著者
本村 昌文
出版者
東北大学史料館
雑誌
東北大学史料館紀要 (ISSN:1881039X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.21-34, 2019-03-15
著者
小嶋 和
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2019 (Released:2019-03-30)

火山と人間の共生という観点から、継続的な噴火が見られる桜島の人々の営みを明らかにすることは、火山との共生の在り方の1つの例を示すこととなる。本論では桜島の土地利用変化から、火山活動が地域社会にどれほどの影響を与えどのような変化をもたらしたのか、自然と社会条件の両側面から考察する。さらに、地域社会の変化とともに桜島の火山活動が人々に与える影響がどのように変化したのかに注目し、火山との共生の在り方について考察を行った。桜島は、北岳と南岳からなる複合火山である。1946年に溶岩を流出した昭和火口は2006年から活動を再開した。現在は南岳か昭和火口から噴火が継続している。北岳の北~西部山麓には主に火山麓扇状地の地形が見られ、南岳の北東~南部には古期南岳噴出物と新期南岳噴出物とが複雑に入り組みながら分布する(小林ほか2013)。山麓には火山を囲むように17の集落が存在し、北西部が旧桜島町、南東部が旧東桜島村である。両地域ともに農業や漁業が中心産業だが、近年観光業にも注力している。噴火回数と降灰量の変化(鹿児島地方気象台による)は以下の通りである。①1955~1971年:南岳の活動が開始した。②1972~2001年:南岳の活動が活発化し、多量の降灰が問題となった。③2002~2007年:南岳の活動が停滞した。④2008~2017年:昭和火口からの噴火が始まり、ふたたび多量の降灰をもたらした。土地利用の変化(3時期のGISによる分析)は、旧桜島町域においては、火山麓扇状地全体に露地の果樹園や畑が広がっていた。しかし、1975年から1995年にかけて、標高150m以上の上場地帯を中心として耕作放棄地が増加した。また、降灰営農対策事業の後押しにより、施設園芸も増加した。1995年から2015年にかけては、耕作放棄地や施設園芸がやや減少し、北西部に露地の畑が増加している。旧東桜島村域においては、多くが溶岩台地であり、耕地として利用できる地域が限られているが、標高の高いところには同様に耕作放棄地が見られた。社会の変化(統計資料・文献・聞き取りによる)は、旧桜島町域においては、1970年代初頭までは農業従業者が多かった。しかし、1970~1975年にかけて、専業農家が著しく減少し、全年代で農業従事者が減少した。専業農家の減少とともに、町内の公共土木事業を担う建設業や、島外の会社や商店で働く人が増加した。以上より、旧桜島町域と旧東桜島村域は、行政区域上の違いだけではなく地形地質が異なっており、それが土地利用や産業、人口の違いを生んでいる。また、旧桜島町域における年代による土地利用変化の要因は、①1970年~1990年代後半:南岳活動活発化以降、急速に耕地や収穫量が減少し、耕作放棄地と施設園芸の面積が急増した(石村1981・1985)ことから、火山活動が土地利用変化の大きな要因だったと考えられる。②1990年代後半以降:火山活動と関係なく耕地面積が変化していることから、火山活動は土地利用変化の大きな要因ではなく、1970年代以降若年層を中心に離農が進んだことによる農家の高齢化の進行や後継ぎ不足などの影響が強い。また、施設園芸の普及により降灰被害が抑制できるようになった。最後に、旧桜島町域における土地利用の地域差の要因は、標高と降灰堆積量が大きな要因であると思われる。高齢で人手が少ない農家を中心に、上場地帯から漸次放棄されていくが、特に北部は温州みかんの育成園が多かったことや、火口に比較的近く降灰堆積量が多かったために農作物への被害が大きく、耕作放棄が進んだと考えられる。桜島では現在農業は主たる産業ではなくなり、かつて生活に大きな影響を与えた降灰被害以上に、島内の雇用の少なさ、フェリーによる移動などが生活の支障となっており、全国的に見られる農村と同様の課題を抱えていると言っていい。近年は、NPO法人やUターン者を中心として桜島全体を観光資源として活用しようという動きがある。新たな火山との共生の形が桜島で生まれつつある。
著者
綿村 英一郎
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

裁判員裁判で運用されている「量刑分布グラフ」によるアンカリング効果について、心理学的実験を行い検証した。一連の検証の結果、①量刑分布グラフのピーク(最頻値)が裁判員の量刑を誘導すること、および②検察官からの求刑と調整されることの2点について明らかした。また、従来の裁判員研究は評議を含めたものが少なかったが、本研究ではそれを含めており、生態学的妥当性の高い結果を示すことができた。以上の成果は、現在国際誌への学術論文としてまとめている。
著者
吉田 由美 高木 廣文 稲葉 裕
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.69-77, 1995-02-15
参考文献数
32
被引用文献数
11
著者
大坪 寛子 山口 一成 星 順隆
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.372-377, 2008

【目的】輸血による細菌感染症は致命的な副作用の一つである.<br> 我々は溶存酸素測定装置(株式会社ダイキン工業)にて細菌接種血小板製剤における検出感度について検討した.【方法】血小板製剤に<i>Staphylococcus aureus</i>,<i>Staphylococcus epidermidis</i>,<i>Serratia marcescens</i>,<i>Bacillus cereus</i>,<i>Streptococcus pneumoniae</i>及び<i>Propionibacterium acnes</i>を接種(最終濃度10<sup>0</sup>,10<sup>1</sup>,10<sup>2</sup>CFU/m<i>l</i>)した製剤から,抽出した検体1m<i>l</i>内の溶存酸素濃度を連続測定した.【成績】検出感度は<i>S. aureus</i>において10<sup>0</sup>,10<sup>1</sup>,10<sup>2</sup>CFU/m<i>l</i>でそれぞれ28.6%,78.6%,85.7%であった.<i>S. epidermidis</i>では23.0%,84.6%,92.3%,<i>S. marcescens</i>で50%,100%,100%,<i>Bacillus cereus</i>で57.1%,100%,100%であった.好気性細菌の検出時間は7&sim;18.2時間であった.【結論】好気性細菌では初期の混入濃度が10<sup>1</sup>CFU/m<i>l</i>以上存在すれば20時間以内に検出が可能であった.低コストで簡便な細菌検出システムとして血小板製剤の安全性に有用であると考えられた.<br>
著者
物部 真奈美 池田 麻衣 江間 かおり 徳田 佳子 山本(前田) 万里
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.114, pp.114_29-114_36, 2012-12-31 (Released:2015-10-30)
参考文献数
10

緑茶冷水(4℃)浸出液を飲用することによる粘膜免疫系の活性効果は,マクロファージの活性上昇と正の相関が認められている。そこで,本報では,マクロファージ様細胞の貪食能を指標に,緑茶冷水浸出液による自然免疫系の活性化について,茶期及び品種による違いを調べた。その結果,緑茶冷水浸出液のEGC/EGCGが約2を超えていることが必要条件であり,かつEGC量が十分量含まれていれば,茶品種・年度に関わらず活性を得られることが示唆された。さらに,茶期が進むに従いカテキン含量が上昇するため,茶期の進んだ茶葉を利用すると効率良く成分を得ることが可能である。また,品種によっても茶葉中EGC含量に違いがあり,本報告の環境条件下で調べた茶品種の中では「ゆたかみどり」が全ての茶期でEGC含量比が高く,効率良く高EGC浸出液を得られる品種であった。
著者
小川 晃子 Ogawa Akiko オガワ アキコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-30, 2004

本研究は、電子コミュニティの援助的な機能に着目し、自助グループにおける援助的な機能の成立状況を明らかにすることを目的としている。高齢者の家族介護者に対する支援を意図して開設されたWWW掲示板を事例とし、44ヶ月に及ぶ7,162件の書き込み記録を分析した。その結果、電子コミュニティにおいては、構成員の同質性に基づく共感的な書き込みにより、帰属意識の強いコミュニティが形成されることが明らかになった。電子コミュニティにおける援助行動は、仮想チームともいえる協働関係で提供されることが多く、情緒的援助にとどまらず対面的な関係を伴う手段的援助に及ぶ場合もあり、自助グループを電子コミュニティで形成することの効果が明らかになった。しかし、オフ会という対面的なコミュニケーション機会が、CMCで成立している電子コミュニティの異質性を高め、このコミュニティの崩壊をもたらす危険性をもっていることも、電子コミュニティの崩壊過程の分析により示唆された。
著者
亀井 陸史 鮎貝 崇広 金川 哲也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_499-I_508, 2019 (Released:2020-02-06)
参考文献数
34
被引用文献数
4

多数の球形微細気泡を含む水中において, 波長の長い平面圧力波の弱非線形伝播に粘性と熱伝導性が与える影響を理論的に調べる. 多重尺度法を用いて, 粘性と熱伝導性を考慮した気泡流の基礎方程式系から低周波数の長波の長距離伝播を記述する KdV–Burgers 方程式を導いた. 気泡流全体の粘性と熱伝導性を無視した先行研究(金川ら, 機論 B, 76, 1802, 2010) との対比から, 液相粘性と熱伝導性の影響は散逸性のみに現れ, 気泡内気体の熱力学的過程が非線形, 散逸, 分散の全性質に影響を与えることがわかった. さらに, KdV–Burgers 方程式を数値的に解き, 非線形性, 分散性の順に波形に対して性質が発現することがわかった. 本研究と先行研究の数値解を比較すると, 本研究の方が散逸性と分散性が強いことが波形からも確認できた.
著者
山本 照子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.213-228, 2016-12-31 (Released:2017-01-25)
参考文献数
126
被引用文献数
1

近年,関節リューマチや歯周病で見られる炎症性骨破壊において,病的な状態での骨代謝に影響を及ぼす免疫系の関与が注目されている。歯周病は細菌による自然免疫応答についで獲得免疫応答が誘導されて,急性炎症から慢性炎症に至り,歯槽骨破壊がもたらされるという,免疫応答の結果として惹起される。骨代謝と免疫系は,骨髄の微小環境ならびに多くの制御因子を共有し,相互制御が行われている。矯正的歯の移動においても,免疫応答で誘導される様々な炎症性サイトカインが発現し,これらは歯の移動に必須な歯槽骨吸収に関与している。矯正的歯の移動における骨吸収には,骨表層にある破骨細胞と骨芽細胞のみならず,骨中に埋め込まれて互いに細胞性ネットワークを形成している骨細胞が,メカニカルストレスに著しく応答して細胞間コミュニケーションをはかり,破骨細胞形成における司令塔的な役割を果たすことがわかってきた。歯の移動の圧迫側歯槽骨では,骨細胞が骨免疫因子とも言えるosteopontin(Opn)や結合組織成長因子(connective tissue growth factor,CTGF/CCN2)を産生し,その結果,免疫系因子と骨系細胞による破骨細胞形成のメカニズムが働き,活発な骨吸収が生じる。本稿ではメカニカルストレスによる矯正的歯の移動の分子メカニズムについて我々の知見を紹介し,免疫細胞を支持する骨髄環境の制御における骨細胞の新たな役割について述べる。
著者
市岡正一 著
出版者
市岡正一
巻号頁・発行日
vol.(続), 1873
著者
藤崎 康
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 フランス語フランス文学 (ISSN:09117199)
巻号頁・発行日
no.49, pp.360-320, 2009

はじめに1 理由なき災厄2 アンチ・ミステリー、アンチ・サプライズとしてのサスペンス3 ヒッチコックのミステリー映画4 知りすぎてはいない主人公5 『知りすぎていた男』をめぐって6 多重化するサスペンスの渦7 視線の迷宮 : 『めまい』について8 ヒッチコック的サスペンスの臨界点としての『鳥』9 断片化(=非連続化)されるモチーフ10 食堂"タイズ"の場面をどう見るか?11 ゲームとしての過剰解釈=深読み12 終末論映画としての『鳥』?13 恋愛映画としての『鳥』?14 家族映画としての『鳥』?15 結語にかえてMélanges dédiés à la mémoire du professeur OGATA Akio = 小潟昭夫教授追悼論文集