著者
田村 典子 松尾 龍平 田中 俊夫 片岡 友美 広瀬 南斗 冨士本 八央 日置 佳之
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.231-237, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1

中国地方のニホンリスは環境省のレッドデータブックで絶滅のおそれがある地域個体群(LP)とされている.本研究では,生息情報の乏しい中国山地における本種の生息を知るために,363箇所のアカマツ林またはオニグルミの周辺で食痕調査を行った.このうち,52箇所で食痕が確認され,さらに14箇所でニホンリスが目撃された.しかし,経度133°30′以西で食痕確認箇所はきわめて少なく散発的で,絶滅の危険性が高いことが明らかになった.
著者
小笠原 みどり 松岡 淳夫
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_98-1_102, 1987-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
10

臨床で広く用いられているディスポーザブル注射針は,プラスチックフィルムと紙を使用したブリスター方式のものが大半である。 注射準備における無菌性への考慮は重要であるが,ディスポ針の開封方法には統一されたものがない。臨床において作業上,能率的で多く行われているのは,針基部を紙部分に押しつけて,つき破る方法で,指定場所からフィルムを剥す方法は,あまり行われていないようである。そこで,この開封方法と汚染との関係を明らかにする目的で,包装紙面に菌液塗布による汚染を施し,上述の二方法で開封したのち,取り出した注射針について無菌試験を行った。 実験成績は,つき破り法ではめくり法の約9倍の汚染率で,しかも包装汚染の菌濃度と相関をもって,汚染されることが明らかとなった。以上より,完全な無菌が要求される場合には,つき破り法で開封し針を取り出すことは危険である,という結論を得た。
著者
RITSUKO KUWANA RYUJI YAMAZAWA KIYOSHI ITO HIROMU TAKAMATSU
出版者
The Society for Antibacterial and Antifungal Agents, Japan
雑誌
Biocontrol Science (ISSN:13424815)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.143-151, 2022 (Released:2022-10-08)
参考文献数
27
被引用文献数
1

Bacillus cereus is an important foodborne pathogenic bacterium. Although several B. cereus strains have been isolated from the environment, the differences among these strains with respect to spore formation ability and cell morphology need clarification. In this study, a phylogenetic tree was constructed based on the 16S rRNA gene sequences of nine strains of B. cereus. Spore formation and morphology of these nine strains were compared using both phase-contrast and fluorescence microscopy to create an index of the designated sporulation stages. Additionally, to investigate the efficiency of heat-resistant spore formation. Phylogenetic analysis revealed that five strains (ATCC 14579T, NBRC 3457, NBRC 3514, NBRC 3836, and NBRC 13597) clustered together and the remaining four (ATCC 10987, NBRC 3003, NBRC 13494, and NBRC 13690) were genetically distinct from each other. Phase-contrast microscopy revealed significant differences in the sporulation stages among the nine strains. Furthermore, the efficiency of heat-resistant spore formation also differed, even among genetically related strains. In conclusion, a variety of cell morphologies during sporulation were observed among the nine B. cereus strains. We propose a designation of sporulation stages in B. cereus ATCC 14579T, which may be used as an index for evaluating the sporulation progress of B. cereus.
著者
中村 修也
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.57-78, 2013-12-01

663年の白村江の敗戦以後の日本の社会を、唐の占領政策のもとにいかに展開したかを描いた。従来の説では、唐による占領政策はなかったものとして、両国は戦争をしたにもかかわらず、友好関係を維持し、日本は唐にならって律令制を導入したと論じられてきた。これは戦争という現実から目をそむけた論に過ぎない。本論では、郭務悰という唐からの占領軍事司令官のもとで、いかに占領政策が行なわれたかを『日本書紀』を新たに解釈しなおすことで明らかにした。また、新羅の反唐政策によって、唐は半島・日本から撤退せざるをえなくなり、日本も唐の占領政策から脱することができたことを論じた。
著者
Ryuichi Koga Tsutomu Tsuchida Takema Fukatsu
出版者
JAPANESE SOCIETY OF APPLIED ENTOMOLOGY AND ZOOLOGY
雑誌
Applied Entomology and Zoology (ISSN:00036862)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.281-291, 2009-05-25 (Released:2009-06-09)
参考文献数
35
被引用文献数
58 128

Oligonucleotide-probed fluorescent in situ hybridization (FISH) targeting 16S rRNA is a powerful technique for detecting and characterizing bacterial cells in environmental samples without cultivation; however, general application of the technique to insect endosymbionts has been hindered by the strong autofluorescence frequently observed in insect tissues. Here we describe a protocol that markedly reduces autofluorescence of insect tissues by hydrogen peroxide (H2O2) treatment, whereby 16S rRNA of bacterial endosymbionts is kept in a FISH-detectable condition. Among various histological fixatives, Carnoy's solution was superior in that whole insects were successfully fixed and autofluorescence of insect tissues was suppressed in comparison with the widely used formaldehyde-based fixatives. Treatment with both alcoholic 6% H2O2 solution and aqueous 6% H2O2 solution markedly reduced autofluorescence of the fixed insect tissues, wherein the former kept 16S rRNA of bacterial endosymbiont in a FISH-detectable condition while the latter failed to do so. The protocol was applicable to endosymbionts of diverse insects such as aphids, lice and bat flies. The protocol was applicable not only to fresh insect samples but also to archival insect samples preserved in acetone for several years. We propose a general and robust protocol for quenching autofluorescence of insect tissues for FISH detection of bacterial endosymbionts, which is potentially applicable to endosymbionts of a wider range of organisms with considerable autofluorescence.

5 0 0 0 OA 貴族院要覽

出版者
貴族院事務局
巻号頁・発行日
vol.昭和21年12月増訂 丙, 1947
著者
金 木斗 哲 Yoon Hong-key
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2002年 人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
pp.000003, 2002 (Released:2002-11-15)

1991年にニュージーランド政府がユーロピアン以外にも移民の門戸を開いてから新たな生活スタイルを求める多くのアジアの人々が当地に渡っている。特に韓国人移民の増加は目を見張るところがある。現在韓国はニュージーランドの5番目の輸出国であり、イギリスを追い越す勢いで両国の経済関係は緊密になってきた。これに伴って韓国人移民も急速に増加し、1996年のセンサスでは総人口の0.35%に当たる12,657人もの韓国出身の住民が報告された。これは10年前の426人に比べ約30倍の増加であり、彼らはニュージーランドの多文化傾向に十分貢献できるまで成長している。また、ニュージーランドにおける最大の都市であるオークランドには約1万人以上の韓国人が住んでおり、オークランド総人口の約1%に上っている。彼らの居住地域を見ると、約6割がオークランド大都市圏のNorthshore地域に居住していると推定され、アジアからの移民グループの中でも最も地理的集中度が高い。 Yoon(1997)によると、韓国人移民の職業の種類は1992年の20から1997年の55と韓国人移民の増加に伴って多様化している。また、韓国人移民が経営する事業体の数も1992年の37から1997年の636へと1600%の増加を見せている。しかしながら、韓国人が経営する事業のほとんどは、ホスト社会の経済ネットワークに浸透できず、典型的なエスニック・ビジネスの段階に止まっている。つまり、韓国人の資本と経営スタイルで韓国人の従業員を雇い、主に韓国人を客にするものである。 では、ニュージーランドへ移民する韓国人はどのような人々で、なぜニュージーランドを移民先として選んだのか。ニュージーランドにおける韓国人移民はほぼ例外なく高学歴で中産階級のホワイト・カラー出身である。また、韓国経済が好況のピークに向かっていたときに祖国を離れた彼らは、子供の教育環境ときれいでゆとりある生活環境をもっとも重要な移住動機として挙げている。このような社会経済的属性や移民の動機は、低い社会経済的ステータスと経済的理由といった従来の韓国人移民とは明らかに異なっており、新しい韓国人ディアスポラを象徴するものと言える。このように異なる社会経済的背景と移住動機をもつニュージーランドにおける韓国人移民は、移住前に描いていたパラダイスとしてのニュージーランドのイメージと現実としてのニュージーランドでの生活の間でどのように妥協し生活を営んでいるのか。本報告ではニュージーランドにおける韓国人移民の動向を1996年度センサスの分析と現地での深層インタビューより明らかにする。 ニュージーランドにおける移民政策の転換はニュージーランドの実験と評される新自由主義改革の一環として1986年に行われた。それまでニュージーランドでは社会の安定(social fabric)という名分のもとに白人特にイギリスとアイランド出身を優遇する差別的な移民政策が厳格に維持されてきたが、1986年の移民法改正によって伝統的な特定出身国選好システムを廃止された。しかし、この改正では移民者に高い英語能力を要求するなど依然として差別的な要素が多く残され、期待された投資移民の増加はほとんど現れなかった。1986年の移民法改正が批判を浴びる中、ニュージーランド移民省は1991年に‘新しい移民者の個人的な貢献により多文化社会としてのニュージーランドを促す’ため、‘ポイント・システム’と呼ばれるより進んだ移民法改正に踏み出した。このポイント・システムの導入はアジアからの移民の増加に特に効果的であった。ニュージーランドの移民法は移民の数だけでなく、移民者の年齢、学歴、技術や経済状況をも巧みにコントロールしてきた。現在、ニュージーランドにおける韓国人移民の典型は3、40代で大学教育を受けた中産階級出身である。しかし、ニュージーランドにおける彼らの就業状況をみると、65%が失業ないし非就業人口であり、就業者のほとんども記念品店、レストラン、旅行代理店などのエスニック・ビジネスに従事している。これは移民社会の初期においては共通する現象であるが、韓国人移民の場合は言葉の壁以外にも文化的な違いによって主流社会への同化にほかの移民グループより困難を極めている。 ニュージーランド移民省長官は1998年に“移民政策の失敗は数万の高級労働力が彼らの専門分野で働く展望をなくす結果を招いた”と認めた。確かに数千の高級技術を持つ韓国人移民が失業或いは非就業状態にある。しかし、ニュージーランドにおける韓国人移民社会の歴史は浅く、主流社会に適応する十分な時間がなかったことを考慮すると、彼らのアイデンティティつまり、Koreanか, New Zealanderかあるいは Korean New Zealanderかは今まさに形成中であると考えられる。また、それは移民社会に存在する3つの力、同化、隔離, そしてディアスポラの相互作用にかかっている。
著者
島田 英昭
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.Suppl., pp.21-24, 2020-02-20 (Released:2020-03-23)
参考文献数
9

本研究は,教材の読解初期の短時間情報処理プロセスを対象に,挿絵を含む教材の版面率が動機づけに及ぼす影響を検討した.大学生20名を対象に,版面率と挿絵の有無を操作した6条件の防災教材を作成し,1種ずつ2秒間提示し,それぞれ動機づけと主観的わかりやすさの評価を求めた.その後,同じ教材を1種ずつ時間制限なく提示し,主観的情報量と主観的効率性の評価を求めた.その結果,挿絵があり,版面率が小さい教材において,動機づけ効果が大きく,主観的わかりやすさも大きいことが明らかになった.また,挿絵は文字に比べて主観的情報量の増分が小さく,挿絵がある教材では主観的効率性が高いことが明らかになった.
著者
小野田 亮介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.158-174, 2021-06-30 (Released:2021-07-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

本研究の目的は,文章産出において書き手が想定する仮想の読み手に着目し,(1)読み手に合わせた文章産出が困難化する原因を解明し,(2)読み手に合わせた文章産出を促す方法について考案することである。研究1では,中学校2年生の1学級に対して,教示した読み手を説得するための文章産出課題を実施し,文章産出時に想定した仮想の読み手の特徴を報告するように求めた。その結果,読み手を教示したにもかかわらず,読み手を漠然と想定していたり,教示と異なる読み手を想定したりする生徒が認められ,具体的に読み手を想定したと報告する生徒であっても,読み手に合わせた文章を産出しない事例が認められた。そこで研究2では,中学校1年生の2学級を対象とし,読み手の想定を求める「対照条件」と,読み手を記述して固定する「可視化条件」との間で,仮想の読み手の特徴や文章の比較を行った。その結果,対照条件に比べ,可視化条件ではより具体的に読み手が想定されており,文章内の情報量や文章の説得力も増加していた。一方,読み手を可視化していても,文章産出前後で読み手の情報が精緻化されたり,質的に変化したりする読み手情報の変動性も認められた。
著者
堀 潤之
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.163-177, 2012-04

This paper examines the history of the distribution and criticism of Jean-Luc Godard's films in Japan, covering half a century and concentrating on the years 1967–1971, when almost 16 of his films were released in succession. Today, we forget the fact that the discourse of Shigehiko Hasumi emerged at this time as a counterattack against the dominant critical trend that emphasized the political dimension of a film. I suggest that one of the consequences of this amnesia is the widespread acceptance in the years following the 1980s of a simple aesthetic view that it is sufficient to appreciate Godard's films as if they were music, seen particularly in the statements of several famous musicians. Finally, this paper advocates the necessity of a semantic exegesis of his films that lacks in the recent Japanese reception of Godard's oeuvre.
著者
小崎 雄大 木谷 庸二
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.472-473, 2018 (Released:2018-06-21)

日本国内で洋画作品のプロモーションが行われる際、製作国で展開された映画ポスター(本国版)が映画配給会社によって国内の市場へ向けた日本版デザインに再設計される。その事例として、アクションシーンの描かれていた本国版デザインが、ファミリードラマ要素を強調したビジュアルへと再設計された映画ポスター等が存在する。事実、このような大幅な再設計によって国内で高い成績を記録した作品も存在する一方、本国版のデザインを変更したために訴求の機会を損失している客層が存在していることも確かである。そこで彼らを含め、様々な客層に作品を効果的に訴求するために「フォーマットを統一したジャンル別ポスター」を提案する。本手法は、ジャンル別にデザインの異なる複数のポスターを制作し、客層別に訴求効果の高いポスターで作品を宣伝する手法である。またポスターの制作過程では、フォーマットが統一され、構図や色彩などビジュアルの一部に共通部分を残したデザインが全種類に施される。これにより作品のポスターとして統一性が生まれ、人々が様々なデザインのポスターに接触を重ねてもフォーマットが作品のイメージとして印象に残り、単純接触効果が保たれる。
著者
正林 大希 飯干 泰彦 西谷 暁子 宇治 公美子 山村 憲幸 藤井 仁 今里 光伸 金 浩敏 位藤 俊一 伊豆蔵 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1168-1172, 2015-12-20 (Released:2015-12-20)
参考文献数
20

小児の急性胃腸炎に伴う十二指腸穿孔は稀であり,病態も明らかではない.当疾患の経過中に低リン血症を呈した幼児例を経験した.症例は3 歳男児.発熱と嘔吐に続く血性嘔吐で来院した.超音波,CT 検査にて消化管穿孔が疑われて開腹し,十二指腸球部に穿孔を認め,大網充填術を施行した.術前5 日間嘔吐を繰り返して経口摂取不良であったため,術後末梢静脈栄養を開始した.胃腸炎の遷延があり,脱水,電解質異常をきたし,血清リン濃度が2.1 mg/dl と幼児としては低値となった.リン酸ナトリウム投与により正常化した.嘔吐の遷延する急性胃腸炎の幼児で,経口摂取不良が続く場合,リンの計測が重要である.また,リンの基準値は小児では高く,留意すべきである.小児の胃腸炎の多くは重篤な合併症を起こさずに回復するが,低栄養,脱水,リンを含めた電解質異常や十二指腸穿孔を引き起こし,生命にかかわる場合もあり注意を要する.