著者
津田 彰 森田 喜一郎 高橋 裕子 磯 博行 矢島 潤平 辻丸 秀策 津田 茂子 福山 祐夫 稲谷 ふみ枝 森田 徹 岡村 尚昌子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,多理論統合モデル(TTM)をストレスマネジメント行動(1日20分以上健康的な活動を行う)の変容に適用して,大学生集団を対象とする介入を行うことを目的とした。TTMをストレスマネジメント行動に適用するために,まず日本語版TTM尺度を開発した。次いで,ワークブックとエキスパート・システム(アセスメントに応じてストレスマネジメント行動を獲得維持するためのアドバイスを与える)を開発して,その効果をランダム化比較試験により比較検討したところ,個別最適化アプローチによりストレスの自覚が緩和し,ストレスマネジメント行動の実行者の割合が増加することが示された。
著者
堀内 聡 津田 彰 橋本 英一郎 甲斐 ひろみ 賀 文潔
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.93-98, 2008-10-25

主観的幸福感がメンタルストレステストに対するストレス反応に影響するという証拠が増えている.235名の対象者から選抜された主観的幸福感が高いグループと低いグループ(各8名)に対して,スピーチと暗算課題からなるメンタルストレステストを負荷した時の心拍(HR)及び主観的ストレス反応を比較した.メンタルストレステストは,10分間の前課題期,2分間のスピーチ準備期,3分間のスピーチ期,5分間の暗算課題期,そして30分間の後課題期からなっていた.主観的ストレス反応は,NASA-TLXにより測定された.幸福感が低いグループのHRは,前課題期及び暗算時において,幸福観感が高いグループよりも高かった.主観的ストレス反応は,両グループで差異がなかった.
著者
松井 永子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

アレルギーの遺伝的要因として、アレルギー疾患で高値となることが多い血清IgE産生に関わるサイトカインシグナル伝達系の中で、特にIgE産生の抑制系に関与する蛋白質の遺伝子に着目し、アレルギー疾患発症の原因遺伝子について検討した。1、IgE産生抑制系に関与する遺伝子変異の同定アレルギー患者においてPHA刺激によるPBMCsから産生されるIFN-γ産生量を検討したところ、IFN-γ産生量は血清IgE値と負の相関関係を示すことが明らかになった。さらに、PHA刺激によるIFN-γ産生量とIL-12やIL-18などのサイトカインで刺激した場合のIFN-γ産生量を比較すると、IFN-γ産生量に解離がみられるアレルギー患者が存在した。そこで、Th1サイトカインのシグナル伝達系のなかでIL-12Rβ1鎖、β2鎖、IL-18Rα鎖、IFN-γR1鎖遺伝子の遺伝子配列を検討したところ、9つの変異が検出された。2、インベーダーアッセイ法による各変異遺伝子の検出検出されたIL-12Rβ1鎖、IL-12Rβ2鎖、IL-18Rα鎖、およびIFN-γR1鎖遺伝子における変異の出現頻度を検討した。IL-12Rβ1鎖遺伝子における3つのミスセンス変異において、M365T変異、およびG378R変異の出現頻度はアレルギー群に有意(p=0.023)に高く、R361W変異はアレルギー群にのみ変異が検出された。IL-12Rβ2鎖遺伝子の4つの変異において、A604V変異の出現頻度はコントロール群に比較して、アレルギー群において有意(p<0.002)に高く、R313G変異、1856 del 91変異、およびH720R変異はアレルギー群のみに検出された。Il-18Rα鎖遺伝子950 del 3変異においてはアレルギー群に有意(p=0.035)に高く変異が出現していた。IFN-γR1鎖遺伝子L467P変異はアレルギー群のみに変異が検出された(p=0.007)。今後、アレルギー素因となる遺伝子変異をパネル化し、組み合わせることにより、同定された遺伝子異常に対応した治療方法を選択することができる。このことにより、より効果的なアレルギー疾患の治療を行うことが可能であると思われる。さらには原因遺伝子異常がアレルギー疾患を惹起するメカニズムを明らかにすることにより、かかるメカニズムに対応した、アレルギーの治療薬の開発することも可能であると考える。
著者
前林 清和
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.89-99, 1992-04-30

In general, people think that a view of the mind-body in the East is monism, but a specialist in Bugei and Geido of Japan thought realistic, fine mind-body theory. It is a theory formulated in light of the practice, not the Cartesian mind-body dualism, not the general mind-body monism in the East. The purposes of this study are to clarify this idea by a analysis of Jujutsu's historical materials in the Edo era. Our study can be summarized as follows; 1) The view of Jujutsu's mind-body founded on Confucianism's cosmology, so that it regarded nature as macro-cosmos, a man as micro-cosmos. This viewpoint was the basis of various levels in Jujutsu. 2) The characteristic of the technical theory in Jujutsu was expressed by the proverb "Ju yoku go wo seisu". This proverb means that a soft action controls a hard action, or a soft idea controls a hard action. In Jujutsu, it was used to express a ideal of mental state and quality of strength on a practice or on a battle. 3) The trainning theories of Jujutsu attach importance to a waist and "Seika Tanden" (a belly under a navel). "Seika Tanden" was grasped the tank of "Qi" in the East.
著者
津田 彰 津田 茂子 山田 茂人
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、実験的-フィールド研究の方法論に基づいて、ストレスの状態と心理生物学的ストレス反応との関連性について検討を加えたものである.3年間の研究を通じて、以下に列挙するような知見を最終的に得ることができた。1.唾液中MHPGの測定と不安の指標としての妥当性について男女大学生221名を対象に、唾液3-mthoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)(ノルアドレナリンの代謝産物)濃度と気分(STAIならびにPOMSによって測定)、精神的健康度(GHQ-28で評価)との関連性を検討したところ、男子学生の場合、不安、緊張、抑うつ、怒り、敵意の気分ならびに特性不安とMHPG濃度との間に有意な相関が認められた。しかしながら、女子学生では、このような関係がまったく認められなかった。女子の場合、性周期がMHPG濃度の交絡要因になったためと思われる。2.唾液中MHPG濃度の減少と抗不安薬によるストレス症状改善との相関不安障害患者25名を対象に、抗不安薬(alprazolam 0.8-1.2mgまたはtandospirone 30mg)を投与し、ストレス症状の改善と唾液中MHPG濃度の減少が相関するかどうか検討を加えた。ストレス症状はいずれの薬物においても有意に減少したが、その程度はalprazolamの方で著明であった。Alprazoiam投与を受けた患者のMHGP濃度は投与1適間後に有意に低下したが、tandospirone投与では、とくに関連性を認めなかった。これらの知見より、唾液MHPG濃度はストレス状態を敏感に反映する指標であること、また抗不安薬の効力を臨床的に評価するための客観的な指標になり得ることが明らかとなった。
著者
長尾 光城 馬渕 博行 Michael KREMENIK 長尾 憲樹 松枝 秀二 柚木 脩
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.319-323, 2001-12-25

スポーツ外傷と障害でもっとも頻繁にみられるものの一つが足関節内反捻挫である,捻挫を経験した選手にたいして, スポーツ現場ではテーピング, 装具のいずれにするか, その選択に苦慮している。そこで現在使用頻度の高い各種装具, テーピングについて, 装着感, 固定性, 価格について検討した.足関節に不安を感じているもの10名に対して両足関節に内反ストレステストをおこないX線で撮影し, 健側と患側の比較をした.比較の結果, 両者の距骨傾斜角度に5度を越える被検者に対して, 6種の装具, テーピングを装着後, 再度内反ストレステストをおこない, 固定性, 装着感を調べた.被検者の主観と距骨傾斜角度, 価格から一覧表にしてまとめた.その結果2種類の装具とテーピングで良好な固定性をみた.装具の固定性に関しては, 金額の高いものほどよかった,また足関節を筒状につつみこみ, フィギアエイトがほどこされているものが, 固定性を保っていた.重度の損傷に対しては固定性の良い装具かテーピングが有用であることが確認できた.しかし, 競技種目(たとえば, サッカー)によっては装具が使用できない場合があるので, 競技特性を考えた装具の開発がのぞまれる,テーピングは非常に有用であるが, 毎回の利用で経費がかかることを念頭にいれないといけない.固定性重視か, 不安感解消かで使い分けるとともに, 足関節周囲の支持組織の強化を怠らないことが重要である.
著者
田中 芳幸 外川 あゆみ
出版者
東京福祉大学短期大学部
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

いきいき度尺度を大学生に適用できることを実証するとともに、この尺度により測定される主観的ウェルビーイングが高ければ、ストレス刺激が多くてもストレス反応には繋がらないという主観的ウェルビーイングのストレス緩衝モデルをデータに基づき提示した。さらに、このモデルに基づいた実験的研究により、個人の主観的ウェルビーイングが急性ストレッサーに対処する為の準備状態を整えたり、反応後の回復を促進したりといった役割を有することを示唆した。
著者
野村 忍 中尾 睦宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

今回の研究目的は、本態性高血圧症に対する血圧バイオフィードバック(以下BFと略す)の降圧効果を検討することである。また、ストレス負荷テストによる昇圧反応をどのくらい抑制できるかの検討を行った。本態性高血圧症を対象にした血圧BFの治療効果の検討では、30人の外来患者(男性10名、女性20名)を無作為に2群に分けて比較試験を行った。A群ではBF治療を4回行い、B群ではコントロール期間は血圧自己モニターのみ行いその後BF治療を4回施行した。その結果、A群では治療期間前後の比較で平均して収縮期血圧は17mmHg、拡張期血圧は8mmHgの有意な低下が認められた。B群では、コントロール期間では血圧の変化は認められず、治療期間前後で平均して収縮期血圧は20mmHg,拡張期血圧は9mmHgの有意な低下が認められた。また、治療期間前後に施行したストレス負荷テスト(暗算負荷法)による昇圧反応は、A,B両群において顕著な抑制効果が認められた。本態性高血圧症を対象にした暗算負荷法(以下MATと略す)と鏡映描写試験(以下MDTと略す)の循環動態ならびに内分泌的反応性の比較試験を10人の外来患者に施行した。MATおよびMDTにより平均収縮期血圧はそれぞれ37.8mmHg,41.0mmHg、平均拡張期血圧はそれそれ17.5mmHg,21.2mmHg、平均心拍数はそれそれ17.1拍/分,12.5拍/分と顕著な増加が認められた。血中ノルエピネフリン濃度は、MATおよびMDTで同様な反応性を示したが、エピネフリンはMATでより増加する傾向が認められた。その結果、MATはより交感神経-副腎髄質系を賦活するメンタルテストであることが示唆された。
著者
榊原
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情処研報
巻号頁・発行日
vol.97, pp.13-20, 1997
被引用文献数
1

マルチメディアの社会実験として新世代通信網パイロットモデル事業は平成6年7月8日にスタートした。当時は、日本では電気通信審議会から2010年までに、全家庭に光ファイバーを敷設する計画が答申される(1994年5月)一方、米国のゴア副大統領からはGII(Global Information Infrastructure)及びその実現のための5原則が提唱され、「ブエノスアイレス宣言」が出たり(1994年3月)、またヨーロッパでは、欧州連合バンゲマン委員より、域内の情報通信基盤の整備の指針となる「バンゲマン報告(欧州及び地球規模の情報社会)」が提出され、承認された(1994年6月)。いずれも情報通信は、社会経済の発展には必要不可欠であり、世界的な情報通信基盤の整備は、持続的な経済成長、雇用創出等の世界的な課題の解決策を示している。このパイロットモデル事業も平成5年の第一補正予算で新社会資本の整備の一環として認められた。情報通信は、産業横断的な機能を有し、経済社会の多様なニーズに対応できる。ところで、実験開始してから早や3年近くが経過し、電気通信の環境も大部変化した。インターネットの世界的な普及の中にあり、INDS-64の需要がうなぎ登りで、またカラーTVの売れ行きよりパソコンの方がよく売れ、町にはパソコンの新型が毎週のように発売されている。しかし今のインターネットには接続の問題や、画像伝送の問題がある。これらの解決方法は、光ファイバーを各家庭に敷くしか方法はない。いわゆるFTTH(Fiber To The Home)である。このFTTHの社会実験が新世代通信網パイロットモデル事業である。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

従来、発掘整理や資料価値など、研究が十分にすすんでいなかった、往来物資料について、調査を実施し、その分類整理を行った。特に北東北地域所蔵の往来物資料について、書誌的文献学的な紹介とともに、その分布や偏在状況を提示した。近世期における秋田、岩手、青森の諸地域の教育環境や文化的背景を考察検討するうえで、それらの資料群が重要な示唆を与えてくれるものであることが判明した。今後、近世庶民生活や教育の実態について、発展的応用的な研究基盤となることが期待される。
著者
佐藤 洋樹 田宮 洋一 伊藤 寛晃 角田 和彦
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.404-408, 2007-07
被引用文献数
1

症例は18歳,女性.2003年4月18日下腹部痛と嘔吐を主訴に当院受診.下部消化管内視鏡で直腸S状部に巨大な粘膜下血腫を認め,月経に随伴する病態から腸管子宮内膜症と診断した.保存的治療と偽閉経療法にて腫瘤は縮小し経過観察されていた.2005年7月7日下腹部痛と嘔吐が再度出現し7月8日腸閉塞にて入院.肛門縁から10cmに完全狭窄を認めた為,7月12日低位前方切除術施行した.本疾患は狭窄や消化管閉塞を呈し悪性腫瘍との鑑別を要するが,確定診断が困難なことも多い.今回我々は若年者で巨大粘膜下血腫と直腸狭窄を伴った手術例を経験したので報告する.
著者
宮村 浩子
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,1枚の画像を観察するだけで,3次元時系列医用画像データの情報を確認することができる情報提示法を提案した.大量のデータを診断する必要がある医療の場において,少ない枚数で精度良く診断できることは大変有意義である.本研究成果を用いることで,複数方向から観察したときに得られる情報や,時間変化を伴う情報を1枚の静止画から得られるので,少ない枚数で精度良い診断を実現する.また,この静止画像を「ボリュームナビゲーションシステム」として利用することで,適切な可視化結果を得て,診断できるフレームワークも提案した.
著者
村主 節雄 原田 正和 佐々 学 石井 明 板野 一男 松岡 裕之
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-39, 1989
被引用文献数
3 4

岡山県の児島湖において, ライトトラップによるユスリカ科昆虫についての調査を行った。まず1985年7月8日より9日に5カ所において予備調査を行った。その結果, 好適地点を決め, 1985年7月より1986年12月までの周年調査を行った。各月の平均採集数の年間合計は41,669匹(雄15,795匹;雌25,874匹)であった。15属21種のユスリカが採集され, 主要種およびその採集数はそれぞれ, Polypedilum arundinetum (14,254), Parachironomus arcuatus (5,234), Microchironomus ishii (4,622), Tanytarsus oyamai (4,057), Chironomus kiiensis (3,004), Tanypus punctipennis (2,490), Pentapedilum tigrinum (2,349), Polypedilum masudai (1,577), Polypedilum nubifer (980), Dicrotendipes niveicaudus (962), Cricotopus sylvestris (936), and Tokunaga-yusurika akamusi (526)であった。多くの成虫は6&acd;9月に採集されたが, 冬期に採集される数種, さらに春と秋に発生数が2峰を示すLimnophyes hudsoniがみられた。
著者
高橋 実 小海 節海 藤脇 千洋 平沼 博将 上田 順子
出版者
福山市立女子短期大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

7月に短期大学保育科の学生約100人に対し、90分のダンスセラピーを実施し、その前後の血圧、脈拍、身体イメージアンケート、ストレスの自覚症状アンケート、身体、精神状態、仲間との交流に対する気づきの記入を依頼した。そして、9月には、子育て中の母親に対してガイダンスの後3回のダンスセラピーを実施し、今年度からは、保育ボランティアによる別の場所での保育を行い、母親の身体が十分ほぐれた後に最後の後半のみに親子のセッションをおこなった。その際、研究分担者、藤脇教授によるピアノの即興演奏によるBGMをいれて実施した。すべてのダンスセラピーのセッションの前後で、血圧、脈拍、七夕の歌をブレスなしで歌っての持続フレーズ、発声時間を測定した。その結果、血圧については、学生のセッションのみで、セッション後に有意な低下がみられ、脈拍については、学生でも母親グループでも有意な低下がみられた。また身体イメージの調査では、芙二式ダンスセラピーの実施することで「評価性」「活動性」「快活性」という三つの尺度で身体イメージに変化(改善)が見られた。特に「活動性」については、静的で落ち着く方向に身体イメージが変化した。また自覚症状においても有意な軽減がみられた。また母親グループの歌の持続時間については、セッション後に伸びる方向で傾向差が、発声時間については、5%水準で有意に伸長することが見いだされた。気づき記入においては、両グループとも「身体が軽い感じ」「頭がすっきりした」「やる気がおきた」「気分的に明るくなった」「相手を感じることで1つになれた」など多様な効果が記述された。芙二式ダンスセラピーは、生理学的にも精神的にも、交流関係においても静的で落ち着き、気分が前向きになり、他者との一体感が得られるという効果がみられることが実証された。
著者
伊東 睦泰 桑木野 広美 山科 一樹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.469-477, 1993-03-31
被引用文献数
1

リードカナリーグラスにおける既存分げつの生育と新分げつの発生の関係を知るため,年3回刈で利用中の草地の1番草(6月5日刈取)および2番草(7月28日刈取)群落から,生育良好な揃った既存分げつを経時的に採取し,着生節位別の葉身,葉鞘,節間,分げつ芽長,ならびに各器官の乾物重を計測した。1番草および2番草における既存分げつ各器官の形成・発達のパターンは,既報の模擬群落における観察結果とよく一致し,葉身長は第1葉では著しく短いものの,以後上位に向かって急速に長さを増大して第7葉近辺で最大となり,それより上位では再び短くなった。また節間は,1番草では5月上旬に第4,5節間から,2番草では刈取後約20日を経過して以降に第3,4節間から順次伸長を開始した。かくして,その後の約10日間は,節間部の相対生長率は著しく高まり,生育開始後30日を経過した段階に至っても,既存分げつの相対生長率は高く維持された。既存分げつの各節に着生する分げつ芽は,それぞれ節間伸長開始前の段階にある1番草の4月26日,ならびに2番草の6月26日には,下位の節間も含めてほとんどが休眠状態で,いずれも4.0mm以下であった。1番草,2番草とも,母茎の生長と並行して順次新しい分げつ芽が増加するが,それに伴ってその時々の最上位展開葉節の直下2,3節ではほとんどが休眠状態にある一方,それ以下の各節分げつ芽は徐々に伸長して全長4.1-16.0mmの分げつ芽が増え始め,ついで,母茎節間の伸長が明瞭となる1番草の5月17日,2番草の7月8日の段階に至ると,16.1mm以上に伸長した分げつの割合が増加した。以後,1番草ではこの16.1mm以上分げつの割合は増大を続け,刈取時(6月5日)には既存分げつ当り1茎を超えた。これら母茎節間の伸長開始と前後して萌芽を開始する分げつ芽の着生節位は,1番草では第1-3葉,2番草では1-2葉の葉腋またはそれ以下の非伸長節間に位置し,その大部分が根茎的に伸長していた。既存の分げつの節間の伸長が活発化する時期に,それまで休眠していた下位節間の分げつ芽が並行して萌芽を開始するという本草種の特異な習性は,新分げつ中心の旺盛な再生と高密度維持を可能にする上で重要な要素と考えられる。
著者
鍋山 祥子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年は、「遠距離介護とコミュニティの関連」を明らかにする研究計画の最終年次にあたり、特に山口市内に居住し、別居子を持つ高齢者に対する聞き取り調査をおこなった。そのなかから、地域の人的資源(近隣住民とのつながり)に生きがいを見いだしながらも、別居家族(特に子ども)に精神的な拠り所を求めている老親の姿が明らかになった。これまで、遠距離介護に関するインタビュー調査の傾向として、遠距離介護をおこなっている別居子に対する調査が中心であった。そこで、本研究において、別居子を持ちながら、地域で生活を続ける高齢者へのインタビュー調査が実施できたことは、遠距離介護を多角的に考えるうえで、非常に意義のあるものとなった。そして、初年度の別居子に対する質問紙調査と、次年度の遠距離介護を実践している別居子へのインタビュー調査、さらに今年度の老親へのインタビュー調査の結果から、老親の住む地域が遠距離介護支援のためにできることと、望ましいサービス体制、並びに地域が遠距離介護支援に取り組むことのメリットなどを明らかにした。本研究によって達成した、老親の住む地域における遠距離介護支援の望ましいあり方とその必要性についての認識を基盤として、今後は、別居子のワーク・ライフ・バランスと遠距離介護との関係に焦点をあてる。そして、地域における遠距離介護支援が別居子のワーク・ライフ・バランスにどう影響するのかという分析をおこない、超高齢社会における労働政策と地域福祉政策を考察していきたい。
著者
谷尾 昇 門倉 光隆 野中 誠 山本 滋 片岡 大輔 高場 利博
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.215-218, 1997-05-25
参考文献数
10

症例は66歳の女性。昭和48年より慢性関節リウマチで薬物療法を受けており, プレドニゾロン3mg/日の内服をしていた。平成6年7月6日, 整形外科で全身麻酔下に左人工股関節置換術を受けた。術後上半身に著明な皮下気腫と呼吸苦が出現し, 7月8日ICU管理となった。気管支鏡検査を施行し気管上部膜様部に裂創を認めた。16Gエラスターを前胸部皮下に留置して間欠的に低圧吸引し, 保存的に経過を観たが, 皮下気腫は改善しないため, 7月11日気管裂傷部直接縫合閉鎖, 肋間筋弁縫着術を行った。
著者
石原 謙 立石 憲彦 木村 映善
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

現在、産婦人科専門医の確保が厳しく、遠隔診断やオピニオンが求められるようになっている。医師との迅速な連携の為に愛媛大学では携帯電話を用いたCTG(胎児心拍陣痛図)の伝送や、安全な医療情報ネットワークを介した伝送による遠隔医療期間の連携の試みを行ってきた。それらは一定の成果を挙げたが、CTG伝送をする為にはサーバの設置やネットワークの整備、設定を要求されるなど、利用までの敷居が高く、普及する要素が低かった。翻って一般家庭におけるブロードバンド環境の普及は進み、現在ではADSLやFTTHの引き込みを前提環境として想定することが容易になった。そこで、一般家庭で利用されているブロードバンド環境下に設定の必要がないCTG伝送システムを実現することによって容易に胎児心拍陣痛図の監視システムの導入が出来ることを目指した。この事によって高リスク因子の妊婦を自宅にて静養させることが実現出来る。具体的には一般家庭で導入されているブロードバンドルータのDHCPもしくはUPnP機能からホームネットワークの環境を自動的に検出し、インターネットへの接続を確立する。どのような環境でも胎児心拍陣痛図のモニタリング・センターへデータを伝送出来るようにHTTPプロトコル上に暗号化されたSOAPメッセージを使って胎児心拍陣痛図を伝送する。RS232Cで接続された胎児心拍陣痛図のプローブからデータを採取し、SOAPメッセージに載せるXML形式の連続データに変換を行い、あらかじめ指定されているモニタリング・センターのWebサービスサーバと公開鍵認証を行って送信する。センターでは各地から取得されたメッセージをXML形式で保存し、データベース参照や地域医療システムとの連携を実現している。設定が不要で場所、時を選ばずに誰でも容易に胎児心拍陣痛図の確認を依頼出来るようになる為、周産期医療の充実化が期待される。本研究を進めるにあたって、医療機関毎に導入している医療機器によって扱われる胎児心拍陣痛図や各種医用波形データが異なる為、MFERの利用を着想し、MFERデータを扱う為のパーサを開発した。現在、医用波形をMFER形式に変換し、それをSOAPメッセージにエンコーディングした上で、リライアブル・マルチキャスト技術を利用したメッセージングシステムでSOAPメッセージを配布する実装の開発中である。