著者
古屋 充子 田中 玲子 米満 吉和 木村 定雄
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炎症性背景をもつ発癌モデルとして内膜症と明細胞腺癌とにおける炎症性微小環境変化を解析した.G蛋白質共役受容体CXCR3を解析したところ,3つの変異体がヒト組織で確認された.定性解析の結果,CXCR3Aは内膜症,癌両者で上昇していた.CXCR3-altは癌で特異的に発現し,CXCR3Bは抑制されていた.CXCL11,CXCL4の発現パターンは各々CXCR3-alt,CXCR3Bと相関した.局在解析では,CXCR3-altは腫瘍血管に,CXCR3Bは正常血管や内膜症血管にシグナルが認められた.以上の結果,G蛋白質共役受容体CXCR3は変異体により発現組織・細胞が異なり,そのリガンド環境も疾患によって異なることが示唆された.CXCR3Bでは抑制性,CXCR3-altでは亢進性シグナルが作動すると予想された.今回期間内では変異体依存性シグナルと4回膜貫通蛋白(TM4)との関連を明らかに出来なかったが,今後は細胞レベルでG蛋白質共役受容体シグナルを介した浸潤・移動能調節機構にインテグリン/TM4がどう応答するか解析する予定である.
著者
竹村 勘〓
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
機械學會誌
巻号頁・発行日
vol.34, no.169, 1931-05-01
著者
島田 弦
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

強力な行政権と著しく限定された政治参加を特徴とする権威主義体制において、法による権力の制限を内容とする「法の支配」が、民主化運動とどのように結びついたのか、また1998 年に始まる民主化以降、「法の支配」を支える制度がどのように変化したのかについて研究を行った。そして、立憲主義を通じた行政権の制限を担保する制度として憲法裁判所に関する論文、および、市民社会の側からの「法の支配」を基礎とする民主化運動について、法律扶助運動に関する論文を発表した。また、関連研究として、東ティモールの平和構築における司法制度の役割に関する論文、災害復興行政に関する学会報告を行った。また、イスラム法に基づく統治と国家法制度の緊張関係に関する論文を執筆中である。
著者
村尾 修
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトでは,まず1999年台湾集集地震の被災地である集集を対象として,復興過程に関して継続的な観測を実施した.そして,その数年間の復興調査データ等を用いて,「空間復興モデル」を提案した.これは被災地の都市空間の復興過程を物的環境の変化すなわち建物の復興状況(被災,瓦礫の撤去,建設中)という視点から記述し,その変化を客観的に示す方法である.そこで得られた知見を活かし,より詳細な建築確認申請データを用いて.地域の復興過程を復興曲線として客観的に示す方法を提案した.さらにこの客観的な指標で示される地域の復興過程を支える社会的背景についても,調査した.その方法としては地域の資料を読み解くとともに,被災者,役人,その他のステークホルダーに対して面接調査を実施した.その成果のひとつとして,集集鎮志を翻訳し,現地の復興過程を理解するための情報として利用した.そして面接調査や資料など集集の復興過程を読み解き,復興のエスノグラフィ作成のための方法論としてまとめた.これは,地域の復興を包括的にとらえ,工学的な要素と社会学的要素を盛り込んだ復興研究のアプローチであり,本プロジェクトで実施した他地域の復興報告書等を活用した.復興過程を表す指標構築のための研究と平行して,復興をアーカイブズとして記録するための研究も行った.そのひとつとして,筆者がモニタリングしてきた復興の記録を都市史の中でどのように位置づけたらよいのかを考察し,復興デジタルアーカイブズの意義についてまとめた.そして,その考え方の一部を集集を対象として具体化(GoogleEarthを用いた復興デジタルアーカイブズ)し,方法論としてまとめた.
著者
白石 一美
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.52-60, 2008-09-30

本論文は『研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間連携論文集-』Vol.2, No.2(2009/03)に査読を経て受理された。
著者
丸井 英幹 山崎 俊哉 梅原 徹 黒崎 史平 小林 禧樹
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.173-182, 2004-12-25
参考文献数
12
被引用文献数
2

兵庫県神戸市に計画された高速道路の予定地で,着工直前になって絶滅危惧種のハリママムシグサが発見された.路線の変更による影響の「回避」は困難で,道路建設の影響圈に自生するすべての個体の移植によって個体数の維特をはかる保全対策をとった.移植に先だって自生地で分布,個体形状,性表現,光環境,土壌条件,植生を,移植先の候補地で光環境,土壌条件と植生を調査した.調査の結果,ハリママムシグサは林冠がうっ閉するまでの早春の光環壌にめぐまれる谷沿いの落葉広葉樹林の林床で,乾きにくい砂質土壌の場所に自生することがわかった.種子繁殖にかかわる性表現は個体サイズに依存しており,雌個体はもっとも明るい場所に自生することから,雌への成長には一定の年限,光環境にめぐまれる必要があると考えられた.調査結果をもとに移植先の候補地から適地をえらび,個体形状を測定して可能なかぎり適期に移植した.
著者
久保 満佐子 島野 光司 崎尾 均 大野 啓一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.349-354, 2000-11-16
参考文献数
19
被引用文献数
7

渓畔林においてカツラの発生サイトおよび実生の定着条件を, 共存種であるシオジ, サワグルミと比較して明らかにした。カツラは砂礫地やリターのあるところでは発生せず, 主に鉱質土壌が露出しているところで発生していた。この原因として, カツラは種子や実生のサイズが小さいため, 砂礫やリターに埋もれてしまうこと, 砂礫地では乾湿の差が土壌面に比べ大きいことが考えられた。一方, シオジ, サワグルミは砂礫地であっても, またリターがあっても発生したが, これは両種の種子サイズが大型なため, 砂礫地やリターの堆積した立地でも地上に子葉を展開できること, 十分な長さの根を伸ばせることが原因と考えられた。1年生以上の実生の定着サイトで相対照度を比較した結果, カツラはサワグルミと同様, 15〜20%程度の相対照度が必要なのに対し, シオジは5〜10%でも生存できた。ただし, 土の露出した明るいサイトに多く発生するカツラの実生は, 大雨のときなどに土ごと流されることが多いため, 共存種のシオジやサワグルミに比べ実生による更新が困難なことが予想された。
著者
宇佐美 敬
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.8-15, 1931-09
著者
渡部 幹夫 酒井 シヅ 杉山 章子 鈴木 晃仁 永島 剛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

第二次世界大戦後占領下の日本において行なわれた、行政制度の法的な改正は多岐にわたる。GHQ公衆衛生福祉局サムス准将の主導により行なわれた保健医療制度の変革は、占領国の法律を超える積極的な予防医学的な法の精神で作られたようである。しかし今回の研究により、その法を実際に施行した日本の混乱と新たな問題の発生が明らかとなった。
著者
塩出 浩之
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、明治維新直後に誕生した日本の新聞が、公開の言論による政治空間を形成した過程について、近隣諸国との関係・紛争をめぐる議論を中心に分析した。征韓論と民権論の結合に象徴されるように、言論の自由(政府批判を含む)の追求とナショナリズムとは親和的だったが、"国益のための避戦"論のように議論には多様性があり、公に異論を戦わせること自体に重きが置かれていた。コミュニケーションの形態にも多様な模索があり、琉球併合問題をめぐっては中国の新聞との相互参照もみられた。
著者
大嶋 隆雄
出版者
愛知学泉大学
雑誌
経営研究 (ISSN:09149392)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.227-250, 1993-03

デカルトの精神的問題と物質的問題を分離する「方法序説」以来,自然科学はもちろん社会科学も,感性的な人間をその対象から捨象して,数学と接近しようとしてきた。しかし社会科学は本来,人間の感性や行為にかかわる科学である。その人間を抜きにして科学を築こうとするところに問題がある。今日,社会科学の不振もこうしたところに原因を認めざるを得ない。
著者
押川 文子 村上 勇介 山本 博之 帯谷 知可 小森 宏美 田中 耕司 林 行夫 柳澤 雅之 篠原 拓嗣 臼杵 陽 大津留 智恵子 石井 正子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本科研は、複数地域を研究対象とする研究者による地域間比較や相互関連を重視したアプローチを用いることによって、グローバル化を経た世界各地の地域社会や政治の変容を実証的に検証し、それらが国内外を結ぶ格差の重層的構造によって結合されていること、その結果として加速するモビリティの拡大のなかで、人々が孤立する社会の「脆弱化」だけでなく、あらたなアイデンティティ形成や政治的結集を求める動きが各地で活性化していることを明らかにした。
著者
矢口 祐人 廣部 泉
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

平成19年度は18年度に引き続き、現地調査を通してアメリカのキリスト教原理主義団体に関する情報を収集した。夏季に矢口がサウスダコタ州を訪れ、キリスト教原理主義団体が展開する中絶反対運動の調査を行った。教会内のみならず、教育やコミュニティ活動を通して、中絶問題を巧妙に政治化する様子がみられた。また前年度に引き続き、コロラド大学のトーマス・ザイラー教授と意見交換を行った。さらに研究に必要な保守キリスト教団体関連の書籍・DVDなどを購入して、資料の充実を図るとともに、矢口と廣部で継続的に情報交換を続けた。廣部はそれをもとにキリスト教宣教の有効性を考察する論文を執筆し、発表した。平成20年に入ると、キリスト教原理主義団体の政治活動で注目すべき動きがみられた。同年11月のアメリカ合衆国大統領選挙の共和党候補として立候補したバプテスト派牧師で、前アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーが、大方の予想を覆し、1月のアイオワ州予備選挙で勝利をおさめたのである。キリスト教原理主義団体の文化活動がアメリカの政治にどのような影響を及ぼしているかを、教会での活動のみならず、メディアや教育の場などにも注目して研究するためには、ハッカビーの選挙戦略とその効果を調査する必要が生まれた。インターネットなどで情報を収集するとともに、関連資料を購入し、米国キリスト教原理主義団体の文化戦略事業の実体と今後の展開について考察をすすめた。ハッカビーは最終的に敗北したものの、その支持基盤であるキリスト教原理主義の動きは活発であり、最終的に共和党候補となったマケインの戦略にも大きな影響を与えた。その意味では選挙戦を通して、キリスト教原理主義団体の文化戦略の理解を深めることができた。
著者
高井 正三
出版者
富山大学総合情報基盤センター
雑誌
富山大学総合情報基盤センター広報 (ISSN:13490796)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.50-57, 2011-03

本稿では,2011年から本格的に開始されるeBook端末の普及を迎え撃つために,デジタル教科書や教材による大学教育の変革とeBookの活用法を提案するとともに,Webを利用した新しい学びである「オープンエデュケーション」の広がりとデジタル教科書の現状を紹介したい。
著者
喜納 育江
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、アメリカ南西部における米墨国境地帯の文化的「境域」におけるチカーノとアメリカ先住民の文学について、これらの文学が、国境線で分断された故郷や大地とのつながりを求める先住民としての想像力を共有していることを明らかにした。特に、国内の研究成果が皆無に等しかったチカーナ文学の文学的想像力に注目し、チカーナと先住民文化の関係を明らかにする複数の研究論文を発表した。