著者
笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は初期の神経細胞に微細なパターンを与える分子的実体を明らかにし、神経系の発生分化制御の研究に寄与することを意図したものである。(1)脳及び頭部外胚葉の「微細なパターン形成」に関与する新しい因子の同定脳及び頭部外胚葉の形成期の細胞間や組織間の「ローカルなト-ク」を媒介する因子は主として分泌因子や細胞膜蛋白などであるため、最近米国の企業の研究所で開発されたシグナルペプチドを持つcDNAを酵母を用いて迅速に単離する方法でスクリーニングすることができる。中期神経胚の頭部神経板よりこうしたシグナルトラップcDNAライブラリーを作成し小スケール・スクリーニングをおこなった結果、すでに十数個の新しい神経特異的分泌因子(または膜蛋白)を同定した。現在、これらの因子の生物活性を詳しく調べるとともに、さらに大スケール・スクリーニングをおこなっている。(2)「微細なパターン形成」に関与するChordinの下流因子の同定神経誘導因子Chordinを作用させた未分化外胚葉を用いてデファレンシャル・スクリーニングを行い、多数の神経特異的遺伝子を単離した。そのうち3つの転写因子(Zic-related 1,Sox-2,Sox-D)はこれらはごく初期神経板全体に発現しており、それらの因子の活性を検討中である。
著者
笹井 芳樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、哺乳類初期胚における神経外胚葉への分化の制御機序を明らかにするため、多能性幹細胞の試験管内分化系を用いて、この過程を制御する2つのZnフィンガータンパクの機能を解析した。まず、XFDL156のマウスのホモローグであるmZfp12を単離し、mZfp12の強制発現が、ES細胞からの中胚葉分化を抑制し、神経分化を促進することを明らかにした。さらに、新規のスクリーングでZfp521を単離し、これが未分化外胚葉から神経前駆細胞への分化に必須の遺伝子であることを証明した。
著者
笹井 芳樹 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

脊椎動物の神経発生の初発段階は外胚葉に神経誘導が作用して始められる。神経誘導因子Chordinを作用させた未分化外胚葉とさせていないものとを用いてデファレンシャル・スクリーニングを行い、多数のChordinで誘導される神経特異的遺伝子を単離した。そのうち3つの転写因子(Zic-related 1,Sox-2,Sox-D)はこれらはごく初期神経板全体に発現しており「微細なパターン形成」が行われる前に働く遺伝子と考えられた。アフリカツメガエルのアニマル・キャップを用いた微量注入法の解析の結果、Zic-related1,Sox-Dは単独で外胚葉の神経分化を誘導することが明らかとなった。これらはChordinの下流で働き、神経誘導因子のエフェクターとして神経分化のごく早いタイミングで働き、proneural genesの発現の上流で働くことが示された。上記の2つのSox因子についての機能解析を行うため、DNA結合領域を欠損させたドミナント・ネガチィブ変異体を作成し、mRNA微量注入法により胚での神経発生における機能を検討した。SoxDのドミナント・ネガチィブ変異体を強制発現させ機能阻害をすると、胚の大脳の発生が顕著に抑制され、OTXなどのマーカーも抑えられた。このことはSoxDが大脳原基の発生に必須であることを示す。しかし、中脳より後方の発生は大きな変化が認められなかった。一方、Sox2のドミナント・ネガチィブ変異体を強制発現させた胚では、大脳のみならず神経板全体の神経マーカーの抑制が認められた。
著者
笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

神経誘導因子Chordinを作用させた未分化外胚葉とさせていないものとを用いてデファレンシャル・スクリーニングを行い、Chordinで誘導される多数の神経特異的遺伝子を単離した。そのうち3つの転写因子(Zic-related 1,Sox-2,Sox-D)はこれらはごく初期の神経板全体に発現していた。アフリカツメガエルのアニマル・キャップを用いた微量注入法の解析の結果、Zic-related 1,Sox-Dは単独で外胚葉の神経分化を誘導することが明らかとなった。これらは神経分化のごく早い時期にChordinの下流で働くエフェクターとして働き、proneural genesの上流で働くことが示唆された。一方、Sox-2は単独では働かず、FGFと協同的に働いて神経分化を誘導し、コンピテンスを変化させる因子と考えられた。現在、これらの因子とともに、さらに他の多くの単離された因子の活性を詳しく検討中である。このように神経誘導の初期に働く転写因子が複数同定された。それらは必ずしも重複したものではなく、神経発生での役割に違いが認められた。さらに詳細な遺伝子間相互作用を検討するために野生型、ドミナント・ネガチィブ変異体のGR融合型の転写因子を作成することに成功したので今後これらを用いて解析を進める。さらに哺乳類培養細胞の系をもちいて試験管内での神経分化制御を可能にすべく、未分化胚細胞ES細胞などにこれらの因子を遺伝子導入し、その効果を判定中である。
著者
林 明子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.13-24, 2012-03-30 (Released:2017-11-28)
被引用文献数
2

本稿の目的は、経済的に不利な状況におかれている家庭の子どもたちが日常生活と進路選択をどのように経験しているのかを解明し、なぜ彼/彼女らが相対的に低位の進路にたどり着くのかに迫ることにある。ライフストーリーに着目し分析をおこなったところ、子どもたちは家庭の困難により学校では周辺的な位置におかれる一方で、家庭がよりどころとなり「家庭への準拠」を強めていた。その帰結として、子どもたちは低位の進路を選択することになったのである。
著者
呑海 沙織 綿抜 豊昭
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.69-82, 2012-06-30 (Released:2017-04-30)

本稿では,図書館マナーの社会的受容について考察を行うことを目的として,近代礼法書における図書館に関する記述内容の分析を行った。近代礼法書において,図書館が単独で取り上げられるのは昭和以降のことであり,図書館に関する共通記述は12種みられた。図書館に備え付けられている「もの」に関する記述が6種,(2)図書館における「ふるまい」に関する記述が6種である。「もの」に関する記述のほとんどが図書に関するものであり,特に図書を丁寧に扱うという記述は全ての対象書にみられた。一方,「ふるまい」に関する記述で最も多かったのは静粛であり,なかでも音読禁止は最も多く取り上げられていた。先行研究においては,明治期より図書館規則によって音読禁止条項が普及し,大正から昭和初期にかけて衰退する傾向にあったことが明らかにされているが,本稿では礼法教育によって「規則」から「マナー」へと変容した可能性を指摘することができた。
著者
山本 秀行
巻号頁・発行日
vol.17, pp.38_a-25_a, 1993-08-31
著者
小山 洋 佐藤 雅彦 遠山 千春
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.624-635, 2003-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
90
被引用文献数
2 1

As the last manuscript in our series of review articles on cadmium (Cd) and health effects, we reviewed research articles on epidemiologic and experimental studies on exposure levels of Cd in occupational and environmental settings in various countries, disposition and body burden of Cd, critical concentrations of Cd in the kidney of humans and animals with a focus on biomarkers for renal dysfunction, and life expectancy in Cd-polluted areas and reference areas. After this manuscript was compiled, cadmium levels in rice crops received significant attention, since the risk assessment of cadmium is now under review and discussion by the Joint Expert Committee of Food Additives and Contaminants organized by the Food Agricultural Organization and World Health Organization in 2003. We hope that the information compiled in this review may provide directions for future studies on the health risk assessment of Cd.
著者
石山 歩 伊藤 泰 入間田 美咲 片岡 満里奈 佐藤 悠里 篠田 祐子 関根 孝幸 小野部 純
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1212, 2012

【はじめに、目的】 ヒトの肢体容積は,重力やホルモンなど様々な要因が影響して経時的に変化している.ヒトの下肢容積の変化は、歩行などの活動量に依存するといわれているが,それらの明確な関係についての報告は少ない.また、容積の算出方法は水置換法やMRIから算出するものなど様々な方法が用いられているが,臨床的に用いる場合は衛生面や簡便性から考えると周径計測を用いられていることが多い.しかし,周径から計算式を用いて容積を算出した場合,誤差が大きくなると報告されており,注意が必要である.本研究では,健常人における下肢容積の日内変動量と活動量の関係について比較・検討を行った.そこで,今回は下肢容積を表す指標として対象部位の数箇所の周径を計測しその総和を用いた.さらに,病的な浮腫の早期発見のための足がかりとするために,下肢容積の生理的変化と病的変化との境を明確にすることを目的とした.【方法】 対象者は健常人39人(男性18人,女性21人)とし,対象肢は右下肢とした.また,下肢容積の指標として下肢周径,活動量の指標として歩数を計測した.周径計測は朝8時~9時,昼12時20分~13時20分,夜17時~19時の時間帯に計3回,背臥位にて同一検者がメジャーを用いて行った.測定部位は膝関節外側裂隙を基準とし5cm間隔で中枢側へ25cmまで,末梢側は30cmまで,さらに外果下縁と第5中足骨底の計14箇所計測した.これらの結果をもとに,大腿部(膝関節外側裂隙から中枢側へ25cm),下腿上部・下部(膝関節外側裂隙から末梢側へ15cm・さらに末梢側へ15cm),足部(外果下縁と第5中足骨底)に分け,それぞれの周径総和を容積を表す指標として作為的に定義した.歩数の計測は,カロリズムTMAM-120(TANITA社製)を用いた.対象者は第1回計測後から携帯し,周径計測時に歩数を確認した.統計処理にはSPSS 13.0を用い,統計学的有意差は大腿部,下腿上部・下部,足部について反復計測による分散分析を行い,有意水準は0.05未満とした.また,下肢容積の変化率と歩数の相関を検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の趣旨と予測されるリスク,さらにヘルシンキ宣言を遵守する旨と,計測中であっても対象者の意思により中止できる旨も併せて説明し同意を得られた者のみとした.【結果】 下肢容積の日内変動について,大腿部では,朝-昼間で有意な差がみられた(p<0.05).下腿上部・下部では朝-昼間と朝-夜間で有意な差がみられた(p<0.01).足部では有意な差は見られなかったが,第5中足骨底部のみでは朝-昼間と朝-夜間で有意な差がみられた(p<0.05).この変化率は各部位とも約1~2%となり,男女間の下肢容積の日内変動に有意な差は見られなかった.また,各部位において下肢容積の変化率と歩数の間に相関はみられなかった.【考察】 本研究の結果から,朝-昼間,朝-夜間の下肢容積に有意な差がみられ,その変化率は約1~2%であった.また,本結果からは下肢容積の変化率と歩数の間には相関がみられなかった.まず下肢容積の日内変動においては,対象者全員が約1~2%の変化率であったため,この変化範囲が健常人の生理的反応を示しているといえる.次に下肢容積と活動量の関係においては,一般的には筋ポンプ作用の影響が大きく,活動量が多いと筋ポンプ作用が促進されて容積が減少すると考えられている.この容積の増減には健常人の場合,血液や組織間隙などの水分量が大きく関与しており,これらの運搬には血流とリンパ流の影響が関わっている.血流量やリンパ流量は、筋ポンプ作用によって促進されると10~20倍に増加するとされ,これが容積の減少に繋がると考えられている.しかし本結果では,活動量の指標である歩数と容積変化に相関はみられなかった.その要因として活動時間と計測時間の関係性が挙げられる.筋ポンプ作用により血流量やリンパ流量が増大することは明らかだが,下肢容積に影響を与えるまでの時間(潜時)や負荷強度などは明確ではない.そのため,計測時に筋ポンプ作用と容積変化に相関がみられなかったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 近年、がん治療の後遺症として注目されているリンパ浮腫は,摘出手術後に自覚がないうちに重症化を引き起こすケースが多数みられる.これは,現在リンパ浮腫を早期発見するための明確な指標がないことが一因と考えられる.そのため,より詳細な指標をつくることが重要と考え,本研究を行った.本結果より,健常人における下肢容積の日内変動が明らかとなり,今後の病的浮腫の早期発見の足がかりとなると考える.また,活動量と下肢容積においては関係性がみられなかったため,今後は筋ポンプ作用が下肢容積に及ぼす効果のタイミングを明確にすることが重要であると考える.
著者
天野 慶之 富谷 章子
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.671-687, 1953-09-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
27
被引用文献数
4

The problem of green discoloration in frozen meat of sword fish has drawn much attentions among frozen food packers in this country for recent several years. In the previous paper1) (1950) the presence of isovaleric acid in ?? green part of the meat was noted as a component of disagreeable smell resembling that of foul cheese. The purposes of the present work are to ascertain what is the relation between occurrence of green meat and freshness of raw muscle and whether or not the green pigment is identical to that of Pseudomonas fluorescens. It is hoped that the latter of the questions may be answered by throwing light on biochemical agencies, if any, responsible for giving rise the discoloration. The discoloration takes place just beneath the ventral and lateral sides of the skin and often in the abdominal cavity (Figs. 1-4). It is frequently experienced that formation of the green meat is likely promoted when the presence of the blood or dark flesh is remarkable in the adjacent muscles. It can be also pointed out that the discoloration tends to spread to a certain extent during the first two weeks of storage with temperature kept below -15°C., but no more after that period. The results of comparative examination showed that the green part was almost in an early stage of decomposition as compared with a normal part of the meat. The amount of iron contained in the green meat was rather higher than that of normal one (Table 1). The green pigment can not be extracted with organic solvents such as ethanol, methanol, buthanol, berzol, ether, and is only soluble in water. The absorption spectrum of this pigment indicates their maximum point at the wave length of 418 milimicrons and differ distinctly from that of the pigment produced in the cultivation of Pseudomonas fluorescens. Furthermore, the green pigment does not show fluorescence under ultra-violet ray. Intensity of the color is neither reduced by addition of acid until pH value of the medium lowers to 4.0 or below, nor recovered when alkali is added to this acidified solution in an attempt at reversing the reaction toward alkaline side. On the contrary, the pigment of Pseudomonas fluorescens fades out readily when pH of the medium is adjusted under 62. It is as well possible to let the color turn back completely as if to behave as an acid base indicator whenever pH is exceeded above 6.2 by addition of alkali (Table 8). Since about 1 to 2mg. of hydrogen sulfide was proved to exist in 100 grms. of the green meat, injection of dilute H2S solution into the normal tissue was applied in an attempt at artificial discoloration of sword fish meat. After a day or so the development of green color was observed at the locality where hydrogen sulfide had been injected (Table 9). Expansion of the green area was noticed during storage at the temperature of -15°C. for artificial discoloration. It is intere-sting to note that just about 1.25 mgms. of H2S is necessary to form the discoloration, and that this amount roughly corresponds to that of H2S naturally contained in the green meat Some reducing substances such as cysteine which are believed to probably exist in the muslce tissues, and glucose, , do not exhibit green discoloration as occurred in H2S injection, regardless of their concentrations. Artificial discoloration by H2S was also successful with the muscles of dogfish and flatfishes to which the injection was performed. But it failed in case of Alaska pollack (Table 10). Contamination of Pseudomoaas fluorescens would have no significance for the discoloration of frozen sword fish.
著者
加藤 勇気 小山 総市朗 平子 誠也 本谷 郁雄 田辺 茂雄 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【はじめに】 </b>動的バランス能力低下を引き起こす要因として、足底感覚の低下が報告されている。その機序の一つとしては、機械的受容器の非活性化が示唆されている。臨床では、機械的受容器の賦活にタオルギャザーや青竹踏みが用いられている。しかし、刺激量が定量化できない事、随意運動が不十分な患者では施行できない事が問題となっている。近年、経皮的電気刺激(transcutaneous electrical stimulation以下TES)を用いた機械的受容器の賦活が報告され始めている。本手法は、刺激量が定量化でき、随意運動が不十分な患者でも施行できる利点がある。過去報告では、下腿筋群に対する運動閾値上のTESによって、足底感覚と動的バランス能力の改善を認めている。しかし、感覚鈍麻を認める患者においては、可能な限り弱い強度での電気刺激が望ましい。本研究では、足底に対する運動閾値下のTESによって動的バランス能力が向上するか検討した。<br><b>【方法】 </b>対象は健常成人17名(男15名、女3名、平均年齢24.6±3.2歳)とし、10名をTES群、7名をコントロール群に分類した。TES装置はKR-70(OG技研)を用いた。電極には長方形電極(8㎝×5㎝)を使用し、足底、両側の中足骨部に陰極、踵部に陽極を貼付した。TESは周波数100Hz、パルス幅200us、運動閾値の90%の強度で10分間連続して行った。コントロール群は10分間安静を保持させた。動的バランス能力の評価にはFunctional Reach Test(FRT)を用いた。FRTの開始姿勢は、足部を揃え上肢を肩関節90°屈曲、肘関節伸展回内位、手関節中間位とした。対象者には指先の高さを変えない事、踵を拳上しない事を指示し、最大前方リーチを行わせた。測定は2回行い、その平均値を算出した。統計学的解析は、各群の介入前後の比較に対応のあるt検定を用いた。本研究の実施手順および内容はヘルシンキ宣言に則り当院倫理委員会の承諾を得た。対象者には、評価手順、意義、危険性、利益や不利益、プライバシー管理、目的を説明し書面で同意を得た。<br><b>【結果】 </b>TES群は介入前FRT 34.6±3.2㎝、介入後36.9±3.2㎝と有意な向上を認めた。一方で、コントロール群は介入前34.3±1.9㎝、介入後34.6±2.0㎝と有意差は認められなかった。<br><b>【考察】 </b>足底に対する運動閾値下のTESは、動的バランス能力を向上させた。過去の報告で用いられた下腿筋群に対する運動閾値上のTESの作用機序としては、筋ポンプ作用によって末梢循環が改善され、機械的受容器が賦活されたと示唆されている。したがって、本研究における運動閾値下のTESの作用機序は異なるものであると考えらえる。運動閾値下のTESは、刺激部位の機械的受容器や上位中枢神経系の賦活が報告されている。機械的受容器の感受性改善は、足底内での細かな重心位置把握を可能とし、上位中枢神経系の賦活は、脊髄反射回路の抑制によって協調的な動作を可能にすると考える。今後、足底に対する運動閾値下のTESと重心動揺、上位神経系との関係を明らかにすることで、動的バランス能力向上の機序がより明確になると考える。<br><b>【まとめ】 </b>本研究によって足底に対する運動閾値下のTESが動的バランス能力を向上させることが示唆された。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[288],