著者
[ナガタニ] 弘信
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.27-53, 2013-06-30

蓮光寺旧蔵本『親鸞聖人血脈文集』(現大谷大学図書館蔵)には、法然が親鸞に模写を許した自らの真影に元久二年(一二○五)に「銘文」とともに記した「名の字」とされる「釈善信」の記述がある。これが法然の記名を忠実に伝えているとすれば、親鸞が同年「綽空」から「善信」と改名したことを示す決定的証拠となる。古田武彦は『親鸞思想-その史料批判』(一九七五年)においてこの記述を、親鸞が建保四年(一二一六)に性信に与え、性信が『血脈文集』を編集した際に自らが親鸞面授の直弟であることの証拠として収めた「自筆文書」の一節である、と述べた。しかし、蓮光寺本の乱丁、当該文書の文面、『血脈文集』の構成を検討した結果、筆者は、この所謂「自筆文書」は、性信没後に『血脈文集』が編集された際に挿入された偽作に過ぎないとの結論に至った。筆者は、元久二年に法然が記した「名の字」は「釈善信」ではなく「釈親鸞」であると考えざるを得ない。
著者
伊藤 亜聖
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究プロジェクトでは、中国沿海部に集中してきた製造業が、2000年代後半以降にどのような変化を遂げつつあるかを、産業立地に注目して検討した。地域・産業データを用いた分析の結果、沿海部の産業集積地での「集積の経済性」の発生と、労働集約的産業の内陸部への移転は同時に観察された。このことから、中国製造業は、沿海部での規模を維持しつつも、内陸部へと取引ネットワークと立地が拡散しつつあったと言える。地域別貿易データの分析からも、中国中西部の輸出額の急増が確認され、とりわけエレクトロニクス製品の組み立てを担うEMSの移転が大きなインパクトをもたらしていることが判明した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1317, pp.32-37, 2005-11-21

11月上旬、18日の中間決算発表の準備を急ぐ三洋電機本社(大阪府守口市)に十数人の男が乗り込んだ。大和証券SMBCプリンシパル・インベスツメンツ(大和PI)、三井住友銀行系の企業再生ファンドの社員である。 三洋の2006年3月期最終赤字は2000億円前後(9月時点の見通しは1400億円)に膨らむ可能性が高い。
著者
鈴木 祐麻
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大腸菌と大腸菌群を対象汚染物質として選定し、微量の鉄粉およびレモン汁を処理原水に添加することで太陽光殺菌(Solar Disinfection, 通称SODISと呼ばれる)の効果を高めることができることを提案・実証することである。種々のバッチ実験および実証実験の結果、鉄粉、レモン汁、そして太陽光を組み合わせることにより、フェントン反応と類似した反応プロセスがペットボトル内で連続的に進行し、その結果、OHラジカルなどの活性酸素種やフェリルイオンなどの効率的な生成を通してSODIS効果を促進することができた。
著者
石橋 克彦
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.169-176, 1983-06-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
17
被引用文献数
3

TOKYO ASTRONOMICAL OBSERVATORY (1981) and USAMI (1975) are listing a historical destructive earthquake of magnitude 6.7 that occurred in the Aizu province in northeast Japan on November 7, 1433. However, the only basis of the earthquake is the total collapse of the Todera-Hachimangu Shrine due to violent earthquake motion which is described in an old book named “Todera-Hachimangu Ryakki Nagacho”. In this paper reliability of the description has been examined and unreality of the earthquake has been concluded.“Todera-Hachimangu Ryakki Nagacho” is a compiled material written more than 150 years after 1433 and, so, the reliability of its description on older times is generally low. On the other hand, there is another historical document concerning the Todera-Hachimangu Shrine called “Todera-Hachimangu Nagacho”, which is a yearly record mainly on the shrine's ceremony and local happenings written year by year. Its original copy covering most part of the period between 1350 and 1635 is preserved in the shrine. This is the most reliable and basic material concerning the Todera-Hachimangu Shrine and its vicinity for the 14th to the 16th centuries.In “Todera-Hachimangu Nagacho” there is no record about the collapse of the shrine in 1433. On the contrary, it contains a few reliable descriptions which conflict with seismic disaster in the province at that time. Thus, the collapse of the shrine due to an earthquake in 1433 has proved to be not an actual fact. Therefore, the 1433 Aizu earthquake of magnitude 6.7 should be deleted from Japanese historical earthquake catalogs.
著者
鎌江 伊三夫 柳沢 振一郎 石井 昇
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

敦賀湾における核事故を想定した医療対応力に関して、北陸・東海・近畿の部の医療機関にアンケート調査を実施した。その結果、ヨウ素製剤の備蓄・重症熱傷や骨髄抑制の治療などの急性期治療は、限定された人数なら対応可能であるが、大規模事故にて多数の被爆者が出た場合は対応が困難であることが推定された。敦賀湾限定の核事故におけるヨウ素製剤投与に関しては、確認された備蓄量11万人分という数量から推測して、準広域にて十分な対応が可能と思われるが、大都市を含む大規模災害となった場合の必要数と供給には2桁ほどの乖離が予想された。広域避難に対しては転送手段・受け入れネットワークにも課題が確認された。また、NBC災害や大規模災害に対する災害対応マニュアルを含めた準備態勢にも問題が見受けられた。一般施設の被災に関して、施設間転送ネットワークや各種災害マニュアルなどは比較的低予算で整備することが出来、ほかの各種災害に援用可能なシステムもあるので、積極的な整備が望まれる。災害拠点病院や県立病院単位でのネットワークは整備されているが、ネットワーク外に置かれている私立病院をはじめとする施設と患者が存在する。特に広域避難に関しては、個々の施設や自治体の対応の限界を超えた問題が多い。行政や関連学会の補助が必要と考えられるなど、今後の対策要件等について明らかにすることができた。避難区域が広域となった場合や大都市が発災中心となった場合、さまざまな医療措置が不足となる事態が想定される。例えば本研究の調査では、人工透析通院数と余剰受け入れ可能数の乖離が確認された。政策における余剰医療設備の適正量の決定は、医療経済的な側面からだけではなく社会安全保障の側面からの検討も必要との示唆を得た。
著者
二神 透 大本 翔平
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_74-I_81, 2012
被引用文献数
1

四国においては,来るべき南海・東南海地震に備え,避難情報等の情報の悉皆性を確保する必要がある.2011年3月東日本大震災において,愛媛県宇和海沿岸には,津波避難勧告が発令された.著者らは,これらの地域において,避難勧告情報伝達に関する,行政,自主防災組織,住民を対象としたアンケートを実施するとともに,防災行政無線の現状を調査した.それらの結果,各市町の問題点や課題が明らかなるとともに,それぞれの行政が,地域に合わせた形での整備を行っていることと,今後の,公共情報システムの展望について述べた.<br> 本論文では,これらの点を踏まえて,ハード・ソフト面での災害時の情報伝達のあり方について言及する.
著者
玉木 直文
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

歯周病に対して,機械的刺激を重視した術者ブラッシングと細菌の徹底的な除去を目的とした初診時感染源除去法の2種の処置を行い,歯肉縁下歯垢の細菌叢の経時的な変化を,分子遺伝学手法を用いて解析することを目的とした。岡山大学病院・予防歯科に来院した患者のうち,20本以上の歯があり,プロービング・デプスが5mm以上の歯を4本以上有する者12名を対象とした。治療期間は28日で,7日目までは毎日処置を行い,その後は14,21,28日目に治療を行なった。処置内容は,つまようじ法による術者ブラッシングと初診時盛染源除去法とし,対象者をランダムに分けた。細菌叢の分析のための歯垢は,0,7,14,28日目に歯肉縁下から採取した。細菌叢は分子遺伝学的手法(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法,real-timePCR法)を用いて解析した。牽性剤濃度勾配ゲル電気泳動法の結果,両群とも治療寧過とともにP.gingivaJis等の嫌気性菌の検出頻度が減少し,Neisseria等の好気性菌の割倉が増えた。さらに,rea1-time PCR法の結果,全菌数は両群とも7日目以降に初夢時よりも有意に減少していだ(P<0.01,Wilcoxon test)。さらに,P.gingivalisにおいては初診時と比べて術者みぶき群では14日目,28日目に,初診時感染源除去碧では28日目に有意差に減少していた(P<0.05)。A.actinomycetemcomitanceは両群とも有意差は無かった。P.intermediaは,術者みがき群において7日目,14日目において有意に減少していた。T.dentiCOlaとT.forsythiaは,両群とも7日目以降に有意に減少していた。
著者
尾瀬 智昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.845-866, 1996-12-25
被引用文献数
2

チベット、東ヨーロッパ、シベリアの初春の積雪偏差が、その後の大気に及ほす影響を比較するため、モデルによるアンサンブル実験をおこなった。チベットの正の積雪偏差は、春から初夏にかけて有意な冷却源をもたらす。東ヨーロッパやシベリアの積雪偏差から、直接には有意な冷却源は作り出されない。チベットの冷却源は、北半球の春から夏にかけての季節遷移を遅らせる方向の影響を大気に及ぼす。これは、6月の弱いアジアモンスーンとして特徴づけられ、南アジアの弱い下層モンスーンジェット、東南アジアの弱い大規模な上層発散場、北太平洋と北大西洋の負高度場偏差、熱帯太平洋の弱い東西循環が再現された。チベットの積雪偏差実験の場合に目立つ影響が現われたのは、東ヨーロッパやシベリアと比較して、チベットが次のような条件を持っているためである。(1)チベットでは、おそらくその高度のため、気候的に融雪速度が遅く、これは初春の積雪正偏差を気候的な融雪季節の終わりまで維持する。(2)チベットの初春から高い太陽高度と比較的少ない雪量による強い太陽入射は、積雪正偏差のアルベド効果を高める。(3)チベットの乾いた裸地の地表面熱収支では、顕熱の役割が潜熱よりも大きい。従って、積雪正偏差(被覆)の存在は顕熱の効果を遮断する役目を主に果たす。(4)チベットの乾いた裸地では、融雪水は土壌に蓄えられる可能性が高い。このため、積雪正偏差の多くは土壌水分偏差として引き継がれる。(5)気候的にチベット高原の熱源は、アジアモンスーンに影響しうる。モデル実験のチベットから得られた(1)から(5)の条件は、現実においても積雪正偏差が大気に対して影響を及ぼしうる地域の条件として意味を持つと考えられる。東ヨーロッパ実験の5月およびシベリア実験の8月にも、大気中に広範囲な応答が見られた。この場合、ユーラシア大陸北部に地表面状態の有意な偏差が伴う。これからの地表面状態偏差は、初期の積雪偏差の融雪に続いて形成される一連の地表面状態偏差と、直接には関係せず、初期の積雪偏差がもつ水および熱が大気に供給された後に、形成されたように見える。
著者
市坪 明子 伊東山 洋一 伊東山 徹代 野間 俊司 中村 智哉 河上 紗智子 池田 美穂 千代田 愛美 永田 英二 松崎 智範 工藤 理沙
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.333, 2010 (Released:2011-01-15)

【目的】パーキンソン病に対する理学療法とし ては、転倒なき歩行能力の確保が重要であり、訓練プ ログラムとしては様々なものがあるが、明らかな効果 を示すものは少ない。そこで今回、歩行能力の維持・ 向上を目的に、腹臥位療法を取り入れたところ、歩行 のみならずADLも改善し、効果が得られたので若干 の考察を加えてここに報告する。【方法】 対象者はパーキンソン病と診断された男女10名、年 齢は平均67.7±9.15才、発症からの経過は平均45.7 ±18.7ヶ月である。Yahrのstageは_II_が2名、_III_が4 名、_IV_が4名である。そこでこれらの症例に対して腹 臥位を20分間とって貰い、その前後で10mタイム、 10m間の歩数、10m中のすくみ足の回数を測定すると ともに、ADLはFIMとYahrの分類を用いて評価した。 統計学的処理は、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い て効果判定をした。有意水準は5%未満とした。尚、 本研究は症例に研究の意図を説明し、了承を得て実施 した。【結果】10mタイムは施行前34.0± 19.9秒、施行後25.0±11.5秒(p<0.05)。10m歩 数は施行前57.2±32.4歩、施行後43.0±23.9歩(p< 0.05)。10m中のすくみ足の回数は施行前3.2±1.4回、 施行後1.5±1.28回(p<0.05)。FIMの点数は施行前 58.2±19.3点、施行後65.9±17.1点(p<0.05)とな りYahrの評価では施行前3±0.67が施行後2.8±0.75 (p<0.05)となり、全ての項目に効果を示し、有意 差を認めた。【考察】パーキンソン病を有 する症例に対し、有働が提唱する腹臥位療法を取り入 れ、歩行改善を目標にプログラムを実施した。その結 果、歩行能力の改善のみならず、症例の中には一回の みの施行でADLが介助から監視レベルへと改善しYahr の重症度分類をも下げる程の効果を示した例もあっ た。その理由としては、腹臥位をとることで症例の持 つ自重により股関節ならびに脊柱がストレッチされ、 関節の可撓性の増大に繋がったからであろう。その事 で、姿勢アライメントならびに歩行時のダイナミック なバランスが改善され、パーキンソン病に特有のすく み足や突進現象の改善に効果を示したと考える。今回、 腹臥位療法の効果について確認できた事で、在宅や施 設でも簡単に出来る訓練法として更に推奨される訓 練法と考える。ただ、今回試行時間や持続性について は検討しておらず、今後とも研究を続けていきたい。 【まとめ】1.パーキンソン病を有する症例 に対して腹臥位療法を施行した。2.腹臥位療法 を行った前後で、歩行能力、ADLともに改善が見られ、 効果が確認できた。3.腹臥位療法の効果の持続 性や試行時間などは、今後検討が必要と考える。
著者
山本 進一 真鍋 徹
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.13-20, 1997-06-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

水俣JIBP(国際生物学事業計画日本委員会)特別調査地域の常緑広葉樹二次林に1991年の大型で非常に強い台風19号によって形成されたギャップ,および台風前に形成されたギャップと,そこでの樹木置換パターンについて調査した。台風前に形成されたギャップがヘクタールあたり3.3個,その平均面積が31.2m^2であったのに対して,台風によって形成されたギャップはヘクタールあたり6.7個,その平均面積は230m^2と台風前に比べてより多くかつより大きなギャップがこの台風によって形成された。台風前のギャップ形成木は単一の林冠木の枯死であったが,台風は複数の林冠木の同時枯死をひきおこした。台風前の林冠木の枯死状態は立ち枯れが主であったが,台風によって枯死した林冠木の多くが幹折れであった。多くのシイの林冠木が台風による幹折れによって枯死したが,そのギャップ更新木はわずかであった。イスノキとウラジロガシは林冠木として出現しないか,してもわずかであったが,ギャップ更新木として頻繁に出現した。したがって,台風による攪乱はこの林の林冠層におけるシイからウラジロガシとイスノキへの優占への変化を加速させるようである。
著者
吉田 三知
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.631-647,620, 1972

従来, ウサギのような反射性排卵動物において外側視索前野は交尾に伴う電気活動の変化やこの部位のgonadotropinの分泌とそれに伴う排卵現象についての役割に就いて知見がない.そこで, ウサギを用い交尾直後の電気活動, 性ホルモン投与後の電気活動, この部位の電気刺激実験, 卵巣におけるステロイド生合成能を調べ排卵の有無も調べ, 外側視索前野の卵巣機能に及ぼす影響を追究した.その為脳各部位にMUA記録電極及び刺激電極を慢性的にウサギに植込んだ.その結果1) 正常ウサギの交尾後申脳部網様体, 外側視索前野のMUAが著明に上昇し, 内側視索前野基底部, 視床下部腹内側よりの弓状核ではMUAの積分値が交尾後軽度上昇したが, 内側視索前野の内側部, 中央隆起部よりの弓状核ではMUAが軽度下降した.2) estradio12日処置後progesterone投与にて, 約3時間目から数時間に亘り外側視索前野, 内側視索前野基底部, 視床下部腹内側核よりの弓状核のMUAは軽度の上昇を呈した.内側視索前野内側部はprogesterone投与後2~5時間目に, 視床下部の中央隆起部よりの弓状核では30分~4時目頃迄MUAは軽度下降した.3) 卵巣摘出後estradio12日間progesterone処置後, 交尾をさせた場合, 外側視索前野のMUAの積分値は交尾直後から一過性の著明な上昇を示した.内側視索前野の内側部と腹内側核よりの弓状核では交尾後軽度の上昇を認めたが, 内側視索前野基底部は交尾後下降をし, 中央隆起部よりの弓状核では交尾後変化が認められなかつた.4) 卵巣摘出ウサギで, 外側視索前野ではestradiol (lmg) 投与後3時間目よりMUAが軽度下降したが, progesterone (10mg), PMS (400u) HCG (400u) 投与で殆んど変化しなかつた.内側視索前野基底部ではestradiol投与後2時間目にMUAが軽度の下降を示し, HCG投与後2時間目に軽度の下降を示したが, progesterone, PMS投与で変化しなかつた視床下部申央隆起部よりの弓状核ではestradio1投与によtり3時間目にMUAの軽度上昇が認められ, progesterone投与で軽度の下降が認められたが, HCG, PMS投与にて殆んど変化しなかつた.5) 正常ウサギで子宮頸部刺激にて排卵は認められなかつたが, 外側視索前野のMUAは交尾後と同様の上昇傾向を示した.6) 外側視索前野の電気刺激で11例中6例に排卵が誘起され, 11例中5例は排卵疑陽性であつた.いずれの場合でも, 卵巣に於けるacetate-1-<SUP>14</SUP>Cからの1<SUP>14</SUP>のprogestinへの取り込みは対照に比し有意に増加した.一方, 内側視索前野内側部の電気刺激で排卵は陰性で, 卵巣に於けるprogestin生合成能は対照に比し変化しなかつた.7) 外側視索前野の電気刺激で排卵陽性の場合, この電気刺激後視床下部中央隆起部よりの弓状核のMUAは3時間内で下降, 上昇, 下降と著明な変化を示したのに反し, 内側視索前野の電気刺激で排卵陰性の場合, この部位の電気刺激後視床下部の中央隆起部よりの弓状核のMUAは軽度の上昇傾向がi数時間認められた.<BR>以上の諸事実よりウサギにおいて, 外側視索前野は交尾行動を駆動させる為に必要な部位であるとともに, この外側視索前野の交尾による神経活動の上昇は下垂体のgonadotropinとそれに伴う排卵及び卵巣性ステロイド分泌に何らか重要な役割を演じているものと推定される.
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1109, pp.28-32, 2013-05-27

実は今、グランフロント大阪だけでなく、日本各地で屋内測位技術の活用が次々と始まっている(図1)。例えば関東地方では、NTTドコモが2013年2月に試験提供を開始した「ショッぷらっと」に、音波による屋内測位技術が使われている。ショッぷらっとには都内の約…
著者
宗岡 克樹 白井 良夫 高木 健太郎 小山 高宣
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.495-499, 2001-05-01
被引用文献数
18

急性上腸間膜動脈閉塞症の2症例に対し, ウロキナーゼを上腸間膜動脈(SMA)に動注する血栓溶解療法を施行した. 症例1は59歳の男性で, SMA本幹に完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IUの動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは3.5時間であった. 腸切除を要さず, 1か月で軽快退院した. 症例2は68歳の男性で, SMAの完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IU動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは6.5時間であった. 腹部所見は軽減したが, 再疎通後3時間目から再度憎悪したため緊急手術を行った. 空腸, 回腸280cmが壊死しており, 腸管切除再建を行ったが, 術後4か月目に多臓器不全で死亡した. 自験例および従来の報告例の検討からは, 本療法を発症後早期(SMA本幹閉塞では5時間以内, SMA遠位部の閉塞では12時間以内)に行えば腸管壊死を回避できる可能性がある.