著者
長島 弘明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

3年間にわたる研究の最終年として以下の知見を得、また上田秋成の作品の新目録や秋成の新年譜、新出の資料等を、成果報告書にまとめた。1.秋成の和歌については、これまた新出の『毎月集』(二本)を、従来知られる断簡類と詳細に比較し、自撰歌集『藤簍冊子』以後の、晩年の歌風を明らかにした。2.狂歌については、『海道狂歌合』の現存する全ての稿本、および多数の版本を調査し、諸稿の成立順を明らかにした。また、試みに、序跋を含む『海道狂歌合』の校本を作成し、秋成の狂歌や文章の推敲時における様々な特徴を明らかにした。3.俳諧については、俳諧活動を年次順に整理し、秋成と当時の俳壇との関係を考察した。その結果、若い頃は都市風の俳諧グループと関係が深く、特に小野紹廉やその門人たちとはもっとも深い交流を結んでいること、また、中年期の、蕪村およびその門人たちとの交友が、画賛制作に手を染める大きな契機となっていることを明らかにした。4.随筆については、晩年の一見国学的著述と見られる『神代がたり』が、晩年の秋成の意識に即す限り、国学研究書ではなく、歴史随想とでも呼ぶべきものであることを『胆大小心録』等との比較を通じて明らかにした。5.伝記に関しては、秋成の書簡を網羅的に収集・検討し、それぞれの書簡の年次を考証して明らかにするとともに、今まで書簡の年次が未詳であったために年譜に記載できなかった事項を、相当数、年譜に書き加えることができた。また、最晩年の山口素絢あて書簡2通を新たに発見し、晩年の転居の理由を知ることができた。
著者
山本 裕紹 六車 修二 佐藤 剛 早崎 芳夫 永井 芳文 清水 義則 西田 信夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.22, no.37, pp.37-42, 1998-07-03
参考文献数
4

フルカラーLEDパネルを用いた偏光眼鏡式立体ディスプレイを試作した.右眼用と左眼用を入れこにしたステレオ画像の表示は, LEDパネルを用いて160×80(×RGB)の画素数(1.28m×0.64mの大きさ)で行った.LEDパネルを短冊に切った偏光フィルムで1列ごとに右眼用と左眼用とにマスキングした画像を, 偏光眼鏡で右眼用と左眼用の画像に分離して観察する.立体表示における観察距離と指向性の実験を行い, 観察距離をLEDのドットピッチの3000倍程度に設定すればよく, 偏光マスクを設置しても指向性が狭くならないとの知見を得ることができた.
著者
伊藤 裕久
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、中世段階に宗教都市として大きく発展した伊勢国宇治山田を主な対象として現存する都市遺構と文献史料によって復原的分析を行い、中近世移行期の都市空間の成立・変容過程について考察したものである。分析の観点として注目したのは、都市共同体を組織し都市建設の主体となった御師集団の居住形態であり、御師屋敷の空間構成と都市空間との関係性について検討を加えている。また同様に御師町を構成した山梨県の上吉田・河口など、他の宗教都市についても比較検討を行っている。御師屋敷の空間構成については、前屋敷をもつ引込路型の御師屋敷群によって構成される中世的な集住形態から、接道型の御師屋敷が街道の両側に並列的に配置され両側町を構成する近世的な集住形態へと移行する過程が解明された。また、前屋敷を構成する町家型を主とした零細御師の集住形態が具体的に復原することで、零細御師の主家-家来関係などの点から、近世において町共同体を越えた広域的な御師集団のネットワークが形成されたいることが明らかとなった。以上から、宇治山田においては、中世郷村から自然形成的に生成された独立性の高い集落群(郷)が連結されることで、中世末には都市の居住領域を濠・木戸門などの構によって明確に区画した中世都市空間としての発達をみせること。そうした中世的達成を前提として、近世初までに中世末の有力御師家を核とした同心円的な空間領域が再統合されることで、表と裏で階層的な住み分けが計られた街道沿いの両側町を基本単位とする並列的な都市空間構造が成立することが判明した。中近世移行期の都市空間構造のもっとも大きな変化はこの点に求められると言える。
著者
武井 和人 三村 晃功 矢野 環 末柄 豊 小川 剛生 久保木 秀夫
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)以下の機関・個人に所蔵される十市遠忠・実暁自筆古典籍の実地調査・写真撮影を行った。財団法人前田育徳会尊経閣文庫蔵自筆詠草類(再調査)東京大学史料編纂所蔵『一人三臣詠鈔』(天文8年遠忠書写奥書本ノ転写本)国文学研究資料館蔵遠忠関連典籍マイクロフィルム(陽明文庫蔵『五社百首』他)(2)報告書に翻刻を収載する予定の資料を選定し、担当者を決め、翻字作業に入った。新たに翻刻する資料として、以下の典籍を定めた。財団法人前田育徳会尊経閣文庫蔵『千首和歌』『三百六十首和歌』『五十番自歌合』他島原図書館松平文庫蔵『百五十番自歌合』(3)以下の遠忠自筆、および、鳥養流の能書家である鳥飼宗慶自筆短冊資料を蒐集した。鳥飼宗慶自筆短冊(京都・思文閣書店より購入)十市遠忠自筆短冊(軸装、京都・思文閣書店より購入)遠忠、及び鳥養流諸家の書蹟鑑定に際し、基礎的な資料として活用した。(4)下記の如き研究会を開催した。【第1回研究会】平成17年8月19日・於:埼玉大学八重洲ステーションカレッジ武井・石澤一志・高橋育子「<遠忠自筆資料>の筆蹟について」末柄豊「文亀四年二月九条尚経亭月次和歌会懐紙について」井上宗雄「勅撰作者部類の編者藤原盛徳(元盛法師)について」(5)本研究の概要・経緯を、日本歴史学会の依頼により、武井が『日本歴史』(第692号、2006・1)に報告した。
著者
斎藤 貴之 台坂 博 出田 誠 岡本 崇 小久保 英一郎 和田 桂一 富阪 幸治 牧野 淳一郎 吉田 直紀
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2006, 2006-09-05

In this paper, we introduce Project "Origin of the Milkyway". This project aims at reliable modeling of the formation history of our Galaxy (i.e., the Milkyway), as a typical spiral galaxy, with the mass resolution 2-3 orders of magnitude higher than what has been achieved so far. In order to achieve such state-of-the-art simulations, we construct two beowulf type PC-clusters with GRAPE-6A/7, and we develop a new N-body/SPH code for parallel computing.
著者
栗原 敦 上野 英子 棚田 輝嘉 西澤 美仁 渡辺 守邦 野村 精一 佐藤 悟
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

最終年度にあたる本年は、これまでの共同研究の集成として『伊東夏子関係田辺家資料』(調査報告)を編集・刊行した。この概要はI短冊の部翻刻(付脚注)II書筒の部翻刻(付脚注・解説)III田辺家資料リスト、の三項目からなる。このうちI・IIIについては本学文芸資料研究所「年報」を通じて報告したものをふまえて,補訂を加えて収録しているので,ここではIIについて概要を記す。ここでは、伊東祐命発信のもの三通・中島歌子発信十九通・三宅花圃発信三通・伊東夏子発信二通の,計二十七通の書筒について,翻刻と注・解説を行った。執筆年が不明であること,私的な内容であること等から分析は困難を極めたが、歌会や吟行・添削等の連絡や,借家や手伝い人の斡旋、裁裁の依頼等の日常的なつきあい,更には中島歌子周辺のごく親しいグループの存在を物語る記述にあふれていた。以上は、萩の舎に学んだ女流作家樋口一葉の日記の背景をなす,萩の舎塾の具体相の理解の一助となることであろう。
著者
中島 成久
出版者
法政大学教養部
雑誌
法政大学教養部紀要 (ISSN:02882388)
巻号頁・発行日
no.59, pp.p139-187, 1986-01
著者
岩本 通弥 川森 博司 高木 博志 淺野 敏久 菊地 暁 青木 隆浩 才津 祐美子 俵木 悟 濱田 琢司 室井 康成 中村 淳 南 根祐 李 相賢 李 承洙 丁 秀珍 エルメル フェルトカンプ 金 賢貞
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、外形的に比較的近似する法律条項を持つとされてきた日韓の「文化財保護法」が、UNESCOの世界遺産条約の新たな対応や「無形文化遺産保護条約」(2003年)の採択によって、どのような戦略的な受容や運用を行っているのか、それに応じて「遺産」を担う地域社会にはどのような影響があり、現実との齟齬はどのように調整されているのかに関し、主として民俗学の観点から、日韓の文化遺産保護システムの包括的な比較研究を試みた。
著者
前原 進也 大澤 康暁 佐藤 孝 丸山 武男 大河 正志 水島 正喬 坪川 恒也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.62, pp.49-52, 2002-05-10
参考文献数
5

一般相対性理論から導出された天の川銀河の重力場が地球に及ぼす影響に関する報告があり,振り子の変位を観測することで,天の川銀河系の中心核の影響により地球が受ける力を検出することが可能であり,2種類の振り子の観測を行い,周時刻に同一方向への変位が見られたと報告されている.本報告では,この実験結果の検証を目的とし,半導体レーザーを用いた振り子の変位の光計測システムを構築し,外部雑音の影響が非常に少ない国立天文台の観測所のトンネルで観測を行っている.これまでの観測では,地震による影響が観測されており,今回は潮汐力による影響について検討し,重力放射力の検証の基礎実験を行ったので報告する.
著者
笹尾 哲夫 小林 秀行 川口 則幸 真鍋 盛二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.313-320, 2002-05-05
参考文献数
4

国内4カ所の新しい電波望遠鏡を連動させて従来の百倍の精度で星の位置を測り,地球の公転を利用した三角測量でわが銀河系(天の川)の立体地図を作ろうという計画がスタートした.これにより,銀河系における暗黒重力物質(ダークマター)の質量の把握とか,宇宙距離尺度の直接検定などの新しい成果が期待される.この計画の現状を紹介するとともに,ねらいと意義,高精度実現の仕組み等について解説する.
著者
伊庭 幸人
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.657-677, 1996-02-20

学習と階層の問題をベイズ統計の観点から論じた。前半では、平滑化を例として経験ベイズ法について解説した。特に経験ベイズ法において場合の数(エントロピー)の果たす役割を強調した。また、EM法や学習方程式との関係、脳のモデルとの関係についても述べた。後半では、2次元以上のマルコフ場に対して経験ベイズ法を適用する場合の原理的な困難について論じた。
著者
杉坂 政典 藤村 貞夫 中村 政俊 原 正佳 李 桂張 LEE Ju-jang
出版者
大分大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究を実施するには、まず移動ビ-クルのハードウェアがすでに開発されていることが必要不可欠である。幸いにして、株式会社九電工との共同研究により500万円の研究費の提供を受け、移動ビ-クルのハードウェアの設計・試作を行った。その移動ビ-クルは、車体長150cm、車体幅60cm、車輪外側間長80cm、前輪中心から後輪中心間長110cmであり、車輪外径は26.1cmである。その移動ビ-クルは前輪がステッピングモータで駆動され、後輪がDCモータで駆動されるようになっている。また、前輪前方車体に底面から高さ40cmの高さにCCDビデオカメラが搭載されており、そのカメラの可動範囲は左右120度、上下60度であり、ステッピングモータ2個で駆動されている。車体には後輪駆動DCモータ、12V電池2個、DC/ACコンバータ、PC9821、DCモータドライバー、ステッピングモータドライバ3個が置かれている。前輪の可動角度は左右30度であり、後輪の駆動モータが一回転すると2.7cm移動する。CCDビデオカメラはカメラコントローラと共に画像取込ボードSuperCVIを経由してパソコンに接続されている。同様に、CCDビデオカメラの上下左右ステッピングモータと前輪、後輪駆動モータはそれぞれのモータドライバと共にI/OボードPIO-32/32(98K)を経由してパソコンに接続されている。パソコンへの電力は、バッテリ-から供給される直流をDC/ACインバータSI-500Aを介して交流に変換して供給されている。以上がハードウェアの概要である。本移動ビ-クルを屋内外で走行させるためには、種々の走行ソフトウェアの開発が必要である。CCDビデオカメラが一つのカラー画像を取り込む時間は1/60秒であり、車体前方の画像が取り込まれる。この画像データを処理することにより種々の自立走行が可能になる。屋内外での自立走行に必要なデータを得るためには以下のような技術を開発しなければならない。(1)走行フロアあるいは道路上の白線や黄線あるいはガードフェンスなどを抽出するソフトウェア(2)人工神経回路技術により、移動ビ-クル前面の対象物体を認識することができるソフトウェア(3)前輪のステアリング角度と後輪のスピードの両方を同時に制御するソフトウェア(4)移動ビ-クルが停止中、対象物体を追尾することができるソフトウェア(5)その他、種々の機能を持たせるためのソフトウェア本研究では黄線を抽出し、その黄線に沿って角度とスピードの両方をファジイ制御器を用いて制御し、ある一定時刻毎に車体前方に赤色の対象物を探し、もしその対象物があれば停止し、なければ黄線がなくなるところまで走行するプログラムを開発した。そのプログラムでは0.9秒のサンプリング間隔で制御を行っている。走行速度は0.5m/秒から1.8m/秒の間の速度で走行する。ファジイ制御器の入力としてカメラ中心から対象物体の重心のx方向、y方向の距離をとり、出力として前輪のステアリング角度及び後輪のスピードを考えた。全部で28個のファジイ制御則を考えた。CCDカメラは前方約1.2mの画像を取り込む。移動ビ-クルは20秒間走行してから赤色の対象物体を探し、もしあれば停止し、なければ走行する。本プログラムを用いて屋内及び屋外で走行停止実験を行った。その実験では良好な結果が得られた。現在この走行を滑らかに行うことができるようプログラムを修正している。一方、対象物体の認識に関しては、対象物体の形状のモーメント不変量を7個計算し、それを人工神経回路の入力として対象物体の種類を出力して人工神経回路で学習し、その人工神経回路を用いて対象物体が何であるかを判別するプログラムを開発している。このプログラムは加工食料品の等級判別に開発されたものであり、ハードウェアが移動ビ-クルのハードウェアと異なるため、このプログラムを無修正で用いることができない。したがって、移動ビ-クルのCCDカメラに適用できるように、すでに開発した対象物体識別プログラムを書き直す作業を、今後行う予定である。
著者
後藤 真 柴山 守
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.2-16,46, 2002
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

正倉院文書は、東大寺の正倉院に伝来した8世紀の文書群の総称である。本文書は、背面再利用と19世紀初頭からの「整理」作業のため、その奈良時代の帳簿の形態が著しく損なわれ、論理構造と物理構造の差異という特徴をもつ。この帳簿形態の復原過程を関連史料の各々の実体を含めてXML/XSLT(eXtensib1e Markup Language / eXtensible Stylesheet Language Transformations)で記述する手法を提案する。筆者らは、この復原過程における関連史料の各々の実体を統合化するための構造化ルールをXML/XSLTを用いて記述し、復原研究を支援するシステムを構築した。本システムでは、関連史料が構造化ルールのXSLT記述に基づいて階層構造化され、中問表現としてのXML文書が生成される。また、構造化ルールからの例外により新たな事象の発見が可能となり、新たな知見を得る機会になる。生成されたXML文書は、論理構造を復原するXSL(extensible Stylesheet Language)に基づき、Webブラウザ上に表示され、またWordマクロ機能により物理構造が反映された「短冊」として復原できる。本論文では、帳簿形態の復原過程をXML/XSLTで記述する手法、及び実現したシステムの有効性について考察する。
著者
中牧 弘允 近藤 雅樹 片倉 もとこ 鵜飼 正樹 岩田 龍子 石井 研士
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本年度は、昨年度に引き続き企業博物館や会社を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は次のとおりである(詳細は報告書参照)。北海道:小樽オルゴール堂アンティークミュージアム、小樽ヴェネチア美術館、旧日本郵船株式会社小樽支店、小樽運河工芸館、雪印乳業史料館、サッポロビール博物館、竹鶴資料館、コニカプラザ・サッポロ、らいらっく、ぎゃらりい(北海道銀行)、石炭の歴史村、男山酒作り史料館、優佳良織工芸館、ふらのワイン工場、池田町ワイン城、馬の資料館、太平洋炭礦炭鉱展示館 関東:資生堂企業資料館、日本銀行貨幣博物館 中部:東海銀行資料館、窯のある広場・資料館(INAX)、日本モンキーセンター(名古屋鉄道) 諏訪北澤美術館、SUWAガラスの里 近畿:ホンダコレクションホール、パルケエスパーニャ、真珠博物館、竹中大工道具館、島津創業記念資料館 九州:西部ガス、ハウステンボス、べっ甲文化資料館このほか住原は原子力発電所PR館のうち昨年度の訪問先以外のすべてを調査するとともに、関電、北電、九電の本社でインタビューをおこない、PR館が原発のしくみや安全性を説明する施設から、リクリエーションや地元文化を紹介する文化観光施設に変わってきたことを明らかにし、記号論者の言う「詩的機能」が付与されヘゲモニ-形成に寄与していることを実証した。会社の求心性や遠心性については、日置が「組織ユニットにおける副の職務」に関して、企業の組織改革の中で自分の役割を主張する機会のないまま、整理対象となっている副の役割について研究をおこなった。会社の記念行事や宗教儀礼にみられるように、経営に宗教的要素が動員されることについては、ダスキンと日立製作所、伏見稲荷神社で調査を実施した。2年度にわたる調査研究の結果、会社文化の研究には「経営人類学」とでも称すべき研究分野が存在することがしだいに明確となり、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的の文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。
著者
小山 勝二 鶴 剛 松本 浩典
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

銀河中心領域からのFeI, FeXXV, Fe XXVI のKα線を分離し、その空間分布を正確にもとめた。その結果、銀河中心は7000 万度のプラザがほぼ1×2度の範囲を満たしていること、またFeI のKα線は銀河中心にある巨大ブラックホールが約300年前に強いX線を放射し、それが蛍光、反射した結果(X線反射星雲)であることを確認した。このようなX線反射星雲の候補をいくつも発見した。SCI 時のCTE 補正法、および、その補正パラメータの決定法を開発した。こうして全ての「すざく」XIS の観測はSCI を使うに至った。
著者
中川 亜紀治 倉山 智春
出版者
鹿児島大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

VERA電波望遠鏡を用いて高精度位置天文VLBI観測を行ってきた。本申請課題の期間に2件の論文が日本天文学会の査読付き雑誌に掲載された。AGB星の星周現象や銀河系内での運動などが明らかになった。年周視差が計測された天体数は6天体に増え、周期光度関係確立のためのデータが揃いつつある。HIPPARCOS衛星のデータをもとにして、視線速度、距離などのデータベースを整理し、およそ300天体の銀河系内ミラ型変光星について6次元動力学情報が整理された。
著者
瀬田 益道 中井 直正 山内 彩
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

近年の技術発展でサブミリ波からテラヘルツ帯での天体観測が現実的となった。ところが、この帯域は大気の吸収が強く観測可能な地は限られていた。我々は寒冷な高地である、南極大陸内陸部に着目してきた。サイト調査として、南極ドームふじで220GHzの大気透過率を測定したところ、地上最良と思われ大型干渉計ALMAの建設の進むチリ北部の砂漠地帯よりも優れていることを示した。ドームふじでの天体観測用に30cm望遠鏡を開発した。500GHz受信機を搭載し、天の川の一酸化炭素及び炭素原子の観測を行う。実験室での評価試験を経て、スイスアルプス及び南米のチリで試験観測を行った。