著者
佐藤 慶明 入口 豊 西島 吉典
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.45-54, 2014-09

1993年に10クラブからスタートしたプロサッカー・JリーグもJ1・J2を合わせて40クラブに増加し,現在はJ3リーグ結成が計画されるまでに発展した。Jリーグの誕生が,日本選手のレベルを格段に引き上げ,日本代表チームの4大会連続のワールドカップ出場と世界ランキング上位に躍進させる原動力となったことは疑う余地がない。しかし,順調に発展してきたかに見えるJリーグ・クラブ各チームにおいては,個別には経営上の様々な問題を抱えていることも事実であり,それらの問題の克服なくして今後の大きな飛躍を望むことは困難な情勢にある。本研究は,Jリーグ所属全チームの中でも親会社を持つクラブの順位浮上のためのマネジメント上の問題点を,J1・J2各1チームのクラブ経営のトップであった元社長,GMへのヒアリングを中心に事例的に明らかにすることを目的とする.特に本稿では,JFLからJ2昇格後に3年連続最下位を経験して,2011年にJ1昇格圏内にまで成績を上げるも,四国という地域性とチーム運営面や観客動員数にも課題を残す「徳島ヴォルティス」の事例を中心に取り上げる。The purpose of this study is to make the actual conditions of management of a professional football club in Japan (J-league) clear through having an interview with the general manager of the J1-league and the J2-league clubs. This is the continued study from the previous report with the same title :"A Case Study of Management of a Professional Football Club in Japan(I)-focus on a case of the Urawa Red Diamonds (J1)-"(Memoirs of Osaka Kyoiku University, Ser.IV., Vol.62-2.2014.2., pp.11-22.) Especially, the present study is to examine the actual conditions of management of the "Tokushima Vortis "(J2) through having an interview with the former president of the Tokushima Vortis". The finding and discussions on the following topics are presented in this paper: 1.An outline of the Tokushima Vortis (J2) 2.Contents of an interview with the former president of the Tokushima Vortis (1)about a management of the president (2)the relationship among the front, the staff, and the players (3)the duties of the president (4)the present state and the future of the general manager and the president of the J-league team.
著者
岡田 晴恵 田代 眞人
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.775-782, 2005

2004年1, 2月には山口県や京都府などの養鶏場を高病原性鳥インフルエンザの流行が襲い, 夥しい鶏が死に, また周囲の多くの鳥が殺処分された。感染の拡大を防止するために, 感染死した鳥や感染の疑いのある鳥を殺処分し, 半径30キロメートル以内でのニワトリや卵の移動禁止措置がひかれた。白い作業着にゴーグル, マスク, 長靴, 手袋を装着した作業員が, 大きな穴に多くの鶏を埋め立て, 養鶏場を徹底的に消毒する姿は未だに印象に強く残っていることであろう。この鳥インフルエンザ問題はとかくマスコミ等では, 食の安全という観点から取り上げられる傾向にあった。もちろん, 食生活において, 鶏卵や鶏肉の需要は大きく, 日本の食文化や食生活を担う上でも非常に重要である。また, 通年の人のインフルエンザワクチンも鶏卵を使って, 種ウイルスを増殖させて製造される。インフルエンザワクチンの安定的供給を得るためにも, 鳥インフルエンザの流行は是が非にもくい止めなければならない。<BR> しかしながら鳥インフルエンザの問題の核心的部分は, 鳥インフルエンザウイルスが遺伝子変異や遺伝子交雑を起こして, 人のインフルエンザウイルスに変身して, 人の世界で流行する新しいインフルエンザウイルスとなって大流行を起こすことにある。<BR> 過去における, スペインかぜやアジアかぜ, 香港かぜ等の新型インフルエンザウイルスは, このように鳥インフルエンザウイルスが基となり, 遺伝子交雑や変異を起こして人の新型ウイルスとなって人の世界に侵入してきたのである。このため, 多くの人々が犠牲となり, 社会に大きな影響を与えてきたのだ。これらの新型インフルエンザはいままで平均して27年の周期で起こり, 世界的流行を起こしてきた。前回の新型インフルエンザ出現は1968年の香港かぜにさかのぼる。<BR> さらに現在では火種となる鳥インフルエンザが, 東南アジアではすでに蔓延の様相を見せている。昨年の春以来, 一旦は流行の終息宣言が出されたタイやベトナムでも, 今年に入って鳥インフルエンザの再流行の報告がなされ, 人への感染も報告されている。しかも人に感染すれば7割にもおよぶ高い致死率を示している。さらに悪いことに, 現在流行中の鳥インフルエンザは鶏に全身感染を起こし, 1, 2日で死に到らしめる高病原性鳥インフルエンザとされる強毒型のウイルスである。このH5N1という高病原性鳥インフルエンザウイルスが, 人の世界に入ってくる可能性は高く, さらに時間の問題であると多くのインフルエンザウイルスの専門家は心配している。<BR> このような背景の中で, 今回の鳥インフルエンザウイルス問題の本質は, なんであろうか, 新型インフルエンザはどうやって鳥インフルエンザウイルスから誕生するのであろうか, 新型インフルエンザウイルスが発生した場合にはどのようなことが想定されるのであろうか, という内容を解説したい。新型インフルエンザを正しく理解することによって, 過去に猖獗を極め, 多くの被害を残した新型インフルエンザの事例を教訓とし, 被害を最小限度に抑えることを目的としたい。
著者
冨江 直子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.80-92, 2010

本稿は,「救貧」が戦前日本における「社会」の形成にいかに与ったかを考察するために,「救貧」をめぐる三つの議論をみていく。第一は富国強兵のために国民を動員することを目的とした明治政府の感化救済事業である。ここでは貧者は「社会」の成員資格に満たない他者として扱われた。第二は方面委員の社会連帯思想である。これは貧者を具体的な人格として把握し,共同体の成員資格へと導くことによって「社会」に包摂しようとするものであった。第三は大河内一男の社会政策論である。これは貧者を抽象的な労働力として把握し,生産要素として「社会」に包摂しようとするものであった。後の二者は,対照的な方向に向かう議論であったが,共に,貧者を他者化して懲罰や教化の対象とする救貧のあり方へのアンチテーゼであった。これらはしかし,その精神や労働力を「社会」が領有することができない者をあらかじめ除いた世界を舞台として成立する議論であった。
著者
樋口 雄彦
出版者
慶應義塾福沢研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
no.34, pp.273-303, 2017

資料紹介
著者
内海 しょか
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.12-22, 2010-03-30
被引用文献数
1 9

本研究では,青年期の子どもにおけるネットいじめの特徴を調べ,親の統制に対する子どもの認知とネット行動との関連を示すモデルを検討した。中学生487名を対象にした質問紙調査を行い,パソコンと携帯電話によるネット使用時間,インターネットを通して攻撃を行った経験・受けた経験,関係性攻撃,表出性攻撃,親のネット統制(実践,把握,接続自由)認知を測定した。その結果,ネットいじめ非経験者の割合は67%,いじめの経験のみ8%,いじめられの経験のみ7%,両方経験は18%であった。両方の経験を持つ者は,どちらも経験していない者に比べ関係性攻撃や表出性攻撃が有意に高く,携帯電話によるインターネット使用時間が有意に長かった。いずれの統制認知もネットいじめ・いじめられ経験を直接予測しなかったが,実践認知は間接的に,把握認知と接続自由の認知は直接的に子どものネット使用時間を予測した。ネット使用時間および,関係性攻撃はネットいじめ・いじめられ経験の両方に直接関連することが明らかとなった。
著者
木村 幹
出版者
日本植民地研究会
雑誌
日本植民地研究 (ISSN:09150951)
巻号頁・発行日
no.14, 2002-06

2001年に三度に渡って開催された「韓国併合再検討国際会議」について記した。
著者
上野 大樹
出版者
一橋大学全学共通教育センター
雑誌
人文・自然研究 (ISSN:18824625)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-37, 2021-03-25

This paper examines the trends in Enlightenment studies after J. G. A. Pocock and other Cambridge contextualists. The most influential and controversial figure representative of recent scholarship is Jonathan Israel. His conception of the "radical Enlightenment" suggests the shared universalistic project of a certain group of intellectuals of the age, diverging from Pocock's emphasis on a variety and diversity of "Enlightenments" in plural. Israel's view is thus atavistic rather than revisionistic, and is vigorous in absorbing and responding to contextualist studies as well. His argument is particularly notable in that it endeavours to reinterpret Pocock's demonstration of distinct characteristics of "Enlightenments" outside of France(with further implications of stressing the moderate tendencies of non-Parisian Enlightenments), in order to justify his thesis that the fundamental controversy and dichotomy between major moderates and minor radicals could be detected anywhere in Enlightenment Europe. After elucidating these rival framings of Enlightenment thinking, this paper also scrutinizes other discussions dubious of the definition of plural "Enlightenments", focusing on John Robertson and Ryu Susato. Both consider David Hume a touchstone for assessing the tenability of conceptions of Enlightenment as an analytical tool. While Robertson tends to focus on(empirical) neo-Epicureanism as a core of Enlightenment thought, bringing about a modern science of political economy, Susato situates Hume as an innovative thinker in the neo-Epicurean sceptical tradition, in whom seemingly moderate political thinking and perilously radical metaphysics are oddly accommodated together.
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.105-122, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害―大雨、洪水、土石流、地滑り、地震、津波、火山噴火、雪害、雹、暴風雨、高波、高潮、旱害、冷害、蝗害等、そして、人為的災害―疫病流行、戦乱、盗賊、略奪行為の発生等々、数え切れない程の災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興しながら、現在へと至る地域社会を形成、維持、発展させて来た。日本は列島を主体とした島嶼国家であり、その周囲は水(海水)で囲まれ、山岳地帯より海岸線迄の距離が短い。自然地形は狭小な国土の割には起伏に富む。その形状も南北方向に湾曲して細長く、列島部分の幅も狭い。日本では、所謂、「水災害」が多く発生していたが、それは比較的高い山岳地帯が多くて平坦部が少なく、土地の傾斜が急であるというこうした地理的条件に依る処も大きい。こうした地理的理由に依る自然災害や、人の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。正史として編纂された官撰国史の中にも、古代王権が或(あ)る種の意図を以って、多くの災害記録を記述していた。ここで言う処の「或る種の意図」とは、それらの自然的、人為的事象の発生を、或る場合には自らの都合の良い様に解釈をし、加工し、政治的、外交的に利用、喧伝することであった。その目的は、災害対処能力を持ちうる唯一の王権として、自らの「支配の正当性、超越性」を合理的に主張することであったものと考えられる。それ以外でも、取り分け、カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての個人の日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中でも、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、それも最初から嘘八百を並べたものではなく、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が反映され、包含されていることが想定されるのである。筆者がかつて、『災害対処の文化論シリーズ Ⅰ ~古代日本語に記録された自然災害と疾病~』〔DLMarket Inc(データ版)、シーズネット株式会社・製本直送.comの本屋さん(電子書籍製本版)、2015年7月1日、初版発行〕に於いても指摘をした如く、都が平安京(京都市)に移行する以前の段階に於いては、「咎徴(きゅうちょう)」の語が示す中国由来の儒教的災異思想の反映が大きく見られた。しかしながら、本稿で触れる平安時代以降の段階に在って、それは影も形も無くなるのである。その理由に就いては、はっきりとはしていない。その分、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。本稿では、以上の観点、課題意識より、日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みることとする。又、それらの記載内容と、作品ではない(古)記録類に記載されていた内容に見られる対災害観との対比、対照研究をも視野に入れる。
著者
平林 優子
雑誌
日本文學 (ISSN:03863336)
巻号頁・発行日
no.117, pp.57-68, 2021-03-15
著者
大久 長範 堀金 明美 大能 俊久 吉田 充
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.522-527, 2005-11-15
被引用文献数
4 4

1) 稲庭うどん, ナンバーワンひやむぎ, 讃岐うどんの圧縮強度 (低圧縮H1, 高圧縮H2) 及びその比 (H2/H1) を求めた.<br>2) 茹で30分後のH2は, ナンバーワンひやむぎで1.9N, 讃岐うどんで2.5Nでに対し, 稲庭うどんでは4N~7Nと大きな値であった. 時間の経過とともにH1とH2は変化するものもあったが, H2/H1比はほぼ一定の値となり, No1ひやむぎが約10, 讃岐うどん約8, 稲庭うどんが13~18であった.<br>3) 茹でた稲庭うどんをMRIにより観察したところ, 空隙があり, 空隙には水が進入していない状態が6時間に渡り維持された. ナンバーワンひやむぎや讃岐うどんにはこのような空隙が観察されなかった.