著者
許 鳳浩 阿部 哲朗 鈴木 信孝 太田 富久 川端 克司
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-8, 2017

シイタケ菌糸体抽出物は癌化学療法との併用時に,患者のQOLを維持・改善することが報告されている.本研究では,様々な治療背景および様々なステージのがん患者のQOLに及ぼすシイタケ菌糸体抽出物の影響を検討した.16施設で73症例を対象にシイタケ菌糸体抽出物を4週間(1,200 mg/day)連日経口摂取させ,摂取前後のQOLをEORTC-QLQ-C30調査票でスコア化した.シイタケ菌糸体抽出物摂取後のQOLスコアは被験者全体では,摂取前スコアに比べ,心理的,疲労スコアで有意に改善した.特にステージ3,4の被験者では,総体的,身体的スコアの改善も観察された.シイタケ菌糸体抽出物の経口摂取の併用は,進行性がん患者のQOLを改善することが示唆された.
著者
内野 博之 長島 史明 小林 賢礼 長倉 知輝 藤田 陽介 荻原 幸彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.457-474, 2017-07-15 (Released:2017-08-26)
参考文献数
74
被引用文献数
2

脳保護の主な目的は,術中・術後に脳の機能を保護することである.日々の臨床では,心肺バイパス手術,頚動脈内膜切除術(CEA),くも膜下出血の脳動脈瘤に対するクリッピング,脳卒中,外傷性脳損傷,心停止後症候群(PCAS)等々の管理に対しての注意を要する.われわれの管理が適切でない場合,患者の予後に悪影響を及ぼすことになる.これらの一次的な病態生理の類似性は,一過性の脳虚血を示すことである.神経集中治療の目的は,初期の病態生理に伴う脳損傷の進行を防ぐことである.急性期の脳保護を行うには,①心肺蘇生の後に早急に脳血流を回復することと②脳障害の進行を防ぐことである.心停止から蘇生される患者治療の主な目標は,心停止後症候群(PCAS)の予防である.現在,院外心停止患者や周産期脳虚血に対する低体温療法が神経学的予後を改善するというエビデンスが得られて来ている.本稿では,神経麻酔および神経集中治療における脳保護に焦点を当てて述べるとともに,麻酔薬の神経保護作用および神経毒性作用のメカニズムについても議論したい.
著者
加治 正行
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.417-423, 2005 (Released:2006-02-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

小児にとって, 妊娠中の母親の喫煙および家庭内での受動喫煙による健康被害は深刻な問題である。妊娠中の母親の喫煙・受動喫煙, 出生後の乳幼児の受動喫煙は, いずれも乳幼児突然死症候群の危険因子である。日常的に受動喫煙にさらされている小児は, 気管や気管支粘膜の繊毛運動が障害されて気道の炎症を生じやすく, 気道過敏性も亢進するため, 気管支喘息, 上下気道炎などの呼吸器疾患に罹患する危険性が高くなる。受動喫煙によって小児の呼吸機能が低下するとの報告が多数あり, 全身麻酔時のトラブル発生率も高くなる。受動喫煙は小児の耳管粘膜の腫脹や繊毛運動の低下を起こし, 中耳炎の罹患率を増大させる。小児期の受動喫煙は, 後年肺癌発症の原因となる。近年わが国では未成年者の喫煙率が上昇している。喫煙の害は, 呼吸器疾患も含め成人でも小児でも基本的に同質であるが, 喫煙によって身体が受けるダメージは, 成人に比べて小児では著しく大きい。常習的に喫煙している小児に対しては禁煙治療が必要である。
著者
日野 泰雄 向井 一雄 水上 和也 森田 隼一
出版者
Japan Society of Traffic Engineers
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.B_18-B_25, 2015

少子高齢化と同時に人口減少が進む中、賑わいづくりもまた、まちづくりの重要な要素となっており、そのためには、特に高齢者を中心に外出機会を提供するとともに、移動のしやすさや同伴移動の推奨などによる移動支援が求められていると考えられる。そこで、本研究では、このような高齢者にとって移動しやすいまちづくりの実現を念頭に、「日曜日同伴者割引」、「通院利便性の向上に合わせた路線バスのコミバス同一区間同一料金」、「高齢化率の高い地区でのフリー乗降サービス」を新たに導入し、利用実態と利用者や市民意識の調査を実施した。その結果、これらのサービスの有用性と今後の展開に向けた課題を抽出することができた。その成果は、今後の高齢化社会におけるまちづくりと一体となったバスサービスの実現の先例を示すものと考えられる。
著者
中居 寛明 宮本 九里矢 三澤 慧 今井 康仁 粟飯原 周二
出版者
日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.20160003-20160003, 2016

パイプラインにおける高速延性き裂伝播は大規模な破壊事故に繋がるために, その防止設計は非常に重要である. パイプラインにおける高速延性き裂の駆動力は, 内部ガス圧であるが, 軸方向のき裂伝播に伴いパイプが変形しながら開口するために, その開口からガスが漏出することで内部ガス圧の減圧がパイプ内で進行する. つまり, き裂伝播とその駆動力である内部ガス圧の減圧進行が同時に起きており, 減圧の進行速度がき裂伝播速度に対して速い場合は, き裂先端で内部ガス圧が低下し駆動力を失いき裂が停止し, 逆に, き裂伝播速度が減圧進行速度に対して速い場合は, き裂先端で内部ガス圧が保持され続けるために駆動力が提供され続けてき裂は停止することなく伝播し続ける. また, ガスの漏出量はパイプ開口の大小, つまりパイプ変形の度合いによって変化し, 結果的に内部ガス圧の減圧に影響を及ぼす. このように, パイプラインにおける高速延性き裂伝播は, 内部ガス圧の減圧, パイプ変形及びき裂伝播が互いに影響しあう複雑な現象であり, 流体構造破壊連成現象であると言える. <br>パイプラインにおける高速延性き裂の既存の評価手法として広く採用されているものがバテル2曲線法である. この手法では, き裂伝播抵抗曲線(き裂先端位置の圧力とき裂伝播速度の関係)と減圧曲線(圧力と減圧の進行速度の関係)の比較によって高速延性き裂伝播発生の有無を判定する. バテル2曲線法は, その簡便さによって広く用いられるに至ったが, パイプの変形及び各現象間の相互影響は考慮されてない. さらに, き裂伝播抵抗曲線は実験的に定式化されており, 実験式を得るためには非常に高額な実大パイプラインバースト試験を複数回実施する必要があり, 実験式の適用性を広げるのは経済的に困難となる場合が想定される. また, 有限要素法に基いた詳細な三次元の解析手法も提案されてきたが, それらはパイプラインの設計ツールとしては用いられていないのが現状である. その理由としては下記の二点が挙げられる. まず, 非常に複雑な流体構造破壊連成現象を精度よく記述することが困難であることが挙げられる. 特に, き裂伝播条件については未だ不明な点が多く残っているため, 連成現象を考慮し, かつ, ガスの減圧及びパイプの変形を精緻に記述できているものの, き裂伝播条件の記述における精度不足が全体の精度のボトルネックとなっている. 次に, 三次元有限要素解析の特質上, , 計算に莫大な時間を要するために, 複数回の計算を要する高速延性破壊防止設計に不向きであることが挙げられる. <br>以上の背景より本研究では, 連成現象を考慮しつつ可能な限り簡潔な流体構造破壊連成一次元モデルを構築した. 本モデルの特徴を次に示す. <br>(1) き裂開口からのガス漏出を考慮してパイプ内のガス減圧を定式化し, 一次元のガス減圧モデルを構築した. <br>(2) パイプ断面の変形形状を小径アルミバーストテストの計測結果より一つの変数で定式化し, それに基づいて一次元のパイプ変形モデルを構築した. また, パイプが地中にある場合の変形抑制効果を付加質量を用いて定式化した. <br>(3) き裂が微小伝播する際に定常伝播すると仮定し, き裂の伝播条件を動的エネルギー平衡条件より定式化した. <br>(4) 一次元で定式化されたガス減圧モデル及びパイプ変形モデルは有限差分法に基いており, き裂伝播条件と合わせて時間ステップを刻みながら順に解くことで各現象間の連成現象が考慮された解を得ることができる. <br>(5) 内部ガスとして天然ガスや炭酸ガス等の混合気体及び単相気体を幅広く扱うことが可能であることに加えて, いかなる鋼管の機械特性及び形状も扱える適用範囲の広い数値モデルである. また, 本モデルは, フルスケールバーストテストの解析時間が2~3時間と非常に短いために, 多くの計算数を要するパイプラインデザインのための数値ツールとして使用されることが今後期待される. <br>本報では, 本モデルの詳細な定式化及び計算例を記述している. 次報において, 本モデルの妥当性検証及びパイプラインにおける高速延性き裂伝播の影響因子解析を実施する.
著者
豊原国周 筆
出版者
植木林之助
巻号頁・発行日
vol.3, 1877
著者
坂上 敏彦 藤原 盛光 野口 静雄 中田 文雄 柘植 孝
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.127-128, 2004

地下空洞調査は、空洞内部の空洞の映像と空間の広がりを把握することが要求される。ただし、地下空洞は防空壕跡地など、現在は閉鎖されているものが多く、坑口や坑道の一部が閉鎖されていることが多く、空洞内部の調査には特殊な装置が必要となる。また、照明や水没空洞など、さまざまな現地状況に耐えうる機器の開発が必要となる。ここでは、空洞ビデオカメラ、レーザーレーダー、音響測深探査、坑内写真撮影装置、スネークアイ(挿入型ビデオレーザーカメラ)などの、地下空洞調査に特化した調査機器の開発状況と、その適用性について事例を交えて紹介する。
著者
Barak Zafrir Ayman Jubran Gil Lavie David A. Halon Moshe Y. Flugelman Chen Shapira
出版者
日本循環器学会
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-17-0392, (Released:2017-07-12)
参考文献数
26
被引用文献数
8

Background:Familial hypercholesterolemia (FH) is associated with premature atherosclerotic cardiovascular disease (ASCVD). The introduction of potent therapeutic agents underlies the importance of improving clinical diagnosis and treatment gaps in FH.Methods and Results:A regional database of 1,690 adult patients with high-probability FH based on age-dependent peak-low-density lipoprotein cholesterol (LDL-C) cut-offs and exclusion of secondary causes of severe hypercholesterolemia, was examined to explore the clinical manifestations and current needs in the management of ASCVD, which was present in 248 patients (15%), of whom 83% had coronary artery disease (CAD); 19%, stroke; and 13%, peripheral artery disease. ASCVD was associated with male gender, higher peak LDL-C, lower high-density lipoprotein cholesterol (HDL-C), and traditional risk factor burden. Despite high-intensity statin (prescribed in 83% and combined with ezetimibe in 42%), attainment of LDL-C treatment goals was low, and associated with treatment intensity and drug adherence. Multivessel CAD (adjusted hazard ratios (HR), 3.05; 95% CI: 1.65–5.64), myocardial infarction, and the presence of ≥1 traditional risk factor (HR, 2.59; 95% CI: 1.42–4.71), were associated with repeat coronary revascularizations, in contrast with peak LDL-C >300 mg/dL (HR, 1.13; 95% CI: 0.66–1.91).Conclusions:Main manifestations of ASCVD in FH patients were premature, multivessel CAD with need for recurrent revascularization, associated with classical cardiovascular risk factors but not with peak LDL-C. In spite of intensive therapy with lipid-lowering agents, treatment gaps were significant, with low attainment of LDL-C treatment goals.
著者
川上 哲 馮 少孔 鍜治 義和
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.35-36, 2003

地表から数mの深度に防空壕が存在する可能性がある場合、その調査手法としては、地中レーダ探査が、コスト・作業能率から考えて、最も一般的である。しかし、地中レーダの反射記録からは、その空洞の上面からの反射が得られるだけで、その反射がどのような物性に対応しているかを特定することは難しい。そこで、多チャンネルによる表面波の測定を行い、地中レーダにより発見された異常反射体前後の表面波(レイリー波)の記録を取得し、調査結果との比較を行ってみた。その結果、多チャンネルによる表面波探査が空洞調査に対して有効な手法であることを確認した。
著者
高橋 和雄
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.219-234, 1995-12-31
参考文献数
7
被引用文献数
2

The heavy rain which swept over the Nagasaki districts on 23 July 1982,killed 299 persons and damaged so seriously to Nagasaki City and its vicinity. The local government created the committee to deliberate the reconstruction plan in Nagasaki districts. Voluntary organization for disaster prevention were formed to promote and make sure of evacuation of inhabitants by leadership of Nagasaki City. In the present work, present situations and problems of voluntary organizations for disaster prevention are investigated by questionnaire for the representative of the voluntary organizations. Information transmission, automatic warning equipment for debris flow, disaster prevention radio communication and disaster fighting drill are checked.
著者
奈良 信雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2523-2526, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
5
被引用文献数
4

国際基準に基づく医学教育の分野別認証評価制度が導入されつつある.その目的は,我が国の医学教育の質を保証し,国民の健康生活向上のために有能な医師を育成することにある.さらに,医学医療の国際化に対応する目的もある.医学教育質保証の観点から,学修成果基盤型教育の導入,診療参加型臨床実習の充実,統合型教育の実施,学生の自己学修促進などが課題となっている.
著者
鈴木 浩一 塩竃 裕三 久野 春彦 東 義則
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 = BUTSURI-TANSA Geophysical Exploration (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.515-526, 2007-12-01
参考文献数
10
被引用文献数
8 3

近年,山間部の地すべり斜面を対象とした降雨浸透水による地下水面の変動,産業廃棄物層内への降雨浸透水の挙動、地下水涵養試験時の涵養水の浸透、沿岸部での潮汐に伴う塩淡境界面の変動など, 様々な分野において電気探査法により地下水の流動状況をモニタリングする適用事例が増えている。しかし,従来の電気探査装置では未固結地盤中など流速の大きい地下水の挙動を3次元に展開した測線において数分程度の時間で測定することは困難であった。今回開発した電気探査装置は、最大240点の電位データを同時に受信することができ,アナログ系でのフーリエ変換処理により電位を計測し、高周波数(最大5kHz)の正弦波を送信する。例えば、120測点に対する二極法による全ての組み合わせのデータ(120×119=14280通り)を約5分間で測定することが可能である。本装置の性能を確認するため,当所構内にある陥没空洞箇所に塩水を注入中の比抵抗変化を連続的に測定した。陥没箇所を中心に60点の電極を1m間隔で配置した2測線を展開した。本空洞はローム層(下総層群常総粘土層に相当)内に掘削された旧防空壕が崩落したものと推測されている。測定は塩水を注入する直前より開始し,約2分半間隔で繰り替えし測定を行い,塩水の注入が完了した20分後に測定を終了した。塩化カルシウム溶液(比抵抗1.4&Omega;m)を110分かけて1000ℓを注水した。全測定回数は51回で,1回当たりの観測データ数は3540通りである。全計測データ(51回分)に対しインバージョンにより比抵抗断面を求め,塩水注入前の比抵抗断面を基準値とした各測定時の比抵抗変化率断面を求めた。その結果,塩水が埋没空洞部に徐々に浸透していく状況を連続的に変化する比抵抗断面として可視化することができた。本装置は,流速の大きい地下水挙動の3次元的なモニタリングに十分貢献できると考えられる。<br>