著者
川口 喜三男 王思鴻
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.521-530, 1983-07-15

漢字四角号碼が中国語漢字入力の有力な手段として利用し得ることに着目し はじめに 四角号碼の数学的構造を明確にするため 四角号碼を伴う漢字の抽象的モデルー字形モデルという-を導入する.この字形モデルは一種の代数系として取り扱うことができ そこでは あらゆる漢字の集合は14の字形類に類別され 2種の並置演算と6種の包摂演算に関して閉じた系をつくる.このため すべてのより複雑な漢字はより単純な字または部首からこれらの演算を施すことによって得られると同時に その四角号碼もこれに伴い代数演算によって機械的に求められる.さらに 四角号碼と耕音を組み合わせた中国語漢字入力法として'声形法'を提案する.この声形法によれば 最大4文字(4打鍵)からなる漠字コードの入力によって目的の漢字は90%以上の確率で正しく選択されることが実際例をもって示される.
著者
辰巳 慎太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.44-67, 2007

本稿では東ティモールにおいて独立の是非を問う住民投票後の騒乱のさなかにおこった少女の連れ去りを事例として、少女が反独立派民兵の「性奴隷」の状態にあると訴える支援活動の言説と、「結婚」の文脈で説明する少女の家族、および共同体の理解の相違について考察する。従来の人類学は、略奪婚を集団間の結婚の一形態として記述し、共同体における儀礼的、社会的意味により関心を払ってきた。しかし結果として出来事の暴力性、当事者である女性の視点には注意が向けられなかった。他方、紛争下の性暴力の問題を訴える普遍的人権やフェミニズムの言説は、略奪婚も紛争下の性暴力の一形態として取り上げるようになった。しかしながらそうした言説の持つ普遍主義的性格は、当事者である女性の経験の多様性を奪っている側面もみられる。このような略奪婚をめぐるグローバルな言説とローカルな規範双方における当事者である女性の視点の不在は、近年の研究で指摘され、当事者の視点に主眼をおくことの重要性が指摘されるようになった。本稿の事例では、当事者である少女自身が新聞報道を通じて誘拐の事実を否定し、結婚の意思を表明していた。本稿ではこの当事者からの拒絶に対する人権活動家、家族、共同体それぞれの反応に焦点をあてることによって、この出来事をめぐる「和解」の認識論的問題について考察を試みる。この考察によって、暴力をめぐるグローバルな言説と共同体や当事者の論理の相違は、「他者」が受けた痛みに主眼を置く普遍的立場と、「自己」が受けた痛みをどのように解決するかという「和解」の論理にあることを主張する。この議論を通じで、出来事の暴力性を抹消することなく、かつ当事者のエージェンシーをも認めうる民俗誌的記述の可能性を探る。
著者
末石 智大 長谷川 圭介 奥村 光平 奥 寛雅 篠田 裕之 石川 正俊
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.173-183, 2014-06-30 (Released:2017-02-01)
被引用文献数
1

In this paper, we propose an image and tactile presentation system for quickly moving objects, high-speed dynamic information environment, and a calibration method between a camera and Airborne Ultrasound Tactile Display(AUTD), which can present tactile sensation noncontactly as focused ultrasound. We realize one example of high-speed dynamic information environment that even if an object is moving, we can use the object as a tool for human interfaces without delay by combining a high-speed gaze controller by rotational mirrors. An accuracy of position, however, is not sufficient against difference threshold between images and tactile sensation because of mainly error of position between AUTD and camera. We calibrate the AUTD-camera system by visualizing the invisible focal position using Frustrated Total Internal Reflection(FTIR). Experimental results show that estimation accuracy is better than the threshold.
著者
小野 佐和子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.18-23, 1987-03-31
被引用文献数
1 2

摂津池田稲束家の別荘不蔵亭の成立の事情とそこでの宝暦・天明期の生活を明らかにした。その結果、不蔵亭は、稲束家の経済力の上昇期に、その社会的地位の確立をめざして設けられ、社交・接客・交際の場として、あるいは、家族のレクリエーションの場として使われたこと、その背景に、池田の富裕層の間にみられた、別荘で趣味の生活を楽しむ伝統が存在したことを認めた。
著者
高橋 亜佑美 古株 慎一 見坐地 一人
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-36, 2011

自動車の走行状態における高周波領域の振動,騒音を解析する手法として,統計的エネルギー解析手法(SEA法)が最近用いられるようになったが,解析精度に課題があった.そこで筆者らはSEA法の解析精度向上を目的とした手法として,ハイブリッドSEA法を提示し,実車の車室内音響解析に対する有効性を報告する.
著者
阿部 直人 市原 裕之
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.563-568, 2000
被引用文献数
6

This paper deals with an iterative approach of closed-loop identification and IMC (internal model control) design for input time delay systems. IMC is one of simple design methods for systems with time delay, however, IMC requires system parameters exactly. In this paper, a joint design method of closed-loop identification and IMC structure for input time delay systems is proposed. The control purpose, which is similar to the windsurfer approach, is to achieve the increase in the bandwidth of the closed-loop system. A multiplicative uncertainty of input time delay systems becomes smaller, when an IMC filter time constant is chosen smaller. A simulation example is shown to illustrate these results.
著者
D. L. Chambless T. H. Ollendick
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.81-105, 2005-04-25 (Released:2017-06-28)

アメリカ合衆国における、証拠に基づく心理療法(evidence-based psychology)の実践を増加させようとする努力の結果、経験的に支持された心理的介入についての情報を明らかにし、同定し、普及させるための特別委員会が組織されるに至った。この論文ではアメリカ合衆国やイギリスなどにおける、経験的に支持された処遇(empirically supported treatment, EST)を展望した特別委員会や他のグループの活動成果と、ESTとして同定された処遇のリストを要約して示すことにする。研究方法論や、外的妥当性や、研究の有用性、そしてEST展望過程の信頼性と透明性を含めた、ESTの同定と普及をめぐる論争についても、展望することにする。
著者
三浦 知之 森 和也
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.47-63, 2008-01

宮崎港の北に位置する9.6haの一ツ葉入り江に出現する鳥類について、これまで1年間の調査による出現種の結果を報告したが、本報では出現鳥類の季節的消長と摂餌生態を報告するとともに、入り江を繁殖地とするコアジサシの営巣の状況と営巣地保全に関する考察をおこなった。2002年から2007年まで、一ツ葉入り江において22科60種の鳥類の飛来が記録され、環境庁レッドデータブックで絶滅危惧I類CRのクロツラヘラサギ、絶滅危惧II類VUのズグロカモメ、コアジサシ、セイタカシギ、アカアシシギ、ホウロクシギおよび準絶滅危惧NTチュウサギ、ミサゴ、カラシラサギが確認された。同記載種であるコアジサシは、2002年、2004年、2006年および2007年に営巣した。留鳥はチドリ科のシロチドリ、サギ科のコサギ、ダイサギ、アオサギおよびカラス科のハシボソガラス、シギ科のイソシギ、カワセミ科のカワセミ、タカ科のミサゴおよびサギ科のアマサギであった。他に非湿地性鳥類10種も出現した。シロチドリは入り江の砂嘴部で繁殖した。夏鳥としてはカモメ科のコアジサシ、アジサシ、クロハラアジサシ、ハジロクロハラアジサシおよびサギ科のササゴイの5種であった。冬鳥は、ガンカモ科のマガモを含む12種が記録された。旅鳥はシギ科のハマシギを含む18種が記録された。これらの鳥類に関して、糞あるいはペリットを排出直後に採取し、餌生物の分析を行った。特にシギ類は入り江の甲殻類や魚を良く捕食し、入り江で最も生息個体数の多いコメツキガニが糞やペリットに頻出した。コアジサシがほぼ毎年営巣していたが、特に2006年と2007年の観察を元に一ツ葉入り江のコアジサシ繁殖地としての可能性を考察した。営巣の攪乱要因としては、台風や大雨による水位の上昇および人・車・飼育動物の侵入の影響が大きく、人的攪乱をできるだけさけることが肝心であるが、自然災害に対しては営巣地の数を増やすことが唯一の対応策となろう。営巣地に必要な立地条件としては見通しの良い荒れ地であることが重要であり、草地化を防止し、砂利などを敷けば、一ツ葉入り江は数百規模の営巣が可能になると考える。
著者
Miles O. Fortner Paul A. Oakley Deed E. Harrison
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.266-270, 2018 (Released:2018-02-22)
参考文献数
41
被引用文献数
8

[Purpose] To present the case of the non-surgical restoration of cervical lordosis in a patient suffering from chronic whiplash syndrome including chronic neck pain and daily headaches resulting from previous whiplash. [Subject and Methods] A 31 year old female presented with a chief complaint of chronic neck pain and headaches for 12 years, correlating temporally with a sustained whiplash. These symptoms were not significantly relieved by previous chiropractic spinal manipulative therapy. The patient had cervical hypolordosis and was treated with Chiropractic BioPhysics® protocol including extension exercises, manual adjustments and cervical extension traction designed to increase the cervical lordosis. [Results] The patient received 30 treatments over approximately 5-months. Upon re-assessment, there was a significant increase in global C2–C7 lordosis, corresponding with the reduction in neck pain and headaches. [Conclusion] This case adds to the accumulating evidence that restoring lordosis may be key in treating chronic whiplash syndrome. We suggest that patients presenting with neck pain and/or headaches with cervical hypolordosis be treated with a program of care that involves cervical extension traction methods to restore the normal cervical lordosis.
著者
五木ひろし著
出版者
ベストセラーズ
巻号頁・発行日
2013
著者
松林 賢司
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

①雪の輸送中の融解挙動の実験による評価:雪の長期輸送中の融解挙動は経済性の試算に必要なデータである為に独自の実験設備を製作してその評価を実施した。結果は良好で赤南半球の想定陸揚港であるシドニー付近まで輸送するのにかかる2週間の融解による損失は5%以内であり経済性の試算が可能な範囲であることが分かった。②雪資源の陸揚港と需要者の技術的、及び経済的な評価とその最適化:積出港の研究手法と同様に陸揚港としての適性が確認された3港に関してフィールド調査を実施した。バンコック港とシドニー港に関しては現地訪問の上、自治体、並びに前年度に予め協力先として選定された研究機関との意見交換を経て最適港候補の技術的、並びに経済的な評価(使用可能期間、雪置場面積、内陸への雪資源輸送利便性、陸揚設備、雪輸出に関する法規制、自治体の協力体制等)を実施した。本件に関しても関係する専門家として商社、船会社、港湾業務委託会社等に手続きと経済的な観点よりヒアリングを実施した。需要者に関しては大規模な雪資源の冷熱利用を前提として地域冷房施設である北海道ガスや新千歳空港も現地補門の上、調査研究した。並びに冷蔵倉庫を想定の上、陸揚港としての適性が高い地区の需要者候補を政府、及び自治体資料により調査の上、リストアップの後、有望先のフィールド調査を現地研究者の協力も得て実施した。
著者
鈴木 美枝 坂本 恵
出版者
釧路短期大学
雑誌
釧路短期大学紀要 (ISSN:03858456)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.29-38, 1997-02

釧路の女子フィギュアスケーターについて,栄養素等摂取状況・身体状況・生活リズム調査を行った。これらの調査から以下に示すような結果を得た。1)栄養素等摂取状況は,休暇中に比べ学期中の方が所要量を充たしている者が多かった。特に昼食での摂取量について多くの項目に両期間での差がみられた。両期間とも鉄・食物繊維・食品数が不足傾向にあり,脂肪エネルギー比が高く,穀類エネルギー比が低かった。2)食品群別摂取状況は,両期間を比較すると休暇中で菓子類・嗜好飲料・加工食品,学期中でいも・種実・豆・魚介・肉・乳・野菜・果実類が多く摂取されていた。特に昼食での摂取量について多くの項目に両期間での差がみられた。3)身体状況は,ローレル指数での評価が両期間ともに普通であり,学期中の体脂肪率は24.3±2.9%と女子スポーツ選手としては高めの値であった。4)生活リズムは,トレーニング時間,睡眠時間ともに休暇中の方が有意に高かった。夕食摂取時刻がトレーニング時刻に左右され,16時台〜22時台とかなりばらつきがみられた。