著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
50
被引用文献数
1 8

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.
著者
商 真哲 梅田 忠敬
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.414-419, 2010-10-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
17

近年,労働者のメンタルヘルス状況の悪化に伴い,うつ病をはじめとする精神障害によって休職する労働者が増加しているが,これは図書館においても例外ではない。このようなメンタルヘルスの問題は,職場に様々な影響を与えているが,中でも精神障害によって職場を離れていた職員が復職する際には,本人の負担だけではなく,対応する周囲の負担も考慮する必要があるため,大変な困難を伴う。図書館で働く職員をとりまく問題点は様々あるが,他の職場と同様に,段階的な職場復帰や,ストレス要因を把握し,最小限にするような対策を1つずつ地道に行っていくことが,精神障害から復職してくる職員を支援するために重要となる。
著者
森本 恵子 鷹股 亮 上山 敬司 木村 博子 吉田 謙一
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.マイルドな精神的ストレスであるケージ交換ストレス(CS)による血漿ノルエピネフリン(NE)増加反応は、雄ラットにのみ見られるという性差が存在し、これは昇圧反応の性差の原因と考えられる。このメカニズムとして、雄では一酸化窒素(NO)がNE増加を促進させることが示唆された。2.卵巣摘出ラットでもCSストレスによるNE増加反応が見られるが、エストロゲン補充により抑制される傾向があった。また、エストロゲン補充により安静時の血漿NO代謝産物(NOx)が増加する傾向があり、逆に、酸化ストレスマーカーである4-hydroxy-2-nonenalは低下した。3.エストロゲンの中枢神経系を介したストレス反応を緩和するメカニズムについて検討した。c-Fosタンパク質を神経細胞活性化の指標とし、各脳部位におけるCSストレスの影響とそれに対するエストロゲン補充の効果を免疫組織化学法を用いて測定した。その結果、CSストレスにより卵巣摘出ラットでは、外側中隔核、視床室傍核、弓状核、視床下部室傍核(PVN)、視床下部背内側核(DMD)、青斑核(LC)でc-Fos発現が有意に増加したが、正常雌では増加は見られなかった。しかし、卵巣摘出後にエストロゲン補充を行なうとPVN、DMD、LCではc-Fosの増加が抑制された。さらに、LCではストレスによるカテコラミン産生細胞の活性化が、エストロゲン補充により有意に抑制されることが判明した。同部位では、エストロゲン受容体αの存在が免疫染色で確認でき、エストロゲンの直接作用の可能性が示唆された。また、PVN小細胞領域では、エストロゲン補充はNO産生ニューロンのストレスによる活性化を促進することを見いだした。これはエストロゲンの抑制作用におけるNOを介したメカニズムを示唆している。以上の結果より、エストロゲンは末梢血管系においては酸化ストレス抑制作用によって、中枢神経系ではPVN、DMD及びLCの神経細胞に対する抑制作用によって、ストレス反応を緩和する可能性が示唆された。

1 0 0 0 もてへん男

著者
現代風俗研究会編
出版者
リブロポート
巻号頁・発行日
1994
著者
多和田 真太良
出版者
玉川大学芸術学部
雑誌
芸術研究 : 玉川大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18816517)
巻号頁・発行日
no.8, pp.29-43, 2016

「ハラキリ」という単語はどこでどのように流布していったのか。19世紀末から20世紀初頭にかけて隆盛を極めたジャポニズムの舞台芸術の中で注目されたのは、キリスト教の下では禁じられた「名誉の自死」という概念だった。しかし舞台で再現されるのは、川上音二郎一座がアメリカで実際に切腹の場面を演じてからである。それまで理解不能であるがゆえに滑稽に描かれることさえあった「ハラキリ」が、音二郎や貞奴によって実に劇的で凄惨な描写として演じられた。「ハラキリ」は自然主義演劇に飽き足りず、新しい表現を模索する20世紀演劇の理論家たちに強い影響を与えた。ベラスコは『蝶々夫人』の結末を自殺に書き換え、続く『神々の寵児』では切腹する武士を描いた。音二郎一座の演技は強烈なイメージを与えた一方で、ジャポニズム演劇に潜む多様性の芽を摘むことになったともいえる。以後の作品は「ハラキリ」のイメージを払しょくすることが困難になった。「ハラキリ」はもはや不可解な日本の風習というより、ジャポニズム演劇にエキゾチックな効果を与える一つの重要な表現として定着していった。
著者
長岡 真吾
出版者
富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会
雑誌
ヘルン研究 (ISSN:24328383)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.36-39, 2017-03

ラフカディオ・ハーン(1850-1904)の研究者である牧野陽子は『神々の国の首都』(平川祐弘訳)の「解説」のなかで、ハーンが日本人読者に受け入れられる理由について次のように述べている。「ハーンの叙述には、日本を見る目の暖かさと、外見ではなしにその奥の心までくみとる深い理解力がにじみでており、彼の描く明治日本の風物は魂の郷愁に似た懐かしさを読者に覚えさせ、そこには現代日本人の忘れかけた古き良き日本の姿があるといえる」(387)。しかし、日本からすれば異文化出身であるハーンが、なぜ日本人読者に「奥の心までくみとる深い理解力」があると感じさせるのであろうか。あるいは、そのように読者に感じさせるハーンの文章にはどのような特徴があるのだろうか。
著者
山下 諒 朴 炳宣 松下 光範
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.WII-D_1-11, 2017

<p>The purpose of this research is supporting information access based on the contents of comic books. To meet this purpose, it is necessary to obtain information related to the story and the characters of a comic. We propose a method to extract information from reviews on the Web by using term frequency-inversed document frequency (TFIDF) method and hierarchical Latent Dirichlet Allocation (hLDA) method, which intends to solve the problem. By using these methods, we build a prototype system for exploratory comic search. We conducted a user study to observe how a participant use the system. The user study showed that the system successfully supported the participants to find interesting unread comics.</p>
著者
北野 元生
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.207-222, 2017-03-01

俳人西東三鬼(以下、三鬼)のほぼ五千五百字からなる短編時代推理小説であり、湯治場の盲人の按摩の一人語りから成り立っている「《まげものスリラー》鼠小僧神がくし―按摩徳の市の話―(以下、「神がくし」)」については、鼠小僧の神がくしの顚末とその種明かしに一種の爽快さがある。また同じく推理小説に用いられる手法で一人称の語り手である按摩の德の市が最後になってやっと自分の正体を明かす語り方に、作者である三鬼なりの工夫が凝らされて興味深い。そして、何よりもこの小説が芥川龍之介の短編小説「鼠小僧次郎吉」(以下、「次郎吉」)を下敷きにして書かれた可能性があり、その辺りの検証がなされべきであると考えられる。本論は、「神がくし」と「次郎吉」における、とくに「物語行為」を比較検討して、両者の関連を明らかにすることを目的に論考を行ったものである。西東三鬼芥川龍之介短編時代推理小説鼠小僧信頼できない語り手