著者
川端 博子 鎌田 紗矢子
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.179-188, 2010

Movements of the lower legs and feet during ascending and descending of stairs were observed, and flat shoes, 3cm-heeled pumps, and 8cm-heeled pumps were compared with respect to their functional mobility. The results were as follows:(1) Twenty female university students participated in the test, which involved measuring the length of time required to walk a certain distance and to ascend/descend stairs. When thesubjects were wearing high-heeled pumps, the length of time required to walk a certain distance increased, and the time required to descend stairs increased remarkably.(2) Further observation was carried out for six female students when they ascended and descended stairs, and the movements of their legs and feet were analyzed. When the subjects werewearing high-heeled pumps, the angle between the leg and instep became larger than when they wore other types of shoes, the muscle of the instep was continuously extended, and the rotationof the ankle became smaller; these facts indicate that high-heeled shoes restrict free movement of the leg and foot.(3) Pressure distribution on the sole was measured to examine the mobility function of highheeled shoes. When the subjects stepped on the ground, there was no difference in the total pressureapplied to the sole according to the type of shoes. When they kicked the ground, however, the total pressure on the sole was the smallest for the flat shoes. As the heels of the shoes becamehigher, more pressure was applied to the front part of the sole, and the transfer of the pressure position during motion became smaller. As a result, it was revealed that high-heeled shoes had an influence on antero-posterior balance of the foot in walking movement.
著者
矢口 悦子 木勢 峰之 米田 香 山﨑 敦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AbPI1081, 2011

【目的】<BR> ファッションとしてハイヒール靴を履く女性が多くみられる.しかし,足の痛みや腰痛を訴える者も多く,ハイヒールが身体に与える影響について様々な報告がされている.その中で体幹に関しては,腰椎の過剰な前彎が生じる,脊柱のアライメントに変化はないなど一定の見解が得られていない.また,ヒールの高さの違いによる体幹への影響を検討した研究は少ない.そこで本研究では,異なるヒール高にて体幹筋活動とアライメントの変化を検討したため報告する.<BR>【方法】<BR> 本研究では,健常成人女性8名(年齢22.5±1.9歳,身長160.4±3.2cm,体重52.9±2.5kg)を対象とした.計測課題は, 3,5,7cmのハイヒール靴を装用した静止立位の3条件とした.靴は同一形状の物を使用し,24.5cmのサイズとした.また,比較として裸足での計測も合わせて行った.安静立位で,2m前方の目線の高さの印を注視させ,各条件で3回ずつ計測を行った.<BR> 計測ではフォースプレート(zebris社製 FDM1.5)にて足圧中心(以下,COP)を求め,踵骨後縁からの距離を算出した.アライメントの計測には,超音波動作解析装置(zebris社製CMS-20S)を用いた.受信機を被験者の背側に設置し,指標として左側の耳垂,肩峰,第7頚椎~第3仙椎棘突起,上前腸骨棘,上後腸骨棘,大転子,膝関節前面,外果を触診し,ポインターにてマーキングを行った.ソフトウェアにはZebris WinSpineを使用し,各指標の空間座標を計測した.ここで得られた座標から,胸椎後彎角,腰椎前彎角,骨盤前方傾斜角を求め,脊柱を除く各指標に対し,外果を基準とした矢状面上での移動距離を算出した.COP,アライメントではそれぞれ3回の平均値を求めた後,裸足と各条件の変化量を算出した.また,筋活動の計測には表面筋電図計TELEMYO2400R(NORAXON社製)を用い,電極を左側の外腹斜筋,内腹斜筋,胸・腰部脊柱起立筋,腰部多裂筋に貼付した.3秒間の安定姿勢における筋活動を1,500Hzでサンプリングした後に平滑整流化し,裸足時の筋活動で正規化し%IEMGを算出した.統計処理にはPASW Statistics 18を用い,各項目に対して有意水準5%未満にて反復測定による一元配置分散分析を用いた後,Tukey法による多重比較を行った.<BR>【説明と同意】<BR> ヘルシンキ宣言に基づき対象者には十分な説明を行い,同意を得た上で計測を行った.<BR>【結果】<BR> ヒール高3,5,7cmの順にて結果を記す.COP変化量(1.2mm,2.0mm,2.3mm)では3,7cm間にて有意に前方移動が認められた(p<0.05).胸椎後彎角,腰椎前彎角,骨盤前方傾斜角ではいずれも有意差は認められなかった.アライメント指標では有意差は認められなかったが,全指標とも裸足時より前方へ移動する傾向がみられた.%IEMGでは,全ての筋において有意差は認められなかったが,胸部脊柱起立筋(143.8%,129.7%,130.2%),腰部脊柱起立筋(116.2%,113.6%,115.4%),腰部多裂筋(184.2%,140.9%,172.9%)では,裸足と比較すると増加傾向がみられた.<BR>【考察】<BR> ヒール高が増加し足関節が底屈することにより,前足部への荷重圧が増加すると報告されており,COP変化量では先行研究を支持する結果となった.この変化に伴い,アライメントの全指標が裸足と比較し,前方へ移動する傾向がみられている.また,筋電図においても腰背部筋の%IEMGでは,裸足と比較しハイヒール靴にて増加傾向がみられているため,前方移動に対する姿勢制御に関与していると考えられる.しかし,胸腰椎角,骨盤前方傾斜角において有意な変化は認められず,脊柱での姿勢制御では個人差が大きく,個人で制御様式が異なることが推察された. <BR> 今回,ヒール高による筋活動,アライメントの差は認められなかったが,ハイヒール装用時の腰背部筋の過活動が,腰痛を発症させる一つの要因となるのではないかと考えられた.今後,裸足時のアライメントやハイヒール靴装用時の腰痛の有無を考慮し,群分けをするなど再考した上で,さらに被験者数を増やし検討していく必要がある.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 今後,ハイヒール靴が体幹に及ぼす影響について検討を継続していくことで,ハイヒール靴装用者に対する指導や腰痛予防のための一助になると考える.<BR>
著者
岩城 大介 出家 正隆 折田 直哉 島田 昇 細 貴幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1083, 2012

【はじめに、目的】 一般に若い女性は,ファッション性のためハイヒールを履くことが多い.しかし,ハイヒール歩行は荷重中心軌跡の内側偏位,立脚中期での接触面積の減少などの影響があるとされ,このことからハイヒール歩行は非常に不安定であると考えられる.また,近年運動連鎖の観点から一関節の変化による他関節への影響が重要視されている.ハイヒール歩行は足関節の底屈強制により歩行周期を通して底屈位となるため,足関節の剛性が低下した不安定な状態で初期接地を行わなければならない.運動連鎖から考えてこの足関節での変化は,膝関節,股関節の運動へ影響していると考えられる.そのため本研究では,これらのハイヒール着用による足関節の変化が膝関節・股関節に及ぼす影響について検討した.【方法】 対象は健常若年女性8名(年齢22±0.63歳,身長161.1±3.8cm,体重50.3±3.9kg,)の左下肢4肢,右下肢4肢とした.測定には三次元動作解析装置(赤外線カメラ7台,VICON612:Vicon Motion System社,USA)と床反力計4枚(AMTI社,USA)を使用し赤外線カメラはサンプリング周波数120Hzにて,床反力計はサンプリング周波数500Hzにて赤外線カメラと床反力計を同期し,赤外線反射マーカーの動きと床反力を記録した. マーカー貼付位置はPoint Cluster法を参考に,直径14mmの赤外線反射マーカーを骨盤に6 個・下肢に23個,計29個のマーカーを貼付した.測定条件は10mの直線歩行を至適速度で行い,運動靴着用時とハイヒール着用時で5試行ずつ行った.なお,測定順序はランダムとした.また,ハイヒールは5cm高のものを使用した. 得られたデータはVicon Workstation(Vicon Mortion System社,USA),Vicon Bodybuilder(Vicon Mortion Systems 社,USA)を用いて処理した.Point Cluster法を用いて膝関節屈曲角度,内反角度,脛骨回旋角度,脛骨前方移動量を出力し,その後体節基準点の位置座標を用いて,股・足関節中心を算出し股関節角度,足関節角度を算出した.またPoint Cluster法によるデータは,すべて大腿骨に対する脛骨の相対運動として示した. 有意差検定は対応のあるt検定を用い,有意水準5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 実験に先立ち対象に本研究の目的と主旨を十分説明し,文章および口頭による同意を得た.なお,本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て行った.【結果】 運動靴歩行と比較してハイヒール歩行では,歩行周期を通して足関節底屈角度の増加,立脚終期・遊脚初期~中期での膝関節屈曲角度の減少,立脚初期・中期・遊脚終期での膝関節内反角度の増加がみられた.脛骨回旋角度,脛骨前方移動量,股関節屈曲角度で有意差はみられなかった.【考察】 まず,歩行周期全体を通して足関節底屈角度の増加がみられたことは,ハイヒールによる底屈強制が働いていることを証明している.また,立脚期の終わりから遊脚中期にかけて膝関節屈曲角度が減少したのは,ハイヒール歩行では足関節底屈強制のため立脚後期で前上方への十分な推進力が得られず,足部が床面の近くを通ることで膝関節屈曲角度が減少したのではないかと考えられる.立脚初期・中期・遊脚終期での内反角度の増加に関しては,ハイヒール歩行では踵接地から前足底接地にかけて,足関節内反から外反へ向かう運動を行う時間を稼ぐことができず,脛骨を直立化させる運動連鎖を起こすことができないため,内反角度が増加したのではないかと考えられる.この立脚期における内反角度の増加は膝関節内側のストレスを上昇させ変形性膝関節症のリスクとなるかもしれない. 今回股関節ではハイヒール着用による影響はみられなかった.これは,股関節が膝関節に比べてより体幹近位にあるため,足関節の変化による影響は膝関節で代償したためと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 近年,女性の社会進出に伴いハイヒール着用の機会は増えてきている.ハイヒール歩行による運動学的変化は日常習慣性,反復性に軽微なストレスを蓄積し膝やその他の関節に筋骨格系の障害を及ぼすかもしれない.ハイヒール歩行の運動学的変化を知ることは生活指導や運動連鎖の観点からも重要であると考えられる.
著者
布施谷 節子 柴田 優子 SETSUKO FUSEYA YUKO SHIBATA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.52, pp.141-151, 2012-03

ハイヒールの歩容の特徴を、裸足歩行との比較において明らかにすることを目的に、ハイヒール歩行に関する質問紙調査と2台のビデオカメラの撮影による歩行の三次元動作実験を行った。質問紙調査の対象者は本学女子学生176人、歩行動作実験の被験者は本学女子学生および女性職員45人で、調査及び実験は2008年7 月~ 9 月に行った。主な結果は以下のとおりである。 質問紙調査から、女子大学生は「膝を曲げて歩かない」、「背筋を伸ばす」、「真っ直ぐに歩く」などが美しい歩容だと意識していた。また、安全性や足の障害も問題視していた。 ハイヒール歩行では離床と同時に膝を上げ、足部を外に蹴り出すことなく、ほぼそのまま着地するということがわかった。ハイヒール歩行では裸足歩行のようないわゆるあおり歩行ができていないといえる。ハイヒール歩行の一歩は歩幅が狭く所要時間がやや長い傾向であった。ハイヒール歩行は裸足歩行より膝を高く上げているものの、踵を後に蹴り上げずに、靴を床面とほぼ平行に置きに行くような歩行をしていることがわかった。膝の動きを経時変化でみると、ハイヒール歩行では最高点に達するまでに膝を早く高く上げ、最高点以降は早く接地しており、接地による片足の支持時間が長いといえる。また、膝の軌跡のパターンは、ハイヒール歩行は裸足歩行に比べて画一的な傾向であった。各マークを結んでできる空間角度でみると、裸足歩行とハイヒール歩行の違いは腰と膝の曲がり具合に表れるということがわかった。
出版者
阪急コミュニケーションズ
雑誌
Newsweek (ISSN:09122001)
巻号頁・発行日
vol.28, no.19, pp.66-67, 2013-05-21
著者
城下 貴司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【目的】</p><p>ハイヒール歩行は骨盤後傾,膝関節屈曲の増加から重心後方化する<i>(Opila-Correia 1990)</i>,膝伸展モーメント増加,重心後方化しレバーアームが延長(<i>Esenyel 2003)</i>などの報告が散見される。</p><p></p><p>しかしながら,踵が高いにもかかわらず,重心が前方化しないことに疑問点がある。先行研究は実際の重心移動を算出していない。</p><p></p><p>本研究目的はハイヒール歩行の矢状面上の重心移動を中心に動作戦略を明確にすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p>計測機器は三次元動作解析装置Vicon MX,7台の赤外線カメラ,3枚の床反力計とし,全身に35個のマーカを貼付しFull plug-inモデルで計測した。</p><p></p><p>対象は,ハイヒール歩行をしても問題なく過去6ヶ月間,傷害により医療機関にかかっていない健常成人女性14名,平均年齢20.8±0.7歳,平均身長160.0.±4.0cm,平均体重53.9±5.2kgとし,週3回以上ハイヒール使用群をCustom群7名,それ以外をNo Custom群7名とした。踵高6cmの靴を使用した。</p><p></p><p>計測は自由歩行とハイヒール歩行を各々5回行い,1歩行周期を100%に正規化した。重心移動は膝関節軸と重心線との矢状面上の距離で判断した。重心線に対して関節軸が前方を+とした。</p><p></p><p>パラメーターは歩行周期12%,31%,50%における矢状面上の足および膝関節の角度とモーメント,膝関節軸と重心線との矢状面上の距離とした。</p><p></p><p>統計処理はCustom群とNo Custom群の比較はMann-Whitney検定で,裸足とハイヒール歩行の比較はWilcoxonの符号順位検定を使用した。各々の有意水準は5%未満とし,解析ソフトはIBM SPSS Statistics 21を使用した。</p><p></p><p>【結果】</p><p>Custom群とNo Custom群に分類したが,いかなるパラメーターも統計的な差は示されなかった。</p><p></p><p>膝関節角度は歩行周期12%,31%でハイヒール歩行が裸足歩行と比較して有意に屈曲位だったが50%では有意に伸展位であった。</p><p></p><p>足関節底屈モーメントは有意に31%で低値を,膝関節伸展モーメントは31%で有意に高値を示したが50%では有意差を示さなかった。</p><p></p><p>膝関節軸と重心線との距離は12%,30%で有意に重心後方化を示した,一方で50%では有意に前方化した。以下ハイヒール,裸足の順:12%*(134.3m,104.2m),30%*(-38.3m,-67.5m),50%*(-178.7m,-174.3m)</p><p></p><p>【結論】</p><p>ハイヒール歩行の膝関節屈曲角度が歩行周期12%,31%で増加,伸展モーメントが歩行周期31%で増加することは先行研究と類似した。一方で,膝関節角度が50%でより伸展位,膝伸展モーメントが裸足歩行とほぼ同値,膝関節軸からみた重心移動が50%では有意に前方化することは報告されていない。</p><p></p><p>以上から,立脚相前半は膝関節屈曲し膝伸展モーメント増加,重心後方化するが,立脚相後半では膝関節伸展し膝伸展モーメント減少,重心は前方化する対称的な現象となった。</p><p></p><p>ハイヒール歩行分析は少なくとも立脚前半の現象か,それとも立脚後半の現象かを明確にして臨床的に解釈する必要があると我々は考える。</p>
著者
新井 沙也加 横川 実加 小島 聖 中屋 順子 渡邊 晶規
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】ハイヒールを着用した歩行では足関節底屈位が強制されることから,下肢関節への悪影響が懸念される。この影響について,これまで重心動揺や姿勢との関連を検討した報告が散見される。しかし,裸足とハイヒール着用での歩行における角速度の相異については不明な点が多い。そこで今回,裸足とハイヒール着用での歩行について,膝関節の角速度の変化を明らかにすることを目的に本研究を実施した。【方法】対象は下肢に整形外科的な既往のない健常女性8名(平均年齢21±2.1歳,平均身長158.8±6.7cm,平均体重49.2±5.3kg)とした。すべての被験者は,日常生活にてハイヒールを愛用しており,それを着用した歩行に十分慣れている被験者に限定した。また,ハイヒールは被験者が履きなれたものとし,足長に対して40~45%のヒール高を本研究で用いた。角速度の測定は,3軸ジャイロセンサ(MP-G3-01B,MicroStone社製)を用いた。センサの装着部位は右下腿の脛骨粗面下1横指に貼付し,動作中の筋収縮によってセンサが動かないことを確認した。X軸上の運動は膝の屈曲(+)・伸展(-),Y軸上の運動は下腿の内旋(+)・外旋(-),Z軸上の運動は膝の内反(+)・外反(-)に一致するように設置した。センサは疼痛のない範囲でビニールテープを用いて強固に固定した。サンプリング周波数は10msにて導出した。センサからの出力は信号処理ボックスを介してパーソナルコンピューター(dynabook T350,TOSHIBA社製)に取り込み,専用データ解析ソフトにて解析した。歩行の測定は,初めに裸足歩行,次にハイヒール歩行を実施した。歩行速度は被験者の快適スピードとし,加速と減速の影響を排除するため最初の4歩行周期を除外した5,6,7歩行周期の立脚期を抽出してデータ解析に使用した。1歩行周期の時間が被験者により異なるため,各被験者の歩行周期を時間で正規化した。なお,被験者は測定中のセンサ装着状況に慣れる必要があり,通常の歩行に可能な限り近似するよう測定前には十分練習を行った。また,測定中にバランスを崩した際には再度測定を行った。各方向への角速度からピーク値を算出し,それぞれ裸足歩行と比較した。統計学的手法としては,統計ソフトR(Ver.2.15.1)を用いピーク値の群間比較に対応のあるt検定を行った。危険率5%未満で有意差の判定を行った。【結果】膝の屈曲・伸展および内反・外反における角速度の変化については,裸足歩行とハイヒール歩行は概ね同様の波形を示した。しかし膝の内旋・外旋角速度は裸足歩行に比してハイヒール歩行の方が内旋角速度が減少しピーク値は有意に低値であった(p<0.05)。その他については有意差は認められなかったものの,いずれにおいても裸足歩行に比してハイヒール歩行は低値を示す傾向が認められた。【考察】ハイヒールを着用した歩行では,動作中に足関節底屈位を強制されることから,膝関節の伸展可動域が減少すると考えられている。本研究の結果で得られた膝内旋角速度の減少は,膝関節の伸展可動域減少に追随する終末強制回旋運動の不足が生じ,結果として角速度が減少したものと考えられる。すなわち,ハイヒールによる不安定さを可動域を減少させることにより担保しているものと推察される。【理学療法学研究としての意義】履物による足関節への影響は種々の報告があるものの,膝関節への影響については不明な点が多い。今回,膝関節の角速度について検討し,履物が身体に与える影響を明らかにした点で意義がある。
著者
中島 彩 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中嶋 大喜 中村 葵 白岩 加代子 安彦 鉄平
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.133-137, 2016

<p>本研究は健常成人女性14名を対象に,ヒールの高さの違いが歩行パラメータと下肢筋活動に及ぼす影響について検討した。ヒールなしおよびヒール高3cm と7cm 靴を着用した歩行中の歩行パラメータと下肢筋活動を計測した結果,歩行速度および歩幅とストライド長はヒールなし歩行に比べて,ヒール高7cm 歩行で有意に低下した。ヒールなし歩行とヒール高3cm 歩行のそれらの歩行パラメータには,有意差は認められなかった。両脚支持時間は,ヒールなし歩行に比べてヒール高3cm と7cm 歩行で有意に短縮したが,遊脚時間は後者が有意に増大した。下肢筋活動においては,測定した4筋すべてにおいて有意差が認められなかった。以上のことから,ヒール高3cm 以上で歩行中の立脚時間や遊脚時間に影響を与えるが,ヒール高3cm までであれば,歩行速度および歩幅やストライド長には影響が少ないことが示唆された。</p>
著者
石川 亜沙美 角田 由美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.293, 2009

<B>目的</B> デザイン性を重視した婦人靴が多く流通している。ヒールの高い靴やミュールなど様々なデザインの靴を履いて街を歩く女性の中には、膝が曲がったまま歩行をしたり、前傾姿勢になっている姿が多くみられる。靴のデザインが歩行動作にどのような影響を及ぼすか、各種のデザインの靴を用いて歩行分析実験を行い、検討した結果を報告する。<BR><B>方法</B> 試験靴は、ヒールの形状が同じでヒール高5cmと9cmのパンプス、ヒールの高さが同じでヒールの太さが細いタイプと太いタイプのパンプスを用いた。さらに、ヒール高5cmのミュールと、ストラップ付きのサンダルを比較した。被験者は20歳前後の健康な成人女子9名とし、ニッタ社製のゲイトスキャンを用いて歩行速度・歩幅を計測した。また、各種試験靴で平地歩行する際の状態を、1/120(秒)の高速度設定にしたビデオカメラで側面から撮影した後、上半身の傾斜角度と膝の屈曲角度を、デジモ社製のPTV二次元移動計測ソフトを用いて解析した。さらに、普段履きなれている靴および実験に用いた靴の歩行中の姿勢と着用感について、5段階評価による官能評価を行った。<BR><B>結果</B> (1)ヒールの高さによる違いでは、ヒールの高い靴は不安定になりやすいため、歩幅は狭く、両足接地時間が長く、ゆっくりと歩行していた。さらに、前傾姿勢になり、膝を曲げて歩行していることが明らかになった。(2)ヒールの太さによる違いでは、細いヒールは接地面積が小さく、不安定なため、歩幅が狭く、ゆっくりと前傾姿勢で歩行することが明らかになった。(3)ミュールは、踵が靴から離れやすいデザインのため、慎重に歩行することで視線が下がり、前傾姿勢になる傾向が認められた。
著者
佐藤 綾花 神先 秀人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】ファッションや仕事上の理由でヒール靴を着用している女性は多い。ハイヒール靴着用は,ヒールを上げることで腰椎の前彎が過度に増大し,腰痛を誘発する可能性が報告されているが,立位姿勢では脊柱彎曲角に影響を与えるとはいえないという報告や,逆に腰椎の前彎が減少するといった報告もあり,統一した見解はなされていない。また,歩行に関しては,ハイヒール着用で骨盤が後傾したとの報告はあるが,ヒール高を変化させて検討した研究は見当たらない。さらに,ヒール靴への慣れによる影響を検討した報告も見当たらない。今回,ヒール靴常用者と非常用者の立位姿勢の違いおよび歩行時のヒール高の違いによる体幹・骨盤,下肢の関節角度や筋活動への影響を明らかにすることを目的に運動学ならびに運動力学的分析を行うとともに,腰痛との関連性について検討した。【方法】対象は整形外科的疾患や中枢神経疾患の既往のない健常成人女性で,ヒール靴常用群10名(年齢:21.3±0.8歳,身長:159.0±2.7cm,足長:22.9±1.1cm),非常用群10名(年齢:21.5±0.5歳,身長:160.9±5.3cm,足長:22.8±0.9cm)の計20名である。常用群と非常用群の規定は,週の3日以上で5cm以上のヒール靴を履いている者を常用群,それ以外の者を非常用群とした。ヒール靴は,ヒール高3cm,5cm,7cmのパンプスを使用した。立位姿勢および歩行時の運動学・運動力学的分析には,三次元動作解析装置(VMS社製,VICON-MX)と4台の床反力計(KISTLER社製)を用い,下肢関節,体幹・骨盤の角度,関節モーメントを測定した。立位姿勢の評価は裸足にて計測を行い,歩行は,裸足と,高さの異なる3種類のパンプス装着の合計4課題を設定した。三次元動作解析にはPlug-in-gait全身モデルを用い,身体の35点にマーカーを貼付した。三次元計測のサンプリング周波数は50Hzで,床反力計測のサンプリング周波数は1000Hzとした。解析は立位時の各関節角度および歩行中の各関節最大角度と最大モーメントを対象とした。正規性の検定後,ヒール高の違いによる比較は反復測定分散分析および多重比較を,常用群と非常用群の比較はt検定またはマンホイットニーのU検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】立位姿勢では,ヒール靴常用群は非常用群と比較し,体幹の伸展(骨盤に対する胸椎軸の角度)が有意に大きく,膝関節では屈曲,足関節では背屈角度の増加傾向がみられた。歩行時においても,常用群は非常用群と比較して全ての条件で体幹伸展角度が有意に高い値を示した。また,非常用群ではヒール高が高くなる程,膝関節屈曲角度の増加,膝関節伸展モーメントの増加がみられ,常用群では体幹伸展角度の減少,骨盤傾斜角度の減少がみられた。【考察】ヒール靴常用群では,立位時および歩行時に体幹の伸展角度の増大が認められた。これは,立位や歩行において,ヒール靴着用により前足部への圧力が高まるという報告があることから,常用群ではヒール靴着用時の前足部への荷重が習慣化され,裸足時においても前方に荷重する傾向が高まる可能性が考えられた。そのため,骨盤の前傾や前方移動が生じ,それにより前方偏位した重心を後方に戻すための代償として,体幹の伸展角度が大きくなるのではないかと考えられる。歩行におけるヒール靴着用による影響に関しては,ヒールの高さが増すに従い,非常用群では膝関節屈曲角度と膝伸展モーメントの増加がみられ,常用群では体幹伸展角度の減少,骨盤前傾角度の減少がみられた。踵接地後の膝関節屈曲と足関節底屈は衝撃吸収として作用するとされており,ヒール靴着用による踵接地時の足底屈運動範囲の低下は,足関節での衝撃吸収を困難にする。そのため,特に非常用者では,膝関節の屈曲を増加させることで膝関節での衝撃吸収を高めている可能性が示唆された。一方,常用群では外観上の問題などで膝を伸展させて歩行しようとするため,体幹伸展角度の減少や骨盤前傾角度の減少がみられたのではないかと考えられた。本研究結果から,常用群と非常用群では裸足時の立位姿勢に違いがあり,常用者では体幹の伸展が大きく,裸足歩行において骨盤前傾が強いことも加え,これらが腰痛をもたらす一因となっているのではないかと考えられる。【理学療法学研究としての意義】ヒール靴常用者の立位や歩行中の姿勢の特徴を明らかにした。ヒール靴常用者では裸足時に体幹の伸展および骨盤の前傾が強まり,このことが腰痛をもたらす一因となる可能性が示唆された。
著者
清水 建美 近田 文弘 山本 雅道
出版者
信州大学環境問題研究教育懇談会
雑誌
信州大学環境科学論集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-88, 1985-03-31

This study was supported by the Grant in Aid for Scientific Research of the Nissan Science Promotion Foundation, No. 831-15. A method of environmental monitoring based upon the evaluation of several ecological and geographical characteristics of the components of any local floras was discussed. The characteristics adopted for this purpose are degree of tolerance to the sunshine, size of distribution area,h abit and habitat. In each category,a point was given to every floristic components from the viewpoint of nature conservation, viz. either one of 1 to 5. The frequency distribution of the point in each category and the sum of the points in each category were used as indicators of the environmental naturalness.

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1933年01月07日, 1933-01-07
著者
木村朗著
出版者
三共出版
巻号頁・発行日
2018
著者
和田 崇
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

映画制作業は文化・コンテンツ産業あるいは創造産業の一つであり,都市への集積が顕著にみられる。その一方で近年,芸術的および経済的な理由から撮影工程がハリウッドから離れた国内外の他都市で行われるケースが増加しており,映画産業の空洞化をもたらす「逃げる生産問題(Runaway production)」として認識されている。撮影工程の空間的分離は,撮影隊の滞在に伴う経済的効果に加え,映画公開を通じた知名度および地域イメージの向上,住民らによる地域魅力の再発見とまちづくり機運の高まり,撮影地を訪れる観光客数の増加など,撮影地に多面的な効果をもたらす可能性がある。そのため近年,自治体や経済団体はフィルム・コミッションを組織し,映画撮影の誘致および支援,映画公開に乗じた観光振興に積極的に取り組むようになっている(Beeton 2005ほか)。 以上を踏まえ本報告は,映画制作業にみられる撮影工程の空間的分離とそれへの地域的対応の実態を報告することを目的とする。具体的に,制作本数(2010年)が世界最多で,近年は「バージン・ロケーション」を求めて海外での撮影が急増しているといわれるインド映画をとりあげ,2013年から新たな撮影地の一つとして注目されつつある日本における撮影実態を日本のフィルム・コミッションによる誘致・支援活動とあわせて報告する。<br> 富山県では2013年4月,タミル語映画の撮影が行われた。富山で撮影が行われることになったきっかけは,2012年9月に駐日インド大使が富山県知事を表敬訪問した際に,同大使が知事にインド映画の富山ロケ誘致を提案したことにある。知事がその提案に関心を示すと,インド大使館は東京でICT関連事業と日印交流事業などを営むMJ社を富山ロケーション・オフィスに紹介した。MJ社がインド人社員N氏の知人であるチェンナイ在住の映画監督を通じてタミル映画界に富山ロケを働きかけたところ,U社が上記映画のダンスシーンを富山で撮影することを決定した。2013年3月に事前調整のために監督などが富山に滞在したのに続き,同年4月に27名の撮影チームが富山を訪問し,9日間にわたり富山市内のほか立山や五箇山合掌造り集落などで撮影を行った。この映画は2014年6月からタミル・ナードゥ州はもとより隣接3州,海外の映画館でも2か月以上にわたって上映され,公開後3週間はタミル語映画売上ランキング1位を記録するなど,興行的に成功した。一方,富山ロケによる地域波及効果は,撮影チームの滞在に伴う経済効果として約360万円が推計されるほか,日本とインドのメディアによる紹介,俳優らによるFacebook記事,映画および宣伝映像を通じた風景の露出などを通じて,相当のPR効果があったとみられている。映画鑑賞を動機とした観光行動については,インド本国からの観光客は確認できないものの,在日インド人による富山訪問件数が若干増加しているという。<br> 大阪府では2013年8月にタミル語映画,同年11月にヒンディー語映画の撮影が行われた。大阪とインド映画の関わりは,大阪府と大阪市などが共同で運営する大阪フィルム・カウンシルがインドの市場規模と映画が娯楽の中心であることに着目し,2012年度からインド映画の撮影誘致活動を展開するようになったのが始まりである。具体的には2013年2月にムンバイを訪問し,映画関係者に大阪ロケを働きかけたが,そこでは十分な成果を挙げることができなかった。一方で同じ頃,神戸で日印交流事業などを営むJI社のインド人経営者S氏が大阪フィルム・カウンシルにインド映画の撮影受入の可能性を打診しており,2013年5月にはいよいよタミル語映画の撮影受入を提案した。大阪フィルム・カウンシルはこの提案を受け入れ,撮影チームとの調整業務についてJI社と契約を締結した。2013年8月に25名の撮影チームが大阪と神戸を訪れ,水族館や高層ビル,植物園などで撮影を行った。その後,JI社からヒンディー語映画の撮影受入が提案され,同年11月に約40名の撮影チームが大阪城公園などで撮影を行った。<br> 大阪ロケによる地域波及効果については,富山ロケと同様に,撮影チームの滞在に伴う経済効果と各種メディアを通じたPR効果があったとみられるが,映画鑑賞を動機としたインド人観光客数の増加は確認されていない。<br> 2つの事例に共通する点として,①フィルム・コミッションがインドからの観光客増加を目指して撮影受入・支援に取り組んでいること,②実際の撮影受入・支援には在日インド人が重要な役割を果たしていること,③現段階ではインド人観光客数の増加は確認できないこと,が挙げられる。この他,両フィルム・コミッションとも撮影支援を通じて日本とインドのビジネス慣行や文化の違いが浮き彫りになったと指摘している。&nbsp;<br>

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著者
伊藤 秀明 並木 幹夫
出版者
日本思春期学会
雑誌
思春期学 = ADOLESCENTOLOGY (ISSN:0287637X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.471-474, 2002-12-25

金沢大学医薬保健研究域医学系