著者
上原 俊介 森 丈弓 中川 知宏
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1708, (Released:2018-12-07)
参考文献数
31

怒りの表出に焦点を当てた従来の研究では,親密な人間関係を維持するためには怒りを抑制し制御することが重要であるとされてきた。その一方で,怒りを示す行動には相手の行動制御機能や自己開示機能が備わっているという点から,人間関係の親密化を促進する契機になると考える研究者たちもいる。そこでわれわれは,怒りを表出するほど親密な関係が継続しやすいと予測して,分析を行った。質問紙研究において,大学生参加者たちに最も印象に残った異性との失恋経験を想起させ,その経験について,交際期間と日頃怒りを表していたレベルを評価させた。これらのデータについて生存時間分析を行ったところ,強くはないが恋人に怒りを示していたと答えた参加者ほど,交際期間を有意に長く報告することが確認された。こうした結果を受けて,親密な人間関係においてみられる怒りの関係継続効果が議論された。
著者
榊原 研互
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.43-57, 2008-10

樫原正勝教授退官記念号論文自然科学の方法の社会科学への適用可能性をめぐっては,これまで多様な議論が展開されてきたが,近年経済学や社会学において注目を集めているのが,イギリスの哲学者バスカーが提唱する超越論的実在論である。これは実在論に依拠しつつ,これまで対立してきた実証主義(自然主義)と解釈学(反自然主義)を批判的に統合しようとする試みである。この立場は,経済学ではローソンによって主流派経済学に対する批判の道具として用いられ,経営学では野中らの「知識創造理論」の方法論的基礎としても用いられている。本稿では,この批判的実在論が社会科学に実りある展望をもたらすかどうか批判的に吟味される。
著者
波戸 謙太 木野村 嘉則
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.235_2, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、野球初心者が全力投球を反復した際の球質の動態を明らかにすることで、その際に内在する諸問題について検討し、特にスピードトレーニングの投球練習における適正反復投球数について検討することを目的とした。実験試技は、野球初心者である男性2名に対して、屋内において捕手方向に各々の最大努力度によって、フォーシームの握りでストレートを投球させた。投球数は20球1セットとし、合計5セットの計100球の投球を行わせた。その結果、投球数の増加に伴い、ボール速度が減少した。その際、セット内における球速および回転数の変動が大きかった。さらに、野球経験者と比較すると、球速が低く回転数が少なかった。よって、野球初心者はボール速度を増大することに加え、回転数を増大させること、球質を安定させることもトレーニング課題となりえることが想定される。また、野球初心者では、21~40球目にボール速度の大きな減少がみられたことから、スピードトレーニングの投球数は20球までを適正反復回数の目安とすることで、より効率よく球速をはじめとした球質の向上への効果を期待できる可能性が示唆された。
著者
杉浦 正好
出版者
一般社団法人 日本メディア英語学会
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.44, pp.15-28, 2005-09-01 (Released:2012-11-13)
参考文献数
13

英語の借用語の大部分を占めるのはラテン語やフランス語などのインドヨーロッパ語族系の語彙であるが、日本語の流入も近年多くなりつつある。本稿では第一に、米国の辞典Merriam Webster's Collegiate Dictionary第10版のCD-ROMを利用し、英語の中にどのような日本語語彙が流入したかを通時的に考察した。第二に、この調査で見つかった125の語彙について、オークランド在住の84人のニュージーランド人を対象にどれほど認知されているかを定点観測してみた。その結果、(1)原語である日本語とは意味と用法が微妙に変化していること、(2)上記辞典に収集されている語彙全てが必ずしも一般に認知されているわけではないが着実に英語圏に進出していること、が分かった。比較データとして、コーパスを利用して編纂されたLongman Dictionary of ContemPorary English第4版をも参考にした。データの比較分析をしつつ、今後の研究の方向付けも探ってみた。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.824-832, 1997-11-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1
著者
Eiji Kitamura Yuko Kondo Naomi Kanazawa Tsugio Akutsu Kazutoshi Nishiyama Takahiro Iizuka
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.1846-18, (Released:2018-11-19)
参考文献数
9
被引用文献数
6

Autoimmune encephalitis (AE) is an immune-mediated encephalitis characterized by the subacute onset of memory deficits, altered mental status, or psychiatric symptoms. Limbic encephalitis associated with rheumatoid arthritis (RA) has not been reported yet. A 57-year-old man presented with the subacute onset of headache, depression, and anorexia 7 months before the onset of RA. Brain magnetic resonance imaging showed symmetric parenchymal lesions involving the medial temporal lobes. He was diagnosed with RA and AE, but no autoantibodies to neuronal intracellular or cell-surface antigens were identified in either the serum or cerebrospinal fluid. His symptoms improved with immunotherapy. AE can develop as an extra-articular manifestation of RA.
著者
萩原 信敏 松谷 毅 野村 務 藤田 逸郎 金沢 義一 櫻澤 信行 宮下 正夫 内田 英二
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.512-520, 2014 (Released:2014-03-05)
参考文献数
31

食道癌術後長期生存例の増加にともない,再建胃管癌例も増えている.今回,年代別で胃管癌の臨床病理学的項目,治療,予後などの変化について,当科の胃管癌9例と本邦報告156例を集計した165例において3期に分けて検討した.臨床病理学的検討では,発生部位は胃管下部に多く,組織型は7割が管状腺癌であり,年代で有意な差は認めなかった.内視鏡検査での発見症例が最近10年では7割を占め,早期発見例も年々増加していた.2003年以前に内視鏡治療を行った症例は20%であったが,最近10年では約40%まで増加し予後も改善傾向を示した.胃管癌の特徴を理解し,定期的な検査で早期発見することで,さらなる予後の改善につながると考えられた.
著者
浦辺粂子 著
出版者
東京演芸通信社
巻号頁・発行日
1925
著者
田村 賢哉 秦 那実 井上 洋希 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.370-375, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
14

「デジタルアーカイブ」の多様化により、これまで利用側であった非専門家である市民が積極的にアーカイブズに取り組む可能性を有している。そうした背景から本稿では、デジタルアーカイブにおける市民参加の新しいアプローチとして、ヒロシマ・アーカイブなどの「多元的デジタルアーカイブズ」の複数の活動の特徴を述べ、それらの有機的な制作環境の実態について言及した。そうした実践からデジタルアーカイブの社会に及ぼす影響について考察を行い、デジタルアーカイブの新しい研究領域として「参加型デジタルアーカイブズ」を述べている。
著者
熊川 寿郎 森川 美絵 大夛賀 政昭 大口 達也 玉置 洋 松繁 卓哉
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.136-144, 2016 (Released:2017-05-18)
参考文献数
25

日本においては第二次世界大戦以前より年金保険及び医療保険制度が運営されてきたが,農業従事者や自営業者などのインフォーマルセクターの一部は未加入にあった.戦後の高度経済成長の中でインフォーマルセクターの問題を解消すべく,₁₉₆₁年に年金及び医療の国民皆保険を達成した.皆保険制度導入後の日本の歴史は,まさに高齢化対策の歴史と重なるものである. 日本は介護保険制度導入後も,超高齢社会のニーズにより適うためにケアの統合とプライマリケア・地域医療の強化を図っており,2₀₁₄年には「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立した.この法律は可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している.また,老年学及び老年医学の分野においてFrailty(フレイル)の概念が重要になってきている.Frailty(フレイル)とは高齢期によく見られる症候群であり,転倒,生活機能障害,入院,死亡などの転帰に陥りやすい状態である.Fraily(フレイル)を経て要介護状態になる高齢者が多く,その対策は地域包括ケアシステムの新たな重要課題である.厚生労働省は2₀₁₆年度より高齢者のフレイル対策を新たに実施する. 地域包括ケアシステムを構築し,各地域においてその質を向上させるためには,現在の地域資源のみならず,環境の変化により今後生まれてくる未来の地域資源をも戦略的に活用することが非常に重要になる.また同時に,地域資源の情報と実際のケアを結びつけるためのコーディネート機能の強化も必要となる.地域社会処方箋は,地域包括ケアシステムにおける非専門的サービスと専門的サービスを繋げる戦略的マネジメントツールである.同時にそのツールを活用することにより,地域資源のコーディネート機能を強化することができる.
著者
Takahiro Tabuchi Sho Fujihara Tomohiro Shinozaki Hiroyuki Fukuhara
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
pp.JE20170163, (Released:2018-05-19)
参考文献数
38
被引用文献数
11

Background: Our objective in this study was to find determinants of high-school dropout in a deprived area of Japan using longitudinal data, including socio-demographic and junior high school-period information.Methods: We followed 695 students who graduated the junior high school located in a deprived area of Japan between 2002 and 2010 for 3 years after graduation (614 students: follow-up rate, 88.3%). Multivariable log-binomial regression models were used to calculate the prevalence ratios (PRs) for high-school dropout, using multiple imputation (MI) to account for non-response at follow-up.Results: The MI model estimated that 18.7% of students dropped out of high school in approximately 3 years. In the covariates-adjusted model, three factors were significantly associated with high-school dropout: ≥10 days of tardy arrival in junior high school (PR 6.44; 95% confidence interval [CI], 1.69–24.6 for “10–29 days of tardy arrival” and PR 8.01; 95% CI, 2.05–31.3 for “≥30 days of tardy arrival” compared with “0 day of tardy arrival”), daily smoking (PR 2.01; 95% CI, 1.41–2.86) and severe problems, such as abuse and neglect (PR 1.66; 95% CI, 1.16–2.39). Among students with ≥30 days of tardy arrival in addition to daily smoking or experience of severe problems, ≥50% high-school dropout rates were observed.Conclusions: Three determinants of high-school dropout were found: smoking, tardy arrival, and experience of severe problems. These factors were correlated and should be treated as warning signs of complex behavioral and academic problems. Parents, educators, and policy makers should work together to implement effective strategies to prevent school dropout.
著者
長谷川 武夫 西口 利明 具 然和 筆谷 拓 松岡 巧 田丸 政男
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
鈴鹿医療科学技術大学紀要 (ISSN:13416472)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.169-175, 1998-03-30
被引用文献数
1

本研究は西洋医学に劣らぬ利点を持つ東洋医学を基礎にして制作した足の裏にあるツボを指圧刺激する装置により, 足の裏にあるツボを刺激して特定臓器(肝臓, 肺臓, 気管支, 胃等)の血流増加と血流増加に伴う体表温度の増加をサーモグラフィー装置によって確認した。装置は足を固定する装置と足のサイズに合わせた足裏の特定部位を任意の強さで指圧刺激可能なピストン部と指圧刺激部位にピストン部が任意に設定できる位置設定部, 及び刺激時間設定のタイマー部から成り立っている。刺激部位と臓器の関係はドイツ式足裏ゾーンを用いた。一定温度(22℃)の室内に被検者を1時間安静させて後, 指圧刺激を開始した。刺激開始後10分で顔面の温度が0.3-0.5℃上昇し, 更に5分後に刺激部位に相当する臓器に近い体表温度が0.3-0.6℃の上昇がサーモグラフィー装置で観測され臓器の血流増加が示唆された。この様な局所血流の増加は副交感神経を活性化し, 全身の血流改善に伴う全身状態の改善が期待できるため, 老人社会での自宅療養に本装置は役立つと考える。