著者
尾西 康充
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

平成17年に逝去した丹羽文雄に関する資料がある。孫・丹羽多聞氏から寄贈されたもので、平成19年に丹羽文雄念室が設けられた。丹羽文雄記念室には自筆原稿をはじめとして浄土真宗関係の蔵書などが所蔵されている。他方、三重県立図書館には作家田村泰次郎に関する資料が9,000点保存されている。これらは田村泰次郎が亡くなった後、平成5年に妻・美好氏から三重県立図書館に寄贈されたものである。本研究は丹羽文雄記念室および田村泰次郎文庫に所蔵されている資料類を整理、解読、活字化する基礎的作業をふまえ、丹羽文雄および田村泰次郎の文学史的・文化史的意義を明らかにした。
著者
齋藤 孝道
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

昨今のCPUアーキテクチャの多様化の中で,コア内に暗号処理を専ら行うモジュール(以降,暗号モジュールと呼ぶ)を持つプロセッサがいくつか登場した.この種のプロセッサでは,暗号処理以外の処理は汎用モジュールで行い,処理速度の要求される暗号処理は暗号モジュールで行うことにより,プロセッサ全体で処理速度の向上を狙っている.しかしながら,既存のソフトウエアの多くは,この種のプロセッサ向けに設計されておらず,一般的に,暗号モジュールを活用するためにはソフトウエアを改修するなどの処置が必要となる.本研究では,コアの中に暗号モジュールを一つ持つプロセッサにおいて,暗号ライブラリの処理の一部を透過的に暗号モジュールへオフロードし暗号処理を行う仕組みを提案し,その実装と評価を行い,効果があることを確認した.
著者
丸山 雅夫
出版者
南山大学法学会
雑誌
南山法学 (ISSN:03871592)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.51-82, 2010-03
著者
MUNETOH Seiji NAKAMURA Megumi YOSHIHAMA Sachiko KUDO Michiharu
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE transactions on information and systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1242-1251, 2008-05-01
被引用文献数
5

Computer security concerns have been rapidly increasing because of repeated security breaches and leakages of sensitive personal information. Such security breaches are mainly caused by an inappropriate management of the PCs, so maintaining integrity of the platform configuration is essential, and, verifying the integrity of the computer platform and software becomes more significant. To address these problems, the Trusted Computing Group (TCG) has developed various specifications that are used to measure the integrity of the platform based on hardware trust. In the trusted computing technology, the integrity data of each component running on the platform is recorded in the security chip and they are securely checked by a remote attestation. The infrastructure working group in the TCG is trying to define an Integrity Management Infrastructure in which the Platform Trust Services (PTS) is a new key component which deals with an Integrity Report. When we use the PTS in the target platform, it is a service component that collects and measures the runtime integrity of the target platform in a secure way. The PTS can also be used to validate the Integrity Reports. We introduce the notion of the Platform Validation Authority, a trusted third party, which verifies the composition of the integrity measurement of the target platform in the Integrity Reports. The Platform Validation Authority complements the role of the current Certificate Authority in the Public Key Infrastructure which attests to the integrity of the user identity as well as to related artifacts such as digital signatures. In this paper, we cover the research topics in this new area, the relevant technologies and open issues of the trusted computing, and the detail of our PTS implementation.
著者
菱本 明豊
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現在、日本国内で社会問題となっている自殺行動の生物学的機序を解明し、自殺予防のための治療モデルを開発する為に、我々はストレス反応を主に制御するHPA axis(視床下部-下垂体-副腎皮質系)関連遺伝子に着目し自殺との関連解析を行った。我々はFKBP5遺伝子の特定のハプロタイプと自殺に有意な相関を認め、自殺行動には遺伝的脆弱性が関与していることを明らかにした。さらにALDH2、NOS1遺伝子と自殺、NOS1遺伝子と統合失調症との有意な相関を認めた。これらの知見より自殺行動のバイオマーカーとしていくつかの遺伝子変異が利用できる可能性があることを示した。
著者
近藤 進介 垂水 浩幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. DBS,データベースシステム研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.143-148, 2007-01-25
参考文献数
12

従来のサーバ・クライアント通信方式の他に近年P2P通信方式の利用者が増えてきている。また、P2P通信の特性はファイル共有に活かされている。しかし、P2Pファイル共有においてリソースを提供しないフリーライダーや不公平性が問題視されている。そこでインセンティブという概念で解決しようとする動きがあるが、完全に解決されている例はほとんど無く、解決されていても別の問題が発生している場合もある。また、インセンティブを与えられる条件としては回線の帯域によるものがほとんどである。しかしシステム全体のことを考えれば回線の帯域以外にもユーザの様々な行動でシステムに貢献することができる。この行動が反映されるように、本研究ではファイル共有システムにおける新たなインセンティブモデルとしてポイント制インセンティブを提案し、その有用性をシミュレータによって確認することを目的とする。
著者
香曽我部 秀幸 横山 充男 鵜野 祐介 加藤 康子 近藤 眞理子 田中 裕之 富安 陽子 長澤 修一 畠山 兆子 福井 善子 藤井 奈津子 松井 外喜子 高科 正信 香曽我部 秀幸
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究を始めたとき、「幼児教育・保育の実践をめざすこと」と「児童文学・絵本の創作・伝達・研究を行うこと」は密接に関連すると考えていた。だが、それぞれを目標とする若い女性には、異なる気質が見出され、簡単に2つの目標を合体できないことが、実践的研究からわかってきた。だが、5年間の実践的研究を積み重ねた結果、児童文学・絵本の創作や伝達の実践活動は、幼児教育・保育を目指す若い女性に刺激を与え、新たな技能や知見を獲得し、意欲を生み出していく現象が見出された。すなわち、児童文学・絵本の創作・伝達・研究を巡った実践的な教育は、時間はかかるものの、幼児教育・保育の教育に寄与すると考えられる。
著者
藤田 基
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、我々が開発した生体内活性酸素種測定システムを用いて、ラット熱中症モデルにおけるスーパーオキシド(O2-・)の動態を測定し、組織障害の程度と産生されたO2-・量との関連を解明することにより、熱中症におけるO2-・傷害の病態解明と治療指標としてのO2-・の意義を検討することである。本年度は、ラット熱中症モデルを作成・確立し、このモデルの生体内で混合静脈血中O2-・電流値の測定を行った。中枢温が38度を越えたあたりからO2-・電流値の上昇を認め、熱中症発症まで上昇し続けた。O2-・電流値の積分値(Q値)は肝臓および血漿中のマロン酸アルデヒド(MDA;脂質過酸化物質)、HMGB1(急性期炎症反の指標)、ICAM-1(血管内皮傷害の指標)、ALT/AST(肝障害の指標)と有意な相関を認めた。また、熱中症発症後に輸液投与、中等度低体温療法を含む体温管理を行うことにより、混合静脈血中O2-・値、肝臓および血漿中のMDA、HMGB1、ICAM-1、ALT/ASTの改善を認めた。以上の結果より、熱中症の病態において混合静脈血中で発生した過剰なO2-・は、全身および肝織の酸化ストレス、血管内皮細胞傷害、急性期炎症反応に関連しており、中等度低体温療法はそれらの抑制に効果的であることが示された。重症熱中症の臨床において、明確な治療指標は確立されていないが、本研究の結果、熱中症において混合静脈血中O2-・を測定することにより組織障害および全身炎症を予想することができ、熱中症の治療の指標となることが示唆された。また、熱中症における中等度低体温療法の有用性が示唆された。
著者
堀 正樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

2007年度は、欧州合同原子核研究機構CERNの反陽子減速器施設を用いて、反陽子ヘリウム原子の二光子吸収分光実験を行った。そして、反陽子ヘリウム原子の二光子遷移エネルギーを、3ppbという世界最高精度で計測することに成功した。これによって、素粒子物理の基本的な定理と考えられているCPT対称性を、従来よりも高い精密で検証した。この実験では、まず反陽子ヘリウム原子を5ケルビンという低温標的中で100万個合成した。次に、出力波長を10桁の精度で安定化させたcwチタンサファイアレーザーをパルス増幅して、この光線を原子に照射した。この際に、特別な波長の組み合わせを利用することによって、原子内で非線形な二光子遷移をひきおこすことに成功した。次に、超伝導ポールトラップを開発して、振幅4キロボルト、周波数35メガメルツ、Q=100万の特性をもった空洞を実現した。このトラップは、高純度ニオブ製で、電子ビーム溶接を用いて建設したものである。超流動ヘリウムで常時、1.8度ケルビンに保たれる。ニオブ電極の表面では、数メガボルト毎メートルという非常に強い電場が発生するが、これによって電子が発生し、放電を誘発するという問題が発生した。現在、表面の洗浄方法や、電極の形状を工夫することによって、この問題を解決しようとしている。また、反陽子ビームを測定する新型の検出器を開発した。これは、厚さ数百ナノメートルのカーボンフォイルに反陽子が衝突した際、発生する二次電子をとらえて、高感度カメラで撮影する仕組みになっている。特殊な加速電極を用いることによって、数ナノ秒という超高速シャッターを切ることができる。
著者
内藤 陽子 (駒田 陽子)
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

健康成人20名(21.7±0.92歳)を対象として,認知機能に関する実験を実施した.これまで報告者が蓄積してきた実験手続きやスケジュールを駆使し,剰余変数の混入を防ぎ,厳密な統制条件下で行った。実験被験者には本研究の実験内容および手続きを十分に説明し,インフォームドコンセントを得た。各被験者に対し,実験3日前より生活統制を行った。通常の就床時刻をCircadian time 0時とし,規則正しい生活を送るよう指示した。非利き腕にアクチグラフを装着させ,生体リズムの統制を厳密に確認した。実験前日は自宅にて通常の睡眠をとらせるControl条件と,睡眠不足状態をシミュレートすることを目的とし90分間の部分断眠を課すDeprivation条件をカウンターバランスで配置した。翌CT9時に実験室に来室させ,脳波等を装着した上で以下のテストバッテリーを使用し,前頭連合野機能への影響を測定した。テストバッテリーは,(1)visual analog scaleを用いた眠気や意欲に関する主観調査,(2)安静時開眼および閉眼時脳波測定,(3)事象関連電位P300測定,(4)psychomotor vigilance task(数字加算課題,作業記憶課題,記憶操作課題(セマンティックプライム),英数字検出課題,go/no-go課題)とした。部分的睡眠遮断がどの前頭連合野機能へより強く影響を及ぼしているか,回復過程を用いて確認するため,CT10時より20分間安静仰臥位を保たせた後,再度テストバッテリーを施行した。その結果,主観的眠気(KSS)は,通常睡眠後の午前セッションでは,通常睡眠午後・部分断眠後午前・午後のセッションに比べて,有意にKSS得点が低く,眠気が弱かった。生理的眠気(AAT)は,通常睡眠後ならびに部分断眠負荷後どちらにおいても,午後のセッションは午前のセッションに比べて,有意に生理的眠気が強かった。事象関連電位については,午前の測定では部分断眠を負荷した場合,P300頂点潜時は延長し,振幅が低下したが,午後の測定では部分断眠の影響は見られなかった。若年者を対象とした今回の実験の結果,午前の時間帯では,部分断眠の影響で,脳内情報処理速度は遅延し,処理能力が悪化した。午後の時間帯では,通常睡眠の場合も部分断眠負荷条件と同様に,主観的・生理的眠気の増強と,脳内情報処理の悪化が認められた。部分断眠によって,ワーキングメモリの機能が低下する傾向がみられた。日常よく経験するような90分程度の部分断眠(睡眠不足)であっても,記憶の引き出しの妨害が生じている可能性がある。継続的な部分断眠(慢性的な睡眠不足)がワーキングメモリに及ぼす影響について今後検討する必要がある。部分断眠の負荷およびサーカディアンリズムによって生じる眠気は,記憶・学習能力や注意集中力に影響を及ぼし,判断ミスや事故を引き起こす原因となる。日常生活においては,眠気を軽視しがちであるが,脳機能の観点から睡眠の役割を再認識する必要がある。