著者
中村 卓司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、インドネシア・ジャカルタで1992年以来中間圏・下部熱圏の風速を観測している流星レーダーのデータを解析し、赤道・低緯度域で観測を行なっている他のレーダー観測と比較解析することにより、1日周期大気潮汐波、赤道波など低韓度域で卓越するものの解明の遅れているグローバルな大気波動の構造を解明することを目的とした.まず、ジャカルタ流星レーダー(東経107度、南緯6度)の観測結果を処理して、東西風・南北風のデータベースを作成し、同じ高度・時間分解能でクリスマス島(西経158度、北緯2度)、ハワイ(西経157度、北緯22度)、アデレイド(東経138度、南緯35度)を同じ分解能で処理してデータベースを作成した.その後、平均風と1日および半日周期成分をフィッティングして2次データとし、それらの相関解析やクロススペクトル解析を行なった.その結果、赤道域において平均風や潮汐が激しい年々変動を伴う半年周期変動と示すことが見出された.また、短周期の変動として5〜30日周期の変動が観測されたが、それらの観測地点間の相関は低く、振幅、位相等のパラメータの相関解析から局所的な重力波との相互作用で潮汐が変動している可能性が示唆された.解析は2日波、3日周期ケルビン波などにも行い、グローバルな振幅増大か認められるとともに、鉛直方向の運動量輪送に大きな貢献をなしている可能性が示唆された.さらに、観測期間は限定されるがUARS衛星によるグローバルな観測結果を比較することにより、衛星観測では曖昧さの多い波動周期の情報をレーダー観測解析結果から補完し、これらの波動が運動量の緯度方向の輪送にも重要な役割をしていることが示された.
著者
村瀬 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.252-258, 2002-04-01
被引用文献数
16

パラメトリック固有空間法は1993年に開発された汎用的な画像認識手法であり,その後,物体認識,動画像認識,ロボットの視覚制御など様々な分野に応用されている.また画像以外への拡張も可能な手法である.この手法は,物体の向きなど連続的に見かけが変化する画像を,固有空間上の軌跡で表現する手法である.固有空間とは,元の画像の特徴をよく表現している空間のことで,例えば画像ベクトル集合の固有値展開等により得られる空間などがそれにあたる.パラメトリック固有空間法により,アドホックで複雑な特徴を用いることなく,多様な見え方をする画像を認識することができる.
著者
高橋 直久 小野 諭
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.71(1989-PRO-030), pp.31-40, 1989-09-08

宣言的デバッグシステムDDS(Declarative Debugging System)では、プログラマはプログラムに期待する実行結果や途中結果を与え(宣言的に定義し)、それに基づいてシステムがプログラムのテキストと実行履歴を解析しバグ探索空間を絞り込む。本稿では、DDSの設計課題を考察し、実現上重要な3つの機構、すなわち、バグ発生源の判定機構、プログラムの部分実行機構、プログラムの診断機構について議論する。被デバッグプログラムに対して診断に不要な部分の実行を抑止する“計算の凍結”機能が重要であることを示し、その実現法とデバッグへの適用法を明らかにする。さらに、プログラム構造の静的な解析とバグ検出のヒューリスティクスを用いてプログラマの宣言と部分実行結果を解析する手法を提示する。最後に、VAX/VMS上に作成したDDSのプロトタイプを用いたデバッグ例を示し、関数型プログラムのデバッグにDDSが有効であることを示す。
著者
Harumasa Tada Nobutoshi Todoroki Kazufumi Fukui Masahiro Higuchi
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.2328-2338, 2001-09-15

Hierarchical naming has been used in file systems for the last several decades.As the number of files stored in file systems increases the weakness of hierarchical naming is getting recognized.Some researchers have proposed hybrid naming schemes whichintroduce attribute-based naming into hierarchical naming.However they are unsatisfactory or too complicated.In this paper we propose a hybrid naming scheme called HK (Hierarchical-Keyword-based) naming.In HK naming a file is named by a set of keywords and keywords are organized hierarchically.It integrated hierarchical naming and attribute-based naming in a simple way.To show the practicality of our naming scheme we implemented the prototype of the filename management system on UNIX file systems.
著者
田中 朋之 渦原 茂
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.50(1991-PRO-060), pp.1-10, 1991-06-21

多くの共有メモリ型の並列Lispでは並列性の記述にfuture式を用いている。本稿ではCommon Lispの多値機能にfutureを導入した場合の問題について考える。futureと多値機能を共存させるためには1つのfutureオブジェクトに複数の値を格納できるようにする必要がある。ところがそのままこの方法を用いると、プログラムにfutureを挿入した場合としなかった場合とで返す値の数が異なってしまう場合があり、Common Lispで定義される多値の意味を変えてしまう。この問題を解決するためにmv?context法とmv?pフラグ法の2つの方法を提案する。この2つの方法はマルチプロセッサ・ワークステーションTOP?1上の並列Lisp、TOP?1 Common Lispにおいて実現した。
著者
Kazuhiko Imaizumi Shogo Sato Mari Kumazawa Natsuko Arai Shoko Aritoshi Shunta Akimoto Yuko Sakakibara Yu Kawashima Kaoru Tachiyashiki
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.109-116, 2011-02-01 (Released:2011-02-01)
参考文献数
23
被引用文献数
13 16

Red peppers are used as a spice for enhancing the palatability of foods. Two major capsaicinoids, dihydrocapsaicin (DHC) and capsaicin (CAP) are responsible for up to 90% of the total pungency of pepper fruits. These capsaicinoids are known to enhance energy metabolism and thermogenesis. However, there is a little information on the effects of capsaicinoids on the lipolysis and carbohydrate metabolism. We studied the effects of DHC and CAP on plasma glucose, free fatty acid (FFA) and glycerol concentrations in rats. Male six-week-old Sprague Dawley rats were divided into the DHC, CAP and control groups. Each capsaicinoid (dose = 3 mg/kg BW/day) was subcutaneously administered to rats for 10 days. DHC increased markedly plasma glucose, FFA and glycerol concentrations on day 1-10 by 14-35%, 61-103% and 108-174%, respectively, as compared with those of the control group. CAP increased relatively plasma glucose concentrations on day 1-3 by 15-17%, as compared with the control group. However, there were no significant differences in plasma glucose concentrations on day 7-10 among three groups. On the contrary, CAP did not change plasma FFA and glycerol concentrations on day 1-3. However, CAP increased markedly plasma FFA and glycerol concentrations on day 7-10 by 54-89% and 92-98%, respectively, as compared with the control group. DHC and CAP did not change the weights of white (perirenal and periepididymal) and brown (interscapular) adipose tissues. In conclusion, the effects of capsaicinoids on plasma glucose, FFA and glycerol concentrations were relatively higher in the DHC than in the CAP, and capsaicinoids did not change the weight of white and brown adipose tissues.
著者
伊藤 きよ子 日下部 信幸
出版者
東海学園大学
雑誌
紀要 (ISSN:02858428)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-48, 1993-09-01

24種類のフレアースカートを揺動させて官能検査を実施し, 揺動量および材料特性, フレアー分量との関係を検討した。その結果を要約すると, 次のようである。1)SD法によるイメージ評価をフレアー分量間で比較すると, 「すっきりした」「歩きやすそうな」を除く9種類のイメージ評価は, フレアー分量の大きいF_1が高く, フレアー分量の小さいF3は低い傾向にある。2)F_2は試料によりイメージ評価の差が大きい。3)「若々しい」「すっきりした」を除く9種類のイメージ用語は, いずれもフレアースカートの揺動美を表現する用語であり, 「美しい」という用語に置き換えることが可能である。4)ドレープ係数, 剛軟度, せん断剛性G, せん断ヒステリシス2HGおよび2HG5の各物性と揺動量は, 揺動美を表現するイメージ用語と関わりがあり, 各物性値が小さく, 揺動量の大きいフレアースカートは美的官能評価が高い。5)一対比較法による美しさと揺れやすさの官能評価では, 柔軟な試料であるポリエステルジョーゼット, ウールサージの評価が高く, かたい試料であるハードデニム, ソフトデニム, フラノの評価は低い。
著者
武藤 虎太 ムトウ トラタ Muto Torata
出版者
龍南會
雑誌
龍南會雜誌
巻号頁・発行日
vol.37, pp.8-20, 1895-06-07
著者
植田 睦之 福田 佳弘
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.S21-S26, 2010 (Released:2010-09-13)
参考文献数
5
被引用文献数
4

北海道西部の日本海沿岸において,オジロワシとオオワシの飛行頻度に影響する気象要因を明らかにするために調査を行なった.解析した気象要素は,気圧,気温,降水量,風速,日照量および,風速の西ベクトル(西方向の風の強さ)と北ベクトル(北方向の風の強さ)で,これらとワシ類の飛行頻度とを比較した.その結果,西方向の風の強さがオジロワシ,オオワシの出現頻度に影響していた.調査地では西方向の風が吹くと海岸段丘による斜面上昇風が生じると考えられ,そのため西方向の風が強いとワシ類の出現頻度が高くなるのだと考えられる.
著者
松本 琢磨
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

まず、ひので衛星の高解像度かつ安定な対流画像を用いて、対流運動のパターンを追跡することで、水平速度場を求め、世界で初めて、対流運動の水平速度場スペクトルの統計解析を行った。その結果、水平速度場の全パワーを定量的に評価でき、さらにどの振動数・波数帯にパワーが集中しているか、までもが判明した。これにより、対流で発生するアルフベン波のエネルギーを計算することが可能である。今後この結果をもとにして、コロナ加熱・太陽風加速問題が大きく進展していくことが期待される。次にアルフベン波散逸の多次元効果を調べるため、光球表面から、太陽風加速領域までを同時に計算可能であるようなロバストな数値計算コードの開発を行った。数値計算スキームにはHLLD法と呼ばれる、分解能が高い割に計算コストが少なく数値的に安定な解法と、磁場のソレノイダル条件を保証してくれるflux-CT法を組み合わせたものを用いた。衝撃波管などの典型的な問題や線形波動伝播による精度評価などを実施し、現在では実際に光球から太陽風加速領域までの領域を含めた大規模な計算が行えるようになった。その結果、2次元計算において初めて、コロナ加熱と太陽風加速の両者を同時に説明可能なモデルを構築できた。現在はその計算結果を解析し、論文化の作業を行っている。以上の研究によるコロナ加熱・太陽風機構の知識から、宇宙天気モデリングに必要な基礎物理に対する理解が深まった。
著者
篠原 俊一
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.111-202, 2000

我々の住む世界を、パラメーターのない理論により第一原理から導き出す事が、素粒子物理学の究極の目的であることは疑いのないことである。しかしこの問題に対し、摂動的な弦理論は不適当であり、更に一段階進化した理論が必要とされている。IIB行列模型(IKKT模型)はそのような理論の候補として提案された模型である。それは摂動的弦理論を内包しているだけにとどまらず、いままでは全く手が出なかった非摂動的な問題に解決の糸口を与え、現実世界の記述へ向けた新しい道筋を示した。IIB行列模型では時間、空間と物質はもはや不可分なもので、全てがダイナミカルに影響をおよぼし合うのである。本論文ではIIB行列模型の弦理論との関係、そしてIIB行列模型に特有な性質についてレビューを行う。