著者
平本 毅
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
no.5, pp.101-119, 2011
著者
平本 毅
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.101-119, 2011

会話の中で一定のまとまりをもった話題上の話が展開し、その話題についての話が終了しうると参与者が指向している場所(話題の境界)には、「話題アイテム(名詞や名詞句で表象される話題)」が単体で、あるいは助詞を伴って置かれることがある。このような振る舞いを、本稿では「話題アイテムの掴み出し」と呼ぶ。本稿の目的は、「掴み出し」がはたす話題の管理上の仕事を会話分析により記述することである。「掴み出し」は、「呟かれた」ものとして聞くことが可能なように発される。そしてこの「呟き」が話題の境界において行われるために、「掴み出し」はそれ自体では次の発話スロットにたいして順番取得組織上の制約も、行為連鎖組織上の制約も課さない。その代わりに、実際には話題が途切れうるような箇所で、「掴み出し」に続けて①[無標な発話]を置くことにより、スムーズに話題が「継続」したかのような装いが、②[掴み出された話題アイテムの繰り返し+無標な発話]を置くことにより、スムーズに話題が「共一選択」されたかのような装いが、③[掴み出された話題アイテムの繰り返し+有標な発話]を置くことにより、先行発話に含まれていたアイテムを「接線的共一選択」したような装いが与えられる。言いかえれば「掴み出し」は、「潜在的に言及しうる話題」(Schegloff& Sacks 1973: 300)を会話にフィットさせるための足がかりを築く役割を果たしている。
著者
横田 眞一 吉田 和弘 金 俊完
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

長寿命で耐振動性などの特長を備えた小形で低コストな極薄ジャイロを実現することを目的として,本年度では,小形化,薄形化,集積化,大量生産が可能なMEMS技術を用いた極薄ECFマイクロレートジャイロを開発した.ECFジャイロは,1)ECFジェット発生部,2)噴流発生部と流路,3)速度方向検出部の主要要素で構成されている.まず,MEMS技術によるECFジェット発生部として,高アスペクト比を有する金属構造体である三角柱-スリット形電極対を提案し,フォトリソグラフィによりガラス基板上に形成した金属の薄膜に高さ500μmのレジストによる鋳型を形成し,Ni電鋳により電極を形成する製作プロセスを提案した.鋳型に用いるレジストとして,高アスペクト比のマイクロ構造体の形成と,電鋳後の鋳型を選択的に除去可能な厚膜レジストKMPRを選定し,電鋳におけるプロセス条件を検討することでマイクロ電極対の試作に成功した.次に,電極対を形成したガラス基板にエポキシレジストSU-8により噴流発生部と流路を試作し,従来の機械加工によるジャイロに用いられていた速度方向検出部と組み合わせることで,部分的にMEMS化したECFマイクロレートジャイロを構成し,特性実験を行った.厚さを5mm,流路体積を10×8×t0.5mm^3とし,従来よりも1/5程度に小形化したジャイロの動作を確認したほか,流路高さを1mmとしたジャイロで印加電圧0.38kVとした際に比較的良好な特性が得られた.また,支柱の上の薄膜にホットワイヤとなる回路を形成した形の速度方向検出部を提案し,MEMS技術に応用可能なプロセスを用いてその試作を行ない,有効性を確認した.
著者
長沼 圭一
出版者
愛知県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2009年度は、フランス語において通常は冠詞付きで現れると考えられる形容詞を伴う名詞句が属詞位置に無冠詞で現れる例について考察を行い、拙論(2010):「フランス語における属詞位置に現れる形容詞付きの無冠詞名詞について」としてまとめた。2010年度は、フランス語において通常はDEという形が現れる否定文の直接目的補語の位置に現れる不定冠詞UNを研究対象とし、拙論(2011):「フランス語における否定文の直接目的補語として現れる不定名詞句UN Nについて」としてまとめた。
著者
曽我 真人
出版者
和歌山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

「あの星、なあに?」と、初心者が夜空の下で、知りたい星を指差すだけで、その星の名前や星座名を答えてくれるシステムが、システム全体の中核部分であり,昨年度は,磁気式位置センサーを用いて,その中核部分を完成させた.本年度は,そのシステムに以下の機能を追加した.本年度は,そのシステムに,学習支援機能を追加した.具体的には,システムが,星座を構成している星に関する問題を学習者に提示する.学習者は,その回答に当たる星を,実際の夜空のもとで,指差し動作によって示し,システムに回答を伝える.すると,システムは,その星が,問題の正解に当たるかどうかを診断し,正解であった場合には,つぎの問題を提示する.不正解ならば,その旨提示し,ひきつづき問題の正解となる星を指さすよう,求める.具体的な,インタラクションは以下のとおりである.まず,ユーザはパネルから学習したい内容を選択する.問題出題システムは,ユーザが選択した問題内容と解答するためのヒントをダイアログと音声で伝える.同時に,問題出題システムは,解答添削エンジンに問題番号を送る.ユーザは指差し描画機能を用いて解答を入力し,解答データを解答添削エンジンに送る.解答添削エンジンは,問題内容に応じた解答データベースを参考に添削を行い,結果を描画エンジンに送る.そして,描画エンジンは,送られてきたデータをもとに描画を行う.ここでの結果の提示方法は,仮想プラネタリウムに画像を出力するほか,正解の場合,次の質問か,すべて正解したことをダイアログに表示し,音声でも伝える.不正解の場合,その旨をダイアログに表示し,音声で伝える.
著者
杉本 恵司
出版者
奈良県立吉野高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究目的近年、多くの環境教育における取り組みが行われるようになったが、それらは理論面・技術面共に未熟で一過的な体験学習で終わっていることが多い。本研究では、環境教育のうち森林を題材とした森林環境教育における具体的な学習プログラムを構築しその学習効果を明らかにすることを目的とした。研究方法高等学校・森林科学科の科目「環境科学基礎」・「総合実習」・「森林科学」における学習内容のうち、人と自然との共生を意識できるものや森林の環境保全機能を実際に体験できるものを精選し、森林環境教育の学習プログラムとして構築した。学習効果については、授業を受けた生徒に対するアンケートを実施し、授業前後における生徒の環境に対する意識変化を調査することでその学習効果を検討した。研究成果科目「総合実習」では従来の演習林実習の他に、森林のもつ環境保全機能を実体験できる学習内容を加えた。また、教室内で授業を行う科目では開発したデジタル教材を利用した授業を行い、それらの題材を森林環境教育の学習プログラムとして編成し構築した。デジタル教材は、生徒の「衣・食・住」に関わる直接経験による既有スキーマを活用できるデジタル教材に仕上げた。例えば、「コウゾと和紙」・「クズとくず餅」等を題材として、生育中の植物とその利用物を同時に見せることで、生徒自らが独自の体験と結びつけ、自分の興味・関心に適応した題材で森林環境について学習する構成主義的学習指導を試みた。生徒に対するアンケートの調査を検討した結果、環境に対する内発的動機づけの段階として、以下の4つがあることを考察した。I.環境に対する感性の芽生えと育成II.森林等の自然の中に"共生"を学ぶIII.人間の生き方を含めて地球環境の未来を考えるIV.持続可能な地球環境のための行動をとる、である。さらに、生徒の「衣・食・住」に関わる直接体験を既有スキーマとして活用する構成主義的学習指導が森林環境教育には有効であることが伺われたが、その効果の客観性・科学性に検討の余地が残り今後の課題となった。
著者
仁平 道明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、平安朝物語特に『伊勢物語』と『源氏物語』について、現在諸書がそれによっている藤原定家が校訂を加えて生まれた本文と、定家が校訂を加えていないと考えられる本文とを比較し、定家校訂以前の本文の形と、定家が校訂を加えて本文を形成していく機構を明らかにすることを企図したものであった。特に、古筆切の調査によって、鎌倉時代の伝衣笠家良筆の断簡等の本文が従来知られている諸系統の本文とかなり異なっているなど、『伊勢物語』の本文が多様なものであったことが確認され、定家がその中から選択した一部のものについて、仮名遣い等を改める程度の最小限の本文校訂を加えるにとどめた可能性が考えられることが明らかになった。
著者
鈴木 明彦
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

北海道の第三系の岩礁海岸や硬質底に認められる穿孔性二枚貝化石とその生痕化石の古生態学的検討を試み、化石の産状や堆積相解析に基づいて、海進期における岩礁海岸の古環境変遷を解明することを主要な目的とした。また、このような検討を進めるにあたり、北海道各地の海岸で採集した穿孔性二枚貝の殻形態や貝殻・漂着礫の生物侵食を検討し、比較試料として活用した。化石試料については、北部北海道羽幌町の第三系三毛別層から採集した多量の穿孔性二枚貝化石や生痕化石の分類学的検討及び占生態学的解析を行った。三毛別層から産出した穿孔性二枚貝化石は、形態学的特徴から、Platyodon nipponicaとPenitella kotakaeに同定された。前者はオオノガイ科に属する大型の二枚貝類で、本種がつくる生痕化石はこん棒型の形態をなし、未記載の生痕種と考えられる。一方、後者はニオガイ科に属する中型の二枚貝類で、本種がつくる生痕化石は、フラスコ型の形態をなし、Gastrochaenolites turbinatusに同定される。これらの二枚貝化石および生痕化石は、本来の生息場所に埋積された現地性化石であると判断した。北日本の第三系を特徴づける絶滅種からなるPennitella-Platyodon群集は、岩礁海岸あるいはごく浅い硬質底を指示する。また、未記載生痕群集は瀕海の半固結泥底を、Gastrochaenolites生痕群集は軟質岩石底を、それぞれ指示し、これらの穿孔性生痕群集には明瞭なイクノファプリックが認められる。このような硬質基質生痕相の特徴は,岩礁海岸における海進初期の特徴・非堆積期間の程度・古水深の見積もりに有効な古環境情報を提供する。
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.293-323, 2011
著者
猪熊 友康 浅川 澄彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.166-168, 1961-05-25
被引用文献数
1

温度条件と光条件をくみあわせて, クロエゾマツとアカエゾマツのタネの発芽特性をしらべた。すでにしられていたように, これらのタネの発芽反応は, 温度条件によつていちじるしく影響されないが, クロエゾマツのほうがややひくい温度で発芽する。無処理のアカエゾマツのタネのおよそ半分は, 発芽するのに光を必要とするが, その性質は冷処理によって次第によわめられる。一方クロエゾマツのタネは, 暗黒条件でも光をあてた場合とほとんどおなじように発芽する。
著者
木俣 元一
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

リスボンのグルベンキアン美術館所蔵の『ヨハネ黙示録』写本の、子羊が第6の封印を開く場面でキリストが掲げ持つ印章がそなえる意味について考察を進めた。現代においてと同様に中世においても、視覚のあり方は一様でなく、地域や文化、対象や状況などの条件により多様な視覚のあり方が共存し、競合していた。西洋中世において機能していた多様な「視」のあり方をとらえるため、西欧の伝統において印章と刻印の比喩がどのように用いられたかを複製と権力という観点から追跡した。この比喩は、古代ギリシア、おそらくはそれ以前から、記憶、認識、表象、イメージ、存在をめぐるさまざまな問題系列と連なる伝統的トポスであった。古代、ビザンティン、初期中世においては、刻印は機械的複製を生産するための特権的手段であった。そこにあっては、人間の手が画材や道具を媒介として描写や似姿を形成するのでなく、イメージは一気に機械的に成立する。母型を素材に押しつけたり、打刻するとある程度の順応性や可塑性を備えた素材は、母型とは凹凸と左右の反転した形象を痕跡として留める。母型自体では陰刻であるゆえにいささか不明瞭であったイメージは浮き出すように可視化され、より判読しやすく触知的感覚をいきいきと呼び起こす様態へと変換される。こうしたイメージ産出手段では、個人による技術的差異が関与する余地はほとんどなく、同一のイメージを限りなく作り出すことが可能となる。西洋中世においては複製を作り出すこと、その技術、個々の複製がイメージの生産や受容に関わる多様な局面で重要な役割を果たした。