著者
山田 満
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-120, 1998

子どもたちがマスメディアを通して垣間見る国際社会は,サミットの議題となる先進諸国間の経済摩擦やそれをめぐる政治交渉であったりする。そして,発展途上国の貧困や飢餓の問題であったり,あるいは民族紛争や地域紛争を起因とする大量の難民流失や彼らの悲惨な光景であったり,さらには経済的目的のために移民する外国人労働者であったりする。そこで,錯綜化する現代国際社会の諸問題を本質的に理解する能力と解決への糸口を考察する能力を培う揚が求められている。現在の教育現場で推進されている国際理解教育はその意味で重要な役割を負っていると言えよう。しかしながら,日本の「国際理解教育」が予期する理念・目的だけでは現代的諸問題を理解するには不十分であると言わざるを得ない。本稿では国際関係論的視野から「国際理解」や「国際協力」を含めたグローバル教育の必要性を提起してみたい。
著者
Sachi WAKASA Yuri MORIGUCHI Hiroyuki MATSUZAKI Yukinori MATSUKURA
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
Kikan Chirigaku (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.69-76, 2008-09-10 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18
被引用文献数
2

寝覚ノ床は, 木曽川上流域の長野県木曽郡上松町にある露出花歯岩からなる地形である。本研究では, この寝覚ノ床の露出花崗岩表面の露出年代値を宇宙線生成核種10Beの濃度から推定した。また, 岩盤表面の強度をシュミットハンマーとエコーチップにより測定した。その結果, (1) 寝覚ノ床は約1.2万年前に露出したこと, (2) 河床からの比高が高いところほど風化がより進行していることから, 露出後に徐々に進行した下刻作用によって形成されたと考えられた。さらに, 岩盤表面の河床からの高度と露出年代値から得られた岩盤の平均侵食速度 (下刻速度) は, 1.7m/kyrであり, この値は周囲の平均隆起速度と調和的である。
著者
渡辺 和之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

ネパール国内には、チベット難民のためのキャンプが数カ所ある。その多くは、1959年、中国がチベットに侵攻し、大量の難民が押し寄せた際に作られたものである。ソルクンブー郡にも、1960年代にチャルサに難民キャンプが作られた。ここにはネパール政府の国営絨毯工場ができ、難民たちが絨毯を織っていた。1990年代に発表者がこの地域で調査していた際、定期市でチベット絨毯が売られていた。<BR> 本発表では、このチャルサのチベット絨毯の原料となる羊毛がどのような経路で運ばれ、製品となった絨毯がどのような経路で流通していったのか、2011年夏に調査した結果を報告する。結果的にチャルサの絨毯工場は1990年後半代に閉鎖されており、このキャンプでおこなわれていた絨毯産業の盛衰と当時の流通事情がわかった。<BR> チャルサの絨毯工場は、郡庁所在地のあるサレリから1時間半ほど山道を上った場所にある。難民キャンプのあるチャルサには現在では40-50人程度の人しか住んでいないが、最盛時には1000人以上のチベット人が住んでいたという。絨毯工場は難民保護の目的で設立されたものである。国営ではあるが、ネパール政府は土地を提供しただけで、実質的な経営は赤十字がおこなっていた。難民キャンプを設立する予算も、絨毯の原料となる羊毛や染料の調達、および製品である絨毯の販売もすべてスイスの赤十字が経営していた。羊毛はチベット産のものを用いていたが、これはコダリを経由し、自動車で運ばれてきたものをジリから運んできたという。染料もスイス製の化学染料を用いており、コンクリート製の近代的な染色小屋で染めていた。染色した糸を乾燥させる際も、はじめは薪を燃料に用いていたが、この地域の森林破壊につながることを危惧し、電気の乾燥機をスイス政府が用意した。できあがった製品はカトマンズに輸送し、よいものはドイツやスイスに輸出されていた。<BR> 一方で、難民キャンプで働く人々は羊毛を買ってきて自分の家で絨毯を織ることもあった。発表者が1990年代にナヤバザールの定期市でチャルサの絨毯といって売られているのを見たのは、この自家製の絨毯であった。工場で作る最高級品と比べると質は落ち、値段も工場で織った絨毯が1枚15000Rs(1990年代なかばには約3万円)したのに対し、家で織るものは1枚3000ルピー(約6千円)程度で買えた。この自家製の絨毯を織る機はthijaという。足踏み式の機であり、経糸の数は67本×2本であった。<BR> 現在では家で自家製の絨毯を織っている人はほとんどいなくなってしまい、数世帯残るのみだという。ナヤバザールの定期市で売っている絨毯のほとんどがカトマンズから持ってきたものである。サレリの役場に赴任した役人が実家に帰省する時にみやげとして「チャルサのチベット絨毯」を買ってゆくそうで、「向こう(カトマンズ)で作ったものを向こう(カトマンズ)に持ってゆくのだから、手間のかかることだ」と、地元ではいわれている。<BR> チャルサの工場が閉鎖されたのは1996年前後である。ネパール政府に払う税金(年30万ルピー)が払えなくなって工場を閉鎖したという。ちょうど1990年代は児童労働が問題になり、チベット絨毯の国際的な不買運動により、全国的に絨毯産業は衰退した頃と重なっていた。チャルサに住むチベット難民の多くはその後カトマンズに移住したという。<BR>
著者
遠藤 由美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.387-395, 1997-12-26 (Released:2010-07-16)
参考文献数
28
被引用文献数
6 10

Two studies investigated the tendency of people to enhance their close relationship and to efface oneself in front of their partners. In Study 1, 193 college students estimated the extent to which their best friendship is better than other's best friendship. Overall, they showed a strong tendency of enhancing own relationship; they rated their best friendship to be better than the average. Within the close relationship, however, they showed self-effacement; they rated their best friends, compared with themselves, in more positive way. In Study 2, 41 husband-wife couples attended as subjects. Again, they showed marital relationship-enhancement and relative self-effacement. Furthermore, their subjective happiness was mainely explained by own relationship enhancement. These results were discussed from several points.
著者
安井 真也
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.117-134, 2017-09-30 (Released:2017-10-11)
参考文献数
25

The Asama-Maekake volcano has been active for about 10,000 years. Although the many pyroclastic fall deposits, which mainly consist of pumice fall layers, are indicative of past sub-Plinian eruptions, the stratigraphy of the deposits over the entire history of the Asama-Maekake Volcano has not yet been revealed. This is because the pyroclastic fall deposits are distributed in the various directions from the crater. Moreover, the deposits predating the 12th century have a similar occurrence and petrography, making it difficult to correlate deposits among different localities. Therefore, little information is available for the older eruptions. The pyroclastic fall deposit in the direction not leeward of the dominant wind is focused in this study. A pyroclastic fall deposit called Miyota pumice (referred to as As-My hereafter), which is characteristically distributed in the southern direction from the crater, was targeted. The distribution of As-My has barely been mapped owing to the difficulty resulting from its poor exposure. The 14C ages of the samples of black humus soil immediately beneath As-My at two localities were dated to 5720±30yBP and 5530±30yBP. These ages are almost the same as those of the pyroclastic fall deposits As-UB (Ubagahara) and As-Kn (Kuni) distributed on the northern flank. Since the stratigraphic relation among these deposits is difficult to determine, it is not clear whether As-My, As-UB, and As-Kn are products from a single eruption or different eruptive activities. At least, it can be considered that multiple sub-Plinian eruptions occurred around 6,000 years ago. In addition, black humus soil and intercalating four pumice fall deposits including As-My at a major outcrop on the SSE flank slope (Locality M72) provided information on the activity over the last 8,000 years, back to the earliest stage of the volcano. The 14C ages of samples of black humus soil taken from immediately beneath the pumice fall deposits were 3,830±30yBP, 4,710±30yBP, 5,530±30yBP (just beneath As-My), and 7,470±30yBP. This is the first time that such sequential data concerning eruptive ages on the flank slope has been obtained. Black soil contains angular lithic fragments, which are similar to the ash grains from Vulcanian eruptions (e.g., the 2004 eruption). This suggests that Vulcanian eruptions have occurred between sub-Plinian eruptions since the early stage of the Asama-Maekake volcano. Such information from outcrops on the flank slopes with various directions is required to reconstruct the detailed eruptive history.
著者
松井 博 橋詰 源蔵 足立 吟也 塩川 二朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.6, pp.959-963, 1988-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

CaS:Ce 蛍光体に水蒸気を作用させたときの CaS:Ce の加水分解過程を調べた。CaS:Ce を 25℃, 40% RH の雰囲気中に置くと, CaS 結晶の表面は初期の段階ですでに SO4と SO3 が生成している。そこへ, まず水蒸気が CaS の構造中に OH の形で取り込まれ, つぎに分子状の水として入ってゆく。さらに CaS と水蒸気と接触しつづけると, あらたに Ca(OH)2 が生成し, これが空気中の二酸化炭素と反応して CaCO3 が生成する。加水分解の初期から CaS:Ce の表面にはすでに CaSO4, CaSO3 の存在が認められ, また試料に水が吸着しやすく その結果 Ca(OH)2 が生成した。生成した Ca(OH)2 は炭酸化が徐々に進行し CaCO3 も一部生成した。さらに, 25℃ の飽和水蒸気雰囲気にしたデシケーター中に放置すると, 一部, II・CaSO4 が生成するものの最終的には CaSO3・1/2H2O に変化した。これは試料を飽和水蒸気雰囲気にデシケーター中に放置した結果, 酸素が不足したため II・CaSO4 が生成しにくくなったものと思われる。
著者
松本 敏治
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.103-113, 2006-07-31 (Released:2017-07-28)

漢字の読み書きに困難を示し意味錯読が顕著にみられる青年の平仮名読みの処理特性を意味的処理・音韻的処理の側面から検討するため、2つの単語リスト読み課題と漢字読み判断実験を行った。本症例では、1)第一の単語リスト読み課題では、平仮名一文字・イラスト・有意味単語の読み速度は健常成人と差がなく、無意味語読みにおいてのみ顕著な遅れがみられた。2)第二の単語リスト読み課題では、意味性の高い単語は繰り返しにより読み速度が顕著に上昇した。3)漢字読み判断課題では、読みが正しくないとの判断の場合、漢字と意味的に関連した場合(町・むら)での反応が意味的に無関係な誤り読み(町・かめ)の場合に比べ反応時間が有意に長かった。また、本症例は本実験実施時、日常生活において漢字の読字書字困難は顕著であったが、平仮名読みの困難は認められなかった。これらの結果に基づいて、本症例の平仮名読み習得と障害機序を考察した。
著者
小林 信彦 Nobuhiko Kobayashi 桃山学院大学文学部
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
国際文化論集 = INTERCULTURAL STUDIES (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.32, pp.41-65, 2005-06-15

The Chinese, who favored the idea of physical rebirth, were disappointedwhen they found references to transmigration in Indian texts. They simply didnot wish their bodies to perish, and were indifferent about the continuity oftheir minds.In an Indian text entitled Bhaisajyagurusutra, it is said that someone's mindreturns [to the world] after staying in Hell for a while. Hsuan-chuang (玄奘)translated it as meaning someone's mind returing to his dead body. He convertedthe passage into a story of rebirth, and his translation was eagerly accepted by Chinese readers.

1 0 0 0 OA 胃腸の養生法

著者
杉本東造 述
出版者
国光印刷
巻号頁・発行日
1913
著者
佐野 歩 岩本 浩二 冨田 和秀 萩谷 英俊 滝澤 恵美 水上 昌文 門間 正彦 大賀 優 居村 茂幸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3046-A4P3046, 2010

【目的】<BR>近年、筋圧や筋力評価、筋肉や腱の損傷回復の効果判定など多くの分野に超音波診断装置が用いられてきており、有用といわれている。超音波診断装置による画像診断は、X線では評価しづらい軟骨・筋肉・腱・靱帯・神経を抽出することができ、MRIでは評価しづらい滑膜や関節液の貯留、筋肉や関節の動きを評価することが可能である。また、無侵襲で容易に操作が可能な検査技術である。肩関節や側腹部診断など多くの研究が行われている半面、測定結果への信頼性に対して懐疑的な意見も散見できる。超音波診断装置を用いた測定結果への信頼性研究は少なく、確立されているとは言いがたい現状である。本研究では、肩関節周囲筋のなかでも計測指標が簡単で、筋腹が皮下にて計測できる棘下筋を対象に、本研究では超音波診断装置を用いた筋厚測定の信頼性について検討したので報告する。<BR>【方法】<BR>計測にはHONDA ELECTRONICS社製CONVEX SCANNER HS-1500を用いた。プローブは、周波数7.5MHzのリニアプローブを使用し、全て同一の検査者が実施した。被験者は肩関節に痛みを有しない健常成人男性5名、左右10肩とした。被験者の平均年齢は26.4±4.2歳、平均身長は171.0±5.6cm、平均体重は65.4±5.6kg、平均BMIは22.4±2.4であった。棘下筋の計測部位は、棘下筋のみを計測できる部位として、棘下筋を皮下に直接計測可能な肩甲棘内側1/4、30mm尾側の筋腹にて計測した。計測肢位は椅子坐位で、体幹部は床に対し垂直となる中間位、上腕は体側につけ上腕長軸は床面と垂直に下垂し、肘関節90度屈曲位、肩関節内旋外旋中間位ならびに前腕回内回外中間位とする肢位で、前腕部の高さを調整したテーブルに乗せ、余計な筋収縮が入らずに安楽に配置できるように配慮した坐位姿勢を基本測定姿勢とした。測定は、肩関節中間位、肩関節最大外旋位、肩関節最大内旋位の3肢位である。肩甲骨へのプローブの接触角度は、肩甲骨の傾斜角に垂直とし、傾斜角度を左右ともに測定した。肩関節自動運動での内旋・外旋以外の代償運動が行われないように、第3者が肘関節部を固定して実施した。再現性の確認のために、測定は3日間に渡り実施し、代謝の影響を考慮して同一時間帯にて棘下筋厚を測定した。左右3肢位での棘下筋厚で得られたデータは、各肢位にて3回ずつ測定した際の平均計測値を級内相関係数ICC(1,3)を用いて検者内の信頼性について検討した。統計解析はSPSSを用い,一元配置分散分析により級内相関係数ICCを算出し検討した。<BR>【説明と同意】<BR>すべての被験者に対し、ヘルシンキ条約に基づき、書面にて研究内容を十分に説明し、同意を得た。<BR>【結果】<BR>画像測定での平均値は右中間位10.7±3.04mm、右内旋位9.3±2.32mm、右外旋位18.5±2.88mm、左中間位7.9±2.58mm、左内旋位7.2±1.82mm、左外旋位16.6±4.12mmであった。<BR>級内相関係数では、右中間位ICC=0.964、右内旋位ICC=0.845、右外旋位ICC=0.961、左中間位ICC=0.920、左内旋位ICC=0.958、左外旋位ICC=0.923となり、それぞれ高い信頼性を示した。<BR>【考察】<BR>今回の測定方法により、棘下筋厚の測定値において高い検者内信頼性が示された。測定肢位や検査方法に条件設定を細かく行ったことにより、再現性を高めることができた。今回高い再現性が示された理由として、棘下筋はランドマークがとりやすく、皮下より棘下筋のみの計測が可能なため、機器測定条件の設定が簡便であることがあげられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>今後は得られた信頼性を基に適応を拡大し、肩関節疾患を有する患者に対し、理学療法の効果を超音波診断装置を用いて検討して行きたい。<BR>

1 0 0 0 OA [源氏物語]

著者
[紫式部] [著]
出版者
八尾勘兵衛
巻号頁・発行日
vol.[25], 1654
著者
常塚 宣男 本多 桂 竹内 一雄 中村 康孝 蒲田 敏文 清水 淳三
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.167-171, 1997
参考文献数
6
被引用文献数
2

止血困難な気道出血に対し, 高出力半導体(GaAlAs)レーザーを用いることにより止血し得た症例を経験したので報告する。症例は85歳男性, 食事中に突然新鮮血を吐き, 意識不明状態で救急車にて搬送された。二次救命処置後, 気管内挿管チューブから血性痰が吸引されたが, 緊急上部消化管内視鏡検査でDieulafoy潰瘍からの出血を認めたため吐血の誤嚥と考えられた。しかし胸部大動脈瘤の病歴, および血痰の持続から, 気道出血の可能性を考え気管支内視鏡検査を施行した。気管および左中間幹に出血源を認めたためエピネフリン散布, トロンビン散布, バルーンカテーテルによる圧迫を5日, 計10回にわたり試みたが止血は不十分であった。今回, この気道出血に対し, 高出力半導体(GaAlAs)レーザーシステム(DIOMED 25, OLYMPUS)を使用し, 経内視鏡的に止血に成功し得た。
著者
浜 日出夫
出版者
筑波社会学会
雑誌
年報筑波社会学 (ISSN:09163336)
巻号頁・発行日
no.7, pp.55-74, 1996-02
著者
宮崎県編
出版者
宮崎県
巻号頁・発行日
1997

1 0 0 0 日南市史

著者
日南市史編さん委員会編集
出版者
日南市
巻号頁・発行日
1978