著者
中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.345-358, 2000
被引用文献数
1

流行には、1960年以降3回あったスカートの流行や、幕末以降4回あった新宗教ブームなど、「ほぼ同一の様式がある程度周期的に普及と沈滞を繰り返す循環型」の流行現象が存在する。<BR> このような循環型流行現象の原因としては、従来いくつかのメカニズムが提案されていたが、本研究では「社会の気質」が周期的に変化している可能性に注目し、石井モデルを拡張したモデルを立てて、気質の周期的な変化が自律的に生じることがあるかどうかを検討した。<BR> 具体的には、石井モデルにおける流行採否戦略の社会的分布を社会の気質と解釈し、それを学習によって変化させるモデルを立ててシミュレーションを行った。その結果、あるパラメーターにおいて、採否戦略の周期的な変動と、それに伴うアイテムの流行の周期的な変化が見出された。<BR> 更に、採用に敏感な者同士のクラスターの発生と消滅が、この変動を駆動していることが分かった。
著者
総本山善通寺 編
出版者
総本山善通寺
巻号頁・発行日
vol.不動護摩念誦次第, 1943
著者
武市 尚也 渡辺 敏 松下 和彦 飯島 節 西山 昌秀 海鋒 有希子 堀田 千晴 石山 大介 若宮 亜希子 松永 優子 平木 幸治 井澤 和大
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100763, 2013

【はじめに、目的】 大腿骨頸部・転子部骨折 (大腿骨骨折) 患者における退院時の歩行自立度は退院先や生命予後に影響を与える. 先行研究では, 退院時歩行能力に関連する因子として年齢, 性, 認知機能, 受傷前歩行能力などが報告されている (市村, 2001). しかし, 術後1週目の筋力, バランス能力が退院時の歩行自立度に及ぼす影響について検討された報告は極めて少ない. そこで本研究では, 大腿骨骨折患者の術後1週目の筋力, バランス能力が退院時の歩行自立度に関連するとの仮説をたて, それを検証すべく以下の検討を行った. 本研究の目的は, 大腿骨骨折患者の術後1週目の筋力, バランス能力を独立変数とし, 退院時歩行自立度の予測因子を明らかにすることである.【方法】 対象は, 2010年4月から2012年9月の間に, 当院に大腿骨骨折のため手術目的で入院後, 理学療法の依頼を受けた連続305例のうち, 除外基準に該当する症例を除いた97例である. 除外基準は, 認知機能低下例 (改訂長谷川式簡易認知機能検査: HDS-R; 20点以下), 入院前ADL低下例, 術後合併症例である. 調査・測定項目として, 入院時に基本属性と認知機能を, 術後1週目に疼痛と下肢筋力と下肢荷重率を調査および測定した. 基本属性は, 年齢, 性別, 術式である. 認知機能評価にはHDS-Rを, 疼痛評価にはVAS (Visual Analog Scale) をそれぞれ用いた. 疼痛は, 安静および荷重時について調査した. 下肢筋力の指標には, 膝関節伸展筋を用い, 検者は筋力計 (アニマ株式会社, μ-tasF1) にて被検者の術側・非術側の等尺性筋力値 (kg) を測定し, 体重比 (%) を算出した. バランス能力の指標には下肢荷重率を用いた. 測定には, 体重計を用いた. 検者は被検者に対し, 上肢支持なしで体重計上5秒間, 最大荷重するよう求め, その際の荷重量 (kg) を左右測定し, 体重比 (%) を算出した. 歩行自立度は退院1日前に評価された. 歩行自立度はFIMの移動自立度 (L-FIM) に従い, 歩行自立群 (L-FIM; 6以上) と非自立群 (L-FIM; 6未満) に分類した. 統計解析には, 退院時歩行自立群および非自立群の2群間における基本属性および術後1週目の各因子の比較についてはt検定, χ²検定を用いた. また, 退院時の歩行自立度を従属変数, 2群間比較で差を認めた因子を独立変数として, ロジスティック回帰分析を実施した. さらに, 退院時歩行自立度の予測因子とロジスティクス回帰分析で得られた予測式から求めた数値 (Model) のカットオフ値の抽出のために, 受信者動作特性 (ROC) 曲線を用い, その感度, 特異度, 曲線下面積より判定した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院生命倫理委員会の承認を得て実施された (承認番号: 第91号).【結果】 退院時における歩行自立群は48例, 非自立群は49例であった. 基本属性, 認知機能は, 年齢 (自立群73.9歳 / 非自立群81.8歳), 性別 (男性; 35% / 10%), 術式 (人工骨頭置換術; 56% / 29%), HDS-R (27.2 / 25.9) であり2群間に差を認めた (p<0.05). 術後1週目におけるVASは安静時 (1.0 / 1.8), 荷重時 (3.7 / 5.0) ともに非自立群は自立群に比し高値を示した (p<0.05). 膝伸展筋力は術側 (22.0% / 13.8%), 非術側 (41.8% / 27.6%) ともに自立群は非自立群に比し高値を示した (p<0.05). 下肢荷重率も術側(75.3% / 55.8%), 非術側 (98.2% / 92.3%) ともに自立群は非自立群に比し, 高値を示した (p<0.05). 2群間比較で差を認めた因子を独立変数としたロジスティクス回帰分析の結果, 退院時歩行自立度の予測因子として, 術側膝伸展筋力 (p<0.05, オッズ比; 1.14, 95%信頼区間; 1.04-1.28)と術側下肢荷重率 (p<0.05, オッズ比; 1.04, 95%信頼区間; 1.01-1.08) が抽出された. その予測式は, Model=術側膝伸展筋力*0.131+術側下肢荷重率*0.04-4.47であった. ROC曲線から得られたカットオフ値は, 術側膝伸展筋力は18% (感度; 0.72, 特異度; 0.77, 曲線下面積; 0.78), 術側下肢荷重率は61% (感度; 0.76, 特異度; 0.68, 曲線下面積; 0.76), そしてModelは0.77 (感度; 0.76, 特異度; 0.87, 曲線下面積; 0.82) であった.【考察】 大腿骨骨折患者の術後1週目における術側膝伸展筋力と術側下肢荷重率は, 退院時の歩行自立度を予測する因子であると考えられた. また, ロジスティクス回帰分析で得られた予測式から算出したModelはROC曲線の曲線下面積において上記2因子よりも良好な判別精度を示した. 以上のことから, 術側膝伸展筋力および術側下肢荷重率の両指標を併用したModelを使用することは, 単一指標よりも歩行自立度を予測する因子となる可能性があるものと考えられた.【理学療法学研究としての意義】 本研究の意義は, 術後早期における退院時歩行自立度の予測因子およびその水準を示した点である. 本研究の成果は, 急性期病院において転帰先を決定する際の一助になるものと考えられる.
著者
栗原 佑介
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1099-1106, 2015-03-15

MOOC等のオープン型教育コンテンツや文化財(文化資源)のデジタルアーカイブ化が政府主導によって,推進または推奨されている.本稿では,このようなデジタルコンテンツの権利処理過程において,残存あるいは事後的に生成されうるパブリシティ権の問題点を明らかにする.特に,ピンク・レディー事件(平成24年2月2日)の最高裁判決をふまえ,なお残る論点との関係で言及する.パブリシティ権の問題は,学説判例によって権利性が承認されているが,立法化されていないため,権利範囲が明確ではないという問題点がある.しかし,パブリシティ権は,これまで知的財産法制との類似性が指摘されてきた.他方で,パブリシティ権は人格権法とも親和性があり,権利範囲について,知的財産権法制との関係では解決しきれない.そこで,この問題を解決するためには,前述した最高裁判決をもとに,権利侵害となる範囲を解釈によって明確にしなければならない.この際に,有効な手段が,憲法論的アプローチであり,財産的権利と人格的権利を区別する「二重の基準」論である.さらに,わが国著作権法においては,著作者人格権が規定され,実演家にも実演家人格権が認められているため,著作権者の権利制限規定の解釈もパブリシティ権の権利の制約を考えるうえでは有効である.Open educational contents, for example MOOC, cultural property or resources, have been archived by the government. This paper addresses the issue of the right of publicity in regard to rights clearance, and clarifies the limitations on this right. There are certain critical issues regarding this right since the Supreme Court of Japan provided a legal definition for the term on February 2, 2012. The definition is accepted in theory and there have been precedent cases, but it remains controversial. Thus, limitations on this right aren't uncommon. However, this right is related to intellectual property laws; it's also very similar to moral rights law. For solving the problem on the basis of the above-mentioned leading case, the scope of the infringement on the right of publicity as a moral right is clarified by the interpreter. I address the interpretation of the constitutional-law approach that distinguishes property rights from moral rights, which is a double standard that adversely affects the search for a solution to this problem. Second, the restrictions on copyright holders that are enshrined in copyright-law take advantage of an interpretation of the right of publicity, because copyright-law in Japan is tied to the moral rights of the performer.
著者
Genki Usui Yohei Takayama Hirotsugu Hashimoto Takehiro Katano Masahiro Yanagiya Masashi Kusakabe Tamaki Miura Jun Matsumoto Hajime Horiuchi Seiji Okubo
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.1962-18, (Released:2018-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
17

Postoperative cerebral embolism after left upper lobectomy caused by a thrombus in the pulmonary vein stump (PVS) is a serious complication. However, it is unclear if cerebral embolism can develop after other types of lobectomy. We present a case of a 68-year-old man with cerebral embolism after left lower lobectomy with a longer PVS than normal. There were no clinically suspected sources for the thrombus except for the PVS. This thrombus seemed to have formed in the PVS. The endovascularly removed thrombus contained scattered nuclear debris around neutrophils, suggesting a physiological response caused by tissue injury.
著者
藤岡 英之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

近年、葬儀には2つの大きな変化が起きたといわれている。1つは喪家近隣の人々の手伝いによって担われてきた葬儀の役務が葬祭業者によって代替されるようになったこと、そしてもう1つは、葬儀の場所が自宅から葬儀会館へ移行するという会場の変化である。この2つの変化によってもたらされる葬儀の地理学的な変化をみていくことが、本発表の目的である。<br><br> 地域共同体が担ってきた葬儀の役務は葬祭業者に代替されるようになったが、その進み方は一様ではなかった。東日本(甲信越から北関東、南東北)では比較的最近まで地域共同体の関与が大きく、これが現在でも葬儀費用における参列者や親族への「接待費用」の金額の高さ、さらには葬儀費用「総額」の高さとなって現れている。<br><br> こうした地域の性格を典型的に表している栃木県宇都宮市でも90年代半ば以降、それまでの自宅に代わって葬儀会館での葬儀が普及している。会館内でも受付は組内の仕事とされるなど、助力の習慣は一定程度維持され、手伝いへの返礼として通夜振る舞いや精進落としの会食も、告別式と火葬を済ませた後、再び葬儀会館に戻って行うのが習慣となっている。市内の葬儀会館は集積することなく、互いに一定の距離を保って設置される傾向にある。とくに2000年以降は、人口集中地域の縁辺に沿った立地が目立つ。<br><br> 葬儀の会館への移行によって葬儀の場所は自宅を離れることになった。この実態を明らかにするため、栃木県の地方新聞「下野新聞」のお悔やみ欄を使い、故人の自宅から葬儀の場所までの距離と、死亡日から告別式までの日数(間隔)を調べた。1995年1月に57%あった自宅葬は、2000年1月には25%、05年1月3%、10年1月は1件(0%)に減少、代わって民営の葬儀会館と市営火葬場に併設された式場(市営斎場)を合わせた利用割合は、40%から、74%、94%、98%へと増加した。<br><br> これによって、故人の自宅から葬儀の場所までの距離は当然ながら離れていくが、そのなかで民営の葬儀会館での葬儀の場合、自宅からの距離は3.4kmで経年的な変化はほとんどなかった。各会館の集客のパターンを調べても、多くが会館の周囲から集客しており、利用者側からみて最近接の会館とまでは言えないものの、自宅近くの会館が利用されていた。<br><br> 一方、これと異なる傾向を示したのが農協系葬祭業者の葬儀会館と市営斎場での葬儀である。農協系葬儀会館は、自宅からの距離が一貫して拡大する傾向にあるとはいえないが、自ら出資して組合員として参加する「農協」というブランド力により、他の葬儀会館に比べて利用者の範囲は広い。他方、市営斎場は、火葬場(「悠久の丘」)が2009年に郊外に移転したため併設式場も中心部からの距離は遠くなったものの、式場が2つに増設されて利用件数が大きく伸びた。2010年1月の利用割合は10%で、故人の自宅からの距離も平均5.5 kmと民営葬儀会館の1.6倍になっている。これには「安価さ」をアピールする「公営式場専門」の葬祭業者が新聞広告を掲載していることからも推測されるように、葬儀費用が影響していると考えられる。<br><br> ただし悠久の丘には、宇都宮市の葬儀習慣である火葬後の会食(精進落とし)のための場所がなく、火葬中の待合室で弁当を食べることをもって精進落としとすることが多い。火葬中の簡略化された会食でも問題のない、地域(共同体)との関係が希薄化した利用者が利用できる施設とみることができる。こうした利用者であれば、自宅やその周辺(地域)との距離は大きな問題にならず、遠方からでも利用が可能になる。<br><br> 死亡日から告別式までの日数は、とくに民営葬儀会館や市営斎場での葬儀においてその間隔が長くなっている。1993~2000年の間、自宅葬でもっとも多い間隔は各年とも2日だったが、民営葬儀会館では93年の2日から2000年までに3日が最多となってピークが1日分ずれた。2010年には4日以上が半数を占めている。利用が伸びている悠久の丘の式場でも、平均の間隔が4日に達した。こうした間隔の伸びは会館の空き具合によるものである。<br><br> このように、宇都宮市では自宅近くの葬儀会館の利用が続く一方で、より簡略化され費用も安価ながら、自宅から離れ、告別式までの待ち時間の長い葬儀が増えている。<br> <br>
著者
勧修寺 編纂
出版者
大本山勧修寺
巻号頁・発行日
vol.大聖不動明王念誦私記同護摩, 1925

1 0 0 0 OA 芝居番附集

出版者
巻号頁・発行日
vol.[51],
著者
山口 一郎 寺田 宙 欅田 尚樹 高橋 邦彦
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.138-143, 2013-04

東京電力福島第一原子力発電所事故により,食品の放射線安全への懸念が国内外で高まり,そのために様々な対策が講じられた.対策の成果を評価するために,食品に由来した線量の推計が様々な方法により試みられている.ここでは,厚生労働省が公表している食品中の放射性物質のモニタリング結果に基づく線量推計例を示す.なお,事故直後から6ヶ月間の被ばく線量の評価例は,2011年10月31日に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会で報告されている.本稿では,その評価例に引き続くものとして,事故直後から2012年12月までの実効線量と甲状腺の等価線量を積算した評価例を示す.年齢階級別に東電福島原発事故後の食品中の放射性セシウムと放射性ヨウ素に由来した預託実効線量を推計した結果,中央値が最も高かったのは13-18歳で2012年12月20日までの積算で0.19mSvであった.95%タイル値が最も高かったのは1-6歳で0.33mSvであった.このような食品からの線量の事後的な推計は,ある集団や個人の放射線リスクの推計や放射線防護対策の評価に役立てることができる.また,今後の食品のリスク管理のあり方の検討にも役立てることができるだろう.
著者
藤原 和好
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.41-50, 2013-08-10 (Released:2018-08-06)

小学校の文学の授業では、ストーリーに浸らせ、そこでのびのびと遊ばせることが大事である。だが、ストーリーをたどる読みは、教師の手のひらで遊ぶだけのものになってしまう。そこから抜け出すために、「語り」を意識させることはきわめて有効である。「語り」は、語られている世界を意味づけ、語られていない世界に出会う装置である。その「向こう側の世界」との出会いから紡ぎ出される子どもの読みは、教師の読みをも揺さぶる。
著者
鎌田 均
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.63-72, 2011-01-10 (Released:2017-08-01)

昨今の「日本語」あるいは「表現」のブームの過熱ぶりについてその背景が何かを探り、そのことに拘っている私自身の中の蟠りとは何かを明確にする。そして更に、言語技術教育の面ばかりが強調されがちな、いわゆるリテラシーについて私見を述べ、本来国語教育、就中文学教育における「ことばの力」とは何を目指し、どこへ向かって機能すべきかを論じている。その際、今年実践した川上弘美の『神様』を教材として考察してみた。
著者
河島 茂生
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第25巻, no.第2号, pp.1-15, 2013-03

本論文は,オートポイエーシス論に基づきながら,ネットゲーム依存の問題を検討している。これまで心理学的もしくは精神医学的なアプローチでの取り組みがなされ,対策も講じられてきた。しかし,情報学の基礎理論でもあるオートポイエーシス論を援用した分析はほとんど見られない。そこで本研究は,オートポイエーシス論の視座からネットゲーム依存を考察することにした。この方法を採ることにより,人間の心理において現実と虚像の境界が原理的に曖昧である点が指摘でき,またネットゲームだけにのめり込む危険性も考察することができた。さらには,インターネット依存から身をかわす一契機を見出すことが可能となった。
著者
石田 多恵子 猪野 真純 仲野 敦子 有本 友季子 黒谷 まゆみ 森 史子 工藤 典代 笠井 紀夫 福島 邦博
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-36, 2012-03-01
参考文献数
11

&nbsp;&nbsp;聴覚障害児の日本語言語発達に関する全国研究として,厚生労働科学研究補助金事業「感覚器障害戦略研究&mdash;聴覚分野&mdash;」が実施され,日本語言語発達を評価するテストバッテリー ALADJIN(アラジン・<u>A</u>ssessment of <u>L</u>anguage <u>D</u>evelopment for <u>J</u>apanese ch<u>I</u>ldre<u>N</u>)が提唱されている。当院もこの研究に参加し,4 歳から12歳までの先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル70 dB 以上)計44名に対して ALADJIN を実施し,同事業による聴覚障害児全国集計平均値(平成22年 5 月・感覚器障害戦略研究中間報告)との比較検討を行った。<br/>&nbsp;&nbsp;言語力が高く,音声によるコミュニケーションが可能な児の多くは普通小学校(メインストリーム)に在籍していた。聾学校小学部低学年では言語力の低い児が多くみられたが,同小学部高学年になると全国集計値よりも高い言語力を有する児がみられ,各々の児に適した教育により言語力を伸ばせる可能性が示唆された。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[218],
著者
永田 正一
出版者
Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.151-159, 1995-07-30 (Released:2009-09-07)
参考文献数
29

ゼロ磁場冷却(Z.F.C.)および磁場中冷却(F.C.)という用語はスピングラスの研究において導入された。この専門用語が使用されるようになった経緯について記述している。これらの用語は磁性および超伝導の分野において,実験事実の相互の関連を明瞭に結びつけるのに役立つ。スピングラスと超伝導の二つの場合についてZ.F.C.とF.C.の磁化率に関連した事柄を簡単に記述している。スピングラスのようなランダム系においては,たとえ低磁場といえどもF.C.は系を熱平衡状態に導く役割を果たすと思われる。スピングラスにおいてはZ.F.C.とF.C.の磁化率の違いは本質的で基本的な問題を提起する。一方,超伝導体についてのZ.F.C.とF.C.の磁化率の実験は測定試料の質を診断する上で重要な役割を果たし,超伝導特性に関する錯綜した実験結果を整理することができる。応用範囲が広いため,実りの多い議論がZ.F.C.とF.C.の磁化率において一般的に展開されるようになった。これらの低磁場での高精度の実験が可能となったのは,超伝導量子干渉計(SQUID)の長き渡る技術開発の成果である。今日,SQUID装置を商品として購入できるが,SQUID開発に携わった多くの研究者および技術者の努力に感謝し過ぎるということはない。
著者
ジメネス フェリックス 吉川 大弘 古橋 武 加納 政芳 中村 剛士
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.2N21, 2017 (Released:2018-07-30)

近年,教育を支援する教育支援ロボットが注目され,定型発達児を対象に研究が進められている.一方,学校の通常学級において,発達障害児の在学割合は年々増加している.そのため,発達障害児を対象とした教育支援の必要性は高まると考えられる.しかしながら,発達障害児を対象とした研究事例は少ない.そこで本稿では,発達障害児と教育支援ロボットとの一対一における共同学習による学習効果について報告する.
著者
本図 竹司
出版者
茨城県農業総合センター園芸研究所
雑誌
茨城県農業総合センター園芸研究所特別研究報告
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-70, 2001-03
被引用文献数
1

5~8℃の低温の後作用を利用した、実際栽培での低温処理法の改善について検討した。オランダ産の'エレガンス'球茎を早期に入手し、5~10℃湿潤の低温処理を行って8月下旬に定植すると、10℃よりも8℃の処理で、これまで不可能であった9月末に高品質の切り花が得られた。一方、5℃では出荷が10月中旬とやや遅れるが、8℃よりさらに高品質の切り花を出荷することが可能であった。また、'アラジン'と'シンデレラ'では、10℃に比べ8℃で葉の軟弱化による垂れや花茎の曲がりの発生が少なくり、切り花の商品性を向上させることができた。 'ブルーヘブン'を用い、従来の10℃湿潤の低温処理を行う前、あるいは行った後に5~8℃湿潤条件で3~5週間置いたところ、開花が早まるとともに高温障害の発生を抑制することができた。その際、低温処理の初期に5~8℃においた場合に効果がより高かった。 低温の後作用を簡便に利用するため、さらに低温処理中の芽の伸びを抑えるために、10℃乾燥での低温処理の利用について'エレガンス'を用い検討したところ、湿潤状態での10℃低温処理を行う前に乾燥状態での10℃低温処理を加えると、開花が早まるとともに低温処理中の芽の伸びが抑えられ、作業効率を高められることがわかった。 実際栽培で懸念されている低温処理中の最高・最低温度の較差については、花芽形成適温域をはずれる時間が長くなければ影響がないことがわかった。 近年発表された高温開花性品種を用いることは、低温処理期間の短縮、および従来の品種では開花できない高温条件での開花が可能となり、高温期生産に有用と認められた。