- 著者
-
梅宮 典子
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
気温30℃RH60%の条件に設定した人工気候室において、被験者前方2mの気流吹き出し壁床上1.5mに扇風機を顔面にむけて設置し、夏季の日中に、気候馴化が完了したと思われる時期の19名の大学生を対象に、1回の実験内において扇風機を運転⇔停止して気流条件を変更する実験をおこない、気流が変化する場合の局所発汗速度による発汗反応の変化と主観申告による熱的快適性について考察した。結果として、(1)被験者顔面近傍(前方30cm)における平均気流速度、変動係数は、運転時で0.71m/s,37.1%,停止時で0.043m/s,46.5%,(2)運転時、停止時とも、温冷感はNeutralより暑い側,発汗感は中立より「汗をかいていない」側,(3)停止時には気流が「弱すぎる」一方でその他の気流評価には左右に差がなく,運転時には「つめたい」,「さわやかな」,「涼しくなった」,「快適になった」側にある一方で「強さ」には左右に差がない,(4)室内雰囲気評価は「暑苦しい」以外で扇風機運転を経ることによって改善したが,「暑苦しい」は第二回停止時に最も評価が低くなる,(5)局所発汗速度は全実験を通じて0〜0.20(mg/cm2/分)の範囲にあったが,その経時変化特性は実験あるいは被験者によって異なる,(6)局所発汗量は、同一実験における運転時と停止時のあいだで、r=0.71〜0.96で相関が高い,(7)発汗申告は申告時の発汗速度を必ずしも反映しない,(8)温冷感申告と発汗速度とはほぼ関係がないが、発汗速度が大きい場合には、発汗速度が大きいほど暑い側の申告が得られる,(9)運転時には発汗速度が大きいほど快適側に申告する場合がある,(10)停止時には発汗速度が大きいほど不快側の申告が得られる場合がある,ことが明らかになった。一方,文献調査によって発汗申告評価の歴史的変遷を調べ,(11)温感研究の初期には発汗の主観申告が重視されていたことを確認した。