著者
上田 厚 青山 公治 藤田 委由 上田 忠子 萬田 芙美 松下 敏夫 野村 茂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-66, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

菊栽培従事者の男子47%, 女子62%に, 作業に関連した鼻, 呼吸器症状および皮膚症状がみられた。前者は選花作業時'後者は農薬散布時に自覚されることが多いようであった。菊および農薬に対するパッチテスト, プリげクテスト'血清免疫グロブリン値測定, 鼻汁検査などにより, 前者の症状は即時型, 後者は遅延型アレルギーの関与が示唆された。また, これらのアレルギー学的検査所見の有無と, 菊および農薬の暴露量には若干の関連が認められた。アレルギー所見は, 菊の品種別では, 大芳花に最も高率で'ついでステッフマン, 金盃, 寒山陽などであったが'主として大輸株に即時型'小菊株に遅延型の症状が集積している傾向を認めた。しかしながら, 各品種と検査所見との関連をφ係数で検討すると'アレルギー学的検査所見との関連のとくに著しい品種は検出されなかった。また'皮膚症状については, パッチテスト成績などよりみて, 菊よりもむしろ農薬の関与が強いと思われる成績が得られた。このように, 菊栽培従事者の多くは, 作業に伴い菊や農薬の慢性的な暴露を受け, それに感作された状態にあることが確かめられた。さらに, それらによるアレルギー症状は, その他の作業環境における種々のallergenに様々に修飾されて発現するものであることが示唆された。

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著者
松岡成章
出版者
巻号頁・発行日
1798
著者
松田 滉平 中村 聡史
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2019-HCI-182, no.14, pp.1-8, 2019-03-11

手帳やリマインダ,タスク管理アプリなどを使うことで,自身がやるべきことややりたいことを情報として外在化させ,忘れないように管理する人は一定数存在する.しかし,これらの管理方法の多くはタスク内容を忘れずに思い出せるように管理するものであり,タスクを整理して効率的に実行することはできても,タスクを行なうためのモチベーションには繋がりにくいといった問題がある.ここで人は画像を見ることによって,その画像内容に沿った行動を無意識的に行なうことや,画像に写っている対象への印象が変化することが知られており,我々はこれまでの研究において,従来の文字ベースのタスク管理ではなく,ビジュアルイメージである画像を用いて,タスクへの行動を促すトリガを管理する手法を提案してきた.本研究では,この画像によるタスク管理の可能性について複数の実験を通して検証した.タスクの提示形式の違いによる比較実験を行なったところ,タスクを確認してから実行するまでの時間差においては 「具体的にタスクに関連するものを被写体にして表現された画像」 と 「抽象的だが画像で表現された画像」 が短時間でタスクを実行に移しており,次いで 「文字で表現されたもの」,「抽象的なイラストで表現された画像」 の順でタスク実行に移るまでの時間差が短い結果となった.これらの実験結果から,タスクの行動を想起しやすい画像にすることで,タスクへのモチベーションが向上することが明らかになった.
著者
神谷 光信
出版者
関東学院大学キリスト教と文化研究所
雑誌
キリスト教と文化 : 関東学院大学キリスト教と文化研究所所報 (ISSN:13481878)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-57,

遠藤周作は日本国内のみならず、英仏語に翻訳され国外でも評価された作家、すなわち西欧に発し、今日ではグローバルな商業流通と結びついた「世界文学空間」システムに組み込まれた国際的な著者である。しかし不思議なことに、彼の代表作『死海のほとり』は多言語に全く翻訳されていない。理由の一つとして考えられるのは、この作品が強い政治性を帯びたテクストとして読まれうることだ。ナチスによるユダヤ人迫害が描かれているが、イスラエルのユダヤ人によるアラブ人抑圧もさりげなく描き込まれている。つまり、アラブ人、ユダヤ人双方から批判される可能性を持つテクストなのである。遠藤は村松剛を通じてイスラエルの政府の協力の下に取材旅行をしているが、イスラエル側が見せたいと思った世界と作家が実際に見た世界は違っていた。現代のイスラエルには関心がないと発言する主人公の目に入るのは、アメリカ合衆国の俳優ジョン・ウエインが騎兵隊に扮した映画館のポスターである。先住民を駆逐する騎兵隊イメージは、アラブ人を抑圧するイスラエルの隠喩であり、このような暗示的描写が作品中には少なくない。 作者はアウシュビッツ問題とパレスチナ問題を重ね合わせて捉えているのであり、物語の最後で描かれる<永遠の同伴者イエス>も、虐げられたユダヤ人がアラブ人を虐げるという暴力の連鎖状況を踏まえて提出されていると考えるべきなのである。
著者
ペリー・Jr. エドマンド・ウォーレン 立木 康介
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.311-343, 2017-07-31

立木康介 訳時に, 歴史的過程は, 神話や伝承, そして叙事詩的ストーリーテリングに伝統的に見られる諸サイクルに流れ込む。ジョーゼフ・キャンベルがその先導的著作『千の顔をもつ英雄』のなかで英雄のサイクル--離別, イニシエーション, 帰還--を記述するとき, 明らかになるのは, イエズス・キリストやアーサー王, そして文学史全体にわたる何万もの, とはいわないまでも, 何百もの英雄たちの物語に合致するひとつのパターンである。これらの英雄たちの旅路は, 彼らの立身へと通じる数々の試練と闘いの単神話的セットにほかならない。エルヴィス・プレスリーの社会的上昇, 彼のライフスタイルのある意味で夢幻的な物語, 彼の早すぎる死, そして, 私たちが彼を記念すること, そうしたことすべてが組み合わさって, ジョーゼフ・キャンベルの英雄サイクル理論のパターンを用意する。つまり, 実在する人物であるエルヴィスは, 生前から, そして死後にも, 非実在的で変形力をもつアメリカ的神話になるのである。世間的人気とは比較的うつろいやすい現象であるのにたいし, エルヴィスのキャリアとその死後のキャリアに伴う反響は, 年々大きくなり, けっして衰えを見せない。エルヴィス・プレスリーの顔は, 人類史全体のなかで最も認知度の高い人間のイメージである可能性がきわめて高い。エルヴィスの人気の異例さは, エルヴィスの名声の「いかに」と「なぜ」, そして, 21世紀に入っても変わらぬ彼のイメージの増殖の秘密を, 私たちが吟味するよう促さずにはおかない。本稿はまたとくに, 死後のエルヴィスの歴史文献学とエルヴィス神話の進化を提示するものである。Sometimes historical processes feed into cycles traditionally seen in myth, lore, and epicstyle storytelling. When Joseph Campbell, in his seminal work Hero With a ThousandFaces, describes the cycle of the hero̶separation, initiation, and return̶Campbell is describing a pattern that fits the epic cycle of the stories of Jesus Christ, King Arthur, and hundreds, if not tens of thousands, of heroes throughout literary history. The journey of these heroes is the monomythic set of trials and battles that lead to the rise of these heroes. The ascent of Elvis Presley and the somewhat fantastic tales of his lifestyle, his untimely death, and our memorializing of him all combine to serve the pattern of Joseph Campbellʼs theory of the cycle of the hero. That is, Elvis, the real man, becomes in his lifetime and after his death, an unreal and transformative American myth. While celebrity is a relatively ephemeral phenomenon, Elvisʼs career and his post-mortem career carry a resonance which increase yearly and have never suffered decay. It is quite possible that Elvis Presleyʼs face is the most recognizable human image in the entire history of man. The unusual nature of Elvisʼs celebrity prompts us to examine the how and why of Elvisʼs fame and the proliferation of his image well into the 21st century. This paper will also specifically address the historiography of the post-modern Elvis and the evolution of the Elvis myth.
著者
諸 昭喜
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1, 2018 (Released:2018-12-01)
参考文献数
77

韓方医学と西洋医学という二元的な医療体系を維持している韓国社会において、産後風は韓方医学では明らかな病気とされるにもかかわらず、西洋医学ではその存在が認められないという特異な位置を占めている。本研究では、産後風を例に韓方医学の病気が西洋医学との関係の中でどのように変化してきたのかについて分析し、産後風に関する言説が政府の保健政策や専門家の研究の影響を受けてきたことを明らかにする。分析方法として、韓国で1985年以降に発表された産後風に関する47篇の韓方医学の論文を抽出し、言説の変化を考察した。その結果、韓方医学が産後風の理論的基礎を提供し、産後の女性の身体管理の重要性を力説して、産後風の存在を確実なものにしてきたことが明らかとなった。同時にこのような言説を通じて、韓方医学の地位上昇を図り、産後に対する社会的関心を呼び起こし、産後風の予防としての産後ケア(産後調理)を強調することで、産後風をより強固に作りあげる役割を果たしてきた。産後風をめぐる韓方の動きは、病気が社会において産みだされ、社会の変化に応じて定義を変えていく一つの例であり、病気が社会的に構築されることを示すものと言える。
著者
為永春水 作
出版者
大嶋屋伝右衛門
巻号頁・発行日
vol.五編中, 1841
著者
木村 純子 ラッセル W.ベルク
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-55, 2004

本稿は、消費文化の受容について考えることを目的としている。分析対象として日本で活発に行われている西洋文化としてのクリスマス消費を取り上げる。これまでの議論は、西洋文化に日本文化を従属させる (グローバル論者) 、あるいは日本文化に西洋文化を従属させる (伝統論者) といった「西洋中心の文化帝国主義モデル」であり、文化を本質的なものとして捉え、日本の文化状況を均質化に行き着くものとして理解していた。ところが、消費文化の受容過程に目を凝らすと、実際は、文化は西洋か日本かのいずれかに均質化していくわけではない。本稿が依拠する変容論者は、消費文化の受容を日本人が主体的に異文化を受け止め利用していく過程 (=文化の再生産) と捉える。文化の再生産には、二つのしかたがある。一つは西洋をなじみのあるものに変えるしかたである。もう一つは西洋を西洋のまま維持するしかたである。このことから、日本の文化は、均質化に向かっているものとしてではなく、異類混交とした状況にあるものとして理解されるべきである。
著者
佐藤 良明
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.287-309, 2017-07-31

「キング・オブ・ロックンロール」として君臨する間エルヴィス・プレスリーは, ポップ音楽業界だけでなく, アメリカ史を通して国民国家を分断してきた溝を二重に跳び越える文化英雄だった。南部の貧農の子が目映い世界のスターになったというだけでなく, それを「ヒルビリーの伊達男」に, 即ちサム・フィリップスのいわゆる「真正な黒人のサウンドと黒人の感触をもつ白人」になることをもって達成したのである。どうしてそんなことが可能だったのか。ポップ・ミュージックは, イメージの生産と購入を特徴とする新しい経済の中心部分をなすが, 1950年代後半の時期にエルヴィスの声と身体は, 何百万ものティーンエイジャーの心を動かして都市の黒人文化への渇望をかき立てた。顕著に黒人的な音楽スタイルを身にまとった彼は, これをカントリー音楽において展開してきた熱情的で一途な歌唱とブレンドした。彼が引き起こしたロカビリーの熱狂を日本のポップ市場に引き入れようとする初期の試みは, 社会的・歴史的な事情から成功したとは言えない。しかし, 日本にロックビートが浸透する1960年代後半には, 内向きの歌謡曲に新しいジャンルが登場する。森進一, 青江三奈らの歌唱は, 日本の伝統的な芸能力学を, エルヴィスの3連符の震えを含むR&Bの音楽的イディオムと接合するものであった。後に「演歌」と呼ばれるもののルーツを分析する中で我々は, エルヴィスが与えた文化横断的なインパクトの大きさを改めて目撃するだろう。My lecture is an invitation to see Elvis Presley as a trickster who, during his reign as king of rock 'n' roll, doubly crossed the gaps embedded not only in music industry but more profoundly in the nation itself throughout its history. Not only did the poor Southern boy become the flashy international hero but he did so by becoming a "hillbilly cat" or, in Sam Phillip's words, "a white boy with authentic Negro sound and Negro feel." How was that possible ? We look at pop music as an essential part of the new economy that featured production and purchasing of images. In the late 1950s Elvis's voice and body stirred the desire of millions of teenagers to transgress into the urban black culture. We examine how Elvis's singing came to assume the conspicuously black styles and how he blended it with the passionate, sincere singing developed in country music. The attempts to graft the rockabilly craze to the contemporary Japanese pop market was only partially successful for social and historical reasons. However, in the latter half of the1960s as Japan became more exposed to the rock beat, a new domestic-oriented genre emerges. The performances of Mori Shin'ichi and Aoë Mina combine traditional Japanese body dynamics with musical idioms of R&B including Elvis's vibration in triplets. By tracing the roots of what was later to be called Enka, we will once again witness the tremendous crosscultural impact Elvis made on the inhabitants of this planet.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1180, pp.66-68, 2003-02-24

コミック雑誌を除いて、最も多く読まれている雑誌は何か——。そう聞かれてほとんどの方は一般週刊誌やテレビ番組雑誌を思い浮かべるだろう。しかし正解は、約150万部の発行部数と約135万人の契約購読者を持つ通販カタログ雑誌、「通販生活」である。