著者
早田 和弥
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学総合研究所紀要 = Proceedings of the Research institute of Sapporo Gakuin University (ISSN:21884897)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-40, 2015-03-31

統計的手法に拠り,標記短歌の音韻解析を行った結果を示す.解析対象は,本邦初の歌集である万葉集所収短歌(全4183首),並びに古今和歌集から始まり新続古今和歌集で完結した二十一代勅撰和歌集所収の短歌(全33692首)であり,延べ37875首に及ぶ.本研究の主たる目的は,先に提示された俳句に対する解析結果との比較を通して,短歌に固有な音韻規則の有無を明らかにすることにある.大規模統計解析に拠り,俳句と共通の音韻規則が短歌に対しても確認された.即ち,短歌一首を構成する任意の句尾間に於いて,同音回避現象が起こっていることが証明された.一方,句頭部の母音間では俳句とは異なる結果が得られた.俳句に於いては,句尾の場合とは対照的に,句頭音間には有意な連関は見出され無かったが,短歌に対しては句頭音の間にも同音回避が認められた.本解析結果は,俳諧の連歌に於ける禁制の一つである去り嫌い或いは嫌物,更には伝統的フランス詩法に於ける不調和音回避の法則を髣髴させる.
著者
治多 伸介 櫻井 雄二
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Special_Issue, pp.357-362, 2010-02-28 (Released:2011-03-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

The reclaimed wastewater quality in 34 treatment facilities of combined household wastewater for individual houses were investigated in the rural area in Ehime Prefecture, in Japan. The results showed that saline concentrations in the reclaimed wastewater were varied in each facility. Temporal and seasonal variations of the concentrations will be relatively small. Under the reclaimed wastewater reuse for gardens, the risks of Ca2+, Mg2+, Cl-, SO42- for plant growth will be low. However, the risk of high concentration of EC, Na+, K+ can lead some problem for plant growth or soil permeability. We should respond appropriately to the risks.
著者
谷口 ちさ 石山 恒貴
出版者
一般社団法人 日本キャリア・カウンセリング学会
雑誌
キャリア・カウンセリング研究 (ISSN:24364088)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.79-89, 2022-03-31 (Released:2022-08-19)
参考文献数
28

本稿では,組織を越えたデベロップメンタル・ネットワーク(DN)および支援者(メンター)に着目し,メンタリングへの参画動機とメンタリング・プロセスを通じて獲得した利益について,組織内外の違いを明らかにすることを目的とする。先行研究によれば,組織内DNにおけるメンターは,人の役に立ちたいという向社会的動機と,組織内で影響力を行使したいという動機からメンタリングに携わり,それを通じて自分の過去を再評価するという獲得利益が観察されていた。本稿では,組織を越えたDNにおいて,大学生のキャリア開発を目的としたメンタリングに参画する社会人メンターの参画動機と獲得利益を質的に調査した。結果として,メンターの組織を越えたDNへの参画動機は所属組織に対する閉塞感であり,大学生のキャリア開発支援への参画動機は向社会的動機であった。また,組織を越えたメンタリング・プロセスを通じて視野を広げるだけでなく,その学びを所属組織に還元する動きが明らかとなった。
著者
下岡 和也 徳久 良子 吉村 貴克 星野 博之 渡部 生聖
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-47, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
56
被引用文献数
2 8

高齢者の認知症や孤独感の軽減に貢献できる対話ロボット開発のため,回想法に基づく傾聴を行う音声対話システムの開発を行った.本システムは,ユーザ発話の音声認識結果に基づき,相槌をうったり,ユーザ発話を繰り返したり,ユーザ発話中の述語の不足格を尋ねたりする応答を生成する.さらに,感情推定結果に基づき,ユーザ発話に対して共感する応答を生成する.本システムの特徴は,音声認識結果に誤りが含まれることを前提とし,音声認識信頼度を考慮して応答を生成する点である.110 名の一般被験者に対する評価実験の結果,「印象深い旅行」を話題とした場合で,45.5% の被験者が 2 分以上対話を継続できた.また,システムの応答を主観的に評価した結果,約 77% のユーザ発話に対して対話を破綻させることなく応答生成ができた.さらに,被験者へのアンケートの結果,特に高齢の被験者から肯定的な主観評価結果が得られた.
著者
池口 明子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.14, pp.858-886, 2002-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
36
被引用文献数
2 4

本研究は,ベトナム・ハノイを対象として鮮魚流通における仲買人・露天商の商業活動を明らかにした.特に,近郊生産地における生産者-仲買人-露天商の取引ネットワークの形態を,仲買人の取引台帳を用いて養殖生産との関係から分析し,その形成条件を考察した.ハノイの鮮魚露天商は,ドイモイ(刷新)後に参入した近郊農村居住者およびハノイ居住者が多くを占める.ハノイ居住者は市内に立地する単一の卸売市場から仕入れ,主として海産魚を販売する.これに対し,近郊農村居住者は主として農村で採捕・生産される淡水魚介類の流通を担っている.仕入れには,ハノイへの経路上に位置する農村市場や,市内の卸売市場での仕入れのほか,産地仲買人を中心に形成される取引ネットワークを利用している.近郊農村における淡水魚養殖は,複数の魚種を組み合わせた複合的生産が常態である.その取引ネットワークは地縁をきっかけに,多様な生産形態と,都市および近郊の市場の発達に対応して形成されてきた.ハノイの鮮魚露天商の活動基盤は,販売地である都市の露天市場のみではなく,集魚圏内の都市近郊生産地の市場も含めて理解する必要がある.
著者
荒井 弘和 樋口 匡貴 伊藤 拓 中村 菜々子
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_251-3_255, 2022-07-01 (Released:2022-07-23)
参考文献数
6

This study examined perceptions of the Tokyo 2020 Games among ordinary citizens living in Tokyo, the host city of the Tokyo 2020 Games, in the immediate aftermath of the Tokyo 2020 Games. This study was a cross-sectional survey study conducted via the Internet. Participants were asked to choose from six options that best corresponded to their views on the postponement of the Tokyo 2020 Games. The results were as follows: “It should have been carried out as planned and on the same schedule” (implementation group), “It should have been carried out as planned without spectators or other measures to prevent infection” (no-spectators implementation group), “It should have been carried out as planned and postponed” (postponement group), “It should have been carried out without spectators or other measures to prevent infection and postponed” (no-spectators postponement group), “It should have been canceled” (canceled group), and “Others.” In conclusion, compared to April-June 2020, (1) the percentage of postponement group decreased by approximately one-third; (2) the percentage of no-spectators postponement group increased approximately tenfold. The significance of this study is that the data was collected immediately after the Tokyo 2020 Games, which was an unprecedented event.
著者
渡部 俊也 平井 祐理
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.19-31, 2020-12-01 (Released:2021-01-07)
参考文献数
7

データ政策を検討するうえで、基礎となるのが、データの価値をどうとらえるのか、どのようなデータに経済的な価値があるのかという考え方である。一般的にデジタルデータを多量に保有しているからといって、そのデータから利益を生み出せるとは限らず、多くの条件が整って初めて企業の利益や競争力につながり、産業競争力に結び付く。その要件を踏まえたデータの保護やデータ利活用のインセンティブシステムを設計することがデータ政策として重要となる。本稿ではそのような観点から、データについての経済的価値に着目して、質問票調査に基づく実証分析による検討結果を示し、あわせて具体的な事例として、機械学習に提供されるアノテーションデータにおける価値について考察を加えた。これらの結果をもとにデータの法的保護の在り方について検討した。
著者
矢野 育子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.9, pp.971-975, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

In Japan, each society has developed its own certification system for the pharmacy specialists in a specific area of pharmaceutical care. Since 2020, we have conducted research activities supported by a Grant-in-Aid for Scientific Research from the Ministry of Health, Labour and Welfare to assure the quality of pharmacy specialists similar as other medical professionals. We proposed three reform plans. First, we defined a pharmacist career path after obtaining a license by redefining the name of a qualified pharmacist: Step 1, Training-Certified Pharmacist; Step 2, Board-Certified Pharmacist; and Step 3, Pharmacy Specialist. Second, we proposed common external standards for the Pharmacy Specialist. Third, we proposed the need for third-party certification for pharmacy specialists. New reforms for the pharmacy specialists are required under the autonomy of pharmacists.

5 0 0 0 OA 小波お伽全集

著者
巌谷小波 著
出版者
小波お伽全集刊行会
巻号頁・発行日
vol.第4巻, 1930
著者
犬塚 幹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.5-9, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
20

【目的】血管迷走神経性失神 (vasovagal syncope ; VVS) は長時間の立位やストレスが誘因となり発症し, 自律神経調節の異常が関与するとされる. 小児のVVSは報告例が少ないため臨床像は不明な点が多く, 客観的基準を用いた診断も難しい. 今回, これらを明らかにするため検討を行った. 【方法】2005年4月から2018年3月までに当科を受診した小児のうち, 臨床症状からVVSが疑われた35例 (失神総数90回) を後方視的に検討した. 【結果】発症年齢は5~15歳 (中央値11歳) で, 女児は男児の約2倍認められた. 失神した場所は60回 (67%) が学校内で, 54回 (60%) は式典や音楽の授業など長時間の立位でみられた. 11例 (31%) は失神時にけいれんがみられ, 7例 (20%) は転倒により受傷していた. 検査でVVSと確定できた例は起立試験35例中9例, ティルト試験 (head-up tilt test ; HUT) 8例中5例で計14例 (40%) であった. 再発は27例 (77%) に認められ, 20例 (57%) は1年以内に再発していた. めまい・立ちくらみが認められる例の失神にはmidodrine hydrochlorideが奏効した. 【結論】起立試験とHUTの組み合わせによりVVSの診断率を向上させることは可能である. 小児のVVSは成人より再発が多く, 転倒による怪我など日常生活上のリスクが少なくないため, 積極的な治療介入が望ましい.
著者
青柳 優子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.27-33, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
37
被引用文献数
7 4

目的:「医療従事者の倫理的感受性」の概念分析を行い,定義を明らかにすることである.方法:Rodgersの概念分析アプローチ法を用いた.データ収集には5つのデータベースPubMed,CINAHL Plus with Full Text,PsycINFO,医学中央雑誌web版,CiNii Articlesを使用した.検索用語は「ethical sensitivity」,「moral sensitivity」,「倫理的感受性」とし,計47件の論文を分析対象とした.結果:属性として5カテゴリー【倫理的状況に反応して感情が表れる】,【対象者中心の医療における自己の役割への責任感】【倫理的問題に気づく能力】【倫理的問題を明確にする能力】【倫理的問題に立ち向かう能力】を抽出した.先行要件には2カテゴリー,帰結には3カテゴリーを抽出した.結論:医療従事者の倫理的感受性は,倫理的問題の解決において意味をもち,問題を抽出するだけでなく立ち向かおうとすることを含む総合的な能力であった.
著者
木村 美幸
出版者
福井工業高等専門学校
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究の目的は、海軍志願兵を取り上げることによって、地域における戦争と軍隊のあり方を明らかにすることにある。特に地域がどのように戦争に協力したかを検討するために、市町村役場文書である海軍関係の兵事資料を複数用いて、海軍志願兵関係兵事会議の分析を行う。これによって、地域における志願兵徴募にどのような人物・団体が関与し、どのような構造で志願兵を集めていたかを明らかにする。この研究を通じて、従来陸軍や徴兵制を中心として考えられてきた軍隊と地域の関係について新たな展望を開く。