著者
畠 康高 豊浦 正広 茅 暁陽
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.338-347, 2014-07-30 (Released:2015-11-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1

鉛筆画は,モノトーンを用いながら豊かな表現が可能であり,ラフなスケッチとしても完成度の高い芸術作品としても多くの人に親しまれている.我々はビデオを鉛筆画風動画に自動変換する手法を提案する.静止画を自動的に鉛筆画に変換できるLIC法を用いた鉛筆画生成法を用いる.しかし,静止画の鉛筆画変換手法を動画の各フレームにそのまま適用すると,ちらつきやシャワードア効果が発生する.この問題を解決するために,フレーム間で相関を保ったストロークを生成する新しい技術を提案する.前フレームのストロークを基に,輝度の変化に合わせて,不足するあるいは過剰なストロークのみを,追加または削除し,オブジェクトの移動に合わせてストロークの位置を移流することで課題を解決する.
著者
小林 寛子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.149-166, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
107

科学技術の発展は目覚ましく,それに対応できる資質・能力を育むことは,自然科学を対象とする理科教育において喫緊の課題と言えよう。本稿は,理科教育が果たすべき役割について心理学の観点から検討しようとするものである。折しも,2017年3月に公示された学習指導要領,及び,それに先立って発表された中央教育審議会の答申には,心理学的観点が数多く含まれた。本稿では,そうした観点の1つである,学習者の立場で「何ができるようになるか」を考えるという点を取りあげ,心理学研究を概観する枠組みとして用いた。具体的には,学習者が学習の過程で抱える困難を明らかにする研究,及び,困難の克服を目指す指導法を提案し,その効果を検証しようとする研究に特に焦点をあてた。さらに,それらを,理科教育を通して「できるようになること」,すなわち,育成が目指される資質・能力の3つの柱(知識及び技能,科学的に探究する力,科学的に探究しようとする態度)ごとに整理して示した。そうしてまとめた研究の知見を受け,最後に,これからの理科教育と心理学研究における課題について論じた。
著者
白楽 ロックビル
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:13440896)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.59-71, 2011

10年余りかけ、読売新聞の記事データベースから、明治・大正・昭和・平成時代(1874~2009年)の136年間の「研究者の事件データベース」を作り、最近完成させた(白楽ロックビル『研究者の事件と倫理』、講談社サイエンティフィック、2011年9月出版予定)。136年間の「研究者の事件」(含・技術者)は、文系も含めた全分野で1,402件あった。直近23年間(1987~2009年)の件数の多い順の「事件種」ランキングでは、セクハラが1位、研究費が2位、改ざんが3位だった。「研究者の事件」をおこす研究者は、「55+歳の大学医学部の男性教授」が多かった。「盗用」、「ねつ造・改ざん」を詳細に分析した。
著者
福森 雅史 高橋 紀穂
出版者
近畿大学語学教育部
雑誌
語学教育部ジャーナル = Kinki University Department of Language Education journal
巻号頁・発行日
no.5, pp.27-45, 2009-03-01

著者専攻(福森): 認知言語学・スペイン語学・ポルトガル語学, 著者専攻(高橋): 社会学・人類学, 福森, 雅史
著者
福森 雅史
出版者
近畿大学英語研究会
雑誌
Kinki University English Journal = 近畿大学 英語研究会 紀要 (ISSN:18827071)
巻号頁・発行日
no.5, pp.47-65, 2010-01-01

「個の時代」が強調されて久しい今日、我が国ではオリジナル・テキストの作成やオフィス・アワーの活用など個の活動が大学教育で盛んに求められている反面、語学教員として「個」が如何にあるべきか、という研究・教育姿勢については必ずしも重視されているようには感じられない。そこで、本論文では、大学教育における語学教員として各自の研究が教育に反映されるべき姿勢のあり方を、まさに「個」を表す表現である英語再帰代名詞 SELF およびスペイン語再帰代名詞 si/se を通じて提議する。特に、この「その1」では、「oneselfは主語が指示する物と同一物を指示する」とする先行研究の問題点を認知言語学理論も交えて指摘する。
著者
福森 雅史
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.195-216, 2009-03

「開」概念表示語である日本語動詞アケルとヒラクに注目し,各々の多義構造を解明することを目的とする。その際,「図地分化」([英語]Figure-Ground Segregation/[西語]segregacion de Figura y Fondo)の認識という概念的見地に立脚して観察することによって,各々の共通点や相違点などの概念的関係をも明らかにする。また,英語やスペイン語の例を挙げることによって,「図地分化」の認識が自身の生身の肉体や知覚器官を通して繰り返し経験することで獲得した経験である「人間の本性の産物」であることを実証する。さらには,同じ「開」概念表示語である英語動詞openおよびスペイン語動詞abrirにも論旨は及ぶ。
著者
松田 雅弘 渡邉 修 来間 弘展 村上 仁之 渡邊 塁 妹尾 淳史 米本 恭三
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.117-122, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
8 5

〔目的〕脳卒中により利き手側の片麻痺を呈した場合,利き手交換練習を行うことが多い。そのため健常者における非利き手での箸操作の運動時,イメージ時,模倣時の脳神経活動を明らかにした。〔対象〕神経学的な疾患の既往のない右利き健常成人5名(平均年齢20.7歳)とした。〔方法〕課題は,左手箸操作運動課題,左手箸操作イメージ課題,左手箸操作の映像をみながら箸操作運動課題(模倣課題)の3種類とし,その間の脳内活動を3.0T MRI装置にて撮像した。〔結果〕運動課題では左右感覚運動野・補足運動野・小脳・下頭頂小葉・基底核・右Brodmann area 44が賦活した。イメージ課題では,運動課題と比べ左感覚運動野・小脳の賦活が消失していた。模倣課題では,左右感覚運動野・補足運動野・上下頭頂小葉・Brodmann area 44が賦活した。〔結語〕イメージ課題と模倣課題には,運動課題時に賦活する領域を両課題とも補う傾向にあることから,箸操作訓練の際には運動課題のみではなく両者を取り入れて行う意味があることが示唆された。
著者
成田 正明 成田 奈緒子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

研究代表者らが2001年にPediatric誌に発表した乳幼児突然死症候群(SIDS)におけるセロトニントランスポーター(5HTT)遺伝子多型結果は、SIDSの新しい危険因子を見出したもの、SIDSを未然に防ぎうるものとしてその後も、小児救急医学会での会長要望演題、学会誌への会長依頼論文、専門誌からの依頼原稿、マスコミからの取材などを引き受けたほか、突然死裁判での鑑定依頼、国内・国際学会からのシンポジウム講演依頼など、社会からの反響はますます大きくなるばかりである。2003年にはAmercan Journal Medical Genetics誌により大きな母集団を用いた追試実験の報告がなされ、そこで研究代表者らのデータが確かめられた。さらに本研究はSIDS研究のみならず、その発症にセロトニンが関与しているとされる他の疾患即ち慢性疲労症候群、神経性無食欲症などにも発展し、遺伝子解析でいずれも正常と比べ疾患群で有意な相関を認め学会、研究会などで報告、学術論文として投稿中である。一方5HTT以外のセロトニン関連遺伝子多型解析も同時に進めているが、これまでのところ有意な相関は認められていない。これは転写活性領域に存在する5HTT多型が、いわゆる"機能性"多型であることと関係があると思われる。そこで5HTT多型がアリルによってどのように転写活性機能が調べる必要がある。国内外の報告では活性調節における差に関するデータは議論が多い。これと平行して、セロトニン関連疾患の病因病態に関しては遺伝子からのアプローチだけでなく、神経栄養因子蛋白(脳由来神経栄養因子BDNF)の発現量測定で診断ができる可能性を見出した。また同じくセロトニン関連疾患とされる自閉症についても自閉症モデルラットを作成し論文発表した。以上述べてきた成果に基づき研究代表者は科学技術振興事業団「脳科学と教育」の班員にも任命されており、今後もSIDS原因究明・発症予防に向けて研究を続けていきたい。
著者
田中 嘉生
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡女子短大紀要 (ISSN:02860546)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.17-27, 1999-02-10

蝋防染技法の蝋の特徴を生かした防染技法の中の一つ, 逆蝋けつ染技法について述べる。加えて, この技法を確立し, 作品の中に展開した城秀男の創作活動を紐解くことにより, 逆蝋けつ染から生まれる表現効果について考察する。
著者
中條 利一郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.603-607, 2007-08-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
19

中尊寺金色堂(岩手県平泉町)に保存されている三体の遺体は藤原清衡,基衡,秀衡のものである。これらの遺体が納められている棺の中にあった絹の13C固体高分解能NMRから,絹を構成しているアミノ酸のモル分率とスピン格子緩和時間を求め,それらと当時の気温(年輪考古学による)とを比較し,遺体は須弥檀の側から見て,左から順に基衡,清衡,秀衡のものであることを明らかにする。これは, 現在お寺で採用されている帰属とは反対である。
著者
笹沢 美明
出版者
詩学社
雑誌
詩学 (ISSN:13425595)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.p34-37, 1978-06
著者
遠藤 志乃 中谷 素之
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.170-176, 2017 (Released:2017-06-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3 4

This study examined the relationships between motivational regulation strategies, goal achievements, and learning habits in junior high school students. A total of 288 junior high school students completed a self-administered questionnaire. We focused on the students’ representative motivational regulation styles, i.e., intrinsic vs extrinsic motivational regulation. Structural equation modeling revealed the following: (a) mastery goals promoted an intrinsic regulation strategy, which in turn, facilitated development of beneficial learning habits; (b) performance-approach goals promoted an extrinsic regulation strategy, which by contrast inhibited the development of beneficial learning habits. These results suggest that goal achievement positively affects learning behavior mediated by motivational regulation strategies. In light of these findings, we discuss the importance of intrinsic regulation strategies in promoting beneficial learning habits in junior high school students.
著者
諸隈 紅花 窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1189-1196, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
46
被引用文献数
1

本論文はニューヨーク市ブルックリン区のウオーターフロント沿いの、歴史的な造船所のブルックリン・ネイビーヤード(BNY)を取りあげ、歴史的工場群を店舗・住宅等の別の用途に転換することで場所を再生するのではなく、歴史的環境において当初の製造という機能を活かして市営の工業団地として再生する、従来の歴史的港湾の再開発とは異なるタイプの保全型再開発が実現した背景、実態の把握、再生の方法、歴史的環境保全と製造業維持という二つの政策の相関関係を明らかにする。研究の手法は文献調査、2回の現地調査、及び関係者へのインタビューを用いる。BNYが製造業の場として再生された背景には当初からの周囲のコミュニティへの雇用の場としての位置づけ、グローバル経済下における都市構造の変化による中小製造業の工業空間への需要の高まりと「製造業の維持」を推進する民間の団体の存在があった。運営をまかされたNPOは市からの資金援助が少ないなかで補助金や公的資金等の様々な資金源を活用して、再開発を実現した。歴史的環境保全と製造業の維持政策には明確な接点はないが、BNYにおいては両者が一定のメリットを享受することで均衡を保っている。