著者
山本 真也
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.145-160, 2011-03

チンパンジーはヒ卜に最も近縁な進化の隣人である。生物学的にも「ヒト科チンパンジー」と分類される。筆者は,このようなチンパンジーとヒトを比較することにより. 「こころ」の進化について明らかにすることを目指してきた。本論文では,比較認知科学研究者の立場からこれまでの研究を概観し,チンパンジーとヒトの共通点と相違点について論じてみたい。長い間ヒトに特有と考えられてきた行動や特性の多くはチンパンジーでもみられることが明らかとなってきた。道具使用や文化の存在などである。社会的知性にかんしても同様である。たとえば利他行動では,自分には即時的な利益がなくても,チンパンジーが同種他個体の手助けをすることが実証的に示された。しかし,ヒ卜との違いも指摘されている。ヒ卜では他人が困っているのを見ると自発的に助けようとする心理が働くこともあるが,チンパンジーではこの自発的な手助けが稀だった。相手の要求に応じて手助けする。これがチンパンジーの特徴だと言えるかもしれない。チンパンジーとヒ卜でこのような違いがみられる理由に,それぞれの社会や生息環境の違いがあげられる。それぞれの種がそれぞれの環境に適応して進化してきた。その種にみられない知性や能力は,たんにその種にとって不必要だっただけかもしれない。主に植物性食物を食べるチンパンジーは,基本的に自分の食べ物は自分ひとりで確保することができる。それに対し,動物性食物に頼るようになったヒトでは,協力して狩りをし,獲物を分配する必要があったと考えられる。このような違いが手助け行動の自発性の違いにも表れているのではないだろうか。どちらが優でどちらが劣だという問題ではない。種を比較することで,それぞれの特徴を浮き彫りにする。その結果,自己および他者のアイデンティティーを尊重することにつながればと願っている。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1234, pp.38-41, 2004-03-22

近畿地方で2つの会社を経営する多田和夫さん(仮名)は昨年、2回も法人税の更正処分と、青色申告の取り消し処分を受けた。多田社長が経営するのは、機械と電子機器の販売会社だが、それぞれの会社が1回ずつ処分を受けたわけではない。機械会社単独で1年に2度も処分を受けたのだ。
著者
菊地 一彦 中山 勘次郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.254-264, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

中学生は, 英語学習の中で特にリスニング活動に対して苦手意識を持つ傾向が強い。このため本研究では,“生きた”英語に接する機会を提供する外国映画 (ここでは英語話者の俳優によって会話される映画をさす) を, 教材として用いることが試みられた。外国映画は, リスニングする場面に魅力的な文脈を与え, また英語表現に対する様々な発見をもたらすことを通じて, 英語リスニングへの内発的興味や挑戦意欲を喚起し, 学習を促進すると予測された。実際の外国映画の一場面を視聴する条件の他, 同一内容を静止画とALTによる吹き替えで提示する条件, 日常場面での会話に置き換えてALTが演じる条件の3つの教材が比較された。その結果, 外国映画群は教材への興味や有能感が最も高かっただけでなく, 教材を用いた家庭学習にも自発的に取り組み, さらにリスニング得点も他の群より向上していた。これらの結果は,“生きた”英語に接する機会を提供し, 内発的興味を喚起する諸要因をも備えた外国映画を, リスニング教材として用いることの有効性を支持するものであった。
著者
鈴木孝知
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.607, pp.110-113, 2004-08-23
被引用文献数
3

業務遂行に伴って発生する膨大なデータの扱いが、ユーザー企業の悩みの種になっている。情報漏洩を防止したり事件発生時の説明責任を果たすには、データを長期間きちんと保管する必要があるからだ。そこで注目を集めているのが、「情報ライフサイクル管理(ILM)」と呼ぶ概念。
著者
中野 良明
巻号頁・発行日
2001-03

Supervisor:野中 郁次郎
著者
山本 竜大
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.214-228,259, 2003

本稿は,日本の国会議員本人やその事務所によるホームページ(HP)の開設要因の探求を目的とする。2000年末までに開設が確認された状況をもとに,社会的属性,選挙競争,公約の視点から全議員,衆議院小選挙区,最大党の自民党とHP開設率が最も高かった民主党を対象に分析した。社会的属性と選挙競争によるモデルでは,全体的に年齢と都市度,特定大学出身者,自民党の少数派閥所属者がHPを個人で開設する要因になっている。衆議院小選挙区では,都市度,自民党の特定派閥,民主党議員であった。公約モデルでは,IT関連,政治,農林漁業,憲法•司法制度が作用した。これらを総合した結果,HP開設に都市度とIT公約が影響した。自民党は政治キャリア,得票率差,ある私立大学出身者が作用した。民主党は公約で説明されず,年齢がマイナスに,政治キャリアがプラスになる特異性を示した。
著者
村井 源 山本 竜大 徃住 彰文
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-128, 2008
被引用文献数
1

複雑な人間関係を数理的に解析するために、近年ネットワーク解析が盛んに用いられるようになった。また、解析用のネットワークを構築するための基礎データとして、WWWのハイパーリンクが用いられるケースが増えてきている。本論文では政治家間の人間関係を示すネットワーク構造の構築に、ハイパーリンク関係を用いる妥当性を検討するため、日本の国会議員のWebページをデータとして用い、議員間のハイパーリンクと議員の名前のテキスト上での言及関係によって二種類のネットワークを構築した。また、得られたネットワークに対してネットワーク解析の手法中心性とクリーク分析の解析を適用し、結果を比較した。得られた結果より、言及関係によるネットワークは、集団における重要性を表す指標としての妥当性があり、ハイパーリンクによるネットワークでは派閥の分析が可能であることが分かった。現状として、大規模政党においては、比較的Webの利用は進んでいないが、今後政治領域でもWebの利用がより一般化することが期待される。このため、将来的にはより多様な関係性の計量的解析にWebデータが利用可能になると考えられる。
著者
高橋 覚 青木 茂樹
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.228-234, 2015 (Released:2016-12-21)
参考文献数
10

我々は原子核乾板から成るガンマ線望遠鏡を開発し,気球フライトによる宇宙ガンマ線観測計画(GRAINE計画:Gamma-Ray Astro Imager with Nucler Emulsion)を推進している.これまでに達成した成果を概観し,将来展望について述べる.
著者
遠田 諭
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.89-100, 2011-12

本研究では過敏型自己愛と誇大型自己愛のフラストレーション場面における言語的攻撃を中心とした、実際的な対人場面における言語表出の特徴について検討を行なうことを目的とし、大学生165名を対象に調査を行った。自己愛尺度とP-Fスタディの分析の結果、全体的な傾向として誇大性が高いことが他者非難的な言語表出に結びつきやすいことが示された。また、場面状況によって反応傾向に違いが見られ、特に検査提示場面に対して心理的な距離が大きい場合、誇大型が過敏型よりも表面上は攻撃的な言語表出をしないことが示された。