著者
臼井 達哉 岡田 宗善 原 幸男 山脇 英之
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.2, pp.85-89, 2013 (Released:2013-02-08)
参考文献数
42

Ca2+結合タンパク質であるカルモジュリン(CaM)はCaM依存性(関連)タンパク質の機能調節を介して筋収縮,免疫応答,代謝,神経成長といった様々な細胞機能に影響を与える.最近,CaMおよびCaM依存性プロテインキナーゼ(CaMK)IIが心血管疾患の病態進展に関わるという報告がなされた.高血圧症の病態ではTNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインの血中濃度が上昇し,活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)産生を介して血管の炎症性反応が亢進する.しかしながら,血管炎症の観点からCaM関連タンパク質の高血圧症進展に及ぼす影響はほとんど検討されていない.本総説ではCaM関連タンパク質の中でCaMKs(CaMKI,CaMKII,eukaryotic elongation factor(eEF)2 kinase(CaMKIII),CaMKIV)とCaMKスーパーファミリータンパク質(death associated protein kinase(DAPK)ファミリータンパク質,CaM serine kinase(CASK),checkpoint kinase(Chk))をとりあげ,これらの機能を心疾患における役割と血管炎症を介した高血圧症の病態制御機構に焦点を当て概説する.今後,本総説で紹介したCaM関連タンパク質をターゲットとした薬物の開発がACE阻害薬,カルシウム拮抗薬といった既存の降圧薬では治療が難しい患者に対しても有効な治療戦略になることが期待され,さらなる病態生理的役割の解明が重要になると考えられる.
著者
大岩 元 Hajime Ohiwa 豊橋技術科学大学情報工学系
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.218-227, 1988-07-15

ソフトウェアの生産性が問題となっているが,必ず実効の上がる改善策としてキーボード教育がある.まず英文タイプのブラインド技術はわずか2~3時間の初期訓練によって獲得できるものであることを示し,続いてタイピング作業の認知モデルを,タイピングCAIプログラムと関連させて述べる.ソフトウェア作成には文書化作業が大きな比重をしめるが,この作業効率を上げるには,下書きせずに技術者が直接ワークステーションで文書作成を実行することが望ましい.これには日本語入力の方法とそれをどのように教育するかが問題となる.そこでまず日本語入力の基本となる,各種カナ入力法について論評を加える.さらに漢字の直接入力法について論じた後,入力法の評価に関する研究をいくつか紹介し,それが非常に困難な問題であることを示す.最後にキーボードと計算機本体の接続を標準化すべきことを指摘する.
著者
東郷 育郎
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.84-89, 2015 (Released:2016-09-26)
参考文献数
5

1 0 0 0 OA 涅槃經疏 15卷

著者
(隋) 釋灌頂 撰
巻号頁・発行日
vol.[2], 1000
著者
武田 敦志 チャクラボルティ デバシシュ 北形 元 白鳥 則郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.54, pp.63-68, 2008-06-12
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年,P2P ネットワークの普及が急速に進んでいる.しかし,2P ネットワークのための効率的な認証手法が実現されていないため,セキュアでスケーラブルな P2P ネットワークは実現されていない.そこで,本稿では,分散ハッシュテーブルを用いた P2P ネットワークのためのスケーラブルな分散型認証手法 HDAM を提案し,HDAM を P2P ネットワークで運用するための認証モジュールの設計について述べる.In recently years, P2P networks have been evolving at a rapid pace. We however can not use secure and scalable P2P networks, because an efficient authentication scheme for P2P networks is not realized. In this paper, we propose HDAM, which is a scalable decentralized authentication method. HDAM enables an efficient authentication by using Distributed Hash Table.And, we also describe the authentication module for HDAM which enables secure and scalable P2P networks.
著者
宮城 淳 家壽多 正樹 日坂 弘行 本居 聡子 若生 忠幸
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.101-107, 2011
被引用文献数
5

ネギの食味品質に関する化学的,物理的分析法を確立するため,「辛み」,「甘み」,「硬さ」の観点から,調理法を考慮した官能評価と生ネギの化学的成分および物性値の関係を明らかにした.生ネギの「辛み」評価とピルビン酸生成量には,強い正の相関関係(<i>r</i> = 0.94**)が認められた.加熱ネギの「甘み」評価と糖度との間には正の相関が得られなかったが,ブドウ糖含量,果糖含量,遊離糖総量および甘味度との間にはそれぞれ強い正の相関関係(<i>r</i> = 0.98**~0.99**)が認められた.焼きネギおよび煮ネギの「硬さ」評価は,円柱プランジャー(&Phi;3 mm)を用いた貫入抵抗値と,強い正の相関関係(<i>r</i> = 0.90*~0.99**)が認められた.以上,ネギの「辛み」および「硬さ」はそれぞれ,ピルビン酸生成量および貫入抵抗値で表現できた.「甘み」は,屈折糖度計で測定することは適切でなく,ブドウ糖含量,果糖含量,遊離糖総量および甘味度で測定することが適していた.<br>
著者
Watson Victor 田中 美保子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.281-293, 2016-09

本稿は、前号に続く、Lucy M. Bostonの児童書Green Knoweシリーズ全6巻を「音」の描かれ方に注目して考察した論考の翻訳の後半である。前3作同様、物語の舞台は、Bostonが長年住んでいたイングランドで人が住み続けている最古の家をモデルにした館とその周辺である。シリーズ第4巻A Stranger at Green Knowe (1961)は、文体と構成の完璧な融合、深いテーマなどから、動物物語のイギリス児童文学最高傑作の1つである。これ以前の3作にも現れていたBostonの言葉に対するこだわりと情熱がこの巻に結実している。Bostonは、描写の密度と物語の緊張を合致させ、情熱的で詳細な説明によって、読者に「正義」を強く求める「語りの欲求」('narrative desire')とでも言うものを積み重ねていくような手法を取っている。シリーズ最後の2作では、作家として、物語をすっきり終息させていこうとするBostonの姿勢が窺える。第5巻An Enemy at Green Knowe (1964)では、理想化された子どもを三人登場させ、特別でかけがえのない古い館に対するBostonの確固としたこだわりを言葉で随所に明示する。最終巻The Stones of Green Knowe (1976)では、この館を建てたノルマン人の少年を登場させ現代にタイムトリップさせる。衰退していく世界の非常に現実的で暗澹たる姿をこの物語に見る者もいるだろうが、この作品は12世紀の暮らしが手に取るようにわかる歴史小説の名作であるとも言える。いったん外れたかのように見えた「時間」というテーマに、Bostonは再び立ち返っている。但し、直線的な時間軸を前後に行き来するように見えながら、物語全体の構成は円環的である。人生の終息を意識する作家自身の年齢(この巻出版時84歳)を考えると当然であろう。どの巻でも、どのような手法を用いるとしても、Bostonの視点は常に若い読者に置かれている。そのうえで、この作家にとって非常に大切であった死と衰退の問題を、慰めと快活さと静けさによって子どもも楽しめるファンタジー文学作品として結実させている。それは、あらゆる種類の音が、時を超越した深い静寂の中に融け込んでいる世界である。