 邦彦 千葉 達朗 杉中 佑輔 須貝 俊彦 鈴木 毅彦 上杉 陽 石綿 しげ子 中山 俊雄 舟津 太郎 大里 重人 鈴木 正章 野口 真利江 佐藤 明夫 近藤 玲介 堀 伸三郎
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.353-375, 2019-12-01 (Released:2019-12-24)
参考文献数
77
被引用文献数
2

国土地理院の5m数値標高モデルを用いて作成された武蔵野台地の各種地形図により,武蔵野台地の地形区分を1m等高線の精度で行った.同時にデジタル化された多数のボーリングデータから各地形面を構成する地下構造を検討した.その結果得られた地形面は11面で,従来の区分とは異なるものとなった.既知のテフラ情報に基づいて地形発達を編むと,従来の酸素同位体比編年による枠組み(町田,2008など)と矛盾がない.すなわち古い方からMIS 7のK面(金子台・所沢台等),MIS 5.5のS面,MIS 5.3のNs面,MIS 5.2-5.1のM1a面,M1b面,MIS 5.1からMIS 4の間にM2a面,M2b面,M2c面,M2d面,MIS 4にM3面,MIS 3-2にTc面の11面が形成された.武蔵野台地は古期武蔵野扇状地(K面)の時代,S面,Ns面の海成~河成デルタの時代を挟み,M1~M3面の新期武蔵野扇状地の時代,およびTc面の立川扇状地の時代に大区分される.M1~M3面の新期武蔵野扇状地が7面に細分されるのは,M1面形成後の海水準の段階的低下に応答した多摩川の下刻の波及による.
著者
松山 亮太 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.59-63, 2016-04-30 (Released:2018-05-04)
参考文献数
8

これまでに著者らは,タヌキ(Nyctereutes procyonoides)-イヌ(Canis lupus familiaris)間におけるセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)の交差感染の有無を明らかにすることを目的に,これらの宿主動物に由来するセンコウヒゼンダニ集団について遺伝学的研究を実施してきた。その結果,タヌキ-イヌ間の交差感染に関する遺伝学的証拠を得ることができた。しかし同時に,狭い調査地域においてセンコウヒゼンダニ集団が2つの遺伝的グループに明確に区分されることも明らかとなった。この現象が生じた要因を考察すると,「イヌや野生動物の移動によりダニの移入が生じた可能性」,「センコウヒゼンダニの行動生態に原因がある可能性」,「宿主-センコウヒゼンダニ間の相互作用により,センコウヒゼンダニの遺伝的差異が形成された可能性」が考えられた。それぞれの可能性を検証するには,疫学研究やセンコウヒゼンダニの生態学的研究に加え,disease ecologyの枠組みの中で研究を行う必要がある。
著者
菊地 博 川崎 聡 中山 均 齋藤 徳子 島田 久基 宮崎 滋 酒井 信治 鈴木 正司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.461-466, 2010-05-28 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは,インフルエンザAおよびB感染症の治療,予防に有効な薬剤である.慢性維持透析患者に対する,治療,予防に関する報告は少なく,その推奨量は決定されていない.2007年2月19日~20日,火木土昼に透析を受けている患者9人のインフルエンザA発症を確認した.発症患者の病床は集積しており,施設内感染が強く疑われた.透析患者は感染のリスク,重症化のリスクが高いと考えられ,感染の拡大を防ぐため,オセルタミビルの治療投与のほか,予防投与も行った.385名の透析患者に,十分なインフォームドコンセントを行い,同意が得られた患者にオセルタミビル75 mg透析後1回経口投与を行った.アンケート等の協力が得られた339名を調査対象患者とした.9人が治療内服,299名が予防内服を行い,31名が内服しなかった.治療内服後,全員が速やかに解熱し,重症化例を生じなかった.予防内服者には,インフルエンザ感染を生じなかったが,非予防内服者に2名の感染を認めた.この2名も同様の内服により,速やかに解熱,軽快した.内服者において,報告されている臨床治験時にくらべ,消化器症状の発症率が低かったが,不眠を訴える割合が多かった.また,内服者は非内服者にくらべ,臨床検査値異常は多くなかった.血液透析患者におけるオセルタミビル75 mg透析後1回投与は,健常者の通常量投与にくらべ,血中濃度が高値となると報告されている.過量投与による副作用の報告はなく,また,今回の透析患者339名の検討でも,安全性には概ね問題がないと考えられた.予防投与は有効で,当施設におけるインフルエンザAアウトブレイクを収束させた.
著者
池田 敬 白川 拓巳 鈴木 正嗣
出版者
Association of Wildlife and Human Society
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-20, 2018 (Released:2018-10-04)
参考文献数
30

We compared the attractiveness of five baits (mineral salt, corn, hay cube, rice bran, and Japanese cedar cutting seedling) to sika deer (Cervus nippon) and wild boar (Sus scrofa). We conducted four feeding experiments using camera traps from August 16 to November 19, 2017. To evaluate the attractiveness of the five baits, we counted the number of animals photographed per hour for each bait. We then evaluated the appearance patterns of deer and boar to feeding sites and clarified the influence of the appearance of each mammal on other mammal. Deer strongly preferred mineral salt (P < 0.001), while boar preferred rice bran (P < 0.01). In addition, deer and boar showed similar appearance patterns. To capture only deer, mineral salt would be the most effective bait.
著者
福本 学 木野 康志 鈴木 正敏 山城 秀昭
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原発事故の被災動物臓器アーカイブを構築し、以下の結果を得た。事故後2年経過し、ほぼ放射性セシウムのみが検出され、全臓器であった。ウシ血中の酸化ストレス関連因子は内部被ばく線量率と相関を示した。末梢血リンパ球のDNA二本鎖切断数は多かったが、線量とは無関係であった。ウシ精子に形成異常を認めなかった。地表を這い、γ、β線両方の被ばくが大きいアカネズミでは、精子形成の細胞回転が亢進しているが成熟精子に異常を認めなかった。野生ニホンザル骨髄は低形成傾向だが、抹消血球に異常を認めなかった。著変は認めないもののサルの内部被ばく線量率は現在も高く、生物影響を知るための詳細な観察継続が必要である。
著者
篠田 知和基 吉田 敦彦 丸山 顕徳 松村 一男 中根 千絵 鈴木 正崇 不破 有理 服部 等作 山田 仁史 立川 武蔵 後藤 敏文 荻原 真子 木村 武史 後藤 明 廣田 律子 近藤 久美子 竹原 新 坂井 弘紀 諏訪 春雄 小松 和彦 鷹巣 純 栗原 成郎 依田 千百子
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

世界神話の基本的な二元構造を日本神話、ギリシャ神話、エジプト神話、インド・イラン神話、オセアニア神話、シベリア神話、アメリカ神話などにさぐった。明暗、水中の火、愛の二元性、罪と罰、異界と常世などのテーマでシンポジウムをおこない、それぞれの論文集を刊行した。生死、善悪の問題はそのつど検討された。最後は聖と穢れについて総括討論会をおこなった。その結果、世界神話は聖なるものを水中の火のような矛盾した概念のなかに追及するものであることがあきらかになった。
著者
鈴木 正崇
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.185-235, 2004-01

一 はじめに二 津軽石三 又兵衛祭り四 伝説五 伝説の相互比較六 祭祀対象七 祭祀の背景八 カタチの解釈学九 現代へのメッセージ川合隆男教授退職記念号