著者
ソクサバト ボンサック 中山 幹康
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.9, 2011

ラオスのナムグム1ダムは1971年に発電を目的として建設された.本研究は,建設後約40年を閲した時点での,移転民の生活再建状況を精査することである.1968年に移転したPakcheng村および1977年に移転したPhonhang村の2つの村について,各50世帯を対象とした訪問調査を実施した.Pakcheng村の人々はPhonhang村に比べて遙かに豊かであった.2つの村での貧富の差は,水利と道路整備の差異に起因していることが判った.Phonhang村での灌漑施設の建設や道路の舗装など,2つの村の間に存在する経済的な格差を減少する為の対策が,政府により執られることが望まれる.
著者
武藤 秀太郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.241-262, 2002-04

本稿は、戦後日本のマルクス主義経済学の第一人者であった宇野弘蔵(一八九七―一九七七)の東アジア認識を、主に戦時中に彼が執筆した二つの広域経済論を手掛かりに検討する。「大東亜共栄圏」は、「広域経済を具体的に実現すべき任務を有するものと考えることが出来る」。――このように結論づけられた宇野の広域経済論に関しては、これまでいくつかの解釈が試みられてきた。だが、先行研究では、宇野が転向したか否か、あるいは、かかる発言をした社会的責任はあるかどうか、といった点に議論がいささか限定されているきらいがあり、戦後の宇野の発言等を含めた総合的な分析はなされていない。私見では、宇野の広域経済論は、戦前戦後を通じて一貫した経済学方法論に基づいて展開されており、彼の東アジア認識を問う上で非常に貴重な資料である。大東亜共栄圏樹立を目指す日本は、東アジア諸国と「密接不可分の共同関係」を築いていかねばならないという、広域経済論で打ち出されたヴィジョンは戦後も基本的に継承されている。このことを明らかにするために、広域経済論を戦後初期に宇野が発表している日本経済論との対比から考察する。
著者
イサハク ザカリア・アミデユ マハラジャン ケシャブ・ラル
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.143-147, 2013-06-25
参考文献数
7

気候変動が食物生産に影響が与えることは色々な研究によって明らかにされている。本稿では、ガーナの主要食物の収量において気候変動がどのような影響を及ぼすかを究明することとする。そのため、世帯調査の戸票データを用いて気候変数(温度と降雨量)が主要食物(キャッサバ、トウモロコシ、ソルガム、コメやヤム)の収量に与える影響について計量分析を行う。その際、確率的フロンティア生産モデルを活用する。その結果、緩やかな温暖化が顕著にキャッサバやソルガムの収量を増加させるが、米においては収量が減少することが判明した。農業投入材の利用は基本的に増収につながるが、農薬の投入時期や投入量が不適切であれば収量増にはつながらない。気候や投入材の他、農地規模、世帯規模、世帯主の性別、年齢、教育のような社会経済的要因が食用作物の収量に有意な影響を与える。ゆえに、本研究では、気候変動による食物収量への影響を最小限にとどめるため、化学肥料等の容易な確保につながる投入材市場の効率化、高温や干ばつに強い種子の普及、小農における効率的農薬利用の条件整備の重要性を指摘する。同様に、気候変動や技術に関する情報を効率的に農家に伝えるために普及員やコミュニティーラジオのようなメディアも活用すべきである。
著者
友安 茂
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.554-559, 2000-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7
著者
有沢武貞
出版者
太宰友輔写
巻号頁・発行日
vol.[8],
著者
橋本 博明 岡島 静香 角田 俊平
出版者
広島大学生物生産学部
雑誌
広島大学生物生産学部紀要 (ISSN:03877647)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.79-92, 1989-11

瀬戸内海のイワシパッチ網は主としてカタクチイワシを対象に操業されている。1984年と、'86年に、燧灘のイワシパッチ網船より6標本を得て、各標本の魚種組成を明らかにし、そこに出現した体長または全長10cm以上の魚類の消化管内容物を調べた。さらに、その結果をもとに、カタクチイワシを瀬戸内海における魚類生産の鍵種と位置づけ、同種をめぐる食物関係(競合・被食-捕食関係)に視点をおいて、瀬戸内海における1969~'86年の魚種別漁獲量の動向を解析した。パッチ網の漁獲物は、各標本ともカタクチイワシの占める割合が大きく(全長10cm未満の漁獲物では70.0~99.8%を占めた)、他に16種類の魚類と、エビ類、カニ類、イカ類が出現した。魚類のうち、タチウオ、トカゲエソ、シログチはしばしば漁獲されていた。また、マイワシは稚魚と成魚(体長16~18cm)が出現し、稚魚は7月の標本で6.9%、8月では2.4%を占めた。従来、本種は内海では産卵しないとされていたが、稚魚と成魚の出現は本種の内海での産卵の可能性を示唆するものである。体長または全長10cm以上の魚類の食性の特微は、タチウオ、トカゲエソ、シログチ、マサバ、トラフグがカタクチイワシを多食していたこと、そしてマイワシはCoscinodiscusのみを摂食していたものの、それは痕跡的であり、コノシロ、サッパは空胃の個体が多かったことである。前者に属する魚類はカタクチイワシを捕食するために、その群れに寄ってきたものと考えられ、後者は、偶然カタクチイワシの群れの近くにいたものが混獲されたと思われる。漁獲量の解析は、カタクチイワシ、マイワシ、アジ・サバ類、魚食性魚類(ブリ類、ヒラメ、エソ類、タチウオ、サワラ類、スズキ)、ニべ・グチ類について行った。内海におけるこれら漁獲量の動向についての全体的な特徴は、1970年代初期からみられたマイワシ資源の増大に伴う内海への入り込みによって、マイワシ漁獲景が増加し、カタクチイワシ、アジ・サバ類は減少したことである。なお近年において、マイワシの減少に伴い、カタクチイワシとアジ・サバ類の漁獲盤が回復するという種の交代現象が認められた。カタクチイワシの多獲域である内海東部と中部では、カタクチイワシ漁獲量の変動と連動するように魚食性魚類のそれも変動した。ニべ・グチ類の漁獲量の動向については上記の魚類の漁獲量との関連性は認められなかった。この点に関しては、本類がカタクチイワシを摂食するものの、他の魚類、甲殻類をも多食することによるものと推察した。In 1984 and 1986 six fish samples were obtained from landings by the sardine drag net, 'Patchi-ami', working in Hiuchi Nada Sea of the Seto Inland Sea. Species composition of each sample was examined as well as the food habits of fishes over 10 cm length. In light of the food-habit evidence, fluctuations in the annual landings of anchovy (Engraulis japonica) and fishes associated with anchovy were analyzed.Twenty-two kinds of fish, shrimp, crab and squid were encountered. Cutlass fish (Trichiurus lepturus) and white croaker (Argyrosomus argentalus) were present in all samples.Larval sardine (Sardinops melanosticta) accounted for 6.94000f specimens in the July sample and 2.4-1073760944n the August sample. In the latter month, however, adult sardine of 16 to 18 cm in body length were also present, which leads to the suggestion that, contorary to general opinion, sardine spawning takes place in the Inland Sea.Cutlass fish, lizzard fish (Saurida elongata), white croaker, mackeral (Pneumatophorus japonicus) and tiger puffer (Fugu rubripes) fed heavily on anchovy, while sardine consumed small quantities of diatom (Coscinodiscuss spp.). Gizzardshad (Konosirus punctatus) and Japanese scaled sardine (Harengula zunasi) had empty stomachs.Analysis of annual fluctuations in catch was carried out on anchovy, sardine, horse mackerels (Trachurus japonicus etc.) and mackerels, fish feeders, and croakers, respectively. In the latter half of the 1970's the catch of sardine increased, and the catch of anchovy and horse mackerels and mackerels decreased. Recently (middle 1980's), the catch of sardine has decreased, and this has been accompanied by a recovery of anchovy, and horse mackerels and mackerels. The catch of fish feeders fluctuated together with that of anchovy in Eastern and Central Seto Inland Seas, where the fishery for anchovy is most productive. Landings of croakers fluctuated independently of those of the above-mentioned species, because it is considered that croakers feed not only on anchovy, but also, to a large extent, on other fishes and crustaceans.
著者
三枝 弘育 伊藤 康江 宮崎 則幸
出版者
東京都農林水産振興財団東京都農林総合研究センター
雑誌
東京都農林総合研究センター研究報告 (ISSN:18811744)
巻号頁・発行日
no.8, pp.49-59, 2013-03

伊豆諸島で漁獲される魚(ムロアジ,ゴマサバ,トビウオ)と麹・酵母を使って魚醤油を新たに製造した。麹は麦麹,米麹および豆麹を使った。豆麹は,アミノ酸化率が最も優れていたがアルコールは生成しなかった。麦麹はアミノ酸化率が高く,米麹はアルコール生成に優れていた。麹の種類によるアルコールの生成量の差は,糖を添加することで改善された。また,3種類の麹を混合することで,望まれるアミノ酸化率,遊離アミノ酸量が得られた。検討の結果,配合割合は,重量に対して魚を55%,混合した麹(麦麹,米麹,豆麹)を15%,塩10%,砂糖5%,水15%とした。仕込み後1週間は毎日撹拌し,仕込み2週間後に酵母を添加,その後2週間は週に1回撹拌し,その後8週間は静置することで,風味の良い魚醤油の製造が可能であった。この試作魚醤油の全窒素量は1.85~2.03g/100g,ホルモル窒素量は0.71~0.81g/100g,アルコール量は1.66~2.15g/100g,遊離アミノ酸量は5908.7~6034.3mg/100gであった。
著者
石井 靖子 中原 久恵 服部 滋 川端 晶子 中村 道徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 1995-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

熱帯産澱粉,すなわち,ショクヨウカンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照としてバレイショとトウモロコシの澱粉を選び,それらより分離したアミロペクチンにつき枝切り酵素であるイソアミラーゼを作用させて,その変化を検討した.すなわち光散乱法により重量平均分子量M<SUB>W</SUB>と分子の広がりを示す慣性半径<I>R</I><SUB>G</SUB>の測定,粘度測定により固有粘度〔η〕を算出し,枝切り過程の変化を測定した.<BR>その結果M<SUB>W</SUB>と<I>R</I><SUB>G</SUB>の関係は,M<SUB>W</SUB>が(4-5)×10<SUP>6</SUP>近辺に減少する過程では,M<SUB>W</SUB>に対して<I>R</I><SUB>G</SUB>がやや大きいもの(キャッサバ,トウモロコシ),小さいもの(サゴ),両者の中間のもの(バレイショ,ショクヨウカンナ,アロールート)が認められた.しかし6種とも近接し同じ様な勾配で減少していることから,6種ともM<SUB>W</SUB>の減少に対する<I>R</I><SUB>G</SUB>の減少の割合は大きな差はみられず,従って同じような分解過程を経ていくものと思われる.<BR>更に分解が進むと,ばらつきが起こり差が見られた.またM<SUB>W</SUB>や「η」の減少速度には,種類により差があり,イソアミラーゼが作用しやすいものと,しにくいものがあるようである.

1 0 0 0 OA 市中取締書留

出版者
巻号頁・発行日
vol.[102] 嘉永,
著者
藤野 良孝
雑誌
情報学研究 = Studies in Information Science (ISSN:24322172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47-52, 2017-03-31

本研究では、醤油を入れる動作でたびたび表現される「チョロッ」、「ドバッ」、「ポタッ」、塩をふる動作でたびたび表現される「パラパラ」、「サッサッ」、「シャカシャカ」のオノマトペに着目し、それらの掛け声が実際の動作にどのような影響を与えるのかを分析・考察した。その結果、オノマトペの掛け声の種類に応じて醤油の入れる量に差異が認められたこと、塩の散り具合に変化が見られたことが分かった。このようなオノマトペの掛け声によって微妙に動きや量が変わることから、料理の効率的な作業や指示を行う際に役立つ可能性が示唆された。
著者
藤野 良孝
雑誌
情報学研究 = Studies in Information Science (ISSN:24322172)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-33, 2017-03-31

本研究では、料理の「混ぜる動作(生卵)」、「絞る動作(生クリーム)」、「潰す動作(茹でたジャガイモ)」、「入れる動作(油の中)」で同一の意味を有するオノマトペに着目し、それらが動作イメージにどのような影響を与えるのかをアンケート調査から探ることを目的とした。その結果、「混ぜる動作」、「絞る動作」、「潰す動作」、「入れる動作」で使用される同一の意味を持つオノマトペの動作イメージは、一部類似するオノマトペがあるものの、それぞれにおいて差異(微妙なニュアンス)を及ぼす傾向が示された。こうした微妙なニュアンスをもつオノマトペは、料理作業における共通理解や感覚伝達の一助となる可能性が分かった。
著者
大賀 郁夫 Ikuo OHGA
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-21, 2015

近世において地域社会は自権断を保持し、自力解決は制限を加えながらも温存されていた。小稿では日向国延岡藩領を対象に、地域秩序を乱した場合、また乱すと見なされた「徒者」に対して、地域社会がどのような方策を取ったかについて検討した。常日頃から住民相互による「人品」監察が行われており、「人品不宜」者や「徒者」は、村替えや村からの追放が行われた。身内に「徒者」がいる場合は、本人はもとより親類・五人組・村役人たちの障りになる前に、親・親類から勘当・帳外れの申請がなされた。村が主体となって「徒者」を村外に追放した例も少なくなかった。治安を乱しかねない地域外からの往来者については、その宿泊を制限するなど厳しく対処された。藩は領内での行き倒れ人への処理・埋葬法などを細かく定め、後難を蒙らないよう細心の注意を払った。追放となった者も悪事をしていないことを確認し、旦那寺からの歎願という形を取って帰村が認められた。この場合、領主権力と地域社会の間に位置する旦那寺の存在はきわめて大きい。また大赦も帰村の口実が利用された。こうした「ムラ社会」は近代以降も生き続けることになる。
著者
山田 博胤 玉井 利奈
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.001-007, 2012 (Released:2012-02-16)
参考文献数
9

手術患者の安全を確保することは,麻酔科医の最重要任務である.周術期におけるイベントを予知,そして予防すること,イベントが起きた際には適切に対処することが望まれる.この命題を完遂するにあたり,心エコー検査により得られる情報は非常に有用である.しかし,循環器内科医あるいは検査技師が施行した経胸壁心エコー検査(TTE)の報告書を読むことはしても,自らTTEを行う麻酔科医はまだ少数である.麻酔科医が術前に行うべきTTEは,循環器内科で行うfull studyとは異なるfocused studyである.一般的には,(1)左室収縮能,(2)大動脈弁狭窄の有無,程度,(3)右室負荷(肺高血圧)の有無,程度,(4)下大静脈の径と呼吸性変動の有無(静脈環流量の推定),(5)心不全(左室拡張不全)の有無,(6)心膜液貯留の有無およびその程度,の情報が取得できれば,周術期のリスクマネジメントに非常に有用である.