著者
川田 和正
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

当該研究課題では、中国チベット自治区羊八井(ヤンパーチン、標高4300m)に設置されているチベット空気シャワー観測装置の地下2.5mに大面積の地下プールから成る「水チェレンコフ型ミューオン観測装置」を新たに設置し、超高エネルギー(VHE=Very High Energy)ガンマ線に対するバックグラウンドノイズを大幅に低減して感度を劇的に向上させる計画である。そして、この新しい観測装置を用いて我々の住む天の川銀河からのVHE宇宙ガンマ線を、超低ノイズ・広視野という利点を生かし世界で初めて観測することを目指す。前年度迄に、合計で約四千平米の地下ミューオン観測装置の躯体の建設が完了している。当該年度においては、完成したミューオン観測装置への20インチ光電子増倍管(PMT)等の観測設備のインストール及び建設のため撤去されていた地上部分の空気シャワーアレイ検出器の回復作業を行った。今年度の5月から、空気シャワーアレイの回復を行い、その後、プール内壁への防水材の塗装及び高反射素材(タイベックシート)の接着を行った。また、光センサーである20インチPMTを地下ミューオン観測装置内にインストールし、データ収集装置の調整を行った。さらに、約100平米のミューオン観測装置のデータを用いて、ガンマ線と宇宙線バックグラウンドノイズを区別し、銀河面からの200TeV以上のガンマ線の探索を行った。約80%のガンマ線信号を残しつつ約90%の宇宙線バックグラウンド除去に成功した。その結果、有意なガンマ線信号は見つからなかったが、銀河面からの拡散ガンマ線に対する上限値を得た。この結果は2011年に北京で開催された宇宙線国際会議(ICRC)で発表された。
著者
和田 桂一 小久保 英一郎 富阪幸治 台坂 博 斎藤 貴之 牧野淳一郎 吉田 直紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1225-1228, 2004-12-15

大規模理論天文シミュレーションによる「天の川創成プロジェクト」とその背景にある銀河形成の問題について紹介します。プロジェクトでは、詳細な理論モデル、計算手法と高速の専用並列計算機を組み合わせ、宇宙初期から現在まで、銀河の形成・進化過程を高精度でシミュレーションすることにより、(1) 我々の銀河系=天の川の3次元構造とその形成過程、および(2)銀河の形態の起源、を初めて明らかにすることを目指しています。第I 期計画では、次世代専用超並列計算機GRAPE-DRと高速ホスト計算機、高速ネットワークを組み合わせた計算能力1ペタフロップスの「天の川数値解析装置」を国立天文台内に構築し、現状の最大規模のシミュレーションの100倍規模のシミュレーションを行います。 これにより銀河形成問題にブレークスルーをもたらすことができるはずです。

1 0 0 0 IR 研究紹介

著者
坪井 俊 山本 智 蓑輪 眞 西原 寛 雨宮 昭南 三谷 啓志 松本 良 江崎 雄治 朝倉 清高 長尾 敬介 長谷川 哲夫
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学大学院理学系研究科・理学部廣報
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.24-36, 1998-03

カラビ不変量とオイラー類/サブミリ波望遠鏡をつくる/太陽アクシオンの直接検出実験/一次元レドックス共役分子、オリゴフェロセニレンの物性/動物の発生と左右非相称性/光回復酵素:生きながらえるべきか、死すべきか/御前崎沖南海トラフのガスハイドレート/人口「還流移動」発生率のエスティメーション/異方性表面を用いた表面原子配列制御/宇宙線生成希ガスからみた火星隕石の歴史/天の川銀河の地図をつくる
著者
内山 秀樹
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

天の川銀河中心領域の「すざく」による大規模観測データの系統的解析を行った。銀河拡散X線放射の3本の鉄輝線を分離した上で、銀河中心・リッジ・バルジにわたる2100×700光年の領域での強度の空間分布を初めて取得した。その結果、高階電離鉄輝線の空間分布が赤外観測による星質量分布と互いに異なることを示した。水素・ヘリウム状鉄輝線強度比が中心領域とリッジ領域で有意に大きい一方、中心領域とバルジ領域では両者に差は見られなかった。輝線強度比は高温プラズマの温度を反映する為、銀河拡散X線放射の起源解明の鍵となる。更に、熱的成分の寄与を取り除いた中性鉄輝線の等価幅が中心領域よりリッジ領域で小さいことを明らかにした。これは中性鉄輝線の起源も中心領域とリッジで異なる可能性を示唆する。本研究は「すざく」による高エネルギー分解能を活かし銀河中心・リッジ・バルジにおける鉄輝線の差異を明確にした点で、銀河拡散X線放射の起源解明の新たな手がかりとなるものである。また、データ中から新たなX線天体Suzaku J1740.5-3014を発見した。強い3本の鉄輝線、432.1sの自転周期と見られるパルスを検出し、強磁場激変星候補であることを突き止めた。この天体は、欧米のX線衛星では深い観測が無い、中心とリッジの中間に位置し、この領域でのX線点源、特にGDXEの起源の候補天体と目される激変星(白色矮星連星)のサンプルとして貴重である。
著者
青木 卓哉 中村 公彦 成本 勝彦 刈谷 方俊 壺井 和彦
出版者
JAPAN SOCIETY OF GYNECOLOGIC AND OBSTETRIC ENDOSCOPY AND MINIMALLY INVASIVE THERAPY
雑誌
日本産科婦人科内視鏡學會雜誌 = The journal of the Japan Endoscopy Society of Obstetrics and Gynecology (ISSN:18849938)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.379-384, 2009-12-01
参考文献数
19
被引用文献数
1

<B>Objective:</B> The aim of this study was to evaluate the ovulatory performance and reproductive outcome after laparoscopic ovarian drilling using a harmonic scalpel in infertile women with clomiphene-resistant polycystic ovarian syndrome (PCOS).<BR><B>Patients:</B> Twenty clomiphene-resistant anovulatery women with PCOS underwent laparoscopic ovarian drilling between March 2005 and December 2006.<BR><B>Results:</B> After surgery, LH serum levels and the LH/FSH ratio showed statistically significant reductions, and ovulation occurred spontaneously in 70% (14/20) of the patients. The pregnancy rate was 50% (10/20) in < 1 year. Within 4 months postoperatively, 50% of all pregnancies had occurred.<BR><B>Conclusion:</B> Laparoscopic ovarian drilling is an effective treatment in women with clomiphene-resistant polycystic ovarian syndrome, yet without major complications associated with medical treatment, such as ovarian hyperstimulation syndrome and, plural gestations.
著者
信川 正順
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

我々の太陽系が含まれている天の川銀河の中心領域(以後、銀河中心領域)は多数の天体群が密集する高エネルギー現象の宝庫である。近年のX線観測から銀河中心領域の分子雲から強い中性鉄輝線(中性状態の鉄からの特性X線)が放射されていることが分かってきた。分子雲は高々100ケルビン程度の低温なので、自らX線を放射することはなく、その背後に高エネルギー現象が存在することを示唆する。これまでに私を含め、様々な観測結果から中性鉄輝線を放射するためには、外部からの強いX線によって分子雲が照射され、内部の鉄原子を電離していると考えられている。しかし、これまでに照射天体を決定的に示す観測的証拠は得られていなかった。そこで、私はX線天文衛星「すざく」を用いて、銀河中心の射手座B2領域の観測を行った。2005年の観測データと比較し、2つの分子雲からの中性鉄輝線と連続X線の強度が4年間で相関して減少していることを明らかにした。この観測結果から分子雲を照らすX線照射天体候補は太陽程度の質量の天体では不可能な光度を持っている必要があることを解明し、唯一の候補が太陽の400万倍の質量を持つ銀河中心ブラックホールであることを明らかにした。銀河中心ブラックホールは数100年前に少なくとも100万倍以上の活動性であったことが分かったのである。さらに、私が前年度までにも明らかにしたように銀河中心領域にはこの他にもX線を放射する分子雲が多数存在している。これらのX線放射の起源も巨大ブラックホールの過去のX線フレアである可能性を初めて示した。
著者
南方 久和 安田 修 梶田 隆章 梶田 隆章
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

スーパー神岡実験によって質量とフレーバー混合が存在することが発見されたニュートリノという素粒子が未知の非標準的相互作用(NSI)をもつ可能性について研究した。NSIが存在する系におけるニュートリノ振動の全般的性質を明らかにし、全く新しいタイプの多重解の存在を見いだした。ニュートリノファクトリーを用いるNSI探索における積年の問題である1-3角とNSIとの混同の問題の解決方法を提示し、NSIの最も感度の高い探索方法を明らかにした。さらに、ミュー・タウニュートリノチャンネルにおける非標準的相互作用の探索には数年前に提唱した神岡・韓国2検出器系が有利であることを指摘し、この感度評価を行った。
著者
木舟 正 吉越 貴紀 吉越 貴紀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

約半世紀にもわたる努力の結果、最近になって漸く確立した超高エネルギーガンマ線による宇宙観測の全体像を把握すべく考察を試みるために、これまでに検出されたガンマ線天体についてのレビユー論文を作成し、宇宙の超高エネルギー現象についての今後の発展方向を展望した。銀河系内超高エネルギーガンマ線源の位置、広がりの大きさなどについて、ガンマ線強度の観測データが銀河河円盤内宇宙線による拡散ガンマ線などによって受ける影響の大きさ、データの取り扱い方の違いが解析結果に与える不定性があることを示した。
著者
永山 貴宏
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近赤外線観測により、銀緯<±5°のグレートアトラクター領域に37. 5平方度に対して、銀河サーベイを行った。その結果、4360個の銀河を検出した。この領域にはABELL3627、CIZA1324. 7-5736といった大銀河団が存在していることが知られていたが、本研究においては、これらに匹敵するような新たな銀河団を発見することはできなかった。光度関数の比較の結果、Ksバンド10等付近に銀河数の超過を見出した。この銀河数超過を質量に換算すると、~1015太陽質量に相当する。この値は、近年のHIやX線での観測に基づき示された値と矛盾しないが、当初、示されたグレートアトラクターの質量の約10分の1である。

1 0 0 0 IR 天の川

著者
伊藤 京邊 [イトウ ミヤコベ] 伊藤 京辺
出版者
第五高等學校龍南會
雑誌
龍南
巻号頁・発行日
vol.201, pp.39-39, 1927-03-01
著者
西藤 克己 細川 吉晴 葛巻 武文 武藤 顕一郎
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.10-19, 2006

配合飼料にモミガラ炭を1%添加して372日齢の産卵鶏に給与し,夏季における糞臭気、産卵および卵質に及ぼす影響を検討した。堆積糞のアンモニアガス濃度および鶏舎内のアンモニアガス濃度は無添加区に比べそれぞれ52%および39%有意に低く,卵殻破壊強度は無添加区に比べ8%有意に強かった。一方,ヘンデイ産卵率,産卵日量,飼料摂取量,生体重,平均卵重,ハウユニット,卵殻厚,卵殻重および糞量は無添加区と有意な差は認められなかった。以上のことから,モミガラ炭1%添加給餌は夏季における堆積糞や鶏舎内で発生する臭気の抑制,卵殻破壊強度の改善に効果的であることが示唆された。
著者
中嶋 大
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

次期X線天文衛星ASTRO-H搭載X線CCDカメラ(SXI)の信号処理用アナログASICを開発した。CCD素子行とASICとを接続して試験を行った結果、現在軌道上のX線天文衛星搭載のCCDカメラに匹敵する低雑音性能を実現した。軌道上での長期正常動作を保証するために放射線耐性試験を行った。ガンマ線・陽子ビーム・鉄イオンビームを用いた試験の結果、蓄積効果については軌道上で約200年分の放射線を浴びた後でも正常に動作することを実証した。一方確率的現象については、破壊的な損傷を受けることはなかったが、データの一部が異常値を示した。この結果を受け、確率的現象に対する耐性を向上させたASICを試作した。今後この新しいASICを用いて、さらに詳細な放射線耐性試験を行う予定である。X線天文衛星すざくを用いて、天の川銀河内にある超新星残骸(SNR)「はくちょう座ループ」を観測した。SNR中心部に近い領域において、星間物質が掃き集められたと考えられる比較的低温なプラズマと、超新星爆発を起こした恒星の内部物質と考えられる比較的高温なプラズマの2つの成分でX線放射が説明できることを示した。特に後者のプラズマにおいて、はくちょう座ループの他の領域に比べてケイ素や硫黄といった重元素が多く分布していることを発見した。また視野内のX線放射強度が明らかに非一様を示しており、はくちょう座ループの超新星爆発における非対称性を示唆する結果を得た。
著者
斉藤 健二 宮武 修
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.76, pp.41-50, 2000-01-25
参考文献数
11

棒状架橋樹脂を充てんした潜熱蓄熱槽に,負荷側との接点として熱交換器を組み合わせたときの放熱特性に関するシミュレーションを行った.蓄熱槽初期温度,熱交換器負荷側入口温度,熱媒体質量流量,蓄熱槽高さ,熱媒体熱容量流量比および熱交換器移動単位数を変化させ,蓄熱槽内の熱媒体温度分布と熱交換器出入口温度の経時変化を算出した.また,蓄熱槽側の熱媒体質量流量を可変制御して熱交換器負荷側出口温度を一定値に制御する場合についても同様の考察を加えた.
著者
中川 貴雄 塩谷 圭吾 小谷 隆行 GUYON Olivier
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

太陽系外惑星(系外惑星)の直接観測は、惑星の誕生から進化、多様性、また究極的には地球外生命の兆候にも迫る、人類の宇宙観に関わる重要な研究テーマである。しかし、主星光と惑星光のコントラストが極めて大きいことが直接観測の障壁となっている。大気の影響のないスペースから、コントラストの点から有利となる赤外線領域で、我々の太陽系外の惑星を直接検出することを目指して、ステラー・コロナグラフの開発に取り組んだ。その結果、今までにない高いコントラスト達成の実証実験に成功し、波面補償の基本アルゴリズムを開発し、赤外線実験用環境を構築し冷却実験に成功するなどの成果を上げられた。これらの成果は、将来のスペースからの系外惑星観測の貴重な基礎技術獲得となる。
著者
田中 隆昭 陣野 英則 新川 登亀男 小林 保治 吉原 浩人 高松 寿夫 蔵中 しのぶ 松浦 友久 丹羽 香
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2000年12月、研究所発足。2001年3月、周以量氏(現在中国首都師範大学副教授)、林忠鵬氏(現在客員研究員)を招聘、田中所長が加わり、早稲田大学で講演会。参加者約50名。2001年9月、二日間にわたり国内・海外研究員全員と北京大学の韋旭昇氏、北イリノイ州立大学のジョン・ベンテリー氏等を招聘して早稲田大学にて国際シンポジウム「古代日本・中国・朝鮮半島文化交流の新展開」。参加者約150名。この成果は近刊の『交錯する古代』(勉誠出版)に反映される。2002年7月、シンポジゥム「21世紀に向けての日中比較文学」を中国・長春市にて東北師範大学で共催。研究発表者日本側20名、中国側28名。参加者約200名。この成果の一部が2003年2月の『日本学論壇』に反映された。2002年11月、二日にわけて王宝平氏(浙江大学)・高文漢氏(山東大学)・孟慶枢氏(東北師範大学)・林嵐氏(東北師範大学)を招聘して、田中所長と石見清裕氏(教育学部)が加わり講演会。参加者約80名。こうした海外との学術交流と平行して、毎月一回『日蔵夢記』講読会を開催。本文整理・訓読・語釈・現代語訳を確定。この成果に関連する学術研究論文を加えて、近刊の『日蔵夢記大成』(勉誠出版)に反映される。また一方では日中比較文献目録の作成も進めているが、まもなく一定の成果を公表することが可能である。