著者
山鳥 重
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.105-112, 2003-03-01 (Released:2011-12-15)
参考文献数
12

ヒトの記憶における海馬・海馬傍回系の機能についてこれまでのわれわれの研究の一端を紹介した.海馬・海馬傍回系の主要な機能は出来事記憶の記銘・把持であり, この領域の両側損傷は強い生活健忘を引き起こす. 健忘の程度と回復の程度は海馬・海馬傍回領域の破壊量に依存する.PETやfMRIに基づく機能的イメージング研究からみると, 言語材料記憶時の大脳賦活パターンは把持時間によって大きく変化する. すなわち短期的な把持では古典的な言語領域も記憶過程に関与するが, 把持時間が長くなると賦活領域はその周辺に移動する.幼少期の両側海馬・海馬傍回領域の損傷は言語や教科学習など, その後の意味記憶形成の障害となる可能性が高い.
著者
八木 宏樹
出版者
北海道科学技術総合振興センター
雑誌
漁業と海洋レジャー産業の調和をめざした海面利用計画の構築. 1
巻号頁・発行日
pp.1-11, 2002-07

平成13年度北海道科学技術総合振興センター研究開発支援事業研究成果報告書

1 0 0 0 OA 寺社書上

出版者
巻号頁・発行日
vol.[81] 浅草寺社書上 乙壱,
著者
津田 吉晃
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.349-359, 2010-11-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
68
被引用文献数
5

森林伐採、過度の開発、大気汚染や気候変動などの人間活動により世界中で森林の生物多様性が脅かされており、近年、生物多様性の基盤となる遺伝的多様性の保全の必要性が広く認識されるようになった。長い寿命・世代時間、高い集団内の遺伝的多様性、花粉および種子を介した高い遺伝子流動能といった樹木固有の特徴により、環境変化による樹木集団の遺伝的多様性への影響は小さいという指摘がある。これは樹木の遺伝的多様性保全における生態リスクの影響は小さいことを意味するかも知れない。しかしこの仮説に当てはまらない事例も多い。そこで本稿では1)森林の分断化、2)地球温暖化による分布シフト、3)樹木の種苗移動・保全単位に着目し、各項目について森林樹木およびそれを取り巻く生態系へのリスクについて、保全遺伝学の視点から最近の事例研究を紹介しながら概観したい。
著者
繁田 浩功 間下 以大 金子 雄 菊田 順一 瀬尾 茂人 竹村 治雄 松田 秀雄 石井 優
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2013-BIO-33, no.3, pp.1-6, 2013-03-14

生体イメージング技術の向上により生体内の動態を画像として観察することが可能となり,疾病のメカニズム解明や創薬等への応用が期待されている.一方で統計的信頼性を得るために膨大な画像を解析する必要性が生じている.本研究では,生体骨組織内の血管透過性の制御機構を解明するため,二光子励起顕微鏡を用いて得られた生体画像に対して,血液が骨髄腔に染み出す血管透過性を評価する手法を提案する.提案手法では,対象となる時系列画像に対してグラフカットを用いて骨髄腔領域をセグメンテーションし,その染み出し量を定量的に評価する.評価実験の結果,専門家の手による抽出結果を用いた結果とほぼ同様の結果が得られた.このことから,本手法は染み出しの程度について統計的かつ定量的な評価の一つとして利用できると思われる.
著者
細木 大輔 中村 勝衛 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.474-483, 2007 (Released:2008-09-05)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

本研究では,栃木県の岩盤切土法面において周辺植生から侵入する植物体で法面を緑化する自然侵入促進工を実験的に施工した。ネットの違い,及び施肥の有無を条件として設定し,植物の侵入・定着に関して5 年間調査を行って効果を検証した。被覆率は,施工後1 年目から施肥した実験区で高く,無施肥の実験区および無施工区との差は大きかった。施工後5 年目の値は,施肥した実験区で40% 以上であるのに対して,それ以外では10% 前後であった。この結果から,施肥した実験区のみが緑化されたと言え,自然侵入促進工では施肥が必要であることが明らかとなった。最も良く被覆された区画は,目合い12.0 mm×20.0 mm のネットを張り,肥料袋を用いて施肥した区画であり,この方法が最も有効であると結論づけられた。施工後5 年目のこの実験区の被覆率は62±15%,群落高は1.0 m,出現種数は29 種/5m2,木本個体数は21.6 個体/m2であり,ススキ,リョウブ,ノキシノブなどの積算優占度が高かった。一方,シダ植物は,施肥した実験区では4~8 種が確認されたのに対して,それ以外ではまったく確認されなかったことから,緑化後初期におけるシダ植物の出現には施肥が有効であることが示唆された。
著者
藤田 康仁
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.682, pp.2881-2889, 2012

The present paper aims to clarify the characteristics of Chengilli Kilisesi, through comparative analysis on internal frame composition among its adjacent architectural culture in the same period. As a result, it is recognized that the unique composition of its drum with eight exedrae is similar to centralized domed Armenian churches, especially to the main body of the octafoil church at Varzahan, while conspicuous similarity is found between Chengilli Kilisesi and the churches in Tao-Klarjeti, in regard to usage of squinch-installed pendentives. This phenomenon implies that the characteristics of the plural architectural culture might be involved in this monument.
著者
李 建志 島村 恭則 上水流 久彦 齋藤 由紀
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究代表者は、先住民に対する行政の問題と、日本陸海軍の将校たちの思想が、支配者の立場と支配される立場というかたちで交差することに気づき、朝鮮半島出身の陸軍幹部であった李垠などを中心に、この時代について分析することへと傾斜していった。その際、島村氏、上水流氏、齋藤氏との意見交換や研究会などでの密接な問題意識の共有と、その成果発表としての論文発表などが、相互にとってきわめて有効に働いたことはいうまでもない。研究代表者の成果に限っていうと近い将来に単行本として刊行される原稿を書きためていた。その分量は400字詰め原稿用紙にして1000枚にのぼっている。これは必ず出版する。
著者
藤井 義博 Yoshihiro FUJII 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 Department f Food Science and Human Nutrition Faculty of Human Life Science and Division of Food Science and Human Nutrition Graduate School of Human Life Science Fuji Women's University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-24, 2008-03-01

本論文では、良寛禅師の戒語を分類するに先立って2つの仮説を立てた。一つは、戒語は人々を「調え御する」大乗仏教の托鉢僧の布施行の一環として行なわれたという仮説であった。もう一つは、戒語は道元禅師の愛語の思想に基づいているという仮説であった。これらの仮説に基づいて、良寛禅師の戒語は、道元禅師の愛語を実現するために必要な「慈愛の心」すなわち「もとの心」へ人々をして立ち返えらせるための戒めであると定義した。戒語の項目の分析を行った結果、良寛禅師の一般人に与えた戒語をまず次のように3大分類した。I. 縦社会における戒語、II. 傾聴のための戒語、III. 日常の生活場面における戒語。そしてそれぞれの大分類をさらに分類した。すなわちI. 縦社会における戒語は、1. 上位者、2. 下位者、3. 同類、および4. 子どもに小分類した。II. 傾聴のための戒語は、1. 自慢、2. 情動誘発、3. 無責任、4. まね、5. おだて・おどけ、6. 言い過ぎ、7. へだて、8. とがめ、に小分類した。III. 日常の生活場面における戒語は、1. 生活の仕方、2. 人々の状態、3. その他、に小分類した。小分類の中にはさらに細分類をしたものがある。このように戒語を分類することによって、戒語は現代人にとってよりわかりやすいものになったと思われる。In the present paper, two hypotheses were made to classify Ryokan's Warnings for People about Language; One is that they would have been a part of his giving as a Mahayana mendicant monk, who intended to train and lead people. Another is that they would have been based upon Dogen's idea of kind speech. They were intended to warn people to come to their senses, which, expressed as "the original mind" and "the mind of compassion" by Ryokan and Dogen respectively, were required to realize Dogen's kind speech. The Warnings for People about Language were classified into three main groups: I. Warnings in the hierarchical society; II. Warnings to realize attentive listening; III. Warnings in aspects of the daily life. The three main groups were further divided into subgroups. Group I was subdivided into four subgroups: 1. about people in higher position, 2. about people in lower position, 3. about people in similar position, and 4. about children; Group II into eight subgroups: 1. Pride, 2. Causing negative emotions, 3. Irresponsibility, 4. Mimicry, 5. Flattery & Clowning, 6. Speaking too much, 7. Separation, and 8. Blaming; and Group III into three subgroups: 1. Way of living, 2. Aspects of people, and 3. the others. The classification of the Warnings for People about Language is suggested to have made them more comprehensive for people of today.
著者
乙訓 稔
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学生活科学部紀要 (ISSN:13413244)
巻号頁・発行日
no.51, pp.27-34, 2014-03

J.H. ペスタロッチの81 年の生涯は、歴史上ヨーロッパの決定的な時期にあった。即ち、17 世紀より続く絶対主義の絶頂期から1789 年のフランス市民大革命と、革命の変質で台頭したナポレオン1 世覇権の戦いの時代であり、またナポレオン敗退の1815 年のウィーン会議を主導したオーストリアの宰相メッテルニヒに象徴される反動復古の時代であった。 一方、時代思潮は理性や悟性を至上とする啓蒙哲学の爛熟期にあり、青年ペスタロッチを捉えたのはロマン主義的啓蒙思想家J.J. ルソーであった。その後の彼の活動は、教会と癒着したチューリッヒの門閥貴族政治との対峙にあり、彼の諸著作もそうした現実との対峙から生まれた。 ペスタロッチの啓蒙思想は家父長主義に基づく理想的な立法者や教育家による法律や教育を通じて民衆を啓蒙するというスイスに典型なもので、その思想は彼の社会的な活動や数多くの著作において一貫している。特に、彼が論じた社会的・政治的問題は、すべて万人のために万人が平安に生きられる方策を論究することにあって、初期の代表作『隠者の夕暮』では「人間を卑しくするもの」としての政治社会と、「人間を高めるもの」としての教育が常にその対極として論究され、すべての人間を高める教育が貧富の差なく天賦の権利・人間の権利として把握されている。即ち、ペスタロッチにおける人間の権利・人権は、人間本性の気高い本質に淵源がある神聖な権利であり、それは神から永遠に与えられた現世における人間の幸福のためのものであって、その権利は市民的に陶冶された理性に従って要求されなければならず、社会的に自由で人間的に純化された啓蒙的意志に由来すべきものと考えられている。 ペスタロッチは、彼の教授論『ゲルトルートはどのようにその子どもたちを教えるか』において、「できることなら、すべての実際的な技能の基礎である自立の能力という点で、ヨーロッパの下層の市民を、南や北の未開人よりも劣らせている逆茂木に放火したい」と書き、「なぜなら、その逆茂木は……一人の人間の代わりに十人の人間を社会的な人間の権利である教育を受ける権利から、あるいは少なくともその権利を用いる可能性から締め出しているからである」と書いている。また、彼は憲法論『立法についての見解』で、「スイスのために国民教育を法律的に確かなものにすること」を論じ、後期の大著『純真者』では「ヨーロッパにおいては国民の教育が国家の福祉の第一の手段であると認識される」と述べ、「ヨーロッパが国民の能力を学校や居間において高めることを人類の権利として承認すべきである」と説いている。この国民教育を国家において法制化し、人類・人間の権利として承認すべきであるという思想は、人権としての教育理念として位置づけられるのである。
著者
豊国
出版者
湊小
雑誌
東錦絵
巻号頁・発行日
1852