著者
竹中 繁織
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.84-87, 2018-02-20 (Released:2019-02-01)
参考文献数
3

遺伝子の本質を司るデオキシリボ核酸(DNA)は,核酸塩基,デオキシリボース,リン酸エステルの繰り返しによって構成されている高分子である。DNAは,核酸塩基の並びによって書き込まれたタンパク質のアミノ酸配列をコードするだけでなく,塩基配列によって形成する独自の構造とそれに結合するタンパク質によって特定のタンパク質をいつどれぐらい作るかを制御している。生命の理解のためには,DNA分子構造の理解と物理化学的な定量的解析が必要である。
著者
三好 知一郎
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

多くの真核生物にはレトロトランスポゾンとよばれるゲノム上のある場所から別の場所へと転移する因子が存在し、これらはときにがんなどの疾患の変異原として作用することが分かっているが、その転移機構は依然として不明である。本研究ではこの中でも現生人類で自律的に転移するLINE-1レトロトランスポゾンの転移機構解明に主眼をあて研究を行った。その過程で、1)DNA損傷を認識しこれを修復する多くの因子がLINE-1と物理的に相互作用すること、2)その中でもPARP1、PARP2という因子が転移に重要な働きをしていることが分かり、それらが関与する新たなDNA修復機構のモデルを提唱するに至った。
著者
森 哲 三津山 恭弘 平野 實 山岸 哲
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.161-163, 2011-03-20 (Released:2013-03-20)
参考文献数
5

Predation by a wild Common Kingfisher Alcedo atthis on a colubrid snake, Amphiesma vibakari vibakari, was observed on 31 January 2010 in Tokyo. Total length of the snake was estimated as less than 20 cm. This is the first record of predation on a snake by the Common Kingfisher in Japan.
著者
大内 晶子 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.376-388, 2008-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
3 4

本研究の目的は, 2年保育の幼稚園における年少児 (4歳児) の非社会的遊び (沈黙行動ひとり静的行動ひとり動的行動) に注目し, その変化および社会的スキル・問題行動との関連を男女別に明らかにすることであった。そのため, 入園直後(Time 1) とその約半年後 (Time 2) に幼児の非社会的遊びの観察を行い, Time 1, Time 2, および卒園直前 (Time 3) に彼らの社会的スキル・問題行動について担任教師に評定を求めた。その結果, 沈黙行動がTime 1からTime 2にかけて減少することが示された。また, 社会的スキル・問題行動との関連において, 沈黙行動は, 男女共に主張スキルの低い子どもに見られた。ひとり静的行動は, Time 2にその行動が多く見られた場合, 女児は協調スキルが低く不注意・多動傾向にあること, 男児はTime 3における主張スキルの低さを予測することが明らかになった。ひとり動的行動は, 行動が見られた時点ではいずれの関連も有意でなかったが, 男児はTime 1のそれがその後の主張スキルの低さを, 女児はTime 2のそれがTime 3における外在化した問題行動を予測した。
著者
永岡 崇
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 = Journal of humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.107, pp.103-129, 2015

本稿は,漫画家・エッセイスト辛酸なめ子の諸作品を読み解くことを通じて,現代日本におけ る象徴天皇制やスピリチュアリティ文化と批判的に対峙する作法について思考するものである。 現在,天皇は非政治性を建前とした「象徴」として,またスピリチュアリティ文化は過酷な競 争社会を生きる現代人につかの間の「癒し」を提供するものとして,柔和で無害な相貌で存在しているようにみえる。だが,これらの文化/制度は,それを中心にして形成される「空気」のなかで,ときとして暴力性や抑圧性を露わにすることがある。このような暴力性・抑圧性に対 する批判は多いが,外部的な視点に立ったイデオロギー批判に代表される従来の批評的言語は, ポストモダンな天皇制やスピリチュアリティ文化を前に,有効性を喪失してしまっているように思われる。そのようななか,興味深い批評の言葉を創出しているのが,辛酸なめ子の作品である。なめ子は,作品のなかで,皇室やスピリチュアリティ文化を題材として積極的に取り上げ,それらを戯画化することでユーモラスな世界を創造する。彼女の手法として重要なのは, 第一に,皇室ファン,またスピリチュアリティ文化の愛好者として,つまり作品の題材となる 文化のインサイダーとして自己規定しながら,同時にアウトサイダーとしての視点をも導入す る姿勢であり,第二に,さまざまなジャンル(皇室,スピリチュアリティ,女子校文化,芸能 ゴシップなど) の間の境界線を混線させて笑いを生みだすスタイルである。そのことにより,なめ子の作品は天皇制やスピリチュアリティに内包される権威性や差別性を機能不全に陥らせることに成功している。それは,外部者の立場から"本当のこと"を突きつけるという批判のスタイルが通用しない領域が広がっているなか,天皇制やスピリチュアリティ文化を構成する「空気」に亀裂を入れる批評の言語の可能性を示すものといえるのではないだろうか。
著者
クナウプ ハンス・ヨアヒム
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. ドイツ語学・文学 = Hiyoshi Studien zur Germanistik (ISSN:09117202)
巻号頁・発行日
no.55, pp.173-185, 2018

1. 時代現象としての騒音と神経衰弱2. 叢書『精神神経境界域の諸問題』3. レッシングの論文「騒音」ハンス・ヨアヒム・クナウプ教授退職記念号 = Sonderheft für Prof. Hans-Joachim Knaup
著者
甲良 里織 岡田 ゆかり 阪梨 真理子 新村 美沙 柳 茂香 中島 輝美 岩田 ちづる 松岡 知子 手良向 聡 山田 歩 橋本 眞理子
出版者
京都府立医科大学附属病院看護部
雑誌
京都府立医科大学附属病院看護部看護研究論文集 = Research papers collection, Department of Nursing, University Hospital, Kyoto Prefectural University of Medicine (ISSN:24325120)
巻号頁・発行日
no.2016, pp.17-21, 2018-03-30

京都府立医科大学附属病院NICU病舎京都府立医科大学附属病院D5号病舎京都府立医科大学医学部看護学科京都府立医科大学大学院医学研究科生物統計学京都府立医科大学研究開発・質管理向上統合センター生物統計・データマネージメント部門
著者
三谷 茂 中嶋 唯夫 宗田 太郎 柳下 晃 畑山 道子 高柳 和雄 足立 康弘 金子 豊 関本 英也 檀上 忠行
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, 1964-06

1. 日本赤十字社産院における昭和11年より昭和36年6月に至る満25年間における帝王切開実施1238例について, これを戦前, 戦時, 戦後及び最近期に分類して, 母, 児の予後に対する検討を行い, その変遷を追求した. 2. 母体死亡率は昭和11~16年9.52%から最近期1.47%と低下した. 3. 児の周産期死亡率も戦前30.95%から6.81%と低下したが, 尚高率である. 4. 術式の上から母, 児の予後を見ると, 腟式は戦後行われていないが, この際には児の死亡率が高いのみならず母体死亡率も高く, Porro氏手術でも同様のことがいえる. 5. 帝王切開時の出血量は子宮収縮剤の使用の有無に拘らず, 25年間著しい変化を見ず, 601CC以上の症例が20%にも見られ, その対策を考慮する必要がある. 6. 母体の術後合併症中37.5℃以上の発熱を40%にも見る. 又最近耐性菌による感染が認められた. 7. 術創不全は非破水群では少い, 但し破水後経過時間との間に有意の差を見ない. 8. 適応の上から予後を見ると, 母体死亡率は減少しても尚今日晩期妊娠中毒症, 心, 肺疾患, 出血に留意する必要がある. 9. 常位胎盤早期剥離群では今日尚50%の児死亡を認め, 子宮破裂, 前置胎盤群での予後も悪い. 又児側適応による帝王切開術が最近屡々行なわれるが, 児の死亡率は高率で, 17.14%であり, この点に十分留意すべきである. 10. 非破水群の児の予後は最近0.99%の低死亡率で極めて良好であるが, 破水群では低下したといえ尚高率である. しかし破水後の経過時間の長短との関連はない. 11. 体重別に児の予後をみたが2000g以下の朱熟児では依然として70%余と予後の改善を見ないし, 未熟児では予後が依然として不良であるが, 2501~3500gの生下時体重群の死亡率は好転している.
著者
小谷内 範穗 安達 弘典 新井 健生
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.14, no.7, pp.968-976, 1996-10-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
5 7

Human works like handling objects, carrying loads, assembling parts, and cutting parts, are completed by the combination of both leg locomotion and hand manipulation, in the various fields of construction, agricultural fields, factory, and home. The authors propose a new concept for the integration of locomotion and manipulation, “the Integrated Limb Mechanism.” The concept covers the technical fields both of the control integration and of the mechanism integration necessary for the practical working robot.Here, a six-bar linkage mechanism with four degrees of freedom is introduced as an example of integrated limb mechanism with both advantages in leg and in arm with consideration for mechanical design. Computer simulation with the dynamic model is performed to verify the transformability from leg posture into arm posture of the mechanism. The kinematic analysis by the manipulatability ellipsoid is done to evaluate the different motion rates between the leg posture and the arm posture. Some useful tasks are considered suitable to the mechanism.
著者
澤田 佳宏 津田 智
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-61, 2005-06-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
33
被引用文献数
4

1.日本の暖温帯に成立している海浜植生の主要構成種14種(在来海浜植物11種,外来植物3種)について,海流散布の可能性を評価するために,海水に対する浮遊能力と海水接触後の種子発芽能力に関する実験をおこなった.  2.在来海浜植物のうちコウボウムギ,コウボウシバ,ハマエンドウ,ハマボウフウ,ハマゴウ,ハマニガナ,ネコノシタ,ハマヒルガオの8種は浮遊能力が優れており,また,海水接触後にも発芽が可能であったことから,長期間の海流散布が可能と考えられた.  3.在来海浜植物のうちビロードテンツキは海水にほとんど浮かぼなかったため,海流散布が困難と考えられた.オニシバとケカモノハシは10日から20日程度で沈んだため,短期間であれば海流散布が可能と考えられた.  4.海浜に優占群落をつくる外来種(オオフタバムグラ,コマツヨイグサ,ボウムギ)はいずれも,海水にほとんど浮かばなかったため,海流散布が困難と考えられた.これらの外来種は内陸にも生育が可能であることから,内陸を通じて海浜に侵入するものと考えられた.  5.海浜における個体群の孤立化が進行した場合,「外来種」および「長期間の海流散布が可能な在来海浜植物」は局所絶滅後の再侵入が可能であるが,「長期間の海流散布が困難な在来海浜植物」では再侵入が起こりにくくなると考えられる.このため「長期間の海流散布が困難な在来海浜植物」は各地の海浜植物相から欠落していくおそれがある.
著者
森谷 周一 Shuichi Moritani
出版者
関西学院大学
巻号頁・発行日
2015-09-09
著者
長谷川 智子 櫻井 順子 須崎 正美 山本 美知 長島 豊太
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.148-149, 2018-09-03 (Released:2018-05-18)
参考文献数
3

科学がわかるたのしさを伝えてくれる岩波科学教育映画は,制作後50年を経ても学校および市民のための科学教育に力を発揮してくれる。科学の原理や基本法則は,時代を経ても変わらない。それを初学者に教えるとき、科学の方法(仮説・実験)を取り入れ,視聴者を惹きつけるストーリーでできた科学教育映画は,現代の科学教育の課題への道を開く手段となりうる。映像と科学教育の研究会では,16mmフィルムで制作された映画をデジタル化し,活用への道を開いてきた。さらに映像と視聴者とをつなぐコミュニケーションの工夫を重ね成果をあげている。
著者
Yuya Nakano
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
pp.RV17039, (Released:2019-12-20)
参考文献数
84
被引用文献数
30

Low birth weight (LBW) infants have higher risk of developing insulin resistance and its comorbidities later in life. The concept of “developmental origins of health and disease” suggests that intrauterine and postnatal environments have an important role in increasing these risks. The risk of such adult-onset diseases in LBW infants might be associated with adipose tissue maldevelopment including altered body composition and increased amount of visceral fat, which is the same mechanism as that in children and adults with metabolic syndrome. However, LBW infants often have different characteristics: they are not always overweight or obese over their life course. The inconsistency might be associated with the thrifty phenotype, which is produced in response to impaired growth potential and decreased lean body mass. LBW infants tend to be obese within the limits of impaired growth potential. Through our previous investigations evaluating longitudinal changes in adiponectin levels at an early stage of life, we speculated that probably, the intrauterine life of term infants or the period up to term-equivalent age in preterm infants might be the key age for the development of adipose tissues including fat cells. Because of that, we hypothesized that the smaller number of adipocytes in LBW infants might be associated with overloading of single adipocytes and impaired adipose tissue expandability. The possible mechanisms are discussed from the perspective of adipose tissue maldevelopment in LBW infants.