著者
向江 頼士
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

1937年,K.Wagnerによって5頂点からなる完全グラフK5をマイナーに持つグラフの構造が特徴付けられたが,6頂点以上の完全グラフに関しては何も知られていない状況であった.ところが,2003年にB.Moharたちは,「グラフが閉曲面に埋め込める」という位相幾何学的な条件を付加することにより,「射影平面上の5-連結3-representativeグラフはK6をマイナーに持つ」という定理を証明した.この結果により,K6をマイナーに持つためのある程度意味のあるグラフ構造が記述されたが,まだ十分条件を与えるに留まっていた.そこで本研究では,曲面上のグラフを「三角形分割(各面が三角形であるような曲面上の単純グラフ)」に限定した.B.Moharたちの定理よりも条件は強くなっているが,射影平面,トーラス,ダブルトーラス,クラインの壷,種数3の向き付け不可能な閉曲面上の三角形分割がK6をマイナーに持つための必要十分条件を示している.これらの結果を皮切りに,完全グラフをマイナーに持つ曲面上のグラフ構造とその関連についての研究を行った.今年度の研究結果の一つとして,種数4の向き付け不可能な閉曲面上の三角形分割がK6をマイナーに持つための必要十分条件を示した.この結果から「種数4の向き付け不可能な閉曲面の全ての5-連結三角形分割と全ての4-representative三角形分割はK6をマイナーに持つ」という系を得られた.また,その他の閉曲面上のグラフの研究として,四角形分割から偶三角形分割への拡張可能性についていくつかの結果が得られた.
著者
関 孝一 伊藤 芳晴 西 泰雄 猪阪 優子
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.385-391, 1993
被引用文献数
19 3

IFN治療中のC型慢性活動性肝炎症例のなかに,視力低下や飛蚊症などの自覚症状を訴え,眼底出血の存在を指摘される3症例が発現した.このため,IFN治療中20例と,IFN治療終了後14例,34例全例に眼底検査が指示され,IFN治療中の残る17例から,自覚症状を欠く眼底出血例4例があらたに発見された.眼底出血例7例が詳細に検討され,眼底出血がIFNの副反応の1つであることが推測された.乳頭部周囲に位置する表層性出血と軟性白斑が共通する特徴的所見である.出血例7例と非出血例27例が対比検討され,眼底出血発現の背景因子は糖尿病の合併,危険因子はIFN治療開始後の血小板減少,血小板減少率,triglyceride高値,がT検定で有意(p<0.05)と結論された.眼底出血例は視力障害など重篤な眼症状を伴なわず,又IFN治療中に眼底所見が改善する症例が3例あり,IFNは慎重な観察の下に治療継続が可能である.他方,自覚症状を欠く眼底出血例が4例あり,IFN治療例は全例に眼底検査が必要と考えられる.
著者
布村 紀男
出版者
富山大学総合情報基盤センター
雑誌
富山大学総合情報基盤センター広報 (ISSN:13490796)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-62, 2009

商用ソフトウェアのMATLABを意識して作られた行列演算,グラフ機能パッケージとしてOctave, FreeMat, ScilabなどがWebを通じて入手し,手軽に試してみることができる。ここでは,インストールから使用方法まで簡単に解説する。
著者
小林 邦夫
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 ドイツ語学・文学 (ISSN:09117202)
巻号頁・発行日
no.47, pp.217-248, 2011

小林邦夫教授 退職記念号 = Sonderheft für Prof. Kunio KOBAYASHI第一章 一切皆苦第二章 煩悩と精進第三章 輪廻転生第四章 因縁生起第五章 禅思想第六章 唯識思想第七章 浄土思想
著者
竹中 利彦
出版者
京都大学哲学論叢刊行会
雑誌
哲学論叢 (ISSN:0914143X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.16-27, 1998-09-01
著者
山口 泰雄 武隈 晃 野川 春夫 杉山 重利 大沼 義彦 高橋 伸次
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は、昨年度の研究成果を整理し、本年度の研究計画を立てた。海外調査は、「北米班」と「オセアニア班」に分かれて、イベント調査と団体調査を実施した。北米調査においては、障害者の国際スポーツ統括団体である「スペシャルオリンピック」の事務局を訪ね、ヒアリング調査と関連資料を収集した。加盟国は150ヶ国に上り、100万人が活動している。また、オーランドで開催されている「全米シニアゲームズ」のフィールドワークを行った。会場は、ディズニーワールドの中のディズニースポーツセンターで、センターに登録されたボランティアが大会のサポートを行っていた。カナダにおいては、厚生省の「ヘルス・カナダ局」を訪ね、フィットネス活動に関するボランティアの概要をヒアリングした。また、フィットネス活動の広報団体である「パーティシパクション」の事務局を訪ね、「トランスカナダ・トレイル2000」事業におけるボランティアの活動概要の資料を収集した。「オセアニア班」は、ニュージーランドの政府機関である「ヒラリーコミッション」を訪ね、ボランティア指導者のキャンペーンやスポーツクラブにおけるボランティアのヒアリング調査と関連資料を収集した。オーストラリアにおいては、政府機関である「オーストラリア・スポーツ委員会」を訪ね、VIPプログラムとボランティアを含めた「アクティブ・オーストラリア」キャンペーンの資料を収集した。2000年2月には、カナダのMcPherson教授を招聘し、研究分担者が集まり、平成11年度における研究成果の研究報告会を行った。同時に、わが国におけるスポーツボランティア活動の定義、分類、および今後の振興方策を議論・整理した。
著者
得丸 公明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.119, pp.49-54, 2011-06-30
被引用文献数
1

西洋の論理学においては,言語命題のみが扱われてきた.日本には日本論理学会も存在しないし,言葉の論理を積みあげること自体が好まれない.イエルネのネットワーク理論とピアジェの心理学を参照にして,日本と西洋の違いを,生命体のもつ論理と記憶の記号メカニズムによって解明することを試みる.記号論において,言葉に意味はなく,言葉の意味は個人の体験記憶である.同様に言語表現の論理性は,言葉自体によって保証されるのではなく,言葉に意味を与える意識が保証するものである。言葉の記号は意識の論理回路で反射的に処理されるので,その構築が重要となる.言語以前の論理学を理解すると,言葉の正しい使い方,言葉の正しい意味付け方を理解でき,先人の努力と言葉を継承して前進することができる.
著者
友田 勇 石田 卓夫 新井 敏郎 鷲巣 月美
出版者
日本獣医畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

競争馬,種牡馬,種牝馬,未調教2歳馬の赤血球におけるグルコーストランスポート活性と解糖酵素活性を比較した.血糖値およびインスリン値は各群間で差はなかった.グルコーストランスポート活性,ヘキソキナーゼ(HK),ピルビン酸キナーゼ(PK),グルコース-6ーリン酸でヒドロゲナーゼ(G6PD)活性については種牡馬,種牝馬,未調教馬群の間に特に差はなかったが,調教を積んでいる競争馬ではグルコーストランスポート活性は平均5.8nmol/min/mg proteinであり,他の群の値の2倍以上,HK,PK活性も2-3倍と著しく増加していた.競争馬のG6PD活性は他の群のそれに比べ若干増加傾向が認められたが,有意な差はなかった.以上のように調教を積んでいる競争馬では血糖値,インスリン値などはとくに変化しないにも関わらず,赤血球のグルコーストランスポート活性および解糖系酵素活性が未調教馬に比べ,著しく増加していることが明らかとなった.これは調教に伴う基礎代謝の亢進によりグルコース利用が高まっていることを反映したものと推察された.犬の正常な乳腺細胞と乳腺腫瘍細胞におけるグルコーストランスポート活性およびサイトソル酵素活性を比較した.乳腺腫瘍細胞のグルコーストランスポート活性は正常乳腺細胞の約2倍,腫瘍細胞のHK,PK活性は正常細胞の3-4倍,乳酸脱水素酵素(LDH)は約2倍であった.これらのことから,乳腺腫瘍細胞ではグルコースの取り込みやその利用が正常乳腺細胞に比べ著しく亢進していることが明らかとなった.また,悪性度の高い腫瘍では,LDHアイソザイムのV型活性が優位になる傾向が認められた.GLUT1のC末端の15アミノ酸残基の合成ペプチドでウサギを免疫し,抗GLUT1抗体を作製した.この抗体を用い,ヒト,犬,猫,豚,馬,牛,羊の赤血球膜に存在しているGLUT1の検出を試みたところ,全動物種にGLUT1抗体と特異的に反応するバンドが認められた.
著者
堀 昌平 FERRANDIZ Romero M.E. FERRANDIZ ROMERO MARIA ENCARNACION MARIA ENCARNACION FERRANDIZ ROMERO
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では制御性T細胞(Treg)分化と機能発現に関わる抗原特異性とTCRレパトワを解明することを目的とし、Treg由来核移植ES細胞クローン1D2から樹立した1D2-TCRβマウスを用いて以下の研究を行った。(1)Treg由来TCRの特異性の解析:1D2クローンがTreg由来であることを証明してその特異性を明らかにするためにRAG欠損マウスの骨髄細胞に1D2 αβTCRを発現させるレトロウィルスを感染させ、これを放射線照射したRAG欠損マウスに移入してTreg分化を解析した。その結果、この1D2 αβTCRを発現する細胞から確かにFoxp3+ T細胞が分化することを見出し、このクローンがTreg由来であることを明らかにした。(2)Tregおよびaborted TregのTCRレパトワ解析:最近我々は、Treg分化の過程で一部のFoxp3+ T細胞がFoxp3発現を失ってヘルパーT細胞へと分化する可塑性を示すステージがあることを見出し、このような細胞をaborted Tregと名付けた。Tregとaborted Tregの関係、そしてそれらの特異性を明らかにするために、1D2-TCRβマウスにFoxp3^<EGFPCre>, ROSA26^<RFP>, TCRCα+/- allelesを交配により導入し、ここからTreg(EGFP+), aborted Treg (EGFP-RFP+), non-Treg (EGFP-RFP-)を単離してVαレパトワを解析した。その結果、これらのレパトワは多少の重なりはあるものの全体として異なっており、ある特定の特異性を持ったFoxp3^+ T細胞のみがTreg分化においてabortされることを見出した。
著者
杉山 芬
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.386-391, 1956-10-15

This paper deals with the quantitative relations of a parasitic nematode to its host insect on the field near Midakedo Pond in Hirosaki, Aomori Prefecture. The parasitic nematode, not yet indentified but probably belonging to a species of Mermitata, is not found in Atractomorpha bedeli Bolivar (dominant or subdominant here), Ducetia japonica Thumberg and Homorocoryphus jezoensis Matsumura & Shiraki, but in Oxya japonica Willemse (subdominant or dominant), Conocephalus chinensis Redtenbacher and Conocephalus japonica Redtenbacher (both of the Conocephali being rarer than the other Orthopterous insects). Oxya japonica with the nematode may be rather inactive (Figs. 1 and 2) and some hosts have a milky white abdomen as seen from the dorsal side. The parasitic rates of the nematode in Oxya japonica, observed around Midakedo Pond, are different from those at the other stations (Table 1, Fig. 1 and Fig. 2), but the rates at St. 1, 1', 2', 3', 4 and 5 are different from those at St. 4, 9. 11'. The rate in the male host is not different from that in the female one. Observations of the nematode in Oxya japonica at St. 1, 1', 2', 3', 4 and 5, reveal a pattern of "concentrating distribution"(Fig. 4). This may be atributed to the movement of the hosts, and to the place where they are infected with the parasite.
著者
鈴木 道隆 茂垣 雅俊 浜口 洋平 舛井 秀宣 福島 忠男 長堀 薫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1958-1961, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

症例は64歳,女性.関節リウマチのため10年前よりステロイドを内服していた.平成18年12月,腹痛・悪心嘔吐を主訴として救急外来を受診し,腹部単純X線写真で著明な小腸ガス像を認めたため,腸閉塞の診断で入院となった.第2病日にイレウス管を挿入するも,自覚症状・画像所見はともに改善せず,第6病日に呼吸困難を発症した.胸部単純X線検査・胸部CT検査で右胸腔内に拡張した小腸を認めたため,横隔膜破裂と診断した.第7病日に横隔膜修復術,イレウス解除術を施行した.術後経過は良好で,第25病日に退院となった.横隔膜破裂の原因は外傷が殆どであるが,本例は,ステロイド内服による組織の脆弱化と腸閉塞による腹腔内圧の上昇が原因と考えられた,稀な発症様式の横隔膜破裂例であった.腸閉塞による横隔膜破裂の報告は,検索しうる限り本例が本邦で2例目であった.若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.147-170, 1989-04-05
被引用文献数
29 33

イオン会合を利用する新しい分離法と分析法の開発に関する研究を行った。イオン会合の概念をより明確にするための基礎検討を行い、イオン会合のしやすさ,抽出のされやすさについて考察した。イオン会合の様式を静電引力型と疎水構造型に分け、それぞれ静電引力型イオン会合性試薬と疎水構造型イオン会合性試薬を対応させた。疎水構造型イオン会合性試薬を用いる抽出分離法において、イオン会合体の抽出性に及ぼす抽出溶媒の影響、イオン会合性試薬の影響について検討し、それらを基に抽出定数 (log K_<ex>)の推算法について考察した。四塩化炭素を基準にした場合の溶媒の抽出能(イオン会合体の抽出のしやすさ)は万丁値と良好な直線関係を示す。抽出定数はlog K_<ex>=C+A(C:対陽イオンの抽出性の尺度、A:対陰イオンの抽出性の尺度)で表されるものとし、各種陽、陰イオンのC値、A値を決定した。又イオン骨格と置換基の寄与(π値)を用いるC値、A値の概算法も示した。log K_<eX>を推算し、あるいは実測値を用いて、新しい抽出分離法と吸光光度法を設計し、実際にも有用な方法多数を'開発した。溶媒抽出を用いない方法についても検討した。水溶液での疎水構造型イオン会合体生成に基づく新規定量法として、酸一塩基反応を伴う吸光光度法2方法を検討した。一つはイオン会合体の可溶化現象を用いるもので、リン、ケイ素の定量例が示された。もう一つはイオン会合体のミセル抽出現象を用いるもので、アルキルアミン、第四級アンモニウムイオンについての検討例を示した。更に、イオン会合の概念が適用できる例として、逆相分配クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによる疎水構造型イオンの分離定量例も示した。
著者
伊吹 禎一 樋口 勝規
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

卒直後歯科医師臨床研修での教育利用を目的とした、パソコンで行うシェードテイキング(歯の色選択)のトレーニングプログラムを作成し、その効果を検討した。研修歯科医のシェードテイキングの学習状況を調査したアンケートに基づき、歯の色に関する基礎的知識を問う課題と、シェードガイド(歯の色選択で使用する色見本)を複数提示し色を比較する課題で構成されたウェブシステム構築を行った。本システムにて実習の結果、知識と色の三属性のひとつである明度識別能の向上がみられ、臨床研修教育への利用が有効であることが示唆された。
著者
大橋 一正 中島 康孝
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.1-11, 1991-02-25
被引用文献数
2

本研究は既存の事務所建物において消費されるエネルギー量を調査・分析し,省エネルギー診断を行う基礎的な資料,および手法を提案した.各建物においてエネルギー消費量は固有のものであるが,建物の用途によってはある程度共通性がある.本報告は既存事務所建物におけるエネルギーの消費実態調査を基に空調用エネルギー消費量と各年度(1981〜1985年)の気象変動量がどのような関数で表すことができるかを重回帰分析による略算式で示し,この簡易推定判定式を省エネルギーを目的とした各建物のエネルギー管理が容易に行われるための初期診断の基礎資料とした.分析対象とした既存建物の規模は延べ床面積約1700〜39000m^2,平均約7700m^2である.