著者
杉村 光隆 丹羽 均
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

女性ホルモンであるエストロゲンの神経障害性疼痛に対する修飾作用を卵巣摘出(OVX)ラットを用いて検討した。行動学的手法により、エストロゲンは神経障害性疼痛の急性炎症期には増悪因子として、慢性期には減弱因子として作用することを明らかにした。本研究では、特に急性炎症期におけるエストロゲンの作用に着目し、研究を行った。具体的には、炎症性疼痛に重要な役割を担うカプサイシン受容体であるTRPV1とANO1の発現量に及ぼすエストロゲンの影響を検討した。その結果、エストロゲンがTRPV1やANO1の発現量を亢進させることで、炎症性疼痛を増悪させることが示唆された。
著者
吉岡 正晴 杉村 忠敬
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.183-197, 1994
被引用文献数
4

&emsp;咬合力に対する頸椎の力学的反応を解明する目的で, 麻酔下の成熟日本ザルの両側の咬筋を電気刺激して, 咬合させたときおよび片側の犬歯あるいは第一大臼歯で3, 7および10mmの物質を噛ませたときの各頸椎の左右の椎弓板のひずみを測定した. <br>&emsp;作業側では犬歯で木片を噛ませたときには第二頸椎が, 第一大臼歯で噛ませたときには第四頸椎が, 非作業側では木片を犬歯で噛ませたときでも第一大臼歯で噛ませたときでも, 第三頸椎と第七頸椎とが, 噛むことによって頚椎が片側に傾斜するのを防ぐ支点としての役割を果たしている. <br>&emsp;犬歯で木片を噛ませると, 頸椎の上部は収縮し下部は伸展する. そして, 中間部は上部と下部との変形のバランスをとるために作業側が伸展し非作業側は収縮する傾向がある. これに対して, 第一大臼歯で木片を噛ませると, 木片が厚くなればなるほど作業側ではほとんどの部位が体軸方向に伸展し, 非作業側では頸椎の多くが水平方向に伸展(圧迫)する. <br>&emsp;また, 犬歯あるいは第一大臼歯でどの厚さの木片を噛ませても, 第六頸椎の非作業側には応力が集中する傾向がみられた. しかし, 頸椎には顔面や頭蓋を構成している骨よりも応力を分散させることを示唆するひずみ波形が多く認められることから, 咬合や咀嚼運動時には, 各頸椎はそれぞれの位置や形状に応じて変形して, 応力を巧妙に分散していると考えられる.
著者
杉村 直美
出版者
愛知県立日進西高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

<本研究の具体的内容>本研究申請時には、発達障害児をとりまく保護者と学校の齟齬を解明するため、まずは保護者の「傷つき」の「物語」を明確にし、その上で養護教諭を中心とする学校関係者に聞き取り調査をする予定であった。しかし、発達障害「親の会」を通し現実に調査依頼をしたところ、「相談にのってくれるのならうれしいと思ったが、調査に使用されたくはない」「もう一回自分の傷をえぐることになりそうで、話したくはない」などの理由で、個人的な聞き取りを拒否する保護者が大半であった。結局「親の会」役員が「会としてうけた相談」のいくつかをエピソードとして提供してくれることになった。一方で、「障害学会」などに参加している当事者から「聞き取り許可」を得る機会に恵まれた。これらの話からは、学校における「傷つき」体験は、「なんらかの支援が欠けていた」/「支援が不適切であった」というような「特別支援」や「ケア」的行動の不足・不適切さよりも、むしろ学校教員のとる日常的な言動や思考形態-「教員文化」とよびうるもの-に起因することがうかがわれた。そこで、学校関係者へのききとりは、保護者と当事者の傷つき体験の中から代表的だと思われるものを選択し、そのときにその教員がとりうるであろう行動とその背景を聞き取ることとした。<本研究の意義とその重要性>保護者側・当事者側から提供される「語り」は「第三者」にとって、学校教員の言動の「心なさ」「発達障害に対する不勉強の証」として一般的に認知される可能性が高いものであった。しかしこの同じ言動が、教員側からも「心なさ」「不勉強」とみなされるケースは少なく、大多数の教員にとってその言動は「学校秩序」を維持するためにも「正統な言動」と評価されるものであることが明確になった。本研究の意義は、こうした保護者・当事者と教員との「すれちがい」/「異相」を明確にできたことにある。さらに両者の「語り」から、その「異相」をうめる現実的な方法論と今後の課題を明確にできた点が、重要である。
著者
丹野 久 木下 雅文 木内 均 平山 裕治 菊地 治己
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.493-499, 2000-12-05
参考文献数
13
被引用文献数
3

1998, 1999年の2ヵ年に北海道の水稲新旧52品種について開花期耐冷性の評価を行った.縦15×横5×高さ10cmの方形ポットに主稈8本栽培したものを材料に, 1品種3〜4ポットを50%遮光幕付人工気象室で出穂日より17.5℃で15日間処理を行い, 最少で10穂の稔実歩合により判定する簡易な方法で検定した.その結果, 「はやゆき」, 「はやこがね」が最も強く強〜極強, 「赤毛」, 「ふくゆき」, 「うりゅう」, 「ほしのゆめ」, 「初雫」の5品種が強, 「富国」, 「早生錦」, 「しまひかり」が最も弱く弱〜極弱であった.開花期耐冷性(冷温処理区の不稔歩合)と穂ばらみ期耐冷性(従来の評価.以下, 耐冷性評価には極強:2〜極弱:8を当てはめ相関係数を算出した)との間にはr=0.541(n=52, 以下同じ)の有意な正の相関関係が認められた.また, 育成年次が新しい品種ほど穂ばらみ期耐冷性が強い傾向が認められたが(育成年次と従来の穂ばらみ期耐冷性評価の間にr=-0.366), 開花期耐冷性とは一定の関係がみられず(育成年次と開花期耐冷性評価との間にr=-0.055^ns), 育成品種の開花期耐冷性を向上させるためには育種の場で直接選抜することが必要であると考えられた.さらに, 穂ばらみ期耐冷性が極強か極強に近いと評価されている北海道の耐冷中間母本7系統と耐冷育成系統の30系統, 計37系統の開花期耐冷性を検定したところ「永系88223」と「北育糯87号」の2系統が2ヵ年とも極強と判定された.これらの2系統は系譜の上から穂ばらみ期だけでなく開花期においても「はやゆき」に由来する耐冷性を持つことが推察された.
著者
梶川 伸一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1922年初頭からはじまるロシア正教会への弾圧はまず、飢餓民に必要な食糧を外国で購入するための貴金属没収の口実ではじまった。このキャンペーンの開始時には、中央委員の多くは必ずしも反教会の強攻策を支持しなかったが、3月半ばのシュヤ事件に対する党中央委員への秘密書簡は党指導部内のこれまでの待機的気分を一掃し、軍事力を動員しての教会と聖職者への容赦のない弾圧と迫害がはじまった。このようにして、宗教弾圧の実施過程でゲー・ペー・ウーにより民衆の抵抗を圧殺するシステムが動き出したのである。
著者
谷口 弘一 田中 宏二
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13451375)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.45-52, 2011-03-01

This study examined the effects of support reciprocity in the relationships with principals and colleagues on self-efficacy and burnout among teachers. The respondents wore 122 school teachers (51 elementary school teachers, 9 junior high school teachers, 44 senior high school teachers, 17 teachers of school for the disabled, and 1 unidentified by school). They completed measures of social support exchange in the relationships with principals and colleagues, measurements of self-efficacy in student guidance, course instruction, and job relations, and a burnout assessment with a Japanese version of the Maslach Burnout Inventory. Teachers, support reciprocity in the relationships with principals related significantly to their self-efficacy in course instruction and job relations, and marginally significantly to their self-efficacy in student guidance. Results also indicated that teachers, support reciprocity in the relationships with colleagues correlated significantly with their self-efficacy in course instruction and marginally significantly with emotional exhaustion.
著者
関 博美 兒玉 憲一
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属心理臨床教育研究センター
雑誌
広島大学大学院心理臨床教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.86-96, 2013-03-20

The relationships of rumination and reflection with self-focus, se1f-efficacy, self-esteem and depression, as well as gender differences in these relationships were investigated. Results indicated that women ruminated more than men and that men reflected more than women. Moreover, reflection had a negative effect on depression in men, whereas it had no effect on depression in women. Previous research has suggested that reflection does not have an effect in alleviating depression. Results of this study indicated that rumination had a positive effect on depression without regard to sex. However, rumination had a negative influence on self-efficacy and self-esteem in both sexes. It is concluded that negative and persistent ruminations lowers the self-efficacy and self-esteem.
著者
板倉 弘子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.221-229, 2001-03-15

Every adult has the right to learning. This paper intends to make clear that adult education guarantees the accesses of every adult to learning opportunity in multicultural societies. It is focused on that Adult, Community and Further Education (ACFE) programs in Victoria, Australia, is one of the typical program in multicultural societies. Various learning programs for adults in Victoria communities have been developed by ACFE. In conclusion the author has emphasized two points as follows : first, there is no clear process through which every adult, to learn in ACFE system, makes it effective to utilize by himself his learning results; and secondly, ACFE policies are prepared carefully to realize equality for every adult in communities.
著者
児玉 直美
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は有用木本植物であるユーカリを対象として、その蒸散効率の制限要因の環境応答を調べることであった。具体的には、蒸散効率の重要な要因である膜のCO_2と水の拡散を制限しているアクアポリンという膜たんぱく質に注目して、アクアポリンの蓄積量を遺伝的に改良した植物を用いて実験を行った。本年度は、1)蒸散効率の制限要因である気孔コンダクタンス(gs)と葉肉コンダクタンス(gm)を、秒~分単位の高時間分解能で連続的に同時測定できるように実験システムのセットアップを行った。これによってgsやgmの短期的な環境応答の測定が可能になった。2)アクアポリンの蓄積量の変化によって、短期的な光環境の変化に対する、蒸散効率の制限要因であるgsとgmの応答速度の違いを調べた。1)の実験セットアップは中赤外分光レーザーCO_2同位体計というシステムを導入し、他機関の研究者と協力して行った。これによって、葉肉コンダクタンスと気孔コンダクタンスの同時測定を、秒単位で行えるシステムを確立した。このシステムによって環境の変化に素早く反応して変化するタンパク質や酵素の影響をとらえることが可能になった。また、2)の実験によってアクアポリンの蓄積量の違いによって、光変化に対する応答時間が異なることを示すことに成功した。これらの結果は植物の生産性を高めることや生態系内の水や炭素の循環に関しても重要な知見を与えると考えられる。
著者
佐藤 一子
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯教育計画講座社会教育学研究室紀要編集委員会
雑誌
生涯学習・社会教育学研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.11-42, 2006-12-26

This paper intends to examine the process of realization of the General Plan for integrated lifelong learning in the Region of Tuscany. The plan is influenced by the idea of the Strategy of European Commission for development of human resources. It is said that the Tuscany's Regional Law is one of the model of integration and innovation of education policy in Italy, because all the fields of education and training for infants, youth and adults are treated together in this Law. It is remarkable that the system and procedure of "community governance" is introduced to the process of the realization of the Plan, so that the three subjects of Region, prefectures and cities agree and work together to promote the projects on the basis of participation of social partners. In a decade from 1990's, the situation of the promoting system for adult education has gradually changed not only at the Regional level but also at the local level. Especially it is noted that the experimental process of introduction of study circle from northern Europe into the Region has provoked discussion about new profile of staff like tutors and new methodology of self-education. It seems that the traditional adult education system and associationism are also influenced by these innovations. In this paper I focused on the significance of the development of adult education network supported by different agencies and the policy of supply- demand model inspired by the Region's Plan.
著者
高桑 いづみ 勝木 言一郎 加藤 寛 樋口 昭 竹内 奈美子
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

三年間にわたって、地方の寺社や博物館が所蔵する雅楽・能楽の鼓胴を中心に調査をおこない、多くの収穫を得た。特筆すべきことは、雅楽から能楽へ至る過渡期の鼓胴を発見したことである。先回、科学研究費の交付を得て実施した「雅楽古楽器の総合的調査研究」でも石上神宮を神谷神社で発見したが、それとほぼ同形態のものを京都府日吉町、飛騨古川の荒城神社でも発見した。この四カ所の鼓胴は法相華文のかわりに黒漆を施し、雅楽鼓特有の鬘(乳袋上に突起した環)の代わりに線を彫り込んだ特異な形態で、線刻がなければ能の鼓胴、と言えるほど能の鼓胴に近い。荒城神社蔵の一筒を除くと規格もほぼ一定で、過渡期の段階である程度形態の規格化が進んでいたことがうかがえる。さらに福山市沼名前神社では、能への転用を意図してこの線刻の鼓胴に蒔絵を施したものを発見した。雅楽・中世芸能から能の囃子へ、鼓胴の流れを示す貴重な作例である。次に大きな発見は、平成10年に五島美術館で行われた「益田鈍翁展」に出品された「伎楽鼓胴」である。かつてない大きな法量の鼓胴で、「四ノ鼓」の遺品であろうと考えられる。今まで各称のみで実態が知られていなかっただけに、その発見意義は大きい。今回は能楽鼓胴、その他の雅楽鼓胴や鞨鼓、坐太鼓の調査も行ったが、新たな発見が多かった。