著者
長幡 友実 中村 美詠子 三浦 綾子 上田 規江 岡田 栄作 柴田 陽介 尾島 俊之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.188-197, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
31

【目的】勤労者を対象とし,食費に関わる指標として等価食費とエネルギーコストを用い,これらの指標と栄養素等摂取量,食品群別摂取量,調理形態別料理摂取頻度との関連を検討した。【方法】静岡県西部にある事業所の従業員3,083名に自記式質問調査票および食物摂取頻度調査票を配布し,2,382名から回答が得られた(回収率77.3%)。性・年齢および食物摂取頻度調査票が有効であった2,160名を解析対象とした。等価食費(円/月)とエネルギーコスト(円/1,000 kcal)を三分位で分け,栄養素等摂取量との関連を共分散分析,食品群別摂取量との関連をKruskal-Wallis検定,調理形態別料理摂取頻度との関連をχ2 検定を用いて検討した。【結果】等価食費低群と比較して高群では,たんぱく質やビタミン,ミネラル類,食物繊維摂取量が多かった。また,穀類摂取量は少なく,野菜類,魚介類等の摂取量は多かった。エネルギーコスト低群と比較して高群では,炭水化物摂取量が少なく,一方,銅以外の栄養素等摂取量は多かった。また,穀類摂取量は,高群ほど少なく,その他すべての食品群別摂取量は,高群で多かった。また,両指標とも,白飯摂取頻度は高群で少なかった。【結論】勤労者において等価食費やエネルギーコストが高い者は,穀類摂取量や白飯摂取頻度が少なく,野菜類や魚介類摂取量が多いことが示唆された。
著者
鈴木 麻希 宮田 采実 和田 有史 武藤 孝子 小谷 和彦 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.223-231, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
26

【目的】食品に付したエネルギー情報の違いが,摂食者の心理・生理的応答に与える影響を若年女性において検討すること。【方法】ランダム化クロスオーバー試験として実施した。試験食は,466 kcalのフレンチトーストに,500 kcal表示または 1,000 kcal表示のカードを付した2種類とした。異なる2日間の9時前後に,前夜から絶食した若年女性12名にランダムな順序でいずれかを負荷した。官能評価と摂食への抵抗感,唾液中のα–アミラーゼ濃度を摂食前後に測定した。食欲感覚と呼気ガス(エネルギー消費量)は摂食前と摂食90分後まで測定した。呼気ガス測定値より食事誘発性熱産生を算出した。【結果】心理的指標では,甘さ,脂っぽさ,摂食への後ろめたさは,摂食前後ともに 1,000 kcal表示が 500 kcal表示よりも有意に高かったが,美味しさ,摂食への嬉しさ,食欲感覚(空腹感,満腹感)は,摂食前後ともに試験食による差はなかった。生理的指標では,唾液α–アミラーゼ濃度は,1,000 kcal表示のみ食後に有意に上昇したが,食事誘発性熱産生は,両試行で有意な差はなかった。【結論】本結果より,食品に付した高エネルギー情報は,若年女性摂食者の満腹感や食事誘発性熱産生を高めなかったが,甘さと脂っぽさを強く感じさせるとともに,摂食への抵抗感とストレスを高めることが示唆された。
著者
信田 幸大 前田 泰宏 曽根 智子 衛藤 久美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.210-222, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
38
被引用文献数
1

【目的】勤労者に対し,管理栄養士によるセミナーと野菜飲料提供による環境サポートを組み合わせた栄養教育プログラムを実施することで,野菜摂取量及び野菜摂取に関する行動変容ステージに及ぼす影響を検証した。【方法】勤労者男女を研究対象者とし,層別化無作為比較試験を実施した。解析対象者は194名(介入群100名,対照群94名,平均年齢43歳)であった。栄養教育プログラムは介入群のみに実施した。主評価項目は,行動変容ステージ及び野菜摂取量とし,副次評価項目として野菜摂取に関する意識や行動の変化が生じる要因とした。【結果】野菜摂取量の変化量については,プログラム終了直後では対照群に対して介入群で有意に高かったが,終了6週間後の調査では有意な差は認められなかった。一方,行動変容ステージの事前から終了直後の変化量は,対照群に対して介入群で有意に高く,終了6週間後でも同様に群間差が見られた。また,本プログラムは,野菜摂取に関する意識や行動の変化が生じる要因のうち,健康に対する利益や関心,セルフエフィカシー,所属する組織や地域からの環境サポートといった因子に対して働きかけていたことが示唆された。【結論】管理栄養士によるセミナーと野菜飲料提供による環境サポートとを組み合わせた栄養教育プログラムを実施することで,勤労者の野菜摂取に関する意識や行動が変化し,野菜摂取量が増加することが示唆された。
著者
五島 正裕 森 眞一郎 中島 浩 富田 眞治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1399-1408, 1996-07-15
参考文献数
6

Virtual Queueシステムは 仮想化とストリームのキャッシングを特長とするメッセージ通信用ハードウェアである.仮想化によって 任意の数の仮想的通信機構を提供し システム・コールなしで利用できるなど メッセージ送受信時のソフトウェア・オーバヘッドを大幅に削減するので 細粒度の通信に耐える.また メッセージそれ自体ではなく メッセージのストリームへの参照の局所性を利用し よくアクセスされるストリームを物理的通信路にキャッシングすることによって高速化を図る.シミュレーションにより ベクトル・データの転送にも十分なスループットを持つことが確認された.The Virtual Queue system is a message communication mechanism, marked by virtualization and caching of message streams. The virtualization provides arbitrary number of virtual communication hardware, and enables a user to use the hardware without system calls. The system withstands finer grained communications, because the virtualization drastically reduces the software overhead in handling messages. And the system makes use of locality of reference, not to messages themselves but to the stream of the messages, and caches frequently accessed message streams to the fast physical channels. The simulation result showes that the system provides enough throughput for transmission of vector data.
著者
岡田 裕之 松本 敬 森川 美雪 中平 隆志 大村 光浩 山本 浩嗣
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.321-326, 2002-09-22 (Released:2011-12-05)
参考文献数
11
被引用文献数
3 5

目的および方法:歯肉アメーバはミトコンドリアを持たない真核生物の代表であるアメーバ類に属し, 絶対嫌気的環境で寄生する. 歯肉アメーバ症28例を, 臨床病理学的および微細構造を含め細胞学的に検討した.結果:アメーバ虫体は小型染色中心を伴う核と, ライトグリーン淡染性, PAS陽性の細顆粒状の胞体を有しており, Giemsa染色では濃青色の細胞境界の明瞭な外質が認められた. また, 虫体は食胞を有し, 白血球を貧食する栄養型として存在していた. 虫体は放線菌に随伴して認められることが多かった.画像解析において, 虫体の最大径は9.3~37.5μm (平均18.2±5.0μm), 面積が51.0~360.1μm2 (平均175.6±68.3μm2) であった.微細構造学的に, 虫体における胞体の外質と内質が明瞭に区別され, 外質が細胞小器官に乏しく突起を有していた. 内質にはグリコーゲン顆粒と種々の大きさの食胞が多数みられ, 食胞内には変性した細胞などが観察された.結論:歯肉アメーバ症28例を臨床統計的にみると, 60歳代と50歳代に出現することが多く, それらが過半数を占め, 放線菌と共存していた. 細胞学的および微細構造学的検索では, 歯肉アメーバは食胞を有し, 白血球を貧食しており, 栄養型として観察された.
著者
矢守 克也 李 旉昕
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.117-127, 2018 (Released:2018-03-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高知県黒潮町が掲げる「私たちの町には美術館がありません,美しい砂浜が美術館です」というフレーズは,「Xがない,YがXです」の形式をもつ。本論文では,この形式が,「限界集落」,「地方消滅」といった言葉によって形容されるきびしい状況下にある地方の地域社会の活性化を支える根幹的なロジックになりうることを,「Xからの疎外/Xへの疎外」の重層関係を基盤とした見田宗介の疎外論の観点から明らかにした。この疎外論の根幹は,「Xからの疎外」(Xがないことによる不幸)は,その前提に「Xへの疎外」(Xだけが幸福の基準となっていること)を必ず伴っているとの洞察である。よって,Xの欠落に対してXを外部から支援することは,「Xからの疎外」の擬似的な解消にはなっても,かえって「Xへの疎外」を維持・強化してしまう副作用をもっている。これに対して,YがXの機能的等価物であることを当事者自身が見いだし宣言したと解釈しうる黒潮町のフレーズには,「Xからの疎外」を「Xへの疎外」の基底層にまで分け入って根本から克服するための道筋が示されていると言える。
著者
Yajima Naoki
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 (キリスト教と文化) = Humanities: Christianity and Culture (ISSN:24346861)
巻号頁・発行日
no.51, pp.77-92, 2019-12-15

This paper discusses Hume’s Conceivability Principle, according towhich whatever we conceive is possible, at least in a metaphysical sense.Although this principle is not thoroughly argued by commentators,Hume relies on this principle in almost all significant arguments of hismetaphysics. The principle is involved in the crucial relationship betweenmind and reality of modern philosophy. Therefore, it is possible to find arelevant counterargument of this principle in metaphysics from Descartesto Berkeley. This paper focuses narrowly on the comparison betweenHume vis Descartes, and Hume vis Spinoza, and elucidates that Hume’sinnovation of this principle intends the transformation of the concept ofnecessity, and development of the concept of probability. This paper alsooffers a possible solution to a famous interpretative problem regarding therelationship between what is inconceivable and impossibility, and with it, thefundamental character of Hume’s empiricism and scepticism will be clarified.This paper thus aims to be a preliminary consideration for clarifying theintricate connection between the Conceivability Principle and Hume’s entiremetaphysics.
著者
細川 泰秀 柴田 徹 拜原 正人
出版者
日経BP社
雑誌
日経systems (ISSN:18811620)
巻号頁・発行日
pp.36-39, 2012-01

本誌 日経SYSTEMSが実施した調査によると、プロジェクトの失敗を繰り返す割合は89.9%と、非常に高い結果となりました。最初にプロジェクトの失敗が実際にどの程度あるのかについてお聞きします。ユーザー企業の代表として、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の細川さんは、どのようにご覧になりますか。