著者
竹原 直美 矢野 環
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-5, 2011-05-14

本研究では,音楽療法士により記述された質的事例報告を対象とし,臨床における多様な相互関係の中から,「セラピストはクライエントの何をみてきたか?」 という点を,計量言語学的に明らかにするための基礎研究を行った.In this research, we studied qualitative case reports written by music therapists and carried out basic research using quantitative linguistics method to answer the question "What have the therapist checked for when treating their client ?" from the various correlation in clinical practice.
著者
三井 利仁 田島 文博 中村 健 伊藤 倫之 馬渕 博行
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

頸髄障害者(CSCI)は副腎髄質への交感神経支配が障害されているために運動時アドレナリン分泌が胸腰髄損傷者(LSCI)より抑制されている。今回の研究で、当初運動による上昇を予想していた酸化LDLがLSCIに比べCSCIで抑制されていた理由として、このアドレナリン分泌の低下が一因であると推察される。下部胸髄節交感神経障害があるLSCIには末梢性交感神経障害が存在すると考えられる。結果よりoxLDLがLSCIよりCSCIの方が抑制されていた理由は、このアドレナリン分泌の低下が原因であると推察する。酸化LDLの有意な増加がないことからは、この運動はたとえCSCIにおいても安全であることが示唆された。
著者
河西 憲一
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では途中退去が伴う複数サーバ待ち行列システムの待ち行列長分布について検討した。特に途中退去までの時間が一定の場合を前提として、待ち行列長の定常分布を解析した。サービス中の客のうち、最後にサービスを開始した客の経過系内滞在時間、あるいはシステムの仮待ち時間が従うべき積分微分方程式を導出し、それらの解を行列指数形式の混合として与えた。さらに行列指数形式を安定行列として表現することにより、数値計算に適した待ち行列長分布の評価アルゴリズムを開発した。さらに、客が途中退去する確率、客の待ち時間分布を評価するアルゴリズムも開発した。
著者
滝田 好宏 伊達 央
出版者
防衛大学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,ホームセンタで安価に購入できる刈払機をロボット車体に搭載することで,比較的長く伸びた草を刈り倒すことができる自律型刈払ロボットを提案して試作を行った.ロボットの移動機構は車体中央で屈曲するアーティキュレート式とし,100kg搭載可能で30.3kg の車体重量となった.刈り残しがない軌道計画と誘導および安全な刈払を行うために,自律制御プログラムの開発をつくばチャレンジに参加して行った.今後は,本ロボットの実証実験を行っていく.
著者
中園 薫 長嶋 祐二
出版者
兵庫県立福祉のまちづくり研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

手話表現に見られる視覚言語独特の写像的表現方法をピクトグラムデザインに応用した理解しやすいデザイン手法,およびマクロな表現から細かい手指の表現までを階層的に記述する視覚表現手法の確立を目指して研究を進めた.手話会話映像分析作業から抽出された手話独特の表現様式を利用し,抽象的概念を表現した3~数枚の動画ピクトグラムを作成し,評価実験により了解度の向上を確認した.次にTVMLにより,アニメーション的な動きのある動画ピクトグラムを記述・作成する手法を試みた.さらに記述が容易なマクロ表現からTVMLへ至る階層的表現の枠組みと変換によってTVMLの詳細なプログラミング作業を簡略化する手法の検討を行った.
著者
小森 智康 今井 篤 清山 信正 田高 礼子 都木 徹 及川 靖広
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.76, pp.107-112, 2013-06-06

高齢者は放送番組の背景音(音楽・効果音)をうるさく感じたり,アナウンサーや役者の音声が不明瞭で聞きづらく感じたりすることがある.これに対し,家庭側(受信機側)で高齢者に適した番組音声に調整する装置の開発を進めている.音声区間(ナレーション・セリフと背景音が混在する区間)では,ステレオ背景音の無相関な成分を抑圧し,相関成分では音声の母音や子音の音響的な特徴をフィルタ処理により強調し,非音声(背景音だけの)区間は,ゲイン制御のみによる劣化のない抑圧を行なうことで,番組全体での音質劣化を抑制する手法を提案した.提案手法により6dB相当番組背景音を抑圧できることを主観評価で確認し,高齢者視聴実験により番組音が聞きとりやすくなることを確認した.
著者
山下和昭
雑誌
BCG BRM療法研究会会誌
巻号頁・発行日
vol.24, pp.81-88, 2000
被引用文献数
2
著者
ラクシンチャラーンサク ポンサトーン 小竹 元基 永井 正夫
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.72, no.715, pp.795-801, 2006-03-25
被引用文献数
5 4

This paper examines the feasibility of Direct Yaw-moment Control (DYC) in the context of lane keeping system. The DYC, which is generated by differential traction force distribution, is designed with, consideration of the road image information to assist the driver's steering maneuver for lane keeping task. Consequently, the controller is designed to regulate the lateral deviation based on the lane marker position acquired via CCD camera with on-board image processing system. The effectiveness of the proposed control system was verified by actual driving test with micro electric vehicle equipped with two independent in-wheel-motors for generating DYC.
著者
岩﨑 洋介
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. フランス語フランス文学
巻号頁・発行日
no.42, pp.97-111, 2006-03 (Released:2006-00-00)

ジャック・ラカンは1966年に出版されたそれまでの主要論文や講演の記録をまとめた『エクリ』の段階で既にシェーマZ など図形や記号を伴う概念を導入していたが、『エクリ』以降もメビウスの輪やクロス・キャップ、トーラスといったトポロジー的な図形、さらに「マテーム( mathème)」とラカン自身により名づけられた定式や論理学の量記号を援用してきた。そしてその晩年にあたる1970年代、学説的に最も力を注いでいたのはボロメオの輪、ないし結び目を己の学説に導入することであり、その執着ぶりは例えばエリザベト・ルディネスコによる『ジャック・ラカン伝』に窺えよう。 「ボロメオの結び目」とは北イタリアのマジョーレ湖上の島にその名を残すボロメオ家の紋章に由来し、三つの輪、仮に輪a、b、c、とすると、a はb の、b はc のそれぞれ上に部分的に重なる形で位置する時、c がa の上になるように組み合わされた図形を指し、三つの輪の上下関係がa > b > c > a > b…という形で循環している。ラカンも度々指摘するように正確には「結び目」ではなく、三つの「輪」が三すくみに繋がれている図形である。その輪の交叉する部分を取り出した三つ葉のクローバー状の「結び目」もボロメオの輪と同様に言及される。これら図形の重要な特徴は、輪を一つ外すと、残りの二つの輪も互いに外れること、結び目の場合は線が交叉する個所が三箇所あるわけだが、そのうちの一箇所で交叉する線の上下を入れ替えると結び目が解消されただの輪になってしまうことである。こうした特徴を持つ輪は必ずしも三つとは限らず輪の数をいくら増やしても、そのうちの一つの輪を外すと鎖状に繋がっていたそれらの輪は個々の輪に分解してしまうといった図形を考えることは可能であるが、それは輪の数が三未満ではそうした関係は得られず、三が最小値である。 こうしたボロメオの輪自体は明らかにトポロジー的な図形であるが、このボロメオの輪への関心はことに『エクリ』以降に強まったラカンのトポロジーの援用の単なる延長とみなせるのであろうか。 ラカンのトポロジーへの関心は上記ルディネスコの評伝によると1951年に始まるが、『エクリ』に収められた諸編を見る限りでは、場(topos)と場の関係といったトポロジーの出発点となった観点による考察は色濃いものの、メビウスの輪などのパラドクシカルな図形はそれ以降の60年代後半になって盛んに援用されてくる(メビウスの輪が『エクリ』の中では最も後年に書かれた〈 La science et la vérité〉 で軽く言及されてはいるが)。ラカンがボロメオの輪について初めて言及したのは1972年の2月9日のセミネールでのことであるが、集中的に取り上げられ始めるのはその次の年度である1972–73年度のセミネールEncoreの全11回あった講義の内の第10回目(〈Ronds de ficelle〉)以降のことで、丁度マテームと入れ替わり講義中にしきりと描かれる図式となる。すなわちまとめると『エクリ』以降のラカンの図式に関する主な関心は、トポロジー的な図形→マテーム→結び目、という順で移行している。 マテームとは分析家、大学、主人、ヒステリー患者の四つにディスクールを分け、精神分析の立場を明確に位置づけるものであった。これは当時ラカンの属していたフランス精神分析学会( La Société française de psychanalyse)の解消に伴い、1963年に自ら創設したパリ・フロイト学派( l’Ecole freudienne deParis)の基礎付け、また精神分析が新設されるパリ大八大学に独立した学部を設置するにあたり、取分け科学的な知と精神分析の関係に見通しをつけ、いかに精神分析を「教育」しうるかという問いへの根本的な反省が要請されていたという外部的な事情も重なっている。 結び目を考える時、結び目の取り上げられた時期がこのマテームの時期の後にあるということが重要となってくる。ジャン=クロード・ミルネールはラカンの学説を三つの時期に分けているが、1972–73年度のセミネールEncore を第二期から第三期を分かつ位置にあるとしている。それはこの年度の講義でマテームの時代が頂点に達し、それと同時にそれをいわば「脱構築」するものとしての結び目が本格的に導入され始めるからだ。ミルネールに拠れば、第二期のラカンは数学におけるブルバキの影響を受け、その数学言語の形式化に倣い精神分析におけるディスクールの形式化を推し進めたものであったが(ラカンを除いてはブルバキと同じように執筆者が無記名なパリ・フロイト学派公認の雑誌Scilicet においてその傾向は著しい)、1968年の学生運動から70年代にかけての数学におけるブルバキ自体の後退、そして自身の学派内の不和といった外部的な影響もあり、マテームによる形式化及びそれに基づく精神分析の伝授へのさらなる見直しの必要をラカンが感じざるをえない状況で登場し、マテームに替わり盛んに援用されるようになったのが「結び目」であった。そうした見地に立つと、70年代にラカンが執着を示した結び目とはマテーム以前のトポロジー的な図形の援用とは性格を異とするもの、少なくともその単なる延長にあるのではない、と見なさねばなるまい。ラカンが結び目に着目したのも(少なくとも当時は)結び目が数学的に理論化されていないものであったからである。実際、ラカンの結び目とは以下に見るように、トポロジー的な対象として数学に基盤を求めるものではなく、むしろ数学を含めたあらゆる言語の「起源」を射程にいれたものである。
著者
杉浦 英樹
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.87-99, 2010-02-28

明石女子師範学校付属校園は主事及川平治のもとに大正自由教育の実践を展開したことで教育史上有名である。同校園では1904(明治37)年の創設当時からすでに幼小間に職務上、研修上の交流があり、1924(大正13)年には及川の指導によってプロジェクト法に基づくカリキュラム連携が試みられようとしている。筆者の目的はその経緯を明らかにすることにある。本稿では「保育方針並ニ幼稚園内規」を含む付属幼稚園所蔵史料の内容をめぐる解釈を通して、明治期における幼稚園カリキュラムの開発過程を保姆の視点から記述する。そして幼小教員が対等に交流するという当時としては稀有な状況で、同園のカリキュラムがどのようなものであったかについて、付属小学校の教育方針や及川の見解との関係において検討する。
著者
及川 英秋 南 篤志 南 篤志 大栗 博毅
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東北大五味教授との共同研究として5種のベクターが使用可能な栄養要求性麹菌変異株を用いた異種遺伝子発現系を活用した糸状菌由来の生物活性物質の全生合成を検討した。その過程で、遺伝子導入を短縮し、かつ限られたベクター数の効率の良い使用が問題となったが、一挙に4個の遺伝子を導入する(Tandem法)を考案し、化合物種に関係なく遺伝子数4-17個を使って、構造の複雑な天然物が自在に合成できるシステムを開発した。このほか抗腫瘍性物質や抗生物質を含む放線菌由来の骨格構築酵素の機能解析や構造多様化に向けたハイブリッド酵素系の開発を検討した。その結果、生合成酵素の複合体の精妙な制御系を見出した。
著者
鄭 汀
出版者
神田外語大学
雑誌
Scientific approaches to language (ISSN:13473026)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.133-148, 2010-03
被引用文献数
1

本稿は中日両言語の存在表現における「着」構文と「てある」構文の対応について影山(1996,2001,2009)の動詞の意味構造に基づき分析比較したものである。「着」構文と「てある」構文の対応関係を明らかにするためにはその動詞の意味構造を考察することが必要である。動詞の意味の体系についてはさまざまな考え方があるが、本稿では、両言語の動詞の意味を影山の<行為>→<変化>→<状態>という行為連鎖の観点から考察する。なぜなら両言語の存在表現の対応関係を同じ概念構造において比較することがその違いや共通点より明確に現れるだけでなく、その枠組みの有用性と限界を明らかにすることも可能となるからである。