著者
木下 智美 綿巻 徹 笹山 龍太郎
出版者
長崎大学
雑誌
教育実践総合センター紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.267-276, 2013-03-20

特別支援学校高等部に在籍する無発語で、学習活動からの離脱が目立っている一重度自閉症女子生徒に対して、拡大代替手段による要求表出言語行動と学習活動への持続的取組を形成するための個別指導を行った。要求表出言語行動については、相手に絵カードを手渡して要求対象を伝えることをPECS法で指導した。学習への持続的取組の指導については、視覚運動教材(自作を含む)を用いて指導した。いずれの指導も自立活動の授業として行い、トークンエコノミーやマニュアルガイドを利用して目標行動の指導と定着を図った。5ヵ月の指導期間中の行動成績の変化とその前後に実施したPEP-Rの成績の変化を検討した結果、要求表出言語行動及び学習活動への持続的な取組が改善されるとともに、PEP-Rのいくつかの下位領域で合格点が上昇した。要求表出言語行動の指導では複数の絵カードの中から、自分の欲しい品物を表す絵カードを正しく選択して相手に手渡すことができるようになった。学習活動への持続的取組の指導では、40分以上離席しないで学習課題をやり続けられるようになった。指導内容と対象生徒の行動変化の関係を分析した結果、指導の難易度を生徒の困難度に合わせたこと、マニュアルガイド等を活用したエラーレス学習の導入、対象児の好みを反映した強化子の導入、視覚弁別課題の導入等が重度自閉症生徒の指導に有効であることが示された。
著者
巖淵 守
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.217-220, 2006-11

コミュニケーションに障害のある人への支援に関する研究分野として日本にも導入されている拡大・代替コミュニケーションに関して、近年、科学的根拠をベースとした実践が欧米で注目を集めている。コミュニケーション支援の技法や技術が、どの程度の効果があるかについての客観的・定量的なデータが求められる背景、データ取得や分析のためのツール、コミュニケーションエイド利用にまつわる研究の例など、日本でも今後議論の対象になることが予想される話題を中心に欧米の現状を紹介する。
著者
北島 英樹 武田 篤
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.75-87, 2009-05-30

近年,AAC(AugmentativeandAlternativeCommunication)が注目されるようになり,自閉症児に様々なAAC手段を活用したコミュニケーション指導が行われるようになってきたそこで本研究では,特別支援学校の教員を対象に,自閉症児のコミュニケーション能力を高めるために,どのようなAAC手段を活用しているか,また,指導にあたる教員のAACに関する意識について調査をすることとした.結果は以下の通りである.1)自閉症児へのコミュニケーション指導は,小学部・中学部・高等部のいずれの学部でも,特定の時間を設けて指導するよりは学習全般をとおして行っていた.2)教員が有効と思うAAC手段としては,絵や写真カードは多かったが,マカトンサインやVOCAは少なかった.有効と思うこれらのAAC手段について,学部の問に差を認めなかった.3)自閉症の教育を推進する特別支援学校では,他の学校に比べ,教員のAACに関する知識や理解も高く,積極的な活用が行われていた.これらの結果をもとに,AACを活用した自閉症児へのコミュニケーシヨン指導のあり方と課題について検討した。"In recent years , the Augmentative and Alternative Communication(AAC) technique is drawing increasing interest , and various communications training programs applying this technique are gradually being carried out for autistic children. In this study , a survey was conducted on special support schools teachers to investigate the AAC methods applied to enhance communication skills in autistic children , and the views of teachers on AAC. The following are the results.l)In elementary , junior high , and high school , communication training for autistic children is generally carried out in all classrooms , instead of setting aside a special class for such training.2)ACC methods which teachers consider effective mostly use drawings , photos , and character cards. Not many gave Makaton sign and Voice output communication aid as effective . No significant differences were found between the different grades regarding the ACC methods which the teachers consider useful.3)Compared to other schools , teachers at special support schools which promote education for autistic children have better knowledge and understanding of AAC , and carry out AAC related activities keenly.Based on these results , the ideal methods of teaching communication skills to autistic children using AAC and the tasks involved were reviewed."
著者
丸岡 稔典 森 浩一 井上 剛伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.472, pp.45-50, 2012-03-02
参考文献数
15

本研究では,重度障害者用意思伝達装置の継続的な利用を可能とする支援体制整備のあり方を検討することを目的とし,重度身体障害者へコミュニケーション支援を実施している団体へ調査を実施した.その結果,1)意思伝達装置を継続的に利用するためには,導入前・後に機器の貸出,スイッチの適合・再適合,機器の設定,操作練習等多様な支援が必要とされていること,2)意思伝達装置販売事業者は,上記支援に大きな役割を果たしているものの,これらの支援の実施は現行の補装具費給付制度のもとでは事業者の大きな負担となっていること,3)支援体制の整備を図る上で,公的機関のリハ専門職,販売事業者,パソボラによる支援の役割分担を検討すべきこと,が示唆された.
著者
山村 高淑
巻号頁・発行日
2011-11-20

NPO法人グランド12事務局主催講演会(主催:NPO法人グランド12事務局). 2011年11月20日. 熊本城数寄屋丸二階御広間, 熊本市.
著者
川本 思心 浅羽 雅晴 大石 麻美 武山 智博 関島 恒夫 島谷 幸宏 西條 美紀
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-40, 2009-03

Dialogues with community constituents are indispensable for scientists whose research fields and applications are closely related with communities throughout the research processes of consensus building on executions of research projects, making decisions on research policies, sharing the products of the projects, corrections. What kind of guidance is required for scientists to maintain a dialogue with the society? Using mailing list and web portfolio, we recorded a process of planning and executing a science cafe with two researchers who research for reintroduction of Crested Ibis (Toki) into Sado Island. Additionally, to understand the reality of the research, we observed the field research by the scientists in Sado Island. This record and analysis about difficulty and the solution of the science cafe serves scientists as a effectively guidance.
著者
西村 泰一
巻号頁・発行日
2013

平成の年号の発案者は安岡正篤であるということを総理大臣経験者の竹下登が示唆しているが、安岡正篤を有名にしたのは,彼が1922年に東京大学の卒業記念に出版した”王陽明研究”である。吉田茂、池田隼人、佐藤栄作、福田赳夫、大平正芳を始めとする多くの政治家が彼を師と仰いでいた。皇室とも関係が深く、終戦の折の玉音放送の原稿の作成には、全面的に協力している。東洋思想に造詣が深く、”学問修養とは、優游自適である”の名文句を残している。ここではその”優游自適”を絵にして見た。ご笑覧いただければ、幸いである。なお埼玉県菅谷の金鶏神社の傍には安岡正篤記念館があるので、時間と興味のある方は一度尋ねてみられるといい。
著者
Isozaki Hiroshi
出版者
日本数学会
雑誌
數學 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.113-130, 2007-04

量子力学における3体問題と境界値逆問題に関する最近の話題について解説する. 3体問題の連続スペクトルに対応する固有函数展開定理と, 双曲幾何学の境界値逆問題への応用が主題である.
著者
溝井 裕一 細川 裕史 齊藤 公輔 浜本 隆志 森 貴史 北川 千香子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、ナチスによる集合的記憶の乱用の問題について調査を実施した。その結果、ナチスが過去の「アーリア人の遺産」に由来する要素を、建築、祝祭、演説などに織り込み、これによってドイツ人のアイデンティティを変化させ、彼らに人種主義的かつ優生学的な思想を植え付けようとしたことが明らかとなった。ナチスが実施した絶滅動物の復元も、「過去の想起」に関連するものであった。我々はまた、戦後の大衆文化における「集合的記憶におけるナチスのイメージ」も研究対象とした。そして、ナチスのイメージは現実というよりも我々の期待を反映したものにすぎず、世代交代や社会環境の変化に合わせて変質していくものであることを解明した。
著者
滝田 正
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.171-176, 1982-06-01
被引用文献数
2

自然日長が,作期移動による我が国の水稲品種の出穂期変動に及ぼす影響を明らかにする目的で2つの実験を行なった。早晩性を異にする感光性の高い5品種(ニホンマサリ,峰光,日本晴,中生新千本,黄金錦)に短日処理をした。この結果,7月20日頃に相当する日長(薄明と薄暮の各15分を加えて14時間45分)または8月10日頃に相当する日長(同じく14時間15分)は,夏至(同じく15時間5分)期の自然日長に比較し,出穂を促進させた。つぎに25℃の定温にした人工気象箱を用い,2月から9月まで播種期を移動させて,早晩生を異にする別の5品種(トヨニシキ,喜峰,ニホンマサリ,日本晴,中生新千本)への自然日長の影響を調べた。日長への感応度を調べるために花芽分化期(出穂30日前)における単位日長時間当りの出穂遅延度を調べた。この値の最大となる日長は,通常の栽培で花芽分化期と推定される7月1日頃から8月1日頃の日長であった。また到穂日数は,花芽分化期の日長が4月上旬以前の日長である場合は極端に短縮し,4月下旬以後の日長である場合は通常の栽培条件下の到穂日数に近かった。4月中旬は,短日から長日への移行点に当っており,この時期に花芽分化に入った感光性の高い品種は極端な出穂不揃いを示した。この理由として,短日効果が不十分なため同一株内に花芽分化した茎と花芽分化には至らなかった茎が生じたためと考察した。また4月に播種し屋外で生育させた場合は,長日条件の他に生育初期の低温により出穂が遅延した。 以上の結果から作期移動による出穂期変動は,夏至後の日長の変化によって大きく影響されると結論した。
著者
九州帝国大学 編
出版者
九州帝国大学
巻号頁・発行日
1920