著者
鈴木 誠 宮崎 崇
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.295-301, 2007 (Released:2007-09-28)
参考文献数
28
被引用文献数
1

A precision microwave dielectric spectroscopic technique has been developed. This technique enables us to analyze hydration properties of ions, proteins, and other biomolecules. φ-scan method gives an image of the information of spatial distribution of dielectric property of water surrounding protein molecules. Fixed φ analysis gives a direct comparison of hydration properties of different proteins. With this technique we analyzed the state change of F-actin hydration upon binding with myosin, and found that hyper-mobile water (HMW) is induced around F-actin and increased upon binding with myosin S1. Thus, we may obtain further information of collective properties of water surrounding proteins and biomolecules.
著者
内田 毅
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

鉄はすべての生物において必須の元素である。本研究課題では、病原菌の鉄の獲得を阻害することで、新規な抗菌剤の開発につながることを期待する。病原菌の主な鉄源はヘムであり、ヘムを取り込み、分解し、鉄を取り出す。そこで、これらに関するタンパク質の機能について検討した。ゲノム配列からコレラ菌のヘム獲得に関するタンパク質 (Hut:Heme utilization) と推定されていたが、実験的証拠はなかった。そこで、Hutの一つであるHutBの発現系を構築し、発現・精製した。HutBの全長タンパク質は多量体を形成したが、N末端の22残基を削除すると単量体として精製されたことから、N末端はシグナル配列であり、ペリプラズムへの移行シグナルとして、使用されていることが示唆された。また、吸収スペクトルと変異体の解析から、TyrとHisがヘムの配位に関係していることがわかった。これは、緑膿菌のヘム輸送タンパク質であるHasAと同じ構造であることから、HutBがペリプラズムでヘムの輸送に関連していることがわかった。次に、ヘム分解酵素であるHutZの酵素機構について、検討した。HutZのヘム分解機構はヒトのヘム分解酵素であるHOと同一であることは初年度に明らかにしていたが、ヘムの配位子であるHis170とその近傍にあるAsp132との水素結合がHutZに特有であることから、この役割について検討した。この水素結合により、His170は負電荷を帯びるため、ヘムの分解過程には不利に働くと考えられたが、この水素結合はヘムの取り込みに関与しており、切断するとヘム分解活性が消失することがわかった。His170とAsp132は酸化酵素と異なり、異なるサブユニットに存在しており、サブユニット間の相互作用を変化させることにより、水素結合の強度を変化させ、酵素活性を調節するという新規なヘム分解機構を見出した。
著者
加知 範康 加藤 博和 林 良嗣 森杉 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.558-573, 2006
被引用文献数
2

本研究では,生活環境質(QOL)が高い都市空間構造を実現するための居住地立地誘導の方向性を見いだす指標として,都市内各地区における居住から得られる生活環境質の評価指標を「余命」を尺度として定義する.定義した指標を用いて財政的持続性および社会的公平性制約下での都市全体の生活環境質最大化問題を定式化し,さらに,これを都市の居住地立地施策に適用するために,生活環境質を市街地維持費用で除した社会的費用効率(S値)を用いた撤退・再集結地区選定の枠組みに展開する.本手法を実際の地方都市に適用した結果,生活環境質自体は中心部より郊外部の方が高いものの,S値は市街地が拡大する前の既存集落部で高くなり,分散集中型への誘導が望ましいことが示される.
著者
Mikio Shiba Yasuo Sugano Yoshihiko Ikeda Hatsue Ishibashi-Ueda Takahiro Ohara Takuya Hasegawa Hideaki Kanzaki Toshihisa Anzai
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.751-754, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2 5

A 74-year-old man, who had a history of a mitral valve replacement for rheumatic heart disease (RHD) 30 years previously, was admitted with progressive heart failure. Massive calcification was observed around the left atrium on multidetector CT, in addition to a late gadolinium enhancement (LGE)-positive layer adjacently outside of the calcification on MRI. He underwent a second mitral valve replacement for the prosthetic valve failure. Pathohistological analyses of a tissue section of the left atrial wall from a surgical specimen revealed lymphocyte and macrophage infiltration that coincided with the LGE-positive layer on MRI, suggesting the existence of sustained active inflammation even after the long period of RHD.
著者
山岸 宏光 中筋 章人 野崎 保 平野 吉彦 中川 渉 安田 匡 棚瀬 充史 須藤 宏 三戸 嘉之 永野 統宏 小野 雅弘 安田 幸弘 濱 康之
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.192-202, 2007-10-10
被引用文献数
1 2

平成19年7月16日午前10時13分,新潟県中越沖の深さ17kmを震源とするM6.8の地震が発生し,新潟県柏崎市,長岡市,刈羽村,長野県飯綱町で震度6強の大きなゆれを観測するとともに,各地で大きな被害が発生した.日本応用地質学会では,いち早く先発隊として野崎北陸支部副支部長が17日に現地調査を開始し,22日にはその結果を速報としてホームページ上に公開した.ついで北陸支部(山岸支部長)が主体となり,学会本部の新潟県中越地震による土砂災害研究小委員会(千木良委員長)が支援する形で,現地調査を行うことが決定し,調査団を募ったところ13名のメンバーが参集した.現地調査は,8月3日に猛暑(36℃)の中で行われ,13日にはその成果をホームページに公開した.本報告は,今回行なった現地調査の中から,地震災害の代表的現象である液状化・斜面崩壊・地すべりなどを対象に,その状況と発生メカニズムについて検討した結果を報告するものである.
著者
金森 由博
出版者
日本視覚学会
雑誌
VISION (ISSN:09171142)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.166-170, 2018 (Released:2018-10-25)
参考文献数
6
著者
南部 陽一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.452-460, 1973

おことわり : この小文の読者は見なれない日本語の術語に出くわして当惑されるかも知れないがこれは筆者が意識的に試みたことである. 将来研究者がこの方面にもっと関心を払い, 自然淘汰の結果, 生の外国語に代る適当な術語が多く通用するようになれば幸いである.
著者
南部 陽一郎
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
no.4, pp.226-228, 1949

朝永-Schuringer理論によつて核子の磁気能率を扱うことは既にCase, Luttingerによつて行われ,その結果が報告されている。ここでは同じような計算をscalar及びpseudoscalar中間子の場合について行つた結果をとりあえず報告する。但しまだ検算が不十分であるからニ、三の誤りがあるかもしれない。計算方法は大体Schuringerをそのまゝ模倣した。
著者
木下 東一郎 南部 陽一郎
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.176-181, 1950

前号(1)に中間子電流に対する電磁場のdynamical reactionにつき予備的な計算の計算の結果を報告したが,その中には方法論的に明確でない点や未解決な問題が残されていたので,これらのことについてその後考えたことを述べる。なおまだ計算が完了していないので詳細は次の機会にゆづることにする。
著者
内田 毅
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、シトクロムcという原核生物から真核生物までほぼすべての生物が有するタンパク質の成熟化を行うタンパク質群であるCcm(Cytochrome c maturation)の作用機構を明らかにすることを目的としている。シトクロムcはミトコンドリアの呼吸鎖における電子伝達タンパク質と機能する他、細胞死であるアポトーシスの引き金となるタンパク質であることから、生成及びその品質管理を理解することは重要であると共に、CcmはC型ヘムを有するタンパク質を大腸菌や無細胞系で発現させる時には必須である、その効率の点で未解明な部分が多く、Ccmの理解はタンパク質工学的にも重要な課題の一つである。本研究の共同研究者であるOxford大学のFerguson教授らの研究により、8個存在するCcmタンパク質の中でもCcmEがヘムをシトクロムcに引き渡し、チオエーテル結合の形成という翻訳後修飾を行うことが生化学的に報告されていた。我々はこの機構を詳細に検討することを試みた。Ferguson教授らは細菌(Hydrogenobacter thermophilus)由来のシトクロムcを用いていたが、今回、ホ乳類であるウマ、及び酵母であるSaccharomyces cerevisiae由来のシトクロムcを用い、翻訳後修飾過程を検討したが、翻訳後修飾は形成されなかった。これは、CcmEによるシトクロムcの選択性を表している。CcmEとこれらのシトクロムcの相互作用を表面プラズモン共鳴装置により解析したが、全く相互作用しなかった。以上のことから、CcmEはシトクロムcのある特定の部位を認識し、ヘムの受け渡しを行っていることがわかった。今後はH. thermophilus由来のシトクロムcの認識部位を明らかにすることを試みる。それにより、CcmEを利用したより広汎なC型ヘムをもつタンパク質の翻訳後修飾につながり、外来タンパク質の発現における有用な情報が得られると期待される。
著者
清水 賀之 畠山 信夫 益山 忠
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.134, no.10, pp.142-150, 2018-10-31 (Released:2018-10-26)
参考文献数
21
被引用文献数
5

A numerical analysis is conducted to examine an air-lift pumping system for mining rare-earth rich mud under 6000m deep seabed around the Minami-Tori-Shima. The numerical scheme in the analysis adopts the one-dimensional drift-flux model, which solves pressure and velocities as well as volumetric fractions of each phase in the air-slurry two-phase flow along a lifting pipe. The empirical formulas derived from experiments using rare-earth rich mud around the Minami-Tori-Shima estimate the pseudoplastic viscosity and the rheology constant as a function of volumetric concentration of mud in slurry. They are devised in the scheme to evaluate the pressure drop in air-slurry two-phase flow as the power-law fluid. Parametric studies were conducted to examine steady characteristics of the air-lift pumping system by changing the air flow rate, the water depth where the air was injected and back pressure. As a result, the basic characteristics of the air-lift pumping system were clarified. For example, with the air flow rate of 6kg/s, depth of water where air was injected of 3000m, back pressure of 0.2MPa (G), 6040m lifting pipe out of which 6000m is submerged, and 40m is above sea level, pipe diameter below the depth where the air was injected of 0.15m and above that depth 0.2m, it was found that the maximum mud flow rate was 1.01x103t/d, volumetric concentration of mud was 6.2%, slurry velocity was 3.8m/s, mixture velocity at the exit of the lifting pipe was 52m/s and power required was 2.0x103kW. In addition it was found that the performance of the system decreases when using the scheme as the power-law fluid compared with the one using the Mori-Ototake formula as Newtonian fluid. Furthermore, specifying back pressure is useful because of increased efficiency of the system, as well as for keeping the mixture velocity down at the exit of the lifting pipe.
著者
内田 毅
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は病原菌の一つであるコレラ菌が増殖に必要とする鉄を獲得する機構を明らかにすることを目的とした研究である。主要な鉄源は血液中のヘモグロビンに存在するヘムがであることから、ヘモグロビンからのヘムを獲得とそれを分解し、鉄を取り出す一連のタンパク質を網羅的に解析した。その結果、VCA0907がヘム分解酵素であり、その酵素活性は活性中心に存在する水素結合の強度により、制御されることがわかった。また、基質であるヘムはVCA0908から受け取ることがわかった。ヘムを分解し、鉄を取り出す過程は病原菌の増殖に必須の過程であることから、新たな病原菌増殖剤の開発につながら可能性を見いだすことができた。