著者
田中 桂子 豊 浩子
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-23, 2016-03-31

本稿では大学教育におけるクリティカルシンキング(CT)の議論について考察する。CTの概念は、従来の論理主義がフェミニストや批判的リテラシーからの批判を受けて、新たな概念が模索、形成されつつある。日本の大学では昨今、CT教育の必要性が強く言われながら、CTの概念や教育の内容、方法に関する議論が広く共有されているか不明の点も多い。日本の学生がCTを学ぶことは困難ではないかという議論も存在する中、現在、日本のCT教育研究者間では、日本の学生がCTを育成・発揮する際に文化的価値観が抑制要因となるとされ、それを考慮した「協調型CT」や実践方法も提案されている。日本の学生に対するCT教育実践は試行錯誤の段階だが、CT教育には良き学習者・市民としての思考力を鍛え、さらには社会を批判的に見て変える力が育成される可能性がある。また、英語教育における実践からも、社会を問い直す複眼的なCT教育の可能性が示唆される。

1 0 0 0 OA 知的画像処理

著者
小寺 宏曄
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.19-27, 2005 (Released:2008-08-01)
参考文献数
42
被引用文献数
5

Facing 600th anniversary of Gutenberg's birth in 2000 A.D., we should look back the historical significance of letterpress technology and take a step forward into new age of digital imaging. Now imaging technology plays a leading role in visual communication, but meets severe assessment to satisfy human vision. Not only advances in high precision and high definition digital media, but also "Intelligent Image Processing" technologies will be necessary for more aesthetic and pleasant imaging. Collaboration with human vision software and development in content-based algorithm are expected to advance the next generation color imaging technology for multi-media. This paper introduces four challengeable topics on "Adaptive Image Sharpening", "Retinex-based Appearance Improvement", "Bi-deirectional Gamut Mapping", and "Scene-referred Pleasant Color Reproduction".
著者
木野田 典保
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.97-104, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

本研究の目的は脳卒中片麻痺例において,どのようなボディイメージがみられるかを確認することである。脳卒中片麻痺7例に対し半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。得られたインタビューデータより定義付け,概念化を試みると「身体の不明瞭な感覚」,「感じられる異常感覚」,「動作の拠りどころとなる感覚」,「動作上達の要件」という4項目があがった。また,生成した概念とカテゴリーの関係を検討して結果図を作成し,分析における全体像を表した。結果,脳卒中片麻痺例にみられるボディイメージの障害構造の一端を表している可能性を示唆した。今後,ボディイメージに関する評価を確立する上でも質的研究が大きな役割を果たすものと期待される。
著者
増田 昌敬 長縄 成実 宮沢 政 田中 彰一
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

微小な隙間内において低粘性流体が高粘性流体を置換する場合、流体間界面に不安定性が生じてフラクタルなパタ-ンを形成する。本研究では、0.8mmの隙間をもつアクリル板を2枚重ねたHeleーShaw実験モデルを製作し、この上下板間の微小な隙間に満たされたある流体が他の流体により置換される時の流体界面の形状を観察した。上下のアクリル板は、各々、直径60cmと66cmの円板であり、厚さ2cmである。実験では、まずモデル内に一方の流体を満たした後、下板の中心に開けられた径1mmの注入孔より、他の流体を放射状に圧入する。本年度は、濃度200、500、1000ppmのポリアクリルアミド水溶液を水で置換する場合の流体界面の形成過程の観察を行い、流体のレオロジ-特性が流体間の界面の不安定成長に与える効果について解析した。観察デ-タを画像解析した結果、以下のことが言える。(1)低粘性のニュ-トン流体が高粘性の擬塑性流体を置換する場合は、ニュ-トン流体同士の置換の場合に比べて、その流体間界面にはより大きな不安定性が生じる。この置換パタ-ンのフラクタル次元d_fは1.69〜1.81の値であり、前年度に得られたニュ-トン流体同士の置換の場合の1.80〜1.96に比べて小さくなる。(2)流体間の界面に生じる不安定性(フラクタルなパタ-ン)は、時間経過とともに大きなフィンガ-(指状体)に成長していく。この成長過程においては、流体のレオロジ-特性が大きな影響を及ぼす。2次元流れの数値シミュレ-ションでは、差分法を用いてラプラス方程式を解いた。計算の初期条件として、流体間の界面にゆらぎを与えることにより、流体界面の不安定性の成長過程はある程度予測できた。しかし、実験に特徴的であった樹枝状のフィンガ-の成長は再現できなかった。
著者
竹井 健 錦織 直人 小山 文一 中村 信治 浅田 秀夫 畠山 金太 大林 千穂 西久保 敏也 藤井 久男 中島 祥介
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.342-349, 2016-04-01 (Released:2016-04-19)
参考文献数
16

Muir-Torre症候群は脂腺腫瘍と内臓悪性腫瘍を併発する遺伝性疾患で,Lynch症候群の一亜型と考えられている.症例は61歳の男性で,既往歴は36歳,38歳,46歳,56歳時に大腸癌,50歳時に胃癌があり,家族歴は父と叔父に大腸癌と多数の発癌患者を認め,Lynch症候群を疑い経過観察していた.61歳時に背部に1 cm大の出血を伴う結節が出現し,局所切除術施行し,病理組織学的検査にて脂腺癌と診断した.内臓悪性腫瘍の既往と脂腺癌の併発よりMuir-Torre症候群と診断した.診断後にも計5回の脂腺腫瘍と計2回の大腸癌の発生を認めたが,早期に加療し現在無再発生存中である.また,遺伝学的検査を行いMLH1の病的変異を認めLynch症候群と診断した.Lynch症候群はMuir-Torre症候群を呈することがあり,内臓悪性腫瘍だけでなく皮膚腫瘍も念頭に体表観察を行うことも重要と考えた.
著者
飯野 雄一 石原 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

線虫C.エレガンスは環境中の塩の濃度と餌の有無を連合して学習し、経験した塩濃度に向かう、あるいは避ける行動を示す。本研究はこの際の行動反転の分子・神経機構を明らかにすることを目的としている。この行動制御に重要であると以前の研究より分かっていたのがDAGシグナル伝達経路である。神経細胞内で、酵素ホスホリパーゼC(PLC)によりジアシルグリセロール(DAG)が生成される。生成されたDAGはプロテインキナーゼC(PKC)などの酵素を活性化する。このシグナル伝達経路が塩を感じる感覚神経(ASER神経)内で活性化されると線虫は高塩濃度方向に進み、不活性化されると低塩濃度方向に進むことが分かっていた。そこで、実際にDAGの量がどのように変化するかを調べた。このためにDownward DAG2とよばれる蛍光プローブをASER神経に発現させ、蛍光の変化を顕微鏡で観測することによりシナプス部位のDAG量を測定した。この結果、感覚入力としての塩濃度の変化に応答してDAG量が変化することが観察された。塩濃度が上昇するとDAGは低下、塩濃度下降時にはDAGは増加した。DAGの増減はASER神経の感覚受容に依存し、カルシウム、PLCに依存することもわかった。さらに、飢餓を経験した線虫ではDAG量の変化が小さかった。この単純な機構により、DAGは過去に経験した塩濃度と現在の塩濃度の差をコードできることがわかり、塩走性の反転機構の一部が説明できた。また、飢餓による行動変化におけるfoxo型転写因子の役割と働きかたについての研究を進めるとともに、ASER神経から下流の介在神経への情報伝達をカルシウムイメージングで解析した。さらに、全神経の活動の同時観察のための4Dイメージングシステムの導入を進めた。
著者
清水 悠夏
出版者
愛知教育大学数学教育講座
雑誌
イプシロン (ISSN:0289145X)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.143-146, 2016-03-24

平成27年度 修士論文 抄録
著者
山崎 不二夫
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.126, pp.1-20, 1979 (Released:2011-03-05)
著者
加藤 恒一 深瀬 聡 石橋 泰 山本 学
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.529-533, 1997-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

固定床による新しいライトナフサ芳香族化 (LNA) プロセスを開発するため, 2250 BPD規模のデモンストレーションプラントによる実証化研究を行った。ペンタンを主成分とするライトナフサの芳香族化反応は, 従前は触媒の劣化が激しいため連続再生型か, またはスウィング再生型の反応器を用いるものであった。新規に開発されたゼオライト触媒を充てんした固定床反応器を中心とする実証化プラントにより転化率95wt%以上, 芳香族収率50wt%以上を与える1000h以上の長期連続運転が達成された。実証化プラントは, 通常タイプの重質ナフサ改質用の固定床プロセスの反応セクションを転用して建設され三個の断熱反応器および生成物の分離セクションを備えている。触媒再生は反応を中断して行う半再生式である。再生後の触媒を抜き出して, 物性, 活性を測定し, 本触媒の安定性を確認した。
著者
渡邊 薫 大河原 一郎 西田 光宏 西澤 和倫
出版者
静岡赤十字病院
雑誌
静岡赤十字病院研究報 = Journal of Japanese Red Cross Shizuoka Hospital (ISSN:09119833)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.53-58, 2013-12

症例は3歳8か月女児.両下肢を中心とした隆起を伴う紫斑がみられ,翌日には腹痛・嘔吐が出現しHenoch-schoenlein紫斑病が疑われ精査加療目的で当院小児科外来受診した.入院後よりステロイド点滴治療開始し症状は速やかに改善したが,ステロイド漸減にて症状が再出現した.血液凝固第XIII因子製剤や抗ロイコトリエン受容体拮抗薬を投与するも症状の改善と増悪を繰り返し,治療に難渋した.Henoch-schoenlein紫斑病の多彩な症状とその他の治療法について若干の文献的考察を加え報告する.