著者
西浦 定継 佐藤 栄治 大西 隆 木下 瑞夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.889-894, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

タイは80年代から目覚ましい経済成長を遂げてきている。1997年にアジアの金融危機により一時停滞したものの2000年代に入ってアジアの生産拠点として再び成長軌道を歩んでいる。首都バンコクには、外資の工場立地を起爆剤として人、物が集中し、大きく変容してきている、本研究では、バンコク大都市圏について、1988年から2008年の20年間の都市変容を調査分析、考察した。調査対象としては、過去3年代の総合計画においてサブセンターとして計画されている地区を抽出し、そこに立地する商業業務機能をカウントし、1988年、98年、08年のデータを総合的に分析し、その相対的関係より考察した。従来からの集積地は規模が縮小し、拠点的な役割を担ってきた集積地は姿を消し、中規模程度の集積地が広く分散する構造に変わってきている。今後は、衰退する集積地の再開発などが課題となる。
著者
柾木 貴之
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.125-141, 2012-03-01

「国語教育と英語教育の連携」に関してこれまでに紹介された資料で1980年代以前のものは、西尾・石橋(1967)と『英語教育』1977年1月号のわずか二点であった。その結果、1967~77年は「連携」の研究において「空白の10年」と考えざるを得ない状況であった。今回、行った文献調査では、1970年代の英語教育雑誌において「連携」の特集が何度も組まれ、盛んに「連携」の議論がなされていたことがわかった。その背景にあったのは第一に、英語教育における「標準週3時間」という授業時数の問題である。1970年代の英語教育は少ない授業時間にどう対処するか対応策を模索していたが、その一つには「言語教育」としての原点に立ち返り、母語の働きを見直すというものがあった。第二に、当時の国語教育は文章の内容面を重視しすぎることへの反省から、「言語そのもの」の指導を重視する「言語教育」を目指していた。以上の経緯から「言語教育」をスローガンとして、両教育をいかに結び付けるかという議論がなされたのだった。
著者
大須賀 節雄 冨山 哲男 上田 春康 西田 豊明
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.37-45, 1993-01-01

「AIマップ-AI研究のあり方」(Vol.7, No.5, pp.796-809に掲載)についていろいろな方から御質問やコメントをいただいた.筆者は「AIマップ」という名のもとに,現在行われている多くの研究がそのなかに要素研究として位置づけられるようなAI技術の体系(の一つ)を提案することを試みたわけであるが,その意図は,現在のAI研究のあり方に多少危惧ないしは疑問を持っており,筆者なりにその対案を示すことであった.今日,AI研究の多くは要素研究として行われ,傾向としてはますます理論的な側面が強くなってきた反面,これらの研究成果は必ずしも直接的に利用されにくくなっている.応用分野の人々からのAIへの関心は大きく,応用研究の必要性がいわれているが,応用研究というとともすると「特定の」応用問題として受け取られ,論文にはなりにくいと思われている.その結果,学会誌が難しいといわれているのが現状である.実際には現在行われている要素研究を現実の応用に結びつけるためには,この間に別の「普遍的な」方法論が必要であり,それを実現する情報技術が存在すべきである.AI研究者にそのことが気づかれておらず,したがってAI研究がバランス良く行われていないように見える.「AIマップ-AI研究のあり方」(以下,本文中では本稿と表記)では,体系化を通してそのことを述べたかったのであるが,表現が不十分であり,紙面の制約もあってこの意図が必ずしも理解されなかったかもしれない.いただいた質問も,体系化を議論するうえで必要最少限に留めた個々の要素研究に対する筆者の考え方に対するものが多かった.もちろん,体系化をにらんだうえでの要素研究のあり方に関するものもあり,このような体系化の研究をいかに進めるかという研究の進め方に関する質問もあった.この意味では,問題点を全般的にカバーしているといってもよいかもしれない.それらのなかで,重複を避けた最少限のご質問・コメントを選んで回答させていただいた.
著者
棚瀬 あずさ
出版者
現代文芸論研究室
雑誌
れにくさ
巻号頁・発行日
vol.4, pp.315-330, 2013-03-29

特集 ラテン文学
著者
藤田 薫 渡部 俊広 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.695-701, 2006-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

調査用トロール網によるズワイガ二類の資源量の推定精度を向上するために,水中ビデオカメラを用いてグランドロープ(GR)に対するズワイガ二類の行動を観察した。2000年と2001年の6月に宮城県沖から茨城県沖において行った合計10回の調査の映像記録から466個体のズワイガ二類の行動を解析した結果,94%が静止したままGRに遭遇した。ズワイガ二類はペンネソトや手綱によって網口へ駆集されることはないと推測した。入網しなかった個体はGRの下方から抜けた。ズワイガ二類の漁獲はGRに大きく影響される。
著者
GOMI Koh GOTOH Tetsuo
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
Applied entomology and zoology (ISSN:00036862)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.417-425, 1996-08-25
被引用文献数
29

The developmental success and the oviposition of the Kanzawa spider mite, Tetranychus kanzawai KISHIDA, on 44 species of plants were studied for four populations collected from tea, pear, hydrangea and kudzu vine. Of the plants tested, 14 were common hosts of the four populations. The tea plant was utilized only by the tea population, and the hydrangea plants only by the pear and hydrangea populations. These three populations could utilize the kerria plant, while the kudzu population could not. In intrapopulation crosses, all populations produced both female and male progeny. Inter population crosses among the three (tea, pear and hydrangea) populations were successful. However, female mites of the kudzu population were reproductively incompatible with males from all of the other populations. Thus, it was concluded that T. kanzawai consists of the tea-associated, the hydrangea-associated (pear and hydrangea), and the kerria-avoiding (kudzu) populations. In addition, the kudzu population was determined to differ in reproductive traits from the other populations.
著者
川原谷 浩 松田 英裕 松葉谷 治
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.48-55, 1999-03-15
被引用文献数
7 8

地すべりが活動する誘因の1つに地すべり崩積土中の間隙水圧の増加が挙げられる。間隙水圧の増加は集中豪雨や融雪水などに起因する場合が多く, 降雨 (雪) 水の地下への浸透や地下水との混合のプロセスを解明することは, 地すべりの防止や予知に重要な情報を提供することが期待される。本論文では様々な水の挙動を把握するために有効な追跡子である酸素・水素安定同位体比を用い, 降水が地下に浸透し涵養域に至るまでの過程を検討した。<br>調査地域として, 地質状況が把握され, 水抜き用集水井が数多く設置されている秋田県・谷地地すべりを選び, 集水井から排水される地下水や周辺の地表水の同位体比を測定した。その結果, 集水井ごとに岡位体比の変化幅がそれぞれ異なることが判明した。このことは降水が地下に浸透してからの地質状況や浸透距離 (時聞) を反映しているものと推定される。そこで降水の季節変動を利用したモデル計算で平均滞留時間を試算したところ, 短期間の地下水で2ヶ月程度, 長期間の地下水で1年程度で流入から排水に至ることが判明した。
著者
鈴木 温 鈴木 和佳奈 栗田 歩
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_375-I_385, 2015
被引用文献数
2

近年,我が国では大都市を中心に保育所待機児童の発生が問題視され,施設の拡充等による子育て支援体制の強化が求められている.保育所の需給ギャップと空間的ミスマッチを解決するため,保育所アクセシビリティに関する研究が行われてきた.しかし,いくつかの課題も残されていた.そこで,本研究では,それらの課題を解決するため,マッチング理論を応用した新たな保育所アクセシビリティ指標を提案し,名古屋市緑区を対象として,新たな保育所アクセシビリティを用いた分析を行った.その結果,より現実に近い入所選考プロセスを表現可能となり,保育所アクセシビリティの空間分布だけでなく,待機児童の発生を分析可能であることが確認できた.
著者
下敷領 須美子 宇都 弘美 佐々木 くみ子 井上 尚美 嶋田 紀膺子 藤野 敏則
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.171-179, 2006-04
被引用文献数
3 2

奄美群島は,南方文化の影響を受けつつ独自の文化的背景をもち,合計特殊出生率・第3子以上の出生割合が高率であるという特徴を有している。本稿の研究目的は奄美群島の子育て環境の地域特性について明らかにすることである。まず,母子保健事業と保育施策について実績値の分析を行い,さらに奄美群島全市町村の母子保健担当保健師と母親を対象に,子育て支援の実態と課題について聞き取り調査を実施した。その結果,以下の結論を得た。(1)母子保健事業の実態としては,28週以後の妊娠届出率が高いなどの課題をもつが母子保健推進員が整備活用されている。(2)保育所が整備され,待機児童は実質的に0である。(3)保育師からみた子育て環境の地域特性は,家族・親族近隣からの豊富な子育て支援,大らかな子育て観,「子は宝」という価値観などがあげられた。(4)母親からの聞き取り調査からも,子育てに関して地縁・血縁による支援を受けていることが明らかになり,その背景には受け手側も支援者になる支え合いが存在していた。(5)子育て中の一番の支援者は夫であったが,複数の支援者から臨機応変に支援を受けており,多くの母親が楽しみながら子育てをしていた。
著者
Takahashi Yoshio
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.38, no.437, pp.611-632, 1926-06-30

炭類ガ著明ナル吸着作用ヲ有スルコトハ甚ダ舊キ時代ヨリ知ラレタル事實ニシテ, 之レガ治療的應用ハ既ニ埃及時代ヨリ試ミラレタルガ如シ. 而シテ炭類ノ吸着作用ニ就テ, 科學的ニ藥物學的研究ヲ行ヒタルハWichowskiヲ以テ嚆矢トナス. 輓近丹村氏ハ血炭及ビ木炭ノ毒物吸着ニ關スル生物學的研究ヲ發表セリ. 余ハ摘出家兎腸管, 子宮及ビ蛙心ニ於テ, 骨炭ノ外, 白陶土, 滑石, 硫酸「バリウム」及ビ「アラビアゴム」ヲ吸着相トシ, 種々ノ毒物吸着作用ニ關スル生物學的研究ヲ行ヒ, 大要次ノ如キ結論ヲ得タリ. 物理學上吸着相トシテ知ラレタル骨炭, 白陶土, 滑石, 硫酸「バリウム」及ビ「アラビアゴム」ハ生物學的實驗ニ於テモ亦其吸着現象ニヨリ解毒作用ヲ呈スルヲ認メ, 且夫等吸着相ノ諸種毒物ニ對スル吸着ノ量的關係ヲ明ラカニスルコトヲ得タリ. 如上ノ諸吸着相ハ, 毒物ノ營養液中ニ溶解セルモノハ勿論, 既ニ臟器組織内ニ侵入セルモノヲモ尚良ク吸着脱取シテ其作用ヲ消失セシム. 而シテ其際吸着セラレ得ベキ毒物最大量ハ兩者ノ場合ニ於テ殆ンド差異ヲ呈セズ. 各吸着相ノ吸着能力ヲ比較スルニ, 骨炭ハ其力最モ顯著ニシテ白陶土, 滑石及ビ「アラビアゴム」ハ其力著シク劣リ, 硫酸「バリウム」ニ至リテハ其力微弱ニシテ骨炭ト比較ス可クモアラズ. 同一吸着相ニ吸着セラルル毒物ノ量ハ, 其種類ニヨリテ大差アルヲ認メタリ. 余ノ實驗成績ニ據レバ一定量ノ吸着相ニ吸着セラルル毒物量ハ, 濃度ヲ増スニ從ツテ比較的減少スルヲ見タリ. 之ハ物理學的實驗ト全ク一致スル所ナルガ, 例外トシテ「ビロカルビン」及ビ「ストロフアンチン」ハ之レニ反シテ濃度ヲ増セバ被吸着量ハ吸着相増加トノ比例以上ニ増加スルヲ認メタリ. 本實驗ニ於テ吸着作用ハ頗ル迅速ニ起ルヲ見, Freundlichノ凡テ吸着現象ハ極メテ迅速ニ現ハレ數秒ニシテ一定ノ平衡状態ニ達ス, ト云ヘル事實ニ一致スルヲ認メタリ. 即チ營養液中ニ第一次吸着相ヲ, 第二次毒物ヲ注加スルトキハ, 毒物ハ直チニ吸着セラレテ其作用ハ全ク表ハレザルカ, 或ハ現ハルルモ甚ダ微弱ニシテ直チニ正常ニ恢復スルヲ見ル. 之レニ反シ, 第一次毒物ヲ注加シ其作用ヲ臟器ニ及ボシタル後, 第二次吸着相ヲ加ヘ其毒物ヲ吸着脱取セシメテ臟器ノ官能ヲ恢復セシムルニハ, 毒物ノ種類ニヨリテ著シク時間的差異アルヲ見ル. 「ビロカルビン」「アドレナリン」及ビ「コカイン」等ニ對シテハ容易ニ其官能ヲ恢復セシメ得ルモ, 「ストロフアンチン」ノ如キ「デイギタリス」屬ノ通有性トシテ組織ト堅ク結合スル毒物ニ對シテハ, 臟器ノ官能ヲ恢復セシムルニ甚ダ長時間ヲ要スルヲ認メタリ. 實驗方法トシテ, 吸着相ノ器底ニ沈滯スルヲ防ギ可及的平等ニ營養液中ニ浮遊セシメンガ爲四本ノ通氣嘴管ト一個ノ攪拌器トヲ設ケタルガ, 甚好成績ヲ收メ得タリ. 上述各吸着相特ニ骨炭ノ如キ吸着作用顯著ナルモノハ, 解毒ヲ目的トスル治療的應用ニ向ツテ効果確實ナル可キハ勿論ナレドモ, 爾他ノ吸着相ノ如キ吸着能力比較的微弱ナルモノト雖モ, 之レヲ他ノ藥物ト併用スルニ際シテハ, 其作用ヲ減弱乃至遲延セシムル虞アルハ實地上看過ス可カラザル事實ナリト云フ可シ.
著者
高島 三幸
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.476, pp.52-54, 2013-12

夢屋 洋食事業部統括料理長 村田 圭氏「IJ(ichi-jyoji)」東京都中央区銀座1-6-14TEL03-3535-8899 東京・銀座のにぎやかな通りから路地に入ると、築70年以上の趣きある家屋が突然現れる。 ここは、都内にビストロや居酒屋など10店を展開する夢屋(東京・渋谷)が運…
著者
小久保 潤 伊藤 聡志 山田 芳文
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.115-122, 2012 (Released:2012-04-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1

圧縮センシングは,信号のスパース性を利用して,少数の信号データから画像を再生する手法である.MR画像は一般にスパース性を持たないため,スパース性を与える関数を導入する.スパース性導入関数には,ウェーブレット変換や空間差分などが多く利用されているが,我々はFREBAS変換を利用した方法について検討を行っている.圧縮センシングによる画像再生では多数回の反復処理を必要とするため,一般に膨大な計算コストを要し,実用上の障害となっている.そこで本研究では,PCに搭載されているGPUを汎用的な処理に使用する方法により,圧縮センシングによる画像再生の高速化を試みた.実験の結果,単一画像の再構成を1.3秒で行うことができ,CPU計算に比べて約9倍の高速化を達成することができた.
著者
朝比奈 諒 藤居 昭吾 山本 悦治
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.212-221, 2014 (Released:2014-08-05)
参考文献数
14

MRI画像シミュレータは,パルスシーケンスやハードウェア開発の効率向上に有用である.しかし,拡散強調画像に関しては計算量が膨大なため,ヒト脳サイズモデルを扱えるシミュレータは報告されていなかった.われわれは新規に提案した高速法を適用することで,年単位の計算時間を数時間にまで短縮した.一方で,シミュレータに対する性能向上への要求は高まる傾向にあり,計算時間の増大を招いている.そこでさらなる高速法として圧縮センシングをシミュレータに応用することを提案する.検討結果によれば,約30%のデータからでもシミュレータとしての動作に耐えられることが推定され,約3倍の高速化が見込まれた.応用例として,拡散強調画像撮像用MPGの振幅変動を想定し,得られる画像を評価した.その結果,データ利用率30%の圧縮センシングでも,MPGの振幅変動と画質劣化との関係を再現でき,開発したシミュレータが装置開発に有用であることが確認できた.
著者
伊藤 聡志 斉藤 文彦 荒井 博俊 山田 芳文
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.167-175, 2013 (Released:2013-07-27)
参考文献数
16

少数の観測信号から画像復元を行う圧縮センシングを MRIの撮像に応用する場合に,三次元撮像は信号の収集軌道をランダムに選択できる次元を二次元に設定できるため,二次元撮像に比べて圧縮率を高めることが期待できる.本研究では,スパース性を導入する関数に我々が提案する三次元 FREBAS変換を使用し,これを MRI三次元撮像の圧縮センシングに応用した.再生像の品質を二次元画像と比較した結果,信号収集率を同条件とした場合に三次元撮像の方が良質な画像が再生されることを確認した.また,圧縮センシングによる三次元の画像再生は膨大な計算コストを必要とすることから,GPUを利用した再構成処理の並列化を行い,画像再生の高速化を試みた.実験の結果,256×256×64画素の画像を 53秒で行うことができ,CPU計算の 807秒に比べて大幅な高速化を達成することができた.
著者
伊藤 聡志 原田 弘章 山田 芳文
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.123-131, 2014 (Released:2014-05-24)
参考文献数
15

MRIにおいて三次元的な関心領域を高速に撮像する方法に,二次元撮像を応用したマルチスライス撮像がある.このマルチスライス撮像は適切な信号収集軌道のもとで撮像を行うと,三次元空間におけるスパース性を利用した圧縮センシングを適用することができる.マルチスライス撮像に圧縮センシングを適用する場合にスライス間にあるスピン密度の連続性を利用し三次元像として再構成する場合と,スライスごとに独立に二次元再構成する場合とで再生誤差の比較を行った.信号収集比率を同条件として比較を行った結果,再構成に利用するスライス枚数が多いほど再生像に含まれる誤差が減少し,再生像の品質が向上することが示された.また,スライス方向に対し画像の輝度値変化が小さい画像ほど三次元再構成による誤差軽減効果が大きくなることが示された.さらに画像にスパース性を導入する関数比較では,三次元FREBAS変換は三次元ウェーブレット変換に比べ,再生誤差の少ない画像を再生することが明らかとなった.